平成29年度「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」作品集

はじめに

障害の有無にかかわらず、国民一人一人が互いに人格と個性を尊重し、支え合う「共生社会」の実現は、我が国にとって大変重要な課題です。

我が国では、障害者基本法に基づき、十二月三日から九日までの一週間を「障害者週間」と定めています。この期間を中心に、国及び地方公共団体が民間団体等と連携して、毎年、障害者の自立及び社会参加のための啓発に関する様々な取組を実施しています。

内閣府では、毎年、障害又は障害者をテーマとした「体験作文」と「障害者週間のポスター」を全国から募集しており、本年も多くの方々から御応募を頂きました。本作品集は、その中から入賞された方々の作品を収めたものです。

御応募いただいた作品は、作者の皆様が、「障害者週間」を一つの契機として、障害や障害者に対する思いを一つの形にされた大変貴重なものです。御本人に障害がある方、障害のある御家族や御友人がいる方、この機会に改めて障害について考えていただいた方などが、それぞれの立場から、様々な視点を持って、率直に表現いただいた素晴らしいものばかりであり、強く感銘を受けました。

作品の募集及び推薦に御協力いただきました地方公共団体の関係者の方々や、御応募いただいた全ての皆様に心から感謝を申し上げます。この作品集が多くの方々の心に残り、障害のある人もない人も共に生きる社会(共生社会)の実現に向け、国民の皆様の御理解と御協力につながることを祈念しております。 

平成二十九年十二月
一億総活躍担当大臣
内閣府特命担当大臣(障害者施策) 松山 政司

心の輪を広げる体験作文 審査講評

今回も充実した作品が寄せられた。通常の作文コンクールにはない切実なテーマが多かった。そのことが障害者が置かれている現状を示しているのかもしれない。本人のみならずご家族にも切迫した現実がつきつけられているのだが、それが生きることの充実感にもつながると確かな手応えをもって感じられた。

茅野葵さん『わたしの弟』は弟との日常生活を描いた作品。発達が遅れているようにも見える弟だが、聞いていることをちゃんと理解していることが、行方不明になった弟を捜しにいったスーパーで判明する。手提げの中に入っていたのが、家族が好きなものばかりだったのだ。その中に魚介のタコがあった。工作の材料としてタコ糸が必要だというお姉ちゃんの話を、しっかりと憶えていたのだ。「蛸」と「凧」という間違いが微笑ましく感動を誘う。小学二年生の書き手のピュアな感性が輝きを放っている。

髙橋茜さん『会話の先にあるもの』は、聴覚障害のある中学生が、職場体験でデイサービスの施設に赴く話。障害のためにうまく高齢者と話ができないのではという不安をかかえる中学生を、温かく迎える老婦人の対応に胸を打たれる。そこから書き手が心を開いていくところが、さらに大きな感動につながっている。

高校・一般部門の駒場恒雄さん『人生を支えた出会い』は、三十歳で筋ジストロフィーを発症した書き手の七十歳までの人生が語られる。絶望していた書き手が、新聞への投稿を機に理解者や仲間を増やし、人との出会いや交流の中で、前向きに生きていこうとする過程が具体的に描かれる。弱者として人の助けを受けるだけでなく、相談員の仕事を通じて少しでも社会に貢献しようとする姿勢がすばらしい。ほかにも胸を打つ作品が数多くあった。障害をもった人々との交流は、充実感と生きる勇気をもたらすのだと強く感じた。

審査委員長 三田 誠広

心の輪を広げる体験作文入賞作品

最優秀賞 (内閣総理大臣賞)
部門 氏名/学校名・職業等 作品名
小学生 茅野 葵 我孫子市立湖北台西小学校 2年 (千葉県) わたしの弟
中学生 髙橋 茜 筑波大学附属聴覚特別支援学校中学部 3年 (千葉県) 会話の先にあるもの
高校・一般 駒場 恒雄 無職 71歳 (岩手県) 人生を支えた出会い

優秀賞 (内閣府特命担当大臣賞)
部門 氏名/学校名・職業等 作品名
小学生 犬塚 優璃 福岡県立久留米聴覚特別支援学校 5年 (福岡県) 見守られて
永井 月雫 加古川市立浜の宮小学校 6年 (兵庫県) 白杖SOS
土居 桜河 佐世保市立宮小学校 1年 (長崎県) だいすきなおにいちゃん
中学生 山本 彩佳 桜美林中学校 2年 (横浜市) 最高の仲間と共に
深澤 菜月 高山市立朝日中学校 1年 (岐阜県) 特別な一本
古謝 心悠 沖縄尚学高等学校附属中学校 1年 (沖縄県) 妹との6年間
高校・一般 渡邉 千夏 静岡県立静岡中央高等学校 2年 (静岡市) 私らしく学びたい、私らしく生きたい。
金谷 祥枝 看護師 46歳 (広島県) 米ちゃんの糖尿病
小池 みさを 地方公務員 54歳 (千葉県) クラス会はエールの交換

佳作
部門 氏名/学校名・職業等 作品名
小学生 福永 瑠海 土佐市立波介小学校 5年 (高知県) 車いす体験
宮下 月希 長岡市立青葉台小学校 5年 (新潟県) 私にくれた心の贈り物
初田 心音 さつま町立盈進小学校 3年 (鹿児島県) るいくんのひみつ
畠山 暖生 吉野川市立鴨島小学校 4年 (徳島県) ぼくが思うこと
秋山 佳穂 美祢市立別府小学校 6年 (山口県) もう一つのバレーボールで知ったこと
中学生 及川 華那 宮城県古川黎明中学校 3年 (宮城県) 「聴く」ことの大切さ
小松崎 陽晏子 石岡市立国府中学校 1年 (茨城県) 心の瞳を感じて
橋村 まこ 益城町立木山中学校 1年 (熊本県) 姉が教えてくれたこと
田﨑 千織 加古川市立氷丘中学校 2年 (兵庫県) 発達障害の弟
山本 修輔 長岡京市立長岡中学校 1年 (京都府) ばあと僕の生活
高校・一般 蟹井 克男 就労継続支援B型事業所職員 58歳 (堺市) 俺たちの魂に障害はない
長谷川 優子 自営業(旅行業) 46歳 (静岡県) 福祉教育と街歩きツアー
渡邊 智恵 茨城県立下妻第一高等学校 2年 (茨城県) 誰もが暮らしやすい世の中へ
中森 里江 教員(伊賀市立城東中学校) 49歳 (三重県) 私の宝物
上地 正也 沖縄県立中部農林高等支援学校 3年 (沖縄県) サッカーを通して成長できた僕

障害者週間のポスター 審査講評

今年も、幅広い表現力のある作品に接し、本年度より各作品にタイトルが明記されること、応募作品の制作意図が、より明確に伝わってきました。小学生部門の最優秀賞に選ばれた太田いつきさんの作品は、車内で体験したことによって制作された、迷いのない、説得力のある、表現、画面の構成、ポスターとしての力強さ、色彩の明るさなどを加味し、今回のポスターに選ばさせていただきました。優秀賞の池上映さんの作品は、車椅子のバスケット選手との交流を表現した、ほほえましくも力強いタッチです。佳作に選ばれた作品から小菅優芽さんの作品は、明るい空に大きな虹、人物の表現を含めて、とても楽しいです。小松祐三さんの作品は、思いきった表現とシンプルな色使い、とても魅力にあふれています。岩﨑奈那子さんの作品は、教室の表現が楽しく、みんなの声が聞こえてきそう。和宇慶妃華さんの作品は、おひさま、おさかな、人物と楽しい明るさとやさしさが伝わってきます。藤森楓太さんの作品は画面いっぱいに描かれた、盲導犬と人物が力強い表現力になっています。

中学生部門の最優秀賞の三浦聖弥さんの作品は、中心のランナーと画面の上部に描かれた多くの観客との巧みなコントラストで、画面の中から声援が聞えてきそうです。中西舞耶さんの作品は、シンプルな構成ですが、人物の表現と力強い文字、とてもおしゃれなポスターに仕上っています。稲田かずはさんの作品は、的確な表現力とシンプルな色合が、効果的です。扇谷萌香さんの作品は、車椅子のマークが、効果的で巧みです。近藤薫さんの作品は、思い切ってトリミングした表現が力強い効果をあげています。上羽彩愛さんの作品は、独特のアングルが印象に残ります。西田遥香さんの作品は、のびやかな線と優しい色使いが楽しいです。

以上総評ですが、ここに掲載されなかった作品も、たくさんの素敵な作品がありました。また来年に期待をこめて。

審査委員会委員 篠崎 三朗

障害者週間のポスター入賞作品

最優秀賞 (内閣総理大臣賞)
部門 氏名/学校名 作品名
小学生 太田 いつき 犬山市立犬山西小学校2年 (愛知県) もうどうけんってすごいな
中学生 三浦 聖弥 千葉県立君津特別支援学校中学部 (千葉県) みんなでおうえん、すてきなランナ―

優秀賞 (内閣府特命担当大臣賞)
部門 氏名/学校名 作品名
小学生 池上 映 狭山市立笹井小学校5年 (埼玉県) 不自由でも大丈夫
中学生 中西 舞耶 徳島県立阿南支援学校中学部1年 (徳島県) なかよし

佳作
部門 氏名/学校名 作品名
小学生 小菅 優芽 渋川市立豊秋小学校2年 (群馬県) やさしさいっぱい お花いっぱい
小松 祐三 南島原市立有馬小学校5年 (長崎県) だいじょうぶ
岩﨑 奈那子 福岡市立筥松小学校4年 (福岡県) だれもが楽しくいられるように
和宇慶 妃華 うるま市立兼原小学校2年 (沖縄県) 走るのたのしいな
藤森 楓太 九度山町立九度山小学校4年 (和歌山県) 信頼
中学生 稲田 かずは 宜野湾市立真志喜中学校3年 (沖縄県) 力を込めて
扇谷 萌香 松山市立城西中学校1年 (愛媛県) 空けておこう 車いす駐車場
近藤 薫 輪之内町立輪之内中学校2年 (岐阜県) 僕の個性
上羽 彩愛 八尾市立亀井中学校2年 (大阪府) バスケットボールが好きな少年
西田 遥香 おばまの森 放課後等デイサービスおおぞら1年 (長崎県) だいすき

最優秀賞

≪小学生部門≫
小学生部門最優秀賞
「もうどうけんってすごいな」

愛知県 犬山市立犬山西小学校 1年
おおた いつき
太田 いつき

≪中学生部門≫
中学生部門最優秀賞
「みんなでおうえん、すてきなランナ―」

千葉県 千葉県立君津特別支援学校中学部 2年
みうら せいや
三浦 聖弥


優秀賞

≪小学生部門≫
小学生部門優秀賞
「不自由でも大丈夫」

埼玉県 狭山市立笹井小学校 5年
いけがみ あきら
池上 映

≪中学生部門≫
中学生部門優秀賞
「なかよし」

徳島県 徳島県立阿南支援学校中学部 1年
なかにし まや
中西 舞耶


佳作 ≪ 小学生部門 ≫

小学生部門佳作
「やさしさいっぱい お花いっぱい」

群馬県 渋川市立豊秋小学校 2年
こすげ ゆめ
小菅 優芽

小学生部門佳作
「だいじょうぶ」

長崎県 南島原市立有馬小学校 5年
こまつ ゆうぞう
小松 祐三

小学生部門佳作
「だれもが楽しくいられるように」

福岡県 福岡市立筥松小学校 4年
いわさき ななこ
岩﨑 奈那子


小学生部門佳作
「走るのたのしいな」

沖縄県 うるま市立兼原小学校 2年
わうけ きょうか
和宇慶 妃華

小学生部門佳作
「信頼」

和歌山県 九度山町立九度山小学校 4年
ふじもり ふうた
藤森 楓太

佳作 ≪ 中学生部門 ≫

中学生部門佳作
「力を込めて」

沖縄県 宜野湾市立真志喜中学校 3年
いなだ かずは
稲田 かずは

中学生部門佳作
「空けておこう 車いす駐車場」

愛媛県 松山市立城西中学校 1年
おおぎだに もえか
扇谷 萌香

中学生部門佳作
「僕の個性」

岐阜県 輪之内町立輪之内中学校 2年
こんどう かおる
近藤 薫


中学生部門佳作
「バスケットボールが好きな少年」

大阪府 八尾市立亀井中学校 2年
うえば さちか
上羽 彩愛

中学生部門佳作
「だいすき」

長崎県 おばまの森 放課後等デイサービスおおぞら 1年
にしだ はるか
西田 遥香