【中学生区分】 ◆佳作 原村 茉華
手紙
原村 茉華 (宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校附属中学校 3年 宮城県)
「まなちゃんへ。」
ピンク色の封筒にキラキラのシールが貼られ、絵がたくさん書かれた一通の手紙。その手紙を受け取った私は、後悔と嬉しさで心がいっぱいになりました。
私の母は美容師をしています。母のお店には毎日たくさんのお客さんが訪れます。にぎやかな近所のおばちゃん、いつもきてくれる若いお姉さん、小さな子どもたち……。私も五歳くらいからお店でお客さんたちと楽しく話してきました。その中に一人、特に仲良くなったお姉さんがいました。年齢を重ねるスピードがゆっくりで、私より五歳くらい年上なので、当時十歳くらいだったのですが、とてもかわいらしく無邪気に話しかけてくれました。私を見ると、
「まなちゃん!」
と、笑顔で声をかけてくれました。その笑顔を見ると、私も楽しくなりたくさん話をしていました。
二年前、私は中学生になりました。中学生になった私は人見知りになり、お店にも滅多に顔を出さなくなりました。
ある日、たまたまお店に顔を出すと、そのお姉さんに会いました。二十歳近くになるのですが、私が小さい頃に見たままの雰囲気で、喋り方も行動も何も変わっていませんでした。まるで小さな子どもを見ているようでした。そのとき、お姉さんがたまたま来ていた別のお客さんに、
「ふけたねー。」
といきなり声をかけました。お客さんは笑って言葉を返していましたが、人が気にしていることも、何の悪びれもなく直球で口にするお姉さんに苦手意識をもつようになりました。そして、お姉さんのことを避けるようになっていったのです。
中学二年の秋。母から一通の手紙を渡されました。お姉さんからの手紙です。ピンク色封筒のかわいらしい手紙をそっと開けました。
「まなかちゃんへ。さいきんあえてないね。おねえちゃんはまたまなかちゃんとはなしたいな。」
便箋の行から大きくはみ出して、小学生のような大きな字で書かれています。封筒と同じように、便箋にもシールが貼られ絵が描かれています。たくさんデコレーションして届けてくれた手紙から、お姉さんからの素直な気持ちが直球で私に届きました。
「お姉さんは何でも素直に伝えてくれるんだ。私に会いたいと思ってくれているんだ。」
と心から嬉しく思いました。そして、どんなときもうわべを飾ることなく直球で言葉をかけてくれるお姉さんのことを十分理解できず、会うのを避けてきた今までを深く後悔しました。
中学三年生になった今、お姉さんがお店に来たときは、たくさんお話をします。まるで昔に戻ったかのように。お姉さんは小さい頃から見てきた姿と何も変わりません。かわいらしい声、無邪気な話し方、そして明るいひまわりのような笑顔。お姉さんが話す言葉には噓偽りは一つもありません。お姉さんは素直な気持ちで思ったままを直球で私に伝えてくれます。私はそれがたまらなく嬉しいです。
人は大人になるにつれ、自分をよく見せようと強がったり、飾ったり、ときに嘘をついたりしてしまうことがあります。しかしお姉さんは純粋な素直な心をいつまでももって私に接してくれます。私は、お姉さんから学ぶことがたくさんあるように思います。これからも、お姉さんとたくさんたくさんお話をし、心の交流を続けていきたいと思います。