【中学生区分】 ◆優秀賞 竹村 颯太(たけむら そうた)
僕の挑戦竹村 颯太(鳥取県立鳥取聾学校中学部1年 鳥取県)
去年、家族で東京旅行をした時のことだ。東京駅のホームで周りの人たちが僕の頭をじろじろ見てくる。僕は、「また、始まった。」と思った。
せっかく、ドラえもんを作った「藤子・F・不二雄ミュージアム」や「ディズニーランド」、「スカイツリー」など、めったに行けない所に行って、さっきまで本当に楽しい気持ちだったのに、東京駅に着くなり僕の楽しい気持ちは、吹っ飛んだ。
僕にとって、こんな経験は一度や二度のことではない。以前にも鳥取のスーパーで幼い子に、「この人、変なのをつけてる。」と言われたことがあった。その時も、それまでの楽しい気持ちが吹っ飛び、悲しく辛い思いをしたことを覚えている。
僕は、生まれた時から難聴で、五歳の時に人工内耳の装用手術をした。初めて見る人にとっては、頭に機器が埋め込まれているのは珍しいことなのだと思う。
しかし、僕が相手の立場だったら、そんなにじろじろ見たりしないだろう。僕は、なんて、思いやりのない人たちだと思ってきた。
今年四月、僕は鳥取聾学校中学部に入学した。去年までは地元の小学校で学んでいた。
鳥取聾学校への進学については、少し悩んだが、母が「最後は、あなたが決めたらいい。」と言ってくれたので、僕は自分の考えで鳥取聾学校中学部に決めた。
入学してみると、鳥取聾学校中学部一年の生徒は、僕を含めて四人で、僕はこの仲間と一緒に勉強することになった。四人のうち三人は小学校からの入学である。
僕は、人工内耳を装用している先輩や同級生に僕の悩みを話してみた。すると、先輩や同級生の返事は意外なものだった。ある先輩は、「じろじろ見られても僕は平気。人工内耳も含めて、僕の耳だから恥ずかしくない。」と言われた。
また、ある同級生は、「人工内耳がどのようなものか説明する。」と言った。僕は、「二人とも強いな。そして、すごいな。」と心から思った。
僕は、二人の意見を聞きながら、もし自分が健聴者であれば、初めて人工内耳を装用している人に出会ったら、どうするだろうか考えてみた。
きっと、珍しくて人工内耳を装用している人を見つめてしまうのではないかと思った。その気持ちは、決して相手をいじめるとかそんなものではなく、本当に興味関心で見つめてしまうのではないかと気づいた。
僕の同級生は、相手に応じて三つの説明の仕方をあらかじめ準備しているという。これもすごいことだと思った。
今までの僕は、周りから見られることばかりを気にして、悲観する気持ちが強かった。この学校に入学して、先輩や同級生の考えを聞いて、僕の気持ちも少し変わり、チャレンジしてみようという気持ちが涌いてきた。
世の中には、いろいろな障がいのある人がいる。僕と同じように障がいのこと、使っている機器のこと、周りの人々との関わりなどで、いろいろ悩んでいる人がおられると思う。
これから、僕は少しでも聴覚障がいのこと、聴覚障がいのある人のことを周りの人に分かってもらえるよう、できることからやってみたい。きっと、この取り組みをすることが自分に自信を与えてくれると思うから。