【高校生区分】 ◆優秀賞 金城 涼(きんじょう すず)

私の宝物金城 涼(沖縄県立美里高等学校2年 沖縄県)

母の涙を流す姿を見ました。それは小学生の家庭訪問の時、上級生にもなって泣きわめいたり、授業中歩き回る私を担任の先生は、「異常」だと思い、その行動は母親の教育に問題があると言ったのです。母は先生に涙を見せながらも何度も謝りました。私の母は十九歳で私を産み、二十一歳で二人の子を持つシングルマザーになりました。母は、私たちを養うために朝から夜遅くまで働き、私たちが悪いことをすれば厳しく叱り、良いことをすれば、これ以上ない程ほめてくれます。そんな母の教育のどこに問題があるというのでしょうか。そうです。私の“異常”には他の原因がありました。答えがでたのは数年後の中学三年の時でした。私はアスペルガー症候群という障害だと知りました。今まで何ともなかったのに、いきなり発達障害と言われてパニック状態になりました。思春期の私にとって大きな壁でした。そんな時、あの日の母を思いだしました。私の障害で涙を流し、苦しんでいる人がいることに気づいて私は変わろうと思いました。そのために、障害に一人で向き合い、数少ない友達や学校の先生には障害のことを隠しました。しかし、この決断が結果的に自分を苦しめることになりました。

それは高校二年生の春、部活動の仲間と言い合いになり良くない形で私は退部をしました。口下手な私の説明で相手に誤解をさせ、仲間や友達から信じてもらえず、結局大切な人たちを失いました。もし私が障害のない普通の女の子だったら、まだ一緒に部活動ができていたのでしょうか。こんな形で友人を失うことも無かったのではないでしょうか。それから、私の悪い噂は一瞬でクラス中に広まり、今まで楽しかった教室は居心地の悪い辛い場所に変わり、誰にも相談できず、一人悩んでいました。そんな私を救ってくれたのは二人の友達と祖母でした。一人の友達は、部活動でケンカしたことをお互い涙を浮かべながら、謝り合って仲直りすることができました。障害を知った時も、受け入れてくれて、私に「一緒に卒業しよう。」と言ってくれました。もう一人の友達は、私の障害についての辛いこと、苦しいことを聞いてくれて一緒に悩んだり、一緒に泣いてくれたり、私の心の支えとなってくれました。そして祖母は私のアスペルガー症候群の中で一番問題となっている溢れ出してしまう感受性にこう言ってくれました。「これはあなたの一番大切な宝物だ。素敵なものだ。」と。

私を受け入れてくれた三人のおかげで今、充実した日々を過ごせています。担任の先生にも話すことができ、先生のアドバイスのもとで成長に向け新たにスタートをきることができました。そして、堂々と私はアスペルガー症候群だと言えるようになったのは、自分に自信がついたことと、自分の障害を受け入れ、大切にすることができたからです。私の障害は、私自身を苦しめ、大切な人も苦しめます。そんな私の障害も私の大切な宝物で私の一部です。上手く向き合っていくためには、まずは一人で悩まないで人に相談すること。障害というものは、当事者や家族だけが向き合うのではなく、周りの人も一緒に向き合っていくことが大切です。そう教えてくれたのは、私を救ってくれたスーパーヒーローたちです。本当に私を受け入れてくれてありがとう。

そして、アスペルガー症候群と診断された方へ。これからたくさんの障害の壁にぶつかることがあります。でも、そんな時、あなた一人ではないことを忘れないで下さい。障害はあなたの一部で、あなたの短所にもなれば長所にもなります。だから、障害と一生をつき合っていくために障害を宝物として大切にして下さい。だって、アスペルガー症候群は、素敵で、大切に磨けば、あなたの一番に輝く宝物になるのですから。