【中学生区分】 ◆佳作 川谷 麻絢(かわたに まあや)

障がいを持っていない私が思うこと
川谷 麻絢 (山口大学教育学部附属山口中学校 3年 山口県)

「うるさい!変な足してるくせに!」これは私が四歳の頃、兄と喧嘩した際に言ってしまった言葉。その時初めて普段あまり怒ることのないお父さんから厳しく叱られたことを今でもよく覚えている。

私の兄は、先天性四肢障害を持っていて、生まれつき左足の指は無く、とても小さな足である。そのため、普段は義足をつけて生活をしている。義足は靴のように履くタイプで、その上から靴下を履いていれば、見た目で義足だと気付かれることはほとんどない。だからこそ、足の障がいはなかなか理解され難い。例えば、体育の授業。足が不自由なため、やはり運動においては兄は他の生徒より苦手であった。しかし、兄は足の障がいを理由にせずにどんな競技でも授業に参加していた。持久走体会の日、帰ってきた兄の左足の裏には、五百円玉よりも大きいマメができていた。しかし、体育の先生から良い評価を貰うことはなく、もっとがんばれと言われていた。技能面では劣ることはあっても、努力していることを少しでも認めてはもらえないのか、と思った。また、兄が小学生の頃、修学旅行で足を初めてクラスメイトに見られた時、笑いながら「気持ち悪い」と心無い言葉をかけられたことがあったそうだ。その時は、冗談として流したそうだが、実際兄は不快な思いをしたに違いない。しかし、そんな言葉を放ったクラスメイトは何とも思っていないのだろう。それがあってか、兄は自分の足を見せるのは心を開いた友達の前だけで、義足を外すのを嫌がるようになった。

兄は自分の足の障がいについて自分から話すことはない。だから私は気にもしていないのかなと思っていた。だけど母から聞いた。
「お兄ちゃんはね、小さい頃、周りより小さな自分の足を気にして、毎日おまじないをかけていたの。『大きくなれ、大きくなれ、』って。」これを聞いて私は驚いた。今、兄はどう思っているのかは分からない。だけど少なからず今まで苦労してきたことはあるのだろうと思った。

人間が一人ひとり違うように、障がいにも様々なものがある。同じ障がいでも、症状に個人差がある。現在日本の人口の約八パーセントの人は障がいを抱えているそうだ。障がいは決して他人事ではなく、身近にあるものなのだと思う。近年SNSの普及やテレビ番組での障がいについての放送で、障がいについて知る機会もあり、差別的な態度をとる人も少ないと思う。しかし、障がいについて、本当に皆が理解できていると言えるだろうか。軽い障がいであっても、人の助けが必要な場合もある。また、重い障がいであっても、自分で出来るものややらなければいけないものもある。人の助けがいる場合はそれぞれなのだ。それは障がいを持っていない人も同じだと思う。私は、障がいに対する理解を全員が深め、健常者と障がい者の壁を少しでもなくしていきたい。その為にも今一度障がいについて各々が考えるべきだと思う。「障がいは個性」と言われることがあるが、私はそれに違和感を覚える。個性だと唱えるのは健常者の方が多い。障がいによる苦労や生きづらさを「個性」というプラスな表現で美化して片付けるべきではないと思うのだ。障がいを個性だと言う人の見解もよく分かるし、それが間違った考えだとも思わない。だからこれは私個人の考えである。一人一人障がいに対する考え方は違うと思う。そのため、自分が考えたその考えを、想いを大切にしてほしい。障がいを持っている人も持っていない人も全員が過ごしやすい世界になるように。