【高校生区分】 ◆佳作 安楽 みなみ(あんらく みなみ)

障がいがある人ない人、みんながはじける笑顔を!安楽 みなみ(京都府立農芸高等学校3年 京都府)

私が高校一年生の春。白杖を使って駅のホームを歩いている一人の男性がいました。
「お手伝いさせていただいてもいいですか?」と私は言いました。初めてだったのでとても勇気がいりましたが、「お願いします。」と返事をもらえてとても嬉しく、緊張は消えていきました。「○番線の○行きの電車まで行きたいです。」と言われ、ちょっとした話をしながら案内をしました。そして「ありがとうございます。」とお互いお礼を言って別れました。初めて声をかけられて、ちょっとでも役に立てたかなと思うとなんだか気持ちが温かくなりました。

今でも困っている人を見ると声をかけられているのは、この日のことがあったからだと思います。

私の父は、放課後等デイサービスの管理者として働いています。そこには、自閉症やダウン症、ADHDなどの障がいがある子供たちが、毎日楽しく通っています。

私は、もっともっと深く障がいのある人と関わって役に立ちたい。そう思ったことをきっかけに、この父の元でアルバイトを始めました。

私は小学校のころから、いとこが自閉症であることや、学校の特別支援学級との交流を通して障がいに興味を持ちました。障がいについて様々な本を読んでみたり、インターネットが使えるようになってからは様々な体験談や考え方を調べてみたりして、さらに興味を持ちました。しかし、自分に何かできないかを考えてみたりもしましたが、実際に行動に移せたのは高校に入学してからです。

アルバイトにも少し慣れてきた日の朝。「おはようございます。」と私が職員さんや近くにいる子供たちに挨拶をしていると、奥の部屋から一人の男の子が走ってきて、私の足に抱き付きました。そして私の顔を見上げて満面の笑みで「おはよう。」と言ってくれました。そうちゃんです。

そうちゃんはダウン症で小学校二年生。単語をしゃべることはできますが、会話をするのは、まだ難しいです。初めて会った日は、少し照れた様子で私が何を話しても、目をちらっと見てはそらす。そんなことを繰り返していました。しかし、今では一緒にキャッチボールをしたり、歌を歌って踊ったり、いろいろなことを一緒にさせてくれるようになりました。会話をすることが難しくても、そうちゃんは表情や短い単語をしゃべり一生懸命教えてくれます。私は、楽しいと思ってくれている時のそうちゃんのはじける笑顔が大好きです。

ある日いつも通りそうちゃんとパズルで遊んでいると、ある男の子がいきなり私の手をつかんで、「どうしたの。どうしたの。」と声をかけてきました。私たちが遊んでいたパズルは、その子がまだ遊んでいたパズルだったようで、それを教えに来てくれたようです。だいちゃんです。

だいちゃんは自閉症がある小学校一年生。コミュニケーションをとるのが苦手ですが、英語や算数が大好きでいつも自分で計算の問題を作っては、英語で発音しながら解いています。じっとしていることも苦手なので、いつも部屋を動きまわっていますが、感情表現はとても豊かです。計算の問題が解けた時やアルファベットのパズルで単語を作れた時、はじけるような笑顔で「キャー」といった興奮の声を出しながら、トランポリンで跳び跳ねます。だいちゃんのことを知らない人からすると、びっくりしてしまうかもしれませんが、私はその姿を見ると、いつもなんだかつられて笑顔になってしまいます。だいちゃんも初めはなかなか心を開いてはくれませんでしたが、一緒に問題を解いたり、喜んでいるうちに少しずつですが心を開いてきてくれたような気がします。最近では、ふらっと私のほうに来てくれたと思うと、私の膝の上に座ります。少し時間がたてば、またふらっと離れていきます。そんな行動にいつも私は、つい笑顔になります。だいちゃんも少し離れてからこっちを見て少し笑います。

誰にでも心があります。「嬉しい、悲しい、辛い、楽しい。」と様々感じます。

公共の場で、困っている人がいても知らないふり。見ているのに見ないふり。そんな光景によく出くわします。

私は多くの人が障がいのある人のことを自分とはかけ離れたような存在として見ていて、相手にも心があることを忘れてしまっているような気がします。

一方で誰も声をかけないから、不自由にされている人のことが気になって「助けたい。」と思っても勇気を出しづらいという人も多いのではないかなと思います。そして、その雰囲気が「助けてください。」という言葉さえも言いづらい環境を作っているのだと思います。

障がいがある人、ない人そんなこと関係なく、障がいがあっても、それはその人の個性だとみんなから認められて、助け合うことが当たり前の世界になってほしいと私は願います。

みんなの初めての勇気が少しでも出しやすくするきっかけづくりのためにも、私はこれからも困っている人を見かけたら声をかけていきます。

どんな人でも生きやすく、笑顔が沢山はじける未来に向かって。