【小学生区分】 ◆佳作 伊藤 明紗(いとう めいさ)
私の勇気とおばあちゃん伊藤 明紗(今治市立立花小学校5年 愛媛県)
私のおばあちゃんは、耳が聞こえません。私は赤ちゃんの時から、おばあちゃんとずっといっしょに生活しています。おばあちゃんの耳が聞こえないことも、ジェスチャーや手話などを使って話すことも今では当たり前の生活です。しかし、この当たり前の生活になるまでには、いくつかの困なんがありました。小さい時は、自分も思うように話せないため言いたいことが伝わらずイライラしました。文字も書けないのなかなか伝わらない事もありました。話しかけようとしているけど、気づいてもらえず悲しい思いをすることもありました。運転中は、前を向いているので話すことができず困ることもありました。なかなか伝えられないことが続くと、今度はくふうをして伝えてみようと考えるようになりました。ジェスチャーをしたり、大きくゆっくり言ったり、くり返し伝えようとすると、おばあちゃんも「何を言いたいのかな」と読み取ろうとしてくれました。そのような積み重ねを続けたある日、おばあちゃんに「伝えられた」と思えるできごとがありました。おばあちゃんにすしおけを借りに行った時、お兄ちゃんが伝えられず借りることができませんでした。するとお母さんが「めいさ、もう一度おばあちゃんに言ってみて」と言われました。お兄ちゃんが伝えられなかったのに、私で伝わるんだろうか。どんなふうに言えばいいんだろう。すしおけってどういうふうにジェスチャーすればわかるかな。すしおけだからすしの手話と入れ物を表現すればいいかなといろいろ考えながらいきました。私はおもいっきり大きな口を開けて、ジェスチャーと大きな口で「す・し・お・け」と言いました。するとすぐに伝わり、すしおけをかりることができました。私が「伝えられた」このできごとは、私の大きな自信になりました。私は、もともとみんなの前で話したりすることがとても苦手です。一年生の時はみんなの前で発表できず、先生に通やくしてもらうこともありました。二年生の時は、みんなの前で発表できましたが、聞こえないくらいの小さな声でしか発表することができませんでした。しかし、このできごとをきっかけに、おばあちゃんに大きな口やジェスチャーで伝えることを毎日続け、伝える事への自信が持てるようになりました。私だってみんなに堂々と言いたいことを伝えることができるぞと自信と勇気がわき、参観日の発表も堂々と大きな声で発表できるよ うになりました。
私は、おばあちゃんとの会話がどのようにすれば伝わるか、いつも相手の立場になって考えて、話すようになりました。そして何でもおばあちゃんに伝えられるようになり、おばあちゃんからも「めいさの手話はわかりやすい」とたいこばんをおしてもらえるまでになりました。私はいくつかの困なんからくふうすることで、おばあちゃんとの会話が当たり前の生活になりました。くふうだけでなく、相手に伝えたい、相手にどうすれば伝わるかを一生けん命考え伝えることで、自分の思いを伝えられるようになるのです。コミュニケーションが苦手という人は多いと思います。私もその一人です。しょうがいがあるなしに関係なく、人との会話には、おたがいの事を知ろうとする努力がいります。そしておたがいの事を知ろうとする努力に、やさしさと思いやりを伝えたいという強い気持ちを足していかなければいけません。めんどうだなそう思う人も私だけではないと思います。でもその会話の先には、おたがいの知らない思いや知らない世界があって、私のように自分の勇気と強さになるのです。しょうがいがある人もない人も関係なく、自分の言いたいことを言うのでなく、相手の事を知ろうと相手の立場に立って考えなければなりません。そうすればみんながわかりあえる明るい社会になると思います。