【高校生区分】 ◆佳作 萱原 佳音
助け合いのしるし
萱原 佳音 (関西創価高等学校 1年 三重県)
先日、友達とご飯を食べに行った際、私達と同じタイミングで席に案内されたご夫婦がいた。そのご夫婦は出入り口から遠い席に案内されたらしく、出入り口の近くの席に案内された私達はそのご夫婦に席を替わってほしいと頼まれた。と、ここまでの話だけを聞くと、ただ出入り口に近い席が好きで席を譲ってほしい、わがままな夫婦の話に思えるかもしれない。
皆さんは、「ヘルプマーク」を知っているだろうか。ヘルプマークとは、義足や人工関節を使用している人、内部障がいや難病の人、または妊娠初期の女性など、援助や配慮を必要としていることが外見では分からない人々が周りに配慮が必要なことを知らせることで援助を得やすくなるよう、作成されたピクトグラムのことだ。
最初の話には続きがある。実は、そのご夫婦の奥さんのカバンにヘルプマークがついていたのだ。私達は偶然にも、ヘルプマークについて知っていたので事態を理解し席を譲ることができた。するとご夫婦に「すごく助かりました。ありがとう。」と感謝され、すごく良いことをしたような気がして嬉しくなった。
実は、私の母もヘルプマークを使用している。母は関節リウマチで、外見ではわからないが生物学的製剤という特殊な薬を投薬している。炎症による痛みで日頃から重いものや、手足をどこかにぶつけてしまうだけで更に炎症が悪化し、ひどいときは数日動けなくなることもある。買い物などに行った際、重い荷物を持ったり、すれ違いざまに人や物に当たることを恐れ外出することが億劫になってしまうらしい。母のように、見た目は健康そうに見える人が、実際には深刻な障がいや疾患を抱えており公共の場で周りの配慮を必要としている、そんな人がヘルプマークを使用しているのだ。しかし、令和五年度の調査で四七七人にヘルプマークを知っているか聞いたところ、意味も含めて知っているという人は六六・五パーセントとなり、かなり少ない。ヘルプマークがまだ広く知られていないことは、日本社会において大きな課題の一つだと思う。ヘルプマークを使用する人々が公共の場で配慮を必要とする状況において、周囲の人々がヘルプマークの意味を理解していなければ、ヘルプマークの意味が無くなりヘルプマークを使用する人々が安心して生活することができなくなる。みんなが安心して暮らすためには、ヘルプマークの意味や重要性を広めることが大切だと思う。
私達にできること、それは互いに支え合い、理解し合うこと。もちろん、ヘルプマークの意味や重要性について広めるには職場や学校での教育、メディアやインターネットなども必要になってくる。でも、まずは自分が学び、理解することが大切だ。そんな小さな思いやりが、世界中の心の輪を繋いでいくのだと思う。