【小学生区分】 ◆優秀賞 笹村 美晴(ささむら みはる)

無意識の偏見を打ち破って
笹村 美晴 (外ヶ浜町立三厩小学校 6年 青森県)

ある女の子が入学してきました。その子は、一人だけ別の教室で勉強しています。その子が何らかの障がいを抱えているため、別の学級で勉強していることは分かりました。しかし、具体的な障がいの内容や、直面している困難については全く知りませんでした。今思うと、うまく会話ができないと決めつけ、無意識に会話を避けていたように感じています。
 このまま特に関わりなく過ごしていくのだろう、そう思っていたある日のことです。その子が、休み時間に話しかけてきました。彼は、石や木を使って家の家具を作るという遊びをしていました。
「ねえねえ、これ見て。」
その後、会話のラリーが少しだけ続きました。
「これ、何を作ったの。」
「こっちがタンスで、こっちがテーブルだよ。」
「へえ、すごいね。上手だね。」
「ありがとう。」
 この会話は、なんてことない会話に思えるかもしれません。しかし、この短い会話が私の心を大きく揺さぶりました。それは、私の心の中に「障がいがあるから会話ができない」という偏見が、無意識に潜んでいたのかもしれないということに気づいたからです。笑顔で一生懸命、出来事を伝えようとしてくれる姿が、私の心をぐさっと刺すようでした。障がいがあってもみんなと一緒なのだと痛感しました。そして、この「無意識の偏見」はあってはならないと考えるようになりました。
 私のその考えを、より確かなものにさせた出来事がありました。それは、障がいを抱える彼女に対し、友達が
「あの子、みんなと違って変だし、無口だから苦手。」
と、陰で話していたのを聞いてしまったことです。とてもショックを受けました。私は彼女の本当の気持ちを知ってもらおうと、必死に彼女の素直さや前向きさを伝えましたが、うまく伝わりませんでした。とても苦しく、泣き出しそうな気持ちになったことを、今でもよく覚えています。しかし同時に、私ははっとしました。友達の今の様子は、以前の私と同じなのかもしれないと感じたからです。無意識に偏見をもっていて、関わろうとしない、歩み寄ろうとしない。だからその子の内面を理解しようと思えない。そんな状態なのだろうと。
 それから私は、偏見を取り除き、みんな一緒に仲良く生活できるようにするために、自分にできることは何かを必死に考えました。その結果、一つの考えが浮かびました。それは、障がいの特性や感じている困難を、まずは自分が正しく理解し、それを周りに伝えることから始めようということです。内面を理解してもらうために、まずは彼女の思いを自分事として考えてもらうところから始めなければと感じたのです。
 その後、私は勇気を出して彼女の抱える障がいの特性や困難、そして彼女の努力を一生懸命伝えました。すると、友達は驚いた後、ぼそりと「知らなかった」と呟いたのを見て、やはり私と同じだったのだと改めて感じました。それからは、その友達や周りの子たちが、彼女に優しく声をかけたり、一緒に遊んだりするようになりました。
 私は、障がいをもっている人も、そうでない人も、みんな仲良く暮らせる世の中になってほしいと願っています。そんな世の中を実現するには、「無意識の偏見」を打ち破ることが最も大切なのだと思います。そのためには、自分の偏見に気づくことが必要です。私は「偏見に気づいた側」として、無意識の偏見について訴えていきたいです。自分の経験を通じて、少しでも多くの人が偏見を取り除き、みんなが安心して暮らせる社会になっていくことを願い、私は自分にできることを続けていこうと思います。