【高校生区分】 ◆優秀賞 須藤 希望(すどう のぞみ)

知る。そしてつながる須藤 希望(鈴鹿高等学校2年 三重県)

私の母は、障がい福祉事業所の職員として働いています。そういう背景があり、私も小学生の頃から、母の職場の就労継続支援事業所に何度かお手伝いに行かせていただいたことがあります。

そこでは、併設されている農産物直売所や地元の道の駅などでの対面販売用の野菜や果物の袋詰めを行っていました。私も利用者さんの中に混じって、一緒に作業をさせていただきました。

とても恥ずかしいことだったのですが、それまでは障がいを持った方は「手伝ってもらわなければ何かをするのは難しい人」というイメージを持っていました。

しかし、利用者さんは慣れた手つきで黙々と作業をされていました。途中で次の作業に取り掛かる際に、勝手に自分の方法でやってしまった方がいて、職員さんに「終わったら報告してください。」と注意されていました。その方は「最初にそんなこと言われてなかった。」と言いながら、少し怒ったような態度で荒っぽく作業をしていましたが、次の作業が終わると「できました。」とちゃんと報告をしていました。

また、別の利用者さんは、手と足にハンデキャップがあり両杖をつかっている方でしたが、袋詰めした商品をその方専用の肩から掛ける袋に入れて、売り場に運んでいました。その時私は、あんなに重い荷物を運ぶ作業をなぜ体の不自由な方にさせるのか、手で持てそうな方が手伝ってあげないのか、と思い「手伝いましょうか?」と声を掛けました。するとその利用者さんは「そんなことを言ってくれて嬉しいなあ。でもこれは僕の仕事だしこの袋があるから大丈夫。」と言って自分で運んでいきました。

自分では「良い事」をしようとしたつもりだったのですが、なんだか受け入れてもらえなかったような残念さがあり、後ほどこのやり取りを母に話しました。すると母からはこんな話がありました。

「お手伝いしようとした気持ちと声を掛けたことは確かに良い事だったと思うけど、その時、その利用者さんは困っていそうだったかな?」と。

就労継続支援事業所という場所は、様々なハンデキャップを持った方が、少しでもできる事の幅を広げて仕事につなげていくための訓練の場所だそうです。そのための困りごとや障壁を取り除くことを『合理的配慮』と言い、その合理的配慮を行って作業や訓練をし易くするためのお手伝いを『支援』と言うそうです。

先の話の利用者さんも、前もって「報告してください」と伝えてあったら、報告をしていました。そして、私が手伝おうと声をかけた利用者さんは、その方が持って運びやすくする為の袋を使っていた事、それを用意したということなどが『合理的配慮』となる事を学びました。また、それぞれに困っている事やわからない事がある方が、自分から声を上げる練習をしてもらう事も、自立につながっていく支援だという事も学びました。

合理的配慮とその意味を学んで、私は最初に思っていた様な「手伝ってもらわなければ何かをするのは難しい」という考えが「配慮や手助けがあればたくさんの事が出来る」という事に変わっていきました。

ある利用者さんはとても気さくで優しい方で、緊張している私にたくさん話かけてくれました。日常生活を送っている中で、確かに不便で不自由な事が多い事、そんな中でも、私のように声をかけてもらう事は本当に嬉しく、どうしても難しいことはやはり手助けをしてもらう事によってやり易くなると話していました。

しかし反対に、困っていても明らかに避けられたり、見て見ぬふりをされる事は、それぞれの人の考え方があるのはわかっていながらも、無関心はやはり寂しくて残念な気持になるとも話していました。

私は、声をかけたことはお節介を焼いてしまったのかもと少し自信を無くしかけていましたが、その方がたくさん話を聞かせてくれたお陰で、もしも、どこかで困っている方を見かけたら、ハンデキャップがある方にも無さそうな方にも「お手伝いしましょうか?」の一声をいつでもかけられる心構えを持って準備をしていようと思いました。

新型コロナ禍のせいで、いろいろな場面での距離をとる事が求められており、人と人との触れ合う機会もうんと少なくなりました。マスクや画面を通しての交流は一見味気なくも感じますが、それも今の時代に生きている自分たちの強みとして、情報を得る事、知識を持つ事、関心を持つ事など、離れていてもできる方法で、心がつながる場面を探していこうと思いました。