【中学生区分】 ◆最優秀賞 盛田 福
楽しむことを諦めない
盛田 福 (横浜市立新田中学校 2年 横浜市)
僕の兄には、生まれつきの病気がある。神経伝達が上手くいかない病気らしい。世界的にも症例が少ない兄の病気は、病名もなければ治療法もない。そんな未知の病と闘っている。
現在高校三年生の兄が小さかった頃は、皆と同じように歩いたり、走ったり、遊んだりできた。徐々に歩けなくなったのは、小学五年生頃。中学生になってから車椅子を使うようになった。兄が車椅子を使うようになってから、僕達家族は、時々二人家族になる。スタジアムでサッカーを観る時。遊園地に行った時。階段しかないお店に入る時。兄と母。僕と父。二人ずつ別々に過ごす。それは、仕方がない事だと思っていた。しかし、この夏その考えを変える出会いがあった。
家族で沖縄旅行に行った時のことだ。今まで見た事もない綺麗な海を目の前にして、
「ここで待っているから楽しんで来て。」
ビーチの入口でいつものように兄が言った。砂浜を車椅子で進む事が出来ないのだ。父と母と僕で車椅子を持ち上げてみたり、砂浜用の車椅子がないか問い合わせたり、と悪戦苦闘していた。やはり、また二人家族か…。と諦めかけた時、ビーチスタッフのRさんが声をかけてくれた。
「せっかく沖縄まで来てくれたんだから、一緒に楽しもう。何の問題もないよ!!」
笑顔でそう言うと、父でも背負うことができない大きな体の兄を背負い、後ろから父が支え、海の中まで連れていってくれた。申し訳なさそうに、
「ありがとうございます。」
と何度も頭を下げる兄に、
「大丈夫だよ!!いつでも指名待ってるからね。」
と明るく答えてくれた。そして、兄でも出来るマリンアクティビティを楽しませてくれた。Rさんのおかげで、家族一緒に沖縄の海を楽しむことが出来たのだ。兄はとても、嬉しそうだった。七年ぶりに兄と一緒に入った海。久しぶりに兄と一緒に楽しむことができた。もっともっと沢山の体験を兄にさせてあげたいと思った。そして、兄以上に嬉しそうな父と母の顔が忘れられない。
僕はRさんの振る舞いや言動から人の温かさを感じた。その優しさや気づかいに感動した。心のバリアフリーとはこういう事だと実感した。障害があってもなくても、相手に楽しんで欲しい。笑顔になって欲しいと思う気持ち。そのために、出来ない理由を探すのではなく、出来る方法を一緒に考えること。たとえそれが上手くいかなくても、一緒に楽しもうと前向きに考えてくれることだけで、障害がある人や、その家族が救われることをRさんが気付かせてくれた。
はじめから無理と決めつけていたら気付けない事が沢山ある。だから兄にも、楽しむ事を諦めないでほしい。そして僕がすべきことは、兄と一緒に出来る方法を考え、行動してみること。まずは、僕が心のバリアフリーを実行してみようと思う。
障害がある人も無い人も関係なく、皆一緒に楽しめることが、どれだけ尊い事か気付けたから。