【高校生区分】 ◆佳作 宮沢 柚妃
優先席ってだれのもの?
宮沢 柚妃 (山梨英和高等学校 2年 山梨県)
「心の輪」
その言葉は、人と人の心を繋いでいることを意味する言葉。私たちが生きている今の時代は、インターネットが発達したことの弊害として、心ない言葉が日常的にSNS上で飛び交っている。また、インターネットが発達する以前も口頭で罵詈雑言を浴びせられた人もいるのではないだろうか。
「何故、そのようなことを言っている人がいるのだろうか。」
と、日々このようなことを思いながら私は過ごしている。
ある日、学校帰りに持病の影響で体調が悪く、優先席に座っていると、攻撃的な視線で見てくる大人がいた。いや、ひとりだけではない。同じ車両の中にいるほとんどの人が私を見ている。私が乗車した電車は多くの人が乗車していて、席が空いていなかった。しかし、体調の悪かった私はどこでもいいから席に座りたいという気持ちで、空いていた優先席に座った。優先席付近に立っていた私と同じ高校生たちが私を見ながらコソコソと何かを話していた。
「なんで高校生が座ってんの。」
「優先席は普通の席ではないのにね。」
「私たちも座りたいな。」
私は、話している内容が聞こえてしまい、悲しい気持ちになった。席から離れ、二駅先が最寄りだからというマインドで手すりをつかんでそのような出来事をやりすごしたことがあった。私も高校生たちの意見を理解していたからこそ、優先席から離れるという行動を起こしたのではないかと今でも思う。
「優先席」は一般的に交通弱者と呼ばれる高齢者や障害者、傷病者、妊婦、ベビーカーを含む乳幼児連れの人などを対象とした福祉的目的で設置された席である。見た目は健康そうに見えても、内臓に病気を持っていたり、精神的な病気を持っていたりする人もいる。私も前者の中の人だ。私は指定難病にも登録されている混合性結合組織病を患っている。見た目は、健康体そのものだが、内面の病気なので理解されないことが多い。だからこそ、見た目だけで判断しないで欲しいと思う。
最後に、東京に遊びに行ったとき、電車内で席を譲っていた光景を目の当たりにした。席を譲ってもらっていた人は見た目は若いが、杖をついて歩いていた。その場に居合わせた女性たちは、
「席どうぞ」
と声をかけていた。杖をついていた女性は、
「次の駅で降りので大丈夫ですよ。
声をかけてくれてありがとうございます。」
と言っていたが、女性たちは無言で席を立ち、ジェスチャーで「どうぞ」と合図をしていた。この出来事に関わった人々は女性が降りるまで終始笑顔だった。お互いに気持ちの良い関係を築けるのはいいなと隣で見ていて感じた。何度もこのような場面に遭遇した私は、「心の輪」を広げられるような人になりたいと思った。気持ちの良い行動や見た目で判断しないこと、誰かが聞いて不快になるような言葉を言わない場所、世界になって欲しいと私は願う。