【小学生区分】 ◆佳作 前田 琉唯菜
きこえる友だちのサポートに感謝
前田 琉唯菜 (大阪市立北中道小学校 6年 大阪市)
給食の時間が開始され、自由に席を替えて食べることが可能なので、同じクラスにいるもう一名のきこえにくい子と、きこえる友だちと一緒に机を付けて食べ始めました。
突然、きこえる友だちが
「二人は、どうやって手話を覚えたの。」
と、質問をしてきました。
(手話は、入学前に聴覚支援学校の幼稚部に通っていた時から使っていたし、どうやって覚えたのか記憶がないな。)
と、頭を抱えました。
「手話をどのようにして覚えたのかあまり覚えていないけど、先生が手話で表されるのを見て真似をして覚えたと思う。」
と、友だちが納得のいく説明ができたか自信がなくて不安げに伝えました。
きこえる友だちは納得していた様子だったので、ほっとしました。
一緒に食べていた、きこえにくい子が
「最初に覚えた手話は、『おいしい』だよ。二人が初めて覚えた手話は何かな。」
と、質問をしてきました。
「初めて覚えた手話は何か、覚えていない。何だったかな。」
と、首をかしげていると、きこえる友だちが
「初めに覚えた手話は『一緒』かな。」
と、うなずきながら言いました。
(一緒に何かをしようと誘うため、『一緒』という手話をまず覚えてくれたのかな。気持ちが伝わるようでうれしいな。今まで手話について会話したことがなかったけど、手話に興味を持ってくれていたのかな。)
と、感動してしまいました。
次の日の一時間目は、音楽の授業でした。担任の先生が、開口一番
「運動会で応援団が歌う歌をかけてみます。一度聞いてみましょう。」
と、説明をされ、すぐに曲がかかりました。
パソコンをモニターに接続し、モニターから音が出ていたので、モニターの所にワイヤレス補聴援助システムのマイクを先生が置いてくださったので大きめの音で聞こえていました。どんな曲か必死に聞いていました。
昨日、手話について会話したきこえる友だちが、突然、隣の席から合図をしてきました。
その友だちは、続けて何か言いましたが、マイクから大きな音で曲が聞こえていて、聞き取れませんでした。
「音楽が大きく聞こえていて、聞こえなかったから、もう一度言ってくれる。」
と、即座にお願いしました。
友だちは、快くもう一度言ってくれましたが、やはり聞こえず、困っていると、自由帳を取り出し、何か書き始めました。
『応援団がセリフを言うとき、白や赤からイメージすることばを言うので考える。』
と、先生が指示されたことを書いてくれました。
『分かった』と手話でまず表しました。
「先生が指示されたんだね。音楽が大きく聞こえていて分からなかった。書いて教えてくれてありがとう。白からイメージするのは、マスクかな。」
と、お礼を伝え、思いついたことばを言いました。
友だちは、笑顔で『ok』と手で表してくれました。
(手話に興味を持ってくれ、聞き取るのは難しいと判断した時は、文字で伝えてくれたのでうれしいな。雑音が多くて聞き取れないことが多いので、見て分かりやすいように配慮して伝えてもらうととても助かり、ありがたいな。)
と、心から感謝しました。
その後、歌う時や楽器を演奏する時は、きき取りにくいことが多く、あまり得意ではない音楽の授業に気分よく参加することができました。