【中学生区分】 ◆優秀賞 前田 咲幸(まえだ さゆき)

「人の役に立てたこと」前田 咲幸(三重県立かがやき特別支援学校あすなろ分校1年 三重県)

学校に行きたくない。

それが三年生の頃の私でした。そして、四年生、五年生も学校へはほとんど登校することがなく六年生になりました。

その春に、新一年生と六年生で遠足に行くことになりました。歩く時のペアになったのは、車イスに乗っている一年生の男の子でした。買い物をしていた時に車イスの男の子がいるなあと思っていたその子が、なんと同じ学校に入学してきたのです。

男の子は長い距離の場合には、車イスで移動します。そのため、お母さんが車イスを後ろから押していました。車イスの親子の後ろを歩いていると、なぜか男の子のことが気になり始めました。名前は何だろう、話してみたいなという気持ちになりました。近くに行って、驚かさないようにそっと名前をたずねると

「こうせい。」
と名前を教えてくれました。

「公園に着いたら私も一緒に遊んでいいですか。」

「いいよ。」
と言ってくれたことが嬉しくて、その時のことをよく覚えています。

でも、車イスに乗っている子と遊ぶのは初めてで、どうやって遊んだら良いのか、上手に遊べるのか心配でした。

こうせいくんは、一人で歩けないので、一緒に手をつないで歩きました。滑り台に挑戦したり、ブランコに乗ったりしました。からだを動かしにくいので、遊びやすく、楽しめる方法をいろいろと考えて試しました。遊び方が分からなかったけど、こうせいくんが楽しんでいるので、

『自分の考えた遊び方は、合っていたみたい。よし!』
と心の中でつぶやきました。初めは遊び方が分からなくて不安でしたが、少しずつ自信がもてるようになっていきました。

転んでケガをしないように気をつかいました。でも、それ以上に一緒に遊べたことやお弁当を食べたことが楽しかったです。何とも言えない嬉しい気持ちになりました。

私は、遠足で楽しい思い出ができた翌日から、次の日も、次の日も毎日一年生のこうせいくんの教室に行きました。最初の頃は、休み時間は遊んでいることが多かったです。

そして、毎日教室に行っていたので、車イスに座る時の手伝いも上手にできるようになりました。こうせいくんは、足の治療のために装具を着けています。装具は重たいので、抱っこをして車イスに乗せてあげるのは、私にとっては簡単ではないです。それでも、

「さゆきちゃん!」
と笑顔で呼んでくれるので重さも気になりませんでした。

ある日の体育で50m走をしました。こうせいくんが、50mを一生懸命走っているのを見て

「頑張れ!こうせいくん!がんばれ!」
と、思わず大きな声で応援している自分がいました。バランスを崩さないように、ゴールまでしっかり走っていました。

学校に登校できなかった私。

六年生になってからは、学校に登校できる日がとっても増えました。

『人の役に立っていること』

『人に頼りにされていること』
が、私のエネルギーになっています。こうせいくんのことを支えているつもりでしたが、反対に支えてもらっていたことに気がつきました。こうせいくんに出会えたおかげで、自分を発見することができました。

これからは、様々な人へのボランティア活動や交流をしていきたいです。