【中学生区分】 ◆優秀賞 大野 里桜(おおの りお)
一人一人が笑顔になれる社会を目指して大野 里桜(阿波市立阿波中学校 2年 徳島県)
「これじゃあ、あそこまでいけないね…」
「仕方ないね。それならここで、待っておくよ。」なんていう会話をよく妹と交わすことがあります。私と妹は双子で、現在阿波中学校の二年生です。妹は、生まれつき足が不自由で、普段は車イスに乗って生活をしています。そのため、行動範囲が制限されてしまうことがあるのです。
例えば、外出の際に階段しか設置されていなかったり、バリアフリー化されていなかったりする施設や交通機関は、妹にとってとても使いにくいのです。
学校生活でも、校舎の上下階への移動はエレベーターを使っていますが、特別教室へ入るときは、段差や階段があり、車イスを降りて自分の足で歩かなければいけません。体育館への移動は、先生に付き添ってもらって昇降機を使わなければなりません。みんなが楽しみにしている学校行事でも、同じように活動できるわけではありません。しかしながら、妹は楽しそうに生活しています。
私は小学生のころに、腕を骨折したことがありました。利き手を骨折してしまった私は、板書をノートに書き写すことや、給食の時間にお箸でご飯を食べることや、ランドセルに荷物を入れることなど、今まで当たり前に楽々とできていたことが、スムーズにできなくなりました。私はとてももどかしい気持ちになりました。そのとき、少しだけ妹の気持ちがわかったような気がしました。悪戦苦闘していた私を、周りの友達や先生が「大丈夫?手伝うよ。」と言ってサポートしてくれました。すると、私の心にあったもどかしい気持ちは、いつの間にか消え、私の心は嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
このような体験を通して、私が考えたことは、誰でもが暮らしやすい世の中にしなければいけないということです。そこで、私はどのようなことに不便を感じるのかを妹に尋ねてみました。すると、改めて気づかされる点がたくさんありました。
まずは、買い物の際に、高い位置に置いている商品に手が届かなかったり、見えにくかったりすることがあるそうです。欲しい物があっても、自分では取れないので、人に取ってもらわなければなりません。また、欲しい商品を探すのにも、人一倍時間がかかります。そのとき、学校で車イス体験をしたことを思い出しました。普段、生活しているときより目線が低くなり、同じ景色でも少し違って見えました。そして、それが車イスで生活する上での不便につながっていることに気づきました。相手の立場や視点に立って物事を考えることが、他者への理解の一歩に繋がると思います。
他にも、通路が狭かったり、少しの段差があったりすることで、行きたい店への入店をあきらめてしまうことがあるそうです。そのことで選択することもできないのです。私たちが当たり前にしている『選択』という行為。それはとても素晴らしい権利です。しかし妹にとっては、その権利にも制限がかかります。物理的な条件をクリアーしないと、だれもが持っていて当然の『選択』ができないところに、私は『不平等さ』を感じました。『不自由』はあっても、『不平等』はなくさないといけないと思いました。
しかし、辛いことばかりではないと妹は言っていました。通路に物が置かれていて、通りにくそうにしていたときに、そこに居た女の人が「大丈夫?」と声をかけて、困っていた妹に手を差しのべてくれたそうです。学校でも、当たり前のようにノートやプリントを持って行ってくれる友達や、落とした荷物を拾ってくれる友達や、そっと車いすを押してくれる友達がいるそうです。人に親切にしてもらったとき、妹は「嬉しく、温かい気持ちになった。」と笑顔で話してくれました。そのとき、小学生の時に感じた私の思いと一緒だなあと知りました。そんな妹を見て、私も嬉しくなりました。嬉しい気持ちや優しい気持ちは、周りの人にも広がっていくのだなと思いました。
今、私に出来ることは、困っている人に声をかけて手伝うことです。物理的な不便をできるだけ取り除く手伝いをすることです。「こんな世の中になって欲しい。」「このように変わって欲しい。」と願うだけでなく、自分から行動を起こしていきます。そして、助けてもらった時の笑顔が関わった人への笑顔に広がっていければ、誰もが笑顔で居られるよりよい社会になっていくと思います。私は、私や妹を笑顔にしてくれる、阿波中の仲間が大好きです。今ある大切な仲間と、さらに深く繋がって、共に成長していきたいです。今ある私の周りの一人一人が笑顔になれる社会を目指して…。