【小学生区分】 ◆佳作 鐘築 千花(かねちく ちか)

カナダのバリアフリーを発見
鐘築 千花 (茨城大学教育学部附属小学校 6年 茨城県)

私は今年の6月までカナダのモントリオールに2年間留学していました。ここの小学校の生活で、さまざまなバリアフリーに接しました。

私の心にもっとも強く印象深いバリアフリーは、先生も生徒もお互いに助け合うという姿勢を持ち合っていることでした。

たとえば次のようなことがありました。転校当初、私は英語で話すことも読むこともほとんどできませんでした。それで私の担任の先生がタブレットを貸してくれて、私に簡単な英会話を身につけるよう教えてくれ、相手の言うことや自分の考えを伝えることが、だんだんとできるようになりました。同級生のSさんと英語で話せるようになって、いつしか彼女は私の親友となりました。また隣の席のFさんは私に正しい英語の表現や発音を教えてくれました。

また、学校へ行くバスの中へ、車いすやベビーカーを使った人が乗りこんでくる様子を見て、日本とは違うなと思いました。カナダでは車いすやベビーカーを使っている人はバスの前のドアから乗り込んできます。なぜならバスの中には車いすやベビーカーを置けるスペースがある為です。その上カナダでは車イスの移動や設置を手伝ってくれる人がいて、その親切心にはやさしさを感じます。一方、日本では車イスの人は自分でいろいろなことをしなくてはならなくて、バスの座席をたたんだり、置き場所へ設置するなどは他人にたのめないのが現実です。

私がカナダに来て2年目の6年生になった時のことです。Eさんという女の子が4年生のクラスに転校してきました。日本だったら目が不自由な人は盲学校へ行き、耳の不自由な人はろう学校へ行くはずです。つまり、障害のある人は健常者の通う学校へは入学できないはずです。しかし、私の通っていたカナダの学校では障害のある生徒でも受け入れて普通の人と同じ環境で学習が可能なのでした。 このことは私には驚きであり、新鮮な体験と感じられました。

転校してきたEさんという女の子は、片方の目が不自由で、耳にも障害がある子で、手話もほとんどできない子でした。クラスの他の生徒と生活を共にする中で、Eさんは人の頭の毛をひっぱったり、私の友人を壁に押しつけたりといろいろなトラブルをひき起こしていました。こんな状態の中で、S先生は、彼女に手話を教えたり、やっていい事とやってはいけない事の区別をしんぼう強く教え導いていました。同時に他の生徒達もS先生から手話のやり方を教えてもらいEさんとの意志のそ通を計ろうと考えていました。けっこうクラスの生徒も手話をいろいろと覚えて使えるようになりました。このようにして、Eさんが皆がいやがる事をした場合でも、お互いに手話を通して意志の確認を行なって事態の解決へとつながっていったのでした。ここに、お互いに助け合う気持ちの大切さを実感できたのでした。

このようにバリアフリーの大切さを私はカナダに来て理解できるようになりました。このバリアフリーは、階段や廊下やトイレなどの設備に関するものだけではなくて、人の心の中のバリアを取り除くもので、障害者と健常者がお互いに手話などを通してしっかりとコミュニケーションを取ることの大切さを共有するという意味でのバリアフリーなのだと私は強く感じ取りました。

これらの経験から私は思いました。バリアフリーを現実の設備や道具だけでなく人間の心にまで及ぼして、私が大人になったら身体に不自由さをもつ人々に寄りそい、お互いに助け合う社会を実現してゆきたいものだと強く願っています。