【一般区分】 ◆優秀賞 土屋 美貴(つちや みき)

障害者ってなんだろう土屋 美貴(埼玉県)

「障害者ってなんだろうね。」
ふと、友達の口から出た言葉だった。私はその言葉の意味を理解するまで、時間はかからなかった。障害者と言っても、種類や程度は十人十色であり、決してひとくくりにできないものだと思う。身体障害、知的障害、精神障害、様々な障害がある、そんなことを頭の中で考えていると、友達は続けて口を開き、
「私さ、パニック障害なんだよね。」
私は何故か、一瞬周りの音が聞こえなくなった。友達と知り合って数年経つが私は数秒前まで、友達のことは健常者だと思っていた。パニック障害とは、突然動悸に襲われたり、めまいや発汗、震えや吐き気など発作を起こし、私生活に支障が出ている状態をパニック障害という。パニック障害を詳しく理解していることもなく、返す言葉に迷っていると、
「最初は自分が変なのか、とか色々考えちゃったけど、周りに話すことで少し楽になったんだよね。」
言葉と同時に友達が笑顔になった。その瞬間と同時に私自身も笑顔になった。
言葉は凄い、何もない何も見えない暗闇から一瞬で、暖かい陽が差す場所へ導いてくれる。

ある日、電車を待っていると視覚障害者の方が白杖を動かしながらホームを歩いて来た。自分がぶつかってはいけないと身体を避けたが、そのまま他の人にぶつかってしまった。
「私が一言声をかけていれば…。」
そんなことを思いながら一週間が過ぎ、また同じ場所でこの間の視覚障害者の方が歩いてきた。今日はやけにホームが混んでいたため、気が付く人気が付く人たちは、身体を避けた。イヤホンを付けながら携帯に夢中になっている人がいた。私はとっさに声が出た。
「もしよろしければ案内しましょうか。」
視覚障害者の方の行動が止まった。その瞬間私は不安と恐怖が混ざり合わさった。そして私はとても長い時間のようにも感じた。
「ありがとう、でも大丈夫ですよ。」
その言葉で我に返り、同時に暗闇から抜け出した。私は何に迷っていたのだろう、悩んでいたのだろう。たった一言だけど、障害者の方と交わした言葉で心があたたかくなった。

障害者、世間一般的に心身に障害を抱えていて、他者からの支援を受けなければ日常生活に支障をきたすおそれのある人のこと。反対的言葉として、特定の疾患などを抱えておらず日常生活にも支障のない人のことを、健常者と呼んでいる。この二つの言葉を並べてみた時、繊細で細くとても頑丈な糸のような境が私には見えた。人間は初対面の人に対して見た目からどうしても判断しやすい。車いすに乗っている、手話で話している、片方の手や脚が無い、私が声をかけた白杖を持った人も見た目から障害者と判断した。パニック障害や、精神的疾患など見た目では判断できない障害を持った人も世界にはたくさんいる。見た目で判断する、時にいい意味で捉えることもできるが、いじめや虐待など時には悪い方向にいってしまうこともある。
「ありがとう。」
たった一言だけどお互い心がぽっとあたたかくなる言葉。障害者の方に声をかけるのは、少し勇気がいるし不安にもなる。けれど、その一歩を踏み出せればお互い住みやすく、居心地の良い世界になると思う。
「障害者ってなんだろう。」
同じ人間、言葉を交わし心の輪を広げ差別や偏見のない世の中に少しでもなっていけばいいなと私は思う。