【小学生区分】 ◆最優秀賞 浅沼 稟佳(あさぬま りんか)
一緒に歩いていきたい浅沼 稟佳(茨城大学教育学部附属小学校 5年 茨城県)
「稟ちゃん、障がいって何だと思う?」
盲導犬ユーザーの森畑さんとオンラインでお話したときにたずねられた質問です。
昨年、私の家でパピーウォーカーというボランティアをしました。パピーウォーカーとは、盲導犬の訓練を受ける仔犬と一年間家族の一員として一緒に生活するボランティアです。このボランティアがきっかけで、私は、盲導犬についていろいろ調べる事にしました。盲導犬の歴史や盲導犬の一生は、本やインターネットで調べましたが、私が一番印象に残っていることは、父と母に相談して、盲導犬をパートナーにしているユーザーさんへインタビューができたことでした。
森畑さんは、四国に住んでいて地域の社会福祉協議会で働いています。私はオンラインで初めて会って話をしたので、とてもきん張してしまいました。でも森畑さんが、優しく、にこにこしていろいろなことを教えてくれました。森畑さんの目は、「網膜色素変性症」という、見えるはん囲がどんどんせまくなってしまう病気で、薬や手術でも治すことができないそうです。そんな森畑さんのとなりには、真っ黒でツヤツヤしたワンちゃんがいました。宝石みたいな犬でした。パートナーの「スーさん」です。買い物に行くときやお仕事に行くとき、パートナーのスーさんと一緒に歩くのです。スーさんが右に曲がるとか、直進するなど、道を覚えているわけではなく、森畑さん自身が音やにおい、車道の様子などで、道を覚えていて、頭の中の地図にしたがって、スーさんに「コマンド」とよばれる指示を出して連れていってもらうそうです。小さな段差や路上の自転車、看板など、スーさんは、森畑さんがぶつからないようによけて歩いてくれるので、「外に出るのが楽しくなった」と話してくれました。安全に歩ける事やスムーズに公共交通機関を使えることが当たり前に感じる事が、「楽しみ」になると初めて知りました。
森畑さんが私に「パピーウォーカーをしてくれてありがとう」と言ってくれました。盲導犬は、はんしょく犬ボランティア、パピーウォーカー、訓練士、ユーザー、引退犬ボランティアなど、多くの人の心がつながっています。その輪の中に自分が関わっていることがうれしかったです。
障がいとは何か…森畑さんからの質問に、私は最初体の不自由なところを思いうかべました。でも、森畑さんにとっては、信号のない横断歩道であったり、道の段差、放置自転車、はみだした看板などであり、障がいは、社会の中にあると教えてくれました。目の見える私達は、無意識にさけて通りますが、森畑さんとスーさんが不便な道は私達にとっても不便な道に変わりありません。
「稟ちゃんが知らなかったこと、初めて知ってびっくりしたこと、たくさんの人に伝えてほしいな」
森畑さんと約束しました。森畑さんは地元の小学校だけでなく、日本全国の小学校でもオンラインで盲導犬のこと、障がいのことを伝えています。私にできることは、私自身が調べた盲導犬のことや、森畑さんに教えてもらった事を多くの人に伝える事です。森畑さんとスーさんが歩きやすい社会を私も一緒に作り、歩きたいです。