【小学生部門】 ◆佳作 初田 心音(はつた みおん)
るいくんのひみつ初田 心音(さつま町立盈進小学校3年 鹿児島県)
「A、B、C、D、E、F、G・・・」
「やっぱり上手だなあ。」これを歌っているのは、いとこのるいくん、四さい。四さいなのに、発音もリズム感もバッチリ。とっても上手で感心する。
「るいくんすごいね。」
と、話しかけたけど、るいくんは知らんぷり。知らんぷりはいつものこと。私もなれっこだ。でも、わたしが近くに行って手を出すと、るいくんはポンとハイタッチをして去っていった。るいくんがハイタッチしてくれると、気持ちが通じた気がして、心がおどる。だから、るいくんとのハイタッチがわたしは大すきだ。
この夏も、福岡からるいくんたちが鹿児島に帰ってきた。るいくんとこれまで遊んでいる中で不思ぎに思っていたことがあったので、お母さんに聞いてみた。るいくんは、のうにしょうがいがあって、成長がゆっくり進むらしい。だから、まだうまく話ができない。言葉を使うより体を使って、目で見てわかるようにすると、うまく関われるとお母さんが教えてくれた。
だから、この夏、わたしはるいくんと仲良くなりたくて、いっしょに遊びたい時には、るいくんの目を見て、体を動かしながら関わるようにしてみた。すると、前よりわたしの目を見てくれるようになった。わたしの気持ちが通じた気がしてうれしくなった。それでも、やっぱり知らんぷりされることが多い。一方、お母さんは、るいくんととっても仲がいい。お母さんが、
「るい、ぎゅうしよう。」
と言って手を広げると、お母さんのところに走って行って、ニコニコしながらハグするし、
「いすは、すわる。立つのはバツよ。」
と大きなバツを手で作っておこったら、すぐにすわってしまう。不思ぎに思ってお母さんに聞いてみると、
「るいと仲良くするひみつがあるのよ。」
と、とく意気な顔をして言った。「ひみつってなんだろう。」と考えていると、
「仲良くなりたいなら、るいのことをよく見てごらん。そして、るいのすきなことを見つけてごらん。」
と、かんたんには教えてくれなかった。それから、るいくんをよおく見てみた。すると、るいくんが笑顔になったり、夢中になったりしていることを見つけることができた。るいくんは、カラフルなはっきりした色がすき。色はじゅん番通りにならんでいるのがすき。アルファベットをならべて、ながめることがすき。人のほっぺたのやわらかい感しょくがすき。こう考えると、るいくんのすきなことは、私もすきなことだった。「わたしとるいくんは、にていることがいっぱいあるな。やっぱり家族なんだな。」今まで不思ぎだと思っていたるいくんが、急に近くに感じて、るいくんともっともっと仲良くなりたいと思うようになった。
るいくんを見ているうちに、るいくんには大きな大きな力があることに気づいた。
「か、し、て。」
るいくんが、手を出しておねだりすると、
「るい、すごいね。上手に言えたね。」
おじいちゃんもおばあちゃんもお父さんもお母さんもおじさんもおばさんも、家族みんなが大喜びする。みんなが笑顔になって、家の中が、たくさんの花がさいたみたいに明るくなる。はく手をする人、ハイタッチをする人、るいくんをぎゅうっとだきしめる人。喜び方は、人それぞれだけど、そのしゅん間、みんなの心が一つになる。るいくんには、みんなを幸せな気持ちにするというひみつもあった。こんな力をもっているのはるいくんだけだ。
どうやら、るいくんには、まだまだひみつがあるらしい。もっともっとるいくんのことを知って、もっともっと仲良くなりたい。次に会うのが楽しみだ。