【小学生区分】 ◆優秀賞 瀨﨑 優心(せざき ゆうみ)
「大好き」時々「うっとおしい」後、「ごめん」瀨﨑 優心(神戸市立御影小学校6年 神戸市)
私は、妹の事が大好きです。大好きすぎて自然学校で少しの間、妹と離れてしまっただけで、寝言で、 「ここちゃん、一緒に寝よう。」 と言ってしまうくらい「大好き」なのです。
妹は、とてもかわいくて、面白くて、いつも笑顔で、私が泣いていたら抱きしめてくれる優しさを持っています。そんな妹なので、私は妹のことが本当に「大好き」なのです。
でも、最近ふいに、妹のことを「うっとおしい」と思ってしまう時があるのです。
例えば、自分の思い通りにならない事があると、すぐキャーキャー言って周囲を困らせたりする時。私が急いでいるのに、用意がおそくて、言うことをきいてくれない時。私が友達といる時には、その友達の妹や弟達と比べておしゃべりが下手な私の妹を「はずかしい」と思う時。そして、私は、そんな妹をついつい無視してしまうのです。
そして、その後私は、いつも妹に対して、「ごめん」と思い、胸が少し苦しくなります。
私のそんな姿を見た母が、大学生の人達が書いたというレポートを見せてくれました。そこには、障害のある兄弟姉妹を持つ、私のような「きょうだい」達が抱く思いが年齢と共に変わっていく事と、周りの人々との関係について書かれていました。
今、私もいる青年期の「きょうだい」達は、障害のある兄弟姉妹を否定してしまったり、友人に対する気まずさをみんな、持っていました。そしてそれは、今の私が持つ気持ちと同じだと気づきました。母は、私の今の気持ちは、特別な悪いものではなく、「きょうだい」がみんな持つ当然の気持ちなのだと言ってくれました。
また、レポートには、学校の先生や地域の人々からの気遣いや理解が、「きょうだい」達の不安やこ独感を軽減させ、うれしく思ったと書いていました。私の場合も、小学校の先生方は、妹に対して優しく、私に対しても、妹のことを「かわいい」と言ってくださったり、優しく話し相手になってくださいます。地域の人々も、道ばたで泣いたりさけんだりする妹に庭の花をつんでくださり、妹の気分を変えてくださったり、日ごろから妹に何かと話しかけてくださります。そんな時、私もとてもうれしく思います。
これまで何年かこの「心の輪を広げる体験作文」を書いてきて、障害を持つ妹をありのまま受けとめ、応援することや、妹とは違う障害を持つ人達について考え、学んできました。そして今回は、自分自身の気持ちと向きあってみました。私が妹の事や私自身の気持ちを認められたのは、周囲の人達の気遣いや優しさがあったからだと改めて感じました。私の他にも、世界中にはたくさんの障害のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」は居るはずです。その子達もいつか私が持っていたような気持ちを感じ、苦しい時があるかもしれません。でもそれは、私達の心が成長している証拠であって、悪い事でも特別な事でもないこと、兄弟姉妹を「大好き」だと言う気持ちがあれば良いのだと、母が私に伝えてくれたように、私もみんなに伝えたいです。
参考文献
越智彩帆他4名
「重症心身障害児のきょうだいが抱く思いの変容と周囲の人々との関係性について-青年期のきょうだいに対する聞き取り調査から-」
『Journal of Inclusive Education』 VOL.3 2017