【中学生区分】 ◆佳作 齋藤 香音(さいとう かのん)
目に見えないものを支えるということ齋藤 香音(二戸市立福岡中学校 3年 岩手県)
皆さんは、起立性調節障害のせいで学校に通えない人がいることを知っていますか。
そもそも起立性調節障害を知らない人もいるのではないでしょうか。起立性はODともいわれていて、小学生から高校生に多い、思春期に見られる病気です。症状は主に、朝起きれない、食欲不振、立ちくらみ、低血圧などがあり、いずれも個人差があります。
症状だけを見ると、体調不良と勘違いしてしまうかもしれませんが、中学生の十人に一人がなるとされる程、ODで苦しんでいる人は多いです。そして、私もその一人です。
私が起立性になったのは中二の六月でした。長時間立っていると手足が痺れたり、血の気が引く感覚がしたりするようになりました。初めは、貧血だと思っていましたが、次第に症状が悪化していき、病院で検査したところ「起立性調節障害(OD)」と診断されました。
当時、起立性を知らなかった私は、この病気を完全に甘くみていました。「薬を飲めば良くなる、すぐに治る」、そう思っていました。
しかし、現実は理想とかけ離れていました。まず、頭痛・倦怠感があるなかで一日がスタートします。というのも、目が覚めた瞬間から、低血圧で具合が悪いのです。「朝、起きれない」とは簡単に言えば、具合が悪すぎて「ベッドから起き上がれない」ということです。でも、学校に遅れないために、無理矢理起きなければいけません。本当は、起きれるようになるまで待つのが、治すために大切な事らしいのですが、中三の私にとってかなり難しいことです。勉強より体調を優先するべきだとわかっていますが、私にはどうしても休めない理由があります。勉強と同じくらい大事な何か。そう、学校という所に自分の居場所があることが一番の理由なのです。
転校してきてようやくクラスに馴染んできたときに起立性になり、周囲の私を見る目は変わっていないか、話しかけずらい印象を与えていないか、と不安でした。でも、クラスのみんなが以前と変わらず接してくれてとても嬉しかったです。急に授業中に具合が悪くなっても、部活に出れない日が続いても、みんなが笑顔でいつもどうり話しかけてくれました。沢山迷惑をかけているのに、心配させているのに……申し訳なくて、だけど本当に嬉しくて、有難いな、と心の底から思います。
私には、起立性調節障害も、本当の私の気持ちも、理解し受け止めてくれる友達がいます。しかし、塾やSNSを通じて、周囲に理解されず、苦しんでいる人が沢山いることを知りました。起立性調節障害は、怠けや甘えではなく、病気だということをもっと多くの人が知るべきだと思います。頭ではわかっているのに体がいうことをきかない苦しさ、急に大きな不安に襲われて誰かに抱きしめてもらいたくなる寂しさ、それらが「症状」だということを。
私は起立性調節障害になって、様々なことを経験し、学びました。起立性にならなかったら知らないままだった日常の裏側。自分の気持ちと体調がすれ違う葛藤。世界には、理解されない中で息の詰まる生活を送っている人がいるという事実。この経験を活かして将来は病気に限らず、周りにおいていかれている、と不安を抱いている人々を支える仕事に就きたいと考えています。
あなたの近くに助けを求めている人はいませんか。何気ない言動が、その人にとって、「今」を生きるための心の支えになります。
相手の、目では見えない部分を見ようとする勇気。そして、それを支えようとする優しさ。それらができた先にはきっと、今日よりもちょっとだけ、新しく素敵な世界が待っています。