【一般区分】 ◆優秀賞 吉冨 一博
人生の宝箱
吉冨 一博 (大阪府)
今この文章は、ベッドの上で書いている。
うつ伏せの状態で、自由の利く左手の中指で、パソコンを使って書いている。
なぜなら僕は身体に障がいがあるために全てにおいて介助が必要だからである。
言語障がいもあり、僕の言葉を聞き取ってもらえないこともよくある。
ある日、ヘルパーさんと近くの公園に行ったところ、知人からカフェを営んでいる人を紹介してもらった。
店に行ってみると音楽や笑顔で溢れていた。何度か行くうちに、色んなことを相談できる仲になり友達になった。また一緒に楽器で演奏ができるようになった。出会って良かったと思う。友情の宝物をゲット!
ある日、ヘルパーさんと商店街に行ったら「歌声喫茶」と書いていたので入ってみた。
ギターを弾いている人たちが歌謡曲などを歌っていた。ほかのお客さんたちも、演奏に合わせて合唱していたので、楽しそうと思った。懐かしのテレビ番組とかで観たことはあったけど、まさか僕の人生で行くことになると思っていなかっただけに新鮮だ。
僕が好きな歌手の曲をリクエストすると歌ってくれて、一緒に歌っている。歌声喫茶に行くことが、月一回の楽しみになった。
その人たちと出会って友達になれたことが、嬉しい。合唱の楽しさに、唱の宝物をゲット!
ある日、ヘルパーさんと近くの病院へ検査しに行くと、病気が見つかって、総合病院に行くことになった。初めて会う先生にドキドキしていた。「どんな先生かな?」と不安だった。
呼ばれて診察室に入ったら、優しそうな印象で安心した。
手術をすることになった。入院することも初めてだったが、ヘルパーさんが付き添ってくれたり、周りの人に助けてもらって。不安が和らいだ。
健康の有り難さに出会えたことは、命の宝物ゲット!
ある日、ヘルパーさんと商店街の祭りに行ったとき、段差が多い場所で、助けてもらわないと行けないところがある。
ヘルパーさんと困っていると、知らない人が、「抱えましょうか」と、声をかけてくれて周りを見渡して、道行く人に声をかけてくれた。
集まってくれた人たちと車椅子を抱えて段差を上げてくれた。とても温かい気持ちになった。親切な気持ちのゲット!
ある日、ヘルパーさんと、アイスクリーム屋さんに行くと、入ろうと思ったら、ヘルパーさんがドアを開けようとしたが、ドアのところで僕が待っていたところ、中で椅子に座って美味しそうに食べている女子高生ぐらいの人が、ドアのところに飛んで来てくれて、ごく自然にドアを開けてサッと戻っていった。
気遣いに、温まることだった。自然な心遣いの宝をゲット。
ある日、障がいがあっても海や自然を楽しむことを、たくさんの方々に体験して欲しいという想いのある、スキューバダイビングのインストラクターを、知人から紹介してもらった。
僕もスキューバダイビングに興味があって、してみたいと思っていたので、期待が高まった。
プールに行って泳ぐ練習をしたり、潜る練習をして、沖縄にスキューバダイビングをしに行った。海の中は不思議な感覚で、魚になった気分だった。海の宝物をゲット!
ある日、朝早くに友達からメールが来た。何故か気になって開いてみた。すると、僕のために色んなことを教えてくれた人の悲報だった。
その人も重度の障がいがあるが、行動的な人だった。引っ越しされてからは、あまり会わなくなっていたが、元気なことは風の便りで聞いていた。二年程前から連絡など少なくなり、あまり調子が良くないのは聞いていたが、まさかの知らせにショックであった。生きている大切さをゲット!
今ではヘルパーさんに助けてもらうことが日常になっていて感謝している。ヘルパーさんと色んなところに出かけたりするとハプニングや困ったことなど、沢山あるが、一緒に笑ったり一緒に泣いたり、驚きや再発見できたり、色んな経験をしている。
また、障がいの有無に関わらず、色んな人たちと出会って仲良くなることが、ある。
沢山の人に出会ったり、また時には悲しい別れがあったり色んな経験をしてきた。様々な生き甲斐を探求して行き、周りの人と一緒に人生を楽しみながら、宝箱に沢山ゲットしたものを詰め込んで、歩んで行くと思う。この宝物はお金では買えない…、温かい宝物だ。
大切に持って生きたい。