【高校生・一般部門】 ◆佳作 上地 正也(うえち しょうや)
サッカーを通して成長できた僕上地 正也(沖縄県立中部農林高等支援学校3年 沖縄県)
僕は、小学五年生からサッカーをはじめました。サッカーゲームが好きで、本当のサッカーをやってみたくなったからです。そして僕に大きな夢ができました。それはプロサッカー選手になることです。でもその頃の僕は現実の厳しさを知りませんでした。僕は知的障害者です。僕は人見知りなので、今も人と話をするのが苦手です。はずかしくて、なかなかチームになじめずにいました。大好きなサッカーをやりたくて入った部活動でしたが、できれば人と関わらないように過ごそうとしていました。慣れてくると、だんだん話すことが出来るのですが、かなり時間がかかります。それはいけないと自分でもわかっているのですが、どうしても改善できませんでした。
僕の障害が分かったのは、サッカーを始める少し前です。勉強しても全く分からず、ずっと成績が悪かったので、担任の先生が病院に行くことをすすめました。小学五年生から特別支援学級に入る事になった時、僕は正直いうと「何で、みんなと一緒じゃダメなの?」といやな気持ちでした。知的障害と分かってから、僕は悩みがたくさんありました。「知的障害だからその程度しか出来ない」「知的障害は何をやっても変わらない」「成長しない」そんなふうに周りの普通の人に思われているのではないかと、僕はいつも周りの目を気にしていました。でも今の僕は思います。障害者は皆それぞれに頑張っています。僕も、僕のクラスの仲間も、ものすごく頑張っています。障害者も頑張れば、色々なことができる可能性があると思うのです。
今の社会では、障害を持っている人はかわいそうだと大半の人が思っているように感じます。僕自身が、自分の心の弱さは知的障害があるからで、自分がかわいそうと思うこともあります。勉強やスポーツで普通の人にはどうしても追いつけないと感じることもよくあります。でも僕がそれをくつがえしたいです。限界を感じるまで頑張ってみたいのです。
僕はサッカーを通して、僕は変わったと思います。以前より人と関わることがいやではなくなりました。それは、サッカーをしながら色々な人に出会えたからです。チームメイトやコーチ、部活動こ問の先生などがいつも僕を助けてくれました。特に、高校のサッカー部の仲間は、自分から話すことの少ない僕と仲良くしてくれました。僕は高等支援学校の生徒ですが、部活動は中部農林高校の生徒と一緒に活動することが出来ます。優しいメンバーばかりで、知的障害だからと差別することは全くありませんでした。逆に、僕のサッカーの技術力を認めてくれました。とても楽しかったのですが、今年、高校最後のインターハイ前に僕はサッカーへの気持ちが切れてしまい、部活動に行かなくなりました。もうひとつの特技の「走ること」を頑張ってみたくなったからです。サッカー部の数人が何度も教室に来て、「インターハイまでは続けよう」と言いました。しつこさに負けて仕方なく参加したインターハイは楽しくありませんでした。あんなにサッカーが好きだったのに、自分でも不思議です。僕の変わった点は、「知的障害」ということにとらわれすぎていた所です。サッカーの大会や練習試合などで他の学校と一緒に活動する時、「あー、勝てっこないや。遊ばれている。」と感じることがありました。でも、中にはこの人になら勝てるかも、と思うこともありました。「もしも、もっとレベルの高いチームで練習をしていたら、僕ももっと上手くなれたのではないか。」そう思うと、他のチームを羨ましく思うこともありました。
僕は、週末には知的障害者のサッカーチーム「ブルーシーサー」に参加しています。ブルーシーサーに参加して、大きな大会に参加するために本土旅行に行けたり、アップシューズやジャージを無料でもらえたり、とてもいいことがたくさんありました。全国大会の閉会式で有名人が来ることもありました。沖縄の県代表で行ったので、最初はわくわくしたし、みんなに自慢したい気持ちになりました。でも最近、知的障害者だけのチームでは僕は成長しないのではないか、と思うようになりました。
僕は、知的障害の自分がどのくらい成長するかを確かめたいです。自分にまだ足りない部分がたくさんあります。だから、今後も僕は頑張っていくつもりです。僕にしかない可能性を信じたいのです。プロサッカー選手の夢を叶えるのは難しいことは十分分かりました。でも今できることを頑張るだけ頑張りたいと思っています。大きな夢を持つ事は簡単だけど、その大きな夢を叶えるのはなかなか出来るものじゃないと気づく僕がいます。でも頑張れば何か得られるものがあると信じて、やるしかありません。
知的障害で生まれて、僕は良かったと思っています。頑張ってもなかなか前に進まないけれど代わりに出来た時の幸せな気持ちは、普通の人より大きいと思うからです。だから僕は結果を求める人ではなく、自分自身の成長を求めていきたいです。大きな夢や目標を持つことが大切だと思います。僕は今、陸上を頑張っています。僕の目標は、那覇マラソンで一位になることです。もう一つの目標は、今年十月にある全国障害者スポーツ大会で、一五〇〇Mを大会新記録で日本一になることです。そのために僕は努力しています。毎日の基礎トレーニングの他、限界を感じるまで走り続ける練習を自分で考えて取り組んでいます。限界を感じながら、でも自分の可能性を信じて、これからも僕は成長し続けます。