【中学生区分】 ◆佳作 庄子 結士(しょうじ ゆいと)

体験から広がった世界
庄子 結士 (聖ドミニコ学院中学校 2年 仙台市)

私は中学一年生の春休みに右足を骨折しました。晴れてむかえた中学二年生の新学期は人生で初めての骨折とギブス、松葉杖生活から始まりました。はじめは簡単な気持ちでした。「松葉杖なんてすぐ慣れる、どうにかなる。」と考えていました。怪我をしてすぐの時は、ヒーローになったみたいにみんなが集まってきて松葉杖に興味を持ったりギブスに触ってみたりしていました。みんなが興味を持ってくれてうれしかったです。しかし、毎日雪だるまのように出来ないこと、難しいことは増えました。
 当たり前に通っていた通学路の何気ないかたむきやでこぼこで松葉杖の運びかたに苦戦したり、2段飛びで上り下りしていた階段も一歩ずつしかできなくなりました。すぐにドアも開けられない、手に荷物を持って歩くこともできない、雨が降ってきた時には傘を持っていてもさすことができませんでした。雨ですべる松葉杖でこけそうになってハラハラドキドキもしました。部活動の遠征に参加して「ゆっくり来ていいよ」と言われても、一生懸命に松葉杖で歩いても急いでもどんどんみんなから距離が離れるとなんだか悲しい気持ちがしました。「2階の観覧席から荷物を持ってきて」と言われても人混みを松葉杖で移動し階段を上り下りするのは大変でした。でも「できない」と言ったら何も役に立っていないようで自分なんか必要ないんじゃないかという気持ちになりそうでした。もちろん沢山の人が「大丈夫?」と声をかけてくれました。でも私には「大丈夫じゃない、助けてよ」と言葉にする勇気はありませんでした。そして迷惑をかけては申し訳ないとついつい「大丈夫です」と言っていました。
 そんな中で、部活動の先輩がさりげなく私の荷物を持ってくれたりドアを開けてくれたり、自分が雨にぬれているのに一生懸命に私に傘をさしてくれました。急いでいないときには私の歩幅やスピードに合わせて一緒にゆっくりと歩いてくれました。私は先輩の優しさが嬉しくていつも感謝していました。分かろうとしてくれる人がいると段々と心も元気になっていきました。
 私の松葉杖とギブス生活は四十二日間で終了しました。その生活を通じて日常生活には沢山の不便があることを感じました。それと同時に、親切にしてくれる人のあたたかさに触れる貴重な時間になりました。私のようにせっかく声をかけてくれても「大丈夫」と断ってしまう人にどう手伝ってあげたらいいのか、迷う人もいると思います。「申し訳ない」という思いで気持ちに反して断ってしまうこともあると知ってほしいです。それでも「いいよ手伝うよ」と寄り添ってくれたり、見守って歩幅を合わせてくれたり、さりげなくやってくれた時に、決して嫌な気持ちになんてならなかったことも知っていてほしいです。
 私は身近に障害を持った人がいないので自分が怪我をした時の目線から、障害を持った人との関わりについて考えてみました。これからもし障害を持った人に出会い困っている人がいたら、私はこの経験をいかして、分かろうとし勇気を出して歩み寄りたいと思います。また私のこの経験を知った人が、思いをめぐらせて、少しでもその時の気持ちを同じように感じ取ってくれたらいいなと思います。そして障害をもった人がいたら分かろうとしたり勇気を出して歩みよったりする人が増えたらいいなと考えています。