【高校生区分】 ◆佳作 井上 聖陽
誰もが偏見を持たない社会へ
井上 聖陽 (愛媛県立川之石高等学校 2年 愛媛県)
幼い頃の私は障がいがある人はかわいそうだと思っていました。目が見えない、耳が聞こえない人はかわいそう、手足が動かない人はかわいそう、というように。身体障がい者だけでなく、知的障がいや精神障がい、発達障がいがある人たちも、なんとなく上手く話ができずかわいそうだと思っていました。
中学生になってから、障がいがある人と実際に関わることがありましたが、その時も、障がいがあると大変そうで、かわいそうだから、優しくしてあげないといけないという考え方でした。私がそうだったように、障がいのある人に対してイメージは「かわいそう」や「優しくしなければ」などという考え方を持っている人もいるかもしれません。しかしその考え方は間違っていました。
私は介護福祉士の国家資格を取得するために、福祉系の高校に通っており、高校一年次の冬、初めて四日間介護実習に行きました。八幡浜市の障がい者施設に行かせていただいたのですが、この施設は、障がいがある人の就労や日常生活を支援する施設でした。実習の内容は利用者さんの活動の見守りをしながら、コミュニケーションを取るというものでした。私は、初めて知的障がいのある人と関わることになりました。
実習を行うフロアに行くと、突然大きな声を出す方や、急に走り出す方がいてどのように接したらよいのか分からず途方に暮れ、何もできずただ立って見ていることしかできませんでした。そんな時、
「ニュースや天気などの簡単なことから話をしてみるといいよ。」
と指導者の方から教えていただきました。勇気を出して、
「明日は雪が降るそうですよ。」
と話しかけてみると、利用者さんが笑顔で、
「そうですか。うちは山やけん雪が積もってしまうんですよ。」
と答えてくれました。そこから、学校での生活の事や部活動の事などを話していくと、少しずつ緊張がほぐれ、コミュニケーションが取れるようになっていきました。
また施設では毎日レクリエーションがあり、その日は利用者さんと一緒にパズルをすることにしました。パズルを前に、利用者さんが困っている様子だったので、少しだけヒントを伝えてみると、
「ああそういうことですか。」
と言いながらパズルを完成させることができました。利用者さんから「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言われると、なんだかうれしいような恥ずかしいような気持になりました。私はこの時まで知的障がいのある方は、思ったことをうまく伝えられないとか、理解をするのが難しいというイメージを持っていました。でも実際はそうではなかったのです。こちらが分かりやすく説明をするだけで、自分で楽々とパズルを完成させることも自分の気持ちを正確に伝えることもできるのだということに気が付きました。
実習開始から数日が経過し、徐々にまわりを見る余裕もできてきました。ある時、一人の利用者さんが急にどこかへ行ってしまうということがありました。しばらくすると職員さんと一緒に何もなかったかのように、ニコニコしながら戻って来られて、職員の方をとても信頼しているように見えました。この時、職員の方はただ優しくするのではなく、特別扱いせずに、安全を守るための方法を丁寧に話され、ずっと寄り添っておられました。利用者さんは職員の方のことを信頼されていると感じました。
これらの事を通じて、障がいのある人は特別でかわいそう、優しくしないといけないという考え方が間違いだと気付きました。障がいがあるという先入観で、できないことがあると考えてしまっていましたが、実際は丁寧に説明をしたり、ちょっとしたヒントを伝えたりすることで、私たちと同じように生活することができるのだと思いました。実際に実習後半になると、利用者さんから声をかけていただけるほど仲良くなり、楽しくコミュニケーションが取れるようになりました。障がいがあるとできないことがあるという決めつけをしていた自分を恥ずかしいと思いました。
この介護実習を通して、私は少し成長できたと思います。障がいのある人とない人を区別しない、障がいのある人もない人と同じように、一人ひとりに違いがあります。しかし、私がそうだったように障がい者に対して、間違った認識を持っている人もいると思います。障がいについてみんなが正しく理解し、障がいがあってもなくても、自分らしく充実した生活ができる共生社会を作っていきたいと思います。そのために今私にできることは、もっと福祉について学び、障がいについて正しい理解を深めていくことだと思います。これからは、地域の行事やボランティア活動などにも積極的に参加し、障がいがある方とコミュニケーションをとったり、一緒に作業をしたりして、関わっていけるようにしたいです。