【中学生部門】 ◆佳作 小松崎 陽晏子(こまつざき ひかるこ)
心の瞳を感じて小松崎 陽晏子(石岡市立国府中学校1年 茨城県)
私の通う中学には、目の不自由な先生がいらっしゃいます。入学して、その先生と初めてお会いした時、そのようなことは全く感じさせない雰囲気でしたから、自己紹介で先生が使われている杖を見せてくださった時には、本当に驚きました。
入学して数日後、学校の廊下で、先生にあいさつをした時に、私の声を覚えてくださっていて、 「学校生活に慣れるまでは、なかなか大変だけど、ここは先生方も皆さん親切でいい学校だから安心して。私もこの学校だから、何とか皆さんに助けられて頑張れているんですよ。」 と、優しい笑顔でお話ししてくださったことがありました。私は、入学したばかりの私の声を分かってくださっていたことにとても感激しました。そして、私達と同じような速さで廊下や階段を歩いていく先生の後ろ姿を見て、私は、先生の学校生活には、多分、たくさんのご苦労がお有りなのだろうけれど、その中で多くの工夫をされて、きっと様々な実践をされているのだろうなと感じました。
ある日、先生ご自身が、「校内の多くの場所に行くには歩数が何歩かで判断し、階段は何段あるかを覚えておくことで、何とか支障なく、歩くことができる」ということを生徒の前でお話してくださいました。私はそれらを日常的に継続して学校生活を送られている先生の気力の強さに感服しました。そして先生の状況を私達に率直に伝えてくださることや、先生とのふれあいから人として深い意味で大切なことをたくさん学び取っていけると感じました。
私には幼い時からの持病があり、中学でも多くのご配慮をいただいて学校生活を送っているので、それを知っている先生は、先生ご自身も毎日大変なのに、私に対して、いつも体調を気遣う言葉をかけてくださり、励ましてくださいます。給食もクラスで一緒に食べたことがありますが、みんなに明るく話しかけてくださって、辛いものを食べた時の面白い話などもしてくださり、和やかにすごした楽しい思い出があります。先生の表情や様子は、いつも、とても自然で、背筋も真っすぐに歩かれるので、うっかりと、先生の不自由さを一瞬忘れてしまいそうになる時もあります。きっと、先生は私達の想像し得ない深い悲しみや多くの葛藤を経て、今、私達の前に存在するのだと考えると、この出会いを私はとても大切にしたいと心から思います。
毎日の学校生活で、先生は「心の瞳」で私達生徒を見つめていると感じています。先生の背景から学ぶものや、目の不自由さを抱えながらも、常に生徒に注いでくださっている先生の穏やかな優しさと明るさは、私達の心のまなざしを育ててくださっているように感じています。
これからも、先生との交流で私も心の目を深く養い、多くの学びを得たいと思います。