【中学生区分】 ◆佳作 前田 壮一朗(まえだ そういちろう)

祖父から学んだ前向きな姿前田 壮一朗(高松市立太田中学校1年 香川県)

「壮一朗、よく来たなぁ。ゆっくりしていってな。」
 祖父の家に着くと、家中に響きわたるくらい元気な声でむかえてくれる。祖父は、おもしろいじょう談で場を和ませたり、農作業に生き生きと取り組んだりと、底ぬけに明るくて元気いっぱいだ。

このように、大変パワフルな祖父だが、身体障害者手帳を持っている。高校二年生の時に交通事故にあい、右足の先を切断したからだ。現在は、義足を付けて生活をしている。義足を付けて靴をはいていると、一見、障害があるようには見えないが、体を左右にふってバランスをとりながら歩いている。日常生活には大きな支障はないと聞いているが、正座ができなかったり、靴の脱ぎはきに時間がかかったり、サンダルやスリッパがはけなかったりと少し不便な面があるそうだ。

僕は幼い頃から、足の不自由な祖父と接してきたので、祖父のことを「障害を持っている」と感じたことは一度もない。義足を付けている姿を、当たり前だと思って生活をしてきたからだ。

交通事故にあった当初は、目の前が真っ暗になり生きる意欲を失ったそうだ。そんな時、祖父の友人がそれまでと変わらない温かい笑顔で普通に接してくれたことが大きなはげみになったと教えてくれた。祖父が退院してからは、海水浴にもさそってもらったそうだ。現在は、障害がある人を街でよく見かけるが、六十年近く前に、右足を失った祖父が、海水浴に行くということは考えられないくらい勇気がいることだと思った。「本当に行っても大丈夫だろうか」「変な目で見られるかもしれないなあ」と、不安に思っていた祖父に対して、友人たちは、祖父の姿を気にすることなく、自然に受け入れ、海水浴を楽しんだことをうれしそうに語ってくれた。

このような友人たちの支えがあったので、前向きに生きようと決心したと教えてくれた。

僕は祖父と一緒に過ごす時に、気を付けていることが二点ある。一点目は、段差や階段を上り下りする時に、手助けをすることだ。片足で立つとバランスをくずしてしまうので、手を引いたり、体を支えたりしている。これは、幼い頃からの習慣だ。最近はスロープが設置されている所が増えたので、僕がサポートをする機会が減ってきた。障害がある人にとって、生活しやすい環境が整備されていることはすばらしいと思うが、僕にとっては、祖父とのコミュニケーション場面が減り少しさみしい思いもある。

二点目は、重い荷物を持つ時にできるだけ手伝うという事だ。祖父は今でも現役で農作業をしている。収穫した野菜を運ぶ時重くて大変そうであるし、転倒するといけないので、祖父の家に行った時は必ず手伝うようにしている。それ以外の場面は、祖父は何でも普通に行っているように見える。本当は生活をしていくうえで、障害がない人よりも大変な場面や工夫が必要なことがあるのかもしれないが、それらを全く見せない姿から、学ぶことがたくさんある。僕もそのような祖父に応えるように、過剰に手伝うことは控え自然に接するよう心がけている。

祖父は障害があることを、つつみかくさず話してくれる。先日は、
「最新式の義足を注文したんや。」
と、得意気に話してくれた。義足は生活に欠かせないものなので、こだわっていると教えてくれた。

祖父は二十年以上、地域のためにボランティア活動を続けている。障害を持っているけれど積極的に取り組んでいる姿は尊敬できる。義足での生活は大変そうだが、常に前向きに過ごしている祖父が大好きだ。僕も祖父を見習って、明るく、前向きに進んでいきたいと思う。