【小学生区分】 ◆優秀賞 溝口 桜大
妹の世界を広げたい
溝口 桜大 (倉敷市立大高小学校 4年 岡山県)
ぼくには双子の妹がいる。ぼくが二歳の時に生まれて、いっしょに大きくなった。今では双子も小学生だ。
自分は勉強も運動も好きだし、とくに仲間とサッカーをしている時が楽しい。友達とゲームや川遊び、鬼ごっこなどのいろんな遊びができるし、四年生の今では、自転車で自由に遊びに行くこともできる。だけど、妹の華央は、小学生になっても言葉が話せない。最近、ようやく食事の時に手づかみをやめてスプーンを使える様になったくらいで、まるで赤ちゃんだ。それに、大きな声で叫ぶし、社会のルールを全く知らないので、お店や公園に一緒に行くことも大変だ。危険なことを平気でしようとするから、お母さんは目がはなせない。夏になると、大好きなプールへ行きたくて毎日水着を着ている。下の水着も頭からかぶって満足そうな顔をしている。思い通りにならない時は、自分の頭をたたいて、それが痛くてさらに泣いて、もう訳が分からない。とにかく華央はできないことばかりで、ダメなことも沢山するし、いつまでたってもお世話が大変だ。
そんな妹の事が、家族は大好きだ。妹はいつもニコニコケラケラよく笑い、見ているだけで面白い。周りにいる家族は妹がいるだけで楽しい気持ちになる。妹がデイサービスでいないと「つまらない」と感じるほどだ。
ぼくや家族にとって、すごく身近な存在の華央だが、ぼくが生きてきた十年間、同じ様な人は見たことがない。学校や公園、図書館にお店、どこに行っても妹に似た人はいない。不思議に思ってお母さんに聞いてみると、どうやら妹みたいな人は日本人口全体で0.1%しかいないらしい。「なんて珍しい人間なんだ」と興奮した。だけど、そんな少数な妹達は、この世界でどうやって生きていくんだろうと不安にも感じた。初めてお母さんと華央について真面目に話をしたら、お母さんの口から「重度知的障害」と「自閉症」という言葉が出た。改めて調べてみると、妹の様に言葉が話せなかったり、かんしゃくを起こしている子の動画を沢山見つけた。ぼくが普通に生活する中では会わなかったけど、それぞれがちゃんと学校へ通ったり、助けてくれる人達と日常を送っていた。ちゃんと存在していて安心したけれど、生活する場所やコースを分けられている様で、さびしいと思った。さらに調べて、新しい言葉を知った。それは「インクルーシブ教育」というものだ。障害の有無などによって分けられることなく、「子供達が共に学ぶ」ということを取り組んでいる大阪の小学校の動画を見たのだ。その小学校では、普通のクラスに、看護師さんが付きっきりの医療ケアが必要な子、重い知的障害の子、発達障害の子も、みんなで一つの教室で過ごしていた。その学校の校長先生は、「支援が必要な人と必要ない人が一しょに学ぶことは、全く特別ではない」と話していた。
ぼくも、自分の家族に華央がいることは当たり前の様に、特別な事だとは思っていないし、これが普通だ。大変な時はみんなで協力するし、兄妹で仲良くしていると、それだけでお母さんやお父さんがゆっくりできる。何より、妹が笑顔になるとぼくは嬉しくなる。だから、障害なんかで分けて暮らすより、みんなで生きる方がずっと楽しいことをみんなに伝えたいと思った。一しょにいるには、工夫や思いやり、自分が障害の有る人に合わせることが必要だ。それは、とても大変なことだけど、ふれ合いで自分も心が温かくなるし、他の誰かが親切にしている姿を見ても、自分のことの様に嬉しくなる。優しさが連鎖して、「どんな人でも同じように生きられる世界になればいいな」とぼくは思います。