【中学生区分】 ◆佳作 隅田 莉桜(すみだ りおん)
人権が守られている世の中とは隅田 莉桜(尼崎市立中央中学校 3年 兵庫県)
「人権」という言葉はよく聞くが、どういう意味かなんとなくの理解で、ちゃんと調べたことがなかったので調べてみました。すると辞書には、「人が人としてその社会の規範の中で自由に考え、自由に行動できる権利」、「すべての人が生まれながら持つ権利」と書いていました。この世に生まれた人間は、生まれた瞬間からみんな平等で、自由に考えて自由に行動できる権利があるという、それは当たり前だなぁという印象を受けました。それと同時に、こんな当たり前のことを、学校や社会で度々問題として取り上げるということは、いろんなところでこれができていないということなんだと思いました。私がふと思い出したのは、祖父のことです。
私には右半身が麻痺した祖父がいました。とても元気な祖父でしたが、ある日突然病気で、右半身が不自由になりました。杖を使って歩いていましたが、とてもゆっくりです。たまに転んでしまいます。疲れると車椅子も使いました。車椅子の移動は私もよくお手伝いしました。祖母は介護士なので、とても車椅子の操作が上手でしたが、私にはなかなか難しく、真っすぐ押すのも難しい時がありました。いつも歩いている道にも、実は傾斜があったりしたのです。普段は全く気づきませんでした。車椅子を使うようになって、段差や傾斜が気になるようになりました。
ある日、ご飯を食べにレストランに行きましたが、入り口が二階でエレベーターもなく、階段で上がるしかありませんでした。祖父は大柄だったので誰かが担ぐというのも、難しかったのです。祖父は「ここで待ってるから食べてきたらいい」と言いました。私はとても悲しくなりました。祖父は自分のせいでみんなが困っているのが耐えられなかったのでしょうが、足が不自由なだけでお店に入れないことにも、何の解決策がないことにも残念な気持ちになりました。結局他のお店に行きましたが、その日以来、食事をする時も、事前に車椅子でも入れるかを調べてから行くようになりました。行きたいお店を選ぶのではなく、行けるお店を探すようになりました。
他にも、買い物に行っても不自由を感じることがありました。エレベーターが分かりにくかったり、思ったところに行くのにも時間がかかることです。昔は元気だった祖父だからこそ「前とは生活が一変し、まだまだ障がい者には生きづらい世の中だと、気付かされた。」と言っていました。
社会保障で、ヘルパーをつけたり、施設に入所したりできますが、それが本当に「自由に考え、自由に行動できる」なのか私には分かりません。祖父は本当にそれでよかったのか、自由に行動できていたのか、レストランの件のように、どこか諦めていなかったのか聞いたところで本心を話してくれるかは分かりませんが、もっと話をすればよかったと思いました。祖父は去年の春に亡くなりました。
生まれながらに障がいを持った人も、病気や怪我で障がいを持った人も、私のような障がいがない人もみんな同じように行動できるようになるのは、障がいを治せる時代にならないと無理かもしれません。ですが、障がい者が遠慮したり、謝ったりする世の中のあり方は変えられるのではないかと思います。本人も周りも、障がいを個性として受け入れられる世の中になってほしいです。みんなが胸を張って生きていける世の中こそ、人権の守られている世の中だと思います。