【中学生区分】 ◆佳作 伊藤 咲夢(いとう さくら)
最高のクリスマスプレゼント伊藤 咲夢(盈進中学校3年 広島県)
「私たちはハピネス・ガールズ!世界中にハピネスを届けるのよ!。」私が仲間といっしょにハピネス(幸福)を届けた場所。そこは知的障がいのある方々が暮らす大日学園。
私が所属するクラブは毎年、大日学園のクリスマス会に招待していただき、利用者さんたちといっしょに歌ったり、踊ったりして交流する。利用者さんたちも毎年、とっても楽しみにしてくださっていると聞く。
しかし、私には少し不安があった。それは、私に、障がいのある方に対して、「私とは違う人」と思う心があり、そんな風に自己中心の考えをしている私を、利用者さんたちは受け入れてくれるだろうかと思っていたからだ。
当日、緊張気味に「こんにちは」とあいさつをすると、利用者さんたちはみんな素敵な笑顔で、「こんにちは!よく来たね!」と返してくださった。私は少し緊張がほぐれ、ちょっとだけ笑顔も出るようになった。
クリスマス会のトップバッターは利用者さんたちの打楽器の演奏だった。後ろから肩を叩いてリズムを取る職員の方と、そのリズムに合わせて打楽器を演奏する利用者さんの一体感あふれる姿に、私は引き込まれ、自然と笑顔で手足を使ってリズムをとっていた。
いよいよ私たちの出番。戦隊ものの衣装を着て、元気いっぱいステージに立った。ハピネス・ガールズの役目は、会場みんなで笑顔を共有し、思いっきり盛り上がること。そのために、特にこだわったことは、どんな世代でも、どんなハンディがある人でも、いっしょに楽しんでもらえるように、満面の笑顔で、元気いっぱい、身振り手振りを大きく!愉快に!はじけることだ。
私たちのクラブには以前、聴覚に障がいのある先輩が在籍していたことから、歌に手話を乗せて歌う手話歌という文化がある。手話歌に必要な“ 道具” は、相手を思いやる心ととびっきりの笑顔だけ。今回は「虹」という歌に手話を乗せた。利用者さんもいっしょに真似て、その笑顔はキラキラと輝いていた。
「ピーヒャラ、ピーヒャラ、パッパパラパ~♪。」この曲で代々ずっと、一気に盛り上がってきた。このメロディーが流れると、会場の空気ががらりと変わる。「きたきた! この曲!まっとった!」という雰囲気を全身で感じた。利用者さんも職員さんもノリノリでステージ上に集まった。見わたすと、会場いっぱいに素敵な笑顔。その時、「私を受け入れてくださるだろうか」という不安が消えた。利用者さんとつないだその手から、上手く言葉にできないけど、なんとも言えない人のあたたかさが私の身体にじんわりと届いた。そしていつまでもその手を握っていたいと思った。今でもその手のぬくもりは忘れられない。
その後の昼食。利用者さんたちが手招きをしながら「こっちで食べよう!」と誘ってくださった。それがとっても嬉しかった。「美味しいね」を言うのに少し緊張したけれど、いっしょに食べた昼食は最高の味だった。
「また来てね。」帰り際、そう言って、女性の利用者さんが涙を流しながら手を握ってくださった。私の目に涙がたまって、「はい!必ずまた来ます!」と、ぐっとその手を握り返した。帰りたくない自分がいた。私は、利用者さんが大好きになっていた。
利用者さんの中には、言葉が出にくい方や、よだれが垂れてしまう方、突然大きな声が出てしまう方もいらっしゃる。けれど、いっしょに楽しく手話をして、歌って、踊って、食べて、同じ時間を過ごして、「彼らは、私と何も違わなかった」と実感した。そして利用者さんたちこそ、誰にでもわけへだてなく素直で、しなやかなやさしさと感受性を持っているんだと私は感じた。それは、わたしの心に存在する見返りを求める「上から目線」ではない心だ。誰とでも対等に、そして平等に心の輪でつながることの大切さ。この学びは、利用者さんがくださった特別な「クリスマスプレゼント」だったに違いない。