【高校生区分】 ◆佳作 加藤 紗耶音(かとう さやね)
障がいって何だろう加藤 紗耶音(北海道旭川東高等学校 1年 北海道)
「障がいって何だろう。」
小学一年の時、私がテレビの特集番組を見ていて、ふと考えた疑問だ。
当時、私の身の回りには障がいを持つ人はいなかった。いや、正確にはいたかもしれないが、少なくとも身内には誰もいなかった。そんな環境の中にいた私にとって、テレビの中にいる人が、
「現在はバリアフリー化が進んでいる場所があり…。」
「もっと障がい者への理解と配慮が…。」と言っていても、イマイチピンとはこなかった。大変そうだなと思うくらいである。
「障がい者の人を支えていくことが私たちのやるべきことの一つですね。」
コメンテーターの人が最後にそう言った。その時、私は
「病気と障がいの違いはなんだろう。」
と考えた。障がいとは病気ではないのだろうか、障がいと病気の違いは何だろうか。そもそも、
「障がいって何だろう。」
この疑問が障がいに対しての初めての関わりだった。
小学四年生のとき、転校生が三人入ってきた。学校集会で紹介されたのは確かに三人のはずだったのだが、一組しかない私の学年の中では二人しか自己紹介をしていなかった。その時は聞き間違いかと思い、あまり気にせずに帰宅した。次の日、いつも通り一番乗りで学校に着いたと思って教室に行けば隣の特別教室から声が聞こえてきた。私の母校は、一学年に二つ分の教室があり、廊下をはさまず、すぐ横にあるつくりになっている。私の学年はずっと一クラスだったため、横の教室は「特別教室」と称され、名前も知らない他学年の人が出入りをしていた。だが、この四年間、特別教室を利用している人が私より先に来ているのを見たことがなかった。その教室から声が聞こえてくるのが不思議に思った私はその教室を少し覗いて見た。教室の中は机や黒板だけでなく、トランポリンやボールさらにはぬいぐるみといったものが大量に置かれていた。入るどころか覗くのも初めてだった私はとても驚いた。そこで会話をしていたのは特別学級の先生と学級では見かけなかった転校生の女の子だった。彼女は私を見ると大きな声で
「おはようございます!」
と言ってきた。私はそんなに大声で言わなくてもいいのになと彼女と自分のズレを感じた。
彼女は決まった授業の時だけ、私たちがいる交流学級に来た。だけど彼女は発言をする時でないのに発言をしたり、立ち上がって交流をする時には教室を走り回り、それを注意しても次の日には同じことを繰り返したりと、席が近かった私は正直かなりイライラした。
その日もまた、走り回っていたため、いつもより強く注意した。彼女はびっくりしたのか、すぐに静かになった。その時、彼女の担当である先生に
「彼女は発達障がいを持っている子だから、優しくしてあげて。」
と言われた。私は初めてその子が障がい者であることを知った。と同時に、障がい者ってこういう人なんだなと勝手に思い込んだ。
次に彼女に会ったのは社会の歴史の授業だった。先生に言われたとおり優しく接しようと心がけた。私は
「わからないところはない?」
と聞いた。勝手に彼女には難しいと思っていたからである。わからない。そう返答されると思っていたが予想は百八十度違っていた。彼女は私の質問に対して
「大丈夫です。藤原道長は一〇一六年に摂政になり、その後…。」
と話し始めた。その内容は小学生の教科書には載っていないようなものばかりだった。人物名はもちろん、地名や年号まで全て暗記していることに驚きが隠せなかった。
私は初め、障がい者とは誰かの助けをかりなければならないと、勝手に自分や周囲の人と比べていた。だが、その考えはとても浅はかだと言える。確かに、誰かの手をかりなければならないのは間違っていないかもしれない。しかし、それは私たちも同じことである。と、同時に、世間では「障がい者」と彼女らのことを分類するが、私は個性の一つだと考える。私たちがそれぞれ違った趣味やら得意不得意といった個性をもつように、彼女は、人から言われたことを覚えるのが苦手で、自分の好きなことを覚えるのは得意という個性をもっているのではないだろうか。もちろん障がいをもつ人にとってそれを「個性」とされるのは嫌かもしれない。だが、私にとってはその人しかもっていない魅力であり、他人を尊重することを大切にしようとする今の私をつくってくれた人の出会いも、その「個性」をもつ彼女のおかげである。
病気とは医学的治療法で治るものをさし、障がいとは治らないものと一般的には定義されているらしい。しかし、それは障がいを「治すもの」と見たときである。私にとっては個性の一つであるため、マイナスなものとは受けとれないが、だからといって全くの配慮をしないこともひっかかる。
「障がいって何だろう。」
この小さな疑問は私を成長させてくれたものだ。自分なりの答えはだしているが、もっと考えていきたい。