【一般区分】 ◆佳作 園田 仁志(そのだ ひとし)

障がいとともに歩む −障がいが教えてくれたこと−
園田 仁志 (京都府)

私は高校で情報(コンピューター)を専攻し、卒業後に企業へ就職しました。日々の仕事にはやりがいがあり、新しいことを学ぶ喜びに満ちていました。しかし、ある時から心の疲れが次第に重くなり、やがてうつ病と診断されました。病気と向き合う中で、最終的には退職を選ばざるを得ませんでした。障がいがあることで見えてきた新しい世界での交流は、私にとって大きな意味と価値を持つものでした。
 うつ病と診断された当初、私は心の中で孤立していると感じました。周囲の人々が心配して声をかけてくれる一方で、自分自身がその声に応える余裕がなく、ますます孤独感が深まっていきました。退職して自宅で療養する日々が続く中、心の中に広がる孤独感は一層強くなりました。
 そんな時、家族が提案してくれたことがありました。それは、近くのショッピングモールでウィンドウショッピングを楽しむことでした。私は以前からこの場所に親しんでおり、特に季節の変化を感じられるディスプレイを眺めることが好きでした。ショッピングモールを訪れると気分が落ち着くことを知っていた私は、しばしばここを訪れるようになりました。大きな窓から外を眺めると、忙しそうに行き交う人々の姿が見え、かつての私もその一部であったことを感じました。
 YouTubeで偶然見つけた保護猫の動画が、少しずつ私の心を癒してくれる存在になりました。また、オンラインでの他者とのつながりも、私にとって大きな支えとなりました。動画では、瘦せ細った猫が救出され、新しい生活を始める姿が映し出されていました。最初は怯えていた猫が、少しずつ安心し、飼い主の手に触れ、信頼を築いていく様子は、心が温かくなりました。猫たちが新しい環境に順応し、遊んだり、甘えたりする姿は、心の奥底にあった孤独感を和らげてくれました。
 保護猫たちの動画を見ていると、彼らが新しい家族と出会い、愛されることで再生していく過程が私に勇気を与えてくれました。何度も傷ついても、新しいチャンスと温かい手があれば再び立ち上がることができるというメッセージが、静かに心に響きました。猫たちの健気な姿を見て、私もまた、自分自身を大切にし、少しずつでも前を向いて歩いていこうと思えるようになりました。保護猫たちの姿が教えてくれたこと、それは「どんなに暗い場所にいても、必ず光は見つかる」ということでした。彼らの生きる力に触れることで、私もまた、心の再生を果たすことができたのです。これからも、保護猫たちのように一歩ずつ前進し、希望を胸に生きていこうと思います。
 うつ病は決して簡単に克服できるものではありません。しかし、ウィンドウショッピングや保護猫の動画を通じて、私は自分の中にある再生の力を信じることができるようになりました。日々の小さな変化に気づき、自分の心が少しずつ癒されていく過程を楽しむことができるようになったのです。
 思い返してみると、障がいがなかった時の自分は、人に対して優しくしようと努力していましたが、表面的な優しさであったことに気づかされました。忙しさや自分自身の評価ばかりに気を取られ、本当の意味で他人の痛みに寄り添うことができていなかったのです。その当時、他人の苦しみを理解することは難しく、優しさも自己満足に過ぎなかったかもしれません。
 障がいを持つ人と持たない人の心の交流は、互いに理解し合い、支え合うことで成り立っています。障がいを持つことで見える世界は、決して暗いものばかりではなく、そこには新しい発見と豊かな人間関係が広がっています。心の壁を乗り越え、互いに手を取り合うことで、より深い絆と理解が生まれるのです。私の経験を通じて、障がいがあるからこそ見える温かい交流の形を伝えたいと思います。誰もがそれぞれの困難を抱えていますが、心を開いて交流することで、私たちはより強く、より豊かに生きることができるのです。
 障がいを持つことで新たに得た視点と人々との交流は、私の人生を豊かにしてくれました。これからも、心の架け橋を築きながら、多くの人々と共に歩んでいきたいと思います。そして、この経験を通じて得た希望と勇気を、他の人々にも伝えていきたいと思います。どんなに困難な状況にあっても、私たちは光を見つけ出し、再生の力を持って前進することができるのです。