【高校生区分】 ◆優秀賞 廣田 琉人(ひろた りゅうと)

配慮とは廣田 琉人(熊本県立松橋支援学校高等部 1年 熊本県)

僕は、「骨形成不全」という病気を持って生まれてきました。この病気は骨が折れやすい病気です。赤ちゃんの頃は骨折ばかりで、両親は抱えるのも大変だったと話していました。

そして僕には、同じ障がいを持って生まれてきた妹がいます。妹も生まれたときは骨折して生まれてきたと母から聞きました。

僕と妹は同じ障がいを持っていますが、それぞれが全く違う経験をしています。それは、周りの人たちからの言葉や態度からもたらされたものでした。

幸いなことに、僕の周りには障がいを理解してくれる友達がいました。骨が折れやすいため、普段は松葉杖や車椅子で生活しているので、休み時間に外へ行って遊ぶということができませんでしたが、いつも友達が側にいてくれて、教室でいろんなことを話しました。移動教室の時には、教科書などの重い荷物を進んで持ってくれたり、給食の食器の片付けも手伝ってくれていました。

ケガをして入院した時には、学年全員から手紙をもらい、励まされたこともあります。オンライン授業を受けた時は、休み時間のたびに友達がタブレットの周りに集まって必ず声を掛けてくれました。それがどんなに嬉しかったか。思えば僕の側には、いつも優しい友達がいてくれました。

しかし、同じ障がいを持っていても、環境が違えば、受ける言葉も態度も違います。僕の妹は僕と全く同じ障がいを持っているにもかかわらず、とても苦い経験をしていました。心ない態度や言葉を向けられた妹の話を聞いて、まだまだ障がいに対しての知識や理解がない社会なのだと実感しました。

僕も学校では楽しく過ごすことができていましたが、一歩外に出ると困ることがたくさんあります。僕を困らせるのは、一本のケーブルだったり、一見すると気づかないほどの小さな段差だったりします。

僕は今まで何度も転倒して骨折をしてしまい、病院に入院をして手術を行ってきました。骨折してしまった時は、三週間から一ヶ月半の間、入院を余儀なくされました。

つまづくだけで骨折する人はあまりいないと思いますが、僕にはその危険性があります。ケーブルや、段差につまづくこと、それは僕が学校生活をスムーズに送れないことにも直結してしまいます。

入院すると、勉強をしようと思っても、リハビリやレントゲンなどの時間と重なり、思うように自主学習を進めることができません。思わぬことが誰かの生活を阻むということは、割と多いのではないかと思います。

ケーブルや段差が僕を困らせるように、思わぬところで僕の何気ない行動や言葉が、どこかで誰かを困らせたり、傷つけているかもしれません。自分だけの立場で物事を考えず、少し違う視点で見つめてみる、そういう心がけが、思いやりや優しさを生むのではないでしょうか。

例えば、バリアフリーやユニバーサルデザインなども、誰かが誰かを想う優しさの形です。「誰でも使える、誰でも楽しめる、誰にでもわかる」そういう気持ちが形になって、どこかで誰かを助けています。特別なことは何も必要なく、世界中の人が優しい気持ちを持つだけで、世界はきっと変わっていくと思います。

僕は高校を卒業したら、すぐに社会に出て働こうと思っています。車椅子と松葉杖で生活している僕にとって、誰かの手助けは不可欠です。しかし僕は困った時に誰かに声をかけて助けてもらうことが苦手です。だからどうしても自分で解決しようとしてしまいます。手を貸してもらうことを躊躇して骨折をしてしまったら、自分が困るのはもちろんですが、職場の人にも迷惑をかけてしまうことになりかねません。「何も言わなくてもわかってくれるだろう」という気持ちを改め、人の善意に頼り過ぎず、自分から「助けてください」と声を掛けることができるようになりたいです。そして優しさをもらった分、僕も優しさを返せるようになりたいと思います。