優秀賞 【高校・一般部門】 中村 未来
私の夢
富山県立南砺福野高等学校 三年 |
私には、叶えたい夢、叶えなければいけない夢があります。それは、美容師になることです。私は、障がいのある人もない人も、誰もが自分に自信を持てるきっかけとなる美容師になりたいと思っています。そのように思ったきっかけは二つあります。
一つ目は、私の兄についてです。三つ年上の兄は、知的障害があります。千人に一人の確率で生まれてくると言われているダウン症です。そんな兄は、昨年二十歳になり少し普段とは違う意識を持つようになりました。それは、“かっこよくなりたい”という美意識でした。知り合いが経営している美容室に行くと、いつも「この人みたいな髪型にして。」とわざわざ写真や雑誌を見せて切ってもらっています。ですが、全く同じになるわけでもなく、いつも同じような髪型で帰ってきます。本人は、とても満足している様子でしたが、私は少し違和感を感じました。調べてみると、あるワードが出てきました。それは、「障がい者カット」という髪型です。聞き慣れない方が多いと思われますが、障がいをもっておられる家庭や障がいについて聞いたことがあると思います。例えば、身体障がい者に対して、介護をする時に邪魔になるからと男女関係なくショートカットや坊主にする人がいます。本人がそうしたいと望んだのなら別ですが勝手なイメージで本人の気持ちを無視しその髪型になる人もいます。そのような方の髪型を「障がい者カット」といいます。この髪型にさせたくない。本人のなりたい自分になってもらいたい。キレイになった時の喜びを味わってもらいたいと強く思いました。
2つ目は、福祉系高校に通う私が地元の老人ホームに実習に行った時のことです。私が声を掛けた利用者の方は、嬉しそうに自分の手を見つめておられました。私は、とても気になり利用者の方の手元を見ると爪がキラキラとしていました。「これ、どうしたのですか。」と尋ねると利用者の方はニコッと笑い言いました。「先日ね、美容師の方が来てネイルやお化粧をしてくれたのよ。」と言い、再び嬉しそうに爪を見つめました。また、別の施設では、美容師の方がボランティアで利用者の方の髪を切りに来ている様子を見ることができました。普段、自虐的な発言が多い利用者の方が髪を切り終わった後には笑顔だったのがとても印象的でした。利用者の方の中には、美容師の方との会話を楽しみにしていると知りとても魅力を感じました。性別や年齢、障がいがあるなし関係なく「笑顔になってほしい」と思ったのがきっかけでした。
だからこそ私は、誰もが自分に自信を持つきっかけを作るためには、今の環境について知るべきだと思いました。障がい者の方はどこで髪を切っているのだろうか。私は、ふと疑問を抱き母に相談しました。すると、とても苦労をしていることが分かりました。障がい者を受け入れてくれる美容室や他人の目を気にせず髪を切ることができる場所、車椅子の障がい者に対する配慮や設備といった様々な条件が必要でした。そのような美容室がなかなか見つからず、自分の家で髪を切るという人もいると知りました。「差別」や「偏見」とまでは言えないかもしれないがそのような私たちの身近な場所で障がい者や家族が受け入れを断られています。私たちは、キレイになりたいと思い美容室に通うのに違った不安を抱えながら行く人がいるということをどれだけの人が知っているでしょうか。誰だって「キレイになりたい」「かっこよくなりたい」と一度は感じるものです。それをなかったことにするのはどうでしょうか。自分に自信を持てなくなると思います。そうなったら、毎日の生活を心の底から、楽しい、嬉しい、幸せなどの幸福感は出てくるのでしょうか。そこから生まれる笑顔は見ることができるでしょうか。
だから私は、美容師になり不安を抱えている方々の気持ちを少しでも取り除いていけるような活動をしていきたいです。そして、美容室を立ち上げ誰もが安心して通える空間、設備にしたいです。私たちが気づかない所で障がい者の方が日々の生活を困難としているかもしれません。それを、私たちが気づき、理解することで少しでもその困難をなくすことができるかもしれません。だから私は、これからも障がい者の方と関わりたいです。そして、少しでも兄や障がい者の方の支えとなるような様々な困難を見つけていきます。