【小学生区分】 ◆佳作 山口 慧士(やまぐち けいし)

ぼくの恩返し山口 慧士(日立市立豊浦小学校6年 茨城県)

「喜一翔は神だ。」いとこが言いました。喜一翔はぼくの一つ下の弟です。弟は、身体と知的に障がいがあり、重症心身障がい児と言われています。重症心身障がいとは、重度の肢体不自由と重度の知的障がいとが重複した状態を言います。それでも神だと言うのには理由があります。弟が自分で出来る事はほとんどありません。話す事もできないのですが、本を見たい時、DⅤDを見たい時は、声を出したり、表情で教えてくれます。それを見のがさない様に、弟が喜んでくれる様に、ぼくは急いで行動します。面どくさがりなぼくを一しゅんにして動かす力を持っています。

まわりを笑顔にしてくれます。弟の学校の先生、通っている肢体不自由児のし設の先生、そこに通っているお友達のお母さん達、別のし設の方々に「きいちゃん、すごいね。」と言ってもらえるのですが、言ってくれる人達全員が、いつも笑顔なのです。ぼくは、お母さんを怒らせる天才ですが、弟はみんなを笑顔にできる天才です。

弟が病気になり、障がいが残ってしまうと分かった時、お父さんとお母さんは、とても泣いたそうです。この先どうしたらいいのか、先の見えないトンネルに入ってしまったと思ったそうです。でも、その時の二人の気持ちを聞いたぼくには、あまり理解が出来ませんでした。なぜかと言うと、障がいがあっても弟は弟だからです。自分の思い通りに体を動かす事は難しいけれど、たくさんの人に優しくしてもらい、たくさん笑う様になった弟。いやな時は、大きな声で泣いていたのに、だまって目を閉じる様になり、今では、がまんする事も出来る様になって、色々と成長している弟をいつも見て知っているからです。

ある時、お母さんは言いました。
「喜一翔の障がいがなかった方が良かったけれど、あったからこそ、たくさん分かった事があるんだよ。たくさんの出会い、人の優しさ、支え合う事、助け合う事、がん張る事、時には落ち込む事があっても、何とかなる事。そして何よりも、家族の大切さを教えてくれたんだよ。」と言いました。そして、「障がいを持っている人は、人に助けてもらう事はあっても、迷わくはかけていない事を忘れないで。」とも言いました。

ぼくは大好きな弟が、教えてくれた事がたくさんあると知って、「やっぱり神だ。」と思いました。だから弟に負けない様に、むねを張って兄だと言える様に一緒にがん張っていきたいと思います。そして、弟がたくさんの人に優しくしてもらった事は、ぼくが困っている人に優しくして恩返しをしていきたいです。