【高校生区分】 ◆佳作 西川 和奏
知ることの大切さ
西川 和奏 (富山県立南砺福野高等学校 1年 富山県)
私が中学三年生のとき、祖父が大腸がんを患った。祖父は大腸がんのステージ3になり、手術でストーマをつけることになった。ストーマとは、人工肛門のことで、腹部に手術によって作られた、便や尿を排出するための出口のことを言う。そして、祖父はいわゆる「オストメイト」になった。
手術を終えた祖父は、今までとはまるで別人のようになった。今までは、田んぼの様子を見に行ったり、地区の行事に積極的に参加したりして、外にいるイメージが大きい祖父だったが、今では部屋にこもりがちになった。外や人がたくさんいるところに行くと、パウチという便や尿をためるところが、心配になるからだと言っていた。また、おなかに力をかけることが怖くなり、昔から続けていた農業を辞めた。そうして、祖父だけでなく私たちの生活も180度変わった。私たちは、祖父に合うような、おなかに優しいご飯を作ったり、オストメイトに対応できるようなトイレを作ったりして、祖父が生活しやすい環境を整えた。だが、私は祖父の病気についてよく分からず、明るく元気だった祖父が徐々に元気がなくなるところ見ることしかできなかった。私は、今までとは違う祖父を見て、祖父との関わり方が分からなくなった。
そんな時、私は授業で認知症との関わり合い方について習った。その授業では、まず会話をすることが大切だと教わった。祖父が、大腸がんだけでなく認知症も患うことがないように、私は祖父と話すことを心がけて生活した。何気ない会話だが、祖父が笑ってくれる。それが、私にとってはとても嬉しかった。
私は、障がいをもっている方が普段どのように過ごしているのかが気になり、障がいについて知ろうと思った。そのために、私は出かける時は障がい者のピクトグラムを見つけることを意識した。祖父が一番困っている排泄の問題を少しでも理解できればいいなと思ったからだ。今までは意識して見ることがなかったけれど、探すといろいろなマークがあることを知った。盲人のためのマークや車いすのマーク、赤ちゃん用のマークなど一目で分かりやすいマークが多かった。特に、オストメイト用のマークはとても分かりやすくて、見やすかった。だが、オストメイトの方でも使えるようなトイレは、大きなショッピングセンターや病院などにしかなく、あまりオストメイト用のトイレがないことに気づいた。私は、祖父が外に出かけたがらない気持ちが分かった気がした。私たちは、どこでもトイレが使えるけれど、オストメイトの方はとても不便に感じていると思った。これは、オストメイトだけでなく、どの障がいの方も生活しづらい環境だと感じた。
また、一月の能登半島地震のような大きな災害では、障がいがない人でも過ごすことが大変な環境の時に、障がいをもっている人はとても大変だろうと感じた。私はこの地震を通して、あらかじめ「福祉避難所」を知っておく重要性を感じた。福祉避難所とは、特別な配慮が必要な方を受け入れるための環境が整った避難所のことだ。障がい者が不便なく避難所で生活できるような場所があることは、私たち家族にとっても心の拠り所になると思った。
私は祖父が障がい者になるまで障がいについてあまりよく分からなかった。きっと、オストメイトの存在や福祉避難所についても知る機会がなかったと思う。だが、周りの人が障がいをもつ前に、障がいについて知っておくべきだと感じた。知っておくことで、身の周りに障がいをもっている方がいても、困らずに会話ができたり、その人に合うサポートをしたりできると思うからだ。また、私は祖父が大腸がんと診断される前から、体調を悪そうにしているところをよく見ることがあった。その度に病院に行こうと言っても祖父は病院に行かなかった。あの時、もっと早くに祖父を説得して「病院に行っていたら」と後悔するときもあった。これから先、そんなことが起こらないように、私はもっと病気や障がいの知識をつけたい。私は、障がいをもっている方が暮らしにくい環境ではなく、暮らしやすい環境に変えるべきだと思う。そのためには、周りにいる私たちが障がいについてよく知っておくことが大切だと思う。障がいをもっていても気軽に外に出かけられるような社会になってほしい。