【中学生区分】 ◆優秀賞 小島 さら(こじま さら)

優しさの連鎖
小島 さら (坂戸市立若宮中学校 1年 埼玉県)

私には姉がいます。姉は重度の知的障害と発達障害がある障害児です。私が幼稚園の頃母に「障害があってもなくても同じ人間。私は○○が姉でよかった。」と伝えたそうです。その時なぜその言葉が自分からでたのか覚えていません。今は部屋を散らかしても片付けられない、おむつも交換してあげなくてはいけない姉を大変だなと思うことも正直あります。人懐っこい姉はどこにいっても知らない人に近づいていっては人には伝わらない言葉で話しかけてしまいます。その様子をみて周りの人はどう思うか心配でした。でも、姉が話しかけたりハグをすると一瞬戸惑う人もいますが笑顔で返してくれる人がいっぱいでした。姉は人と笑顔にする力があるんだなと思いました。

私が体験したエピソードを紹介させてください。もう今から九年も前の話です。母の実家のある静岡から東名自動車道を使って埼玉まで帰えろうとしたその日は、途中から雪が降り始め御殿場を過ぎる辺りになると雪が激しくなり視界も悪くなってきました。雪用のタイヤを装着していなかった私達の車は、鮎沢パーキングエリアまでたどりつくのがやっとでそのまま立ち往生してしまいました。パーキングのレストランで母と姉と三人で食事をとりにいきました。車の中でねるのはかわいそうだと思った母は、レストランのすみっこでやすませてもらえないかと店長さんに相談しに行きました。そんな相談をしている間に姉は席から離れ、近くで食事をしていた作業服のおじさん達に声をかけてしまったのです。姉は意見のある言葉をあまりしゃべることができないのでただニコニコしているだけでした。そのおじさん達は除雪作業員の方たちでこれから駐車場の除雪の仕事があるのだと言って作業に戻っていきました。夜も8時過ぎ、雪はまだ降り続いていました。そろそろ寝る準備をしようとしてるとトイレの清掃のおばさんが声をかけてきました。「こんな所じゃ寝られないよ。おばさんたちの休憩所があるからそこへおいで。あんた達が寝る場所に困っているのを心配してレストランのお兄さんがおばさんに相談してくれたんだよ。」と。パーキングエリアは室内とはいえ人の出入りもあり寒い。私たちを連れて母の困った様子を気にかけてくれたのです。私達は清掃のおばさんの小さな休憩室の温かいこたつに入り一晩を過ごすことができたのです。初めての場所でなかなか眠れない姉をおばさんは優しくトントンし寝かしてくれました。やさしさの連鎖は次の日も続きました。一晩中除雪作業をしていたおじさんが私たちの車の屋根やガラスに積もった雪まできれいにおろしてくれて、途中でガソリンがなくなったら心配だからと除雪車に使うガソリンを少し分けてくれたという話も母から聞きました。使かわなくなったタイヤのチェーンまでもゆずってくれたそうです。母は何度も深く頭を下げてお礼を言っていました。私と姉はおじさんに抱きつきました。仕事を終えて帰えろうとしていたおじさんに「まだ帰っちゃいやだ。」とわがままを言っていたそうです。おじさんの両肩に私と姉を抱きかかえて撮ってもらった写真は今も母の携帯に残っています。その様子を見たおばさんが「あんた達は運がいいよ。こうやって助けてもらえたことはありがたい事だね。今日の事に感謝して自分もいろんな人を助けてあげるんだよ。人は助け合って生きていくんだよ。」と教えてくれました。実はこの後もたくさんの方に助けていただき無事に家に帰ることができたのです。

姉の行動がキッカケに心がつながり、やさしさの連鎖になりました。姉はこれからも笑顔で多くの人を幸せにしてくれるんだろうなと思いました。姉の笑顔は人をやさしい気持ちにさせてくれる。私は○○が姉で本当に良かったと思うしとても幸せです。姉にやさしくし、助けてくれる方たちに心から感謝したいと思います。そして私も感謝を忘れず、困っている人を助けてあげられるやさしさと、声をかける勇気を持ちたいと思います。いつか自分の好きなこと得意なことを見つけ人を、幸せにできる人になりたいと思いました。