【高校生区分】 ◆佳作 櫻井 彩葉
プールで出会った女の子
櫻井 彩葉 (静岡県立静岡商業高等学校 3年 静岡市)
私が「心の輪」を実感したのは、通っているスイミングスクールでの体験でした。私は幼稚園のころから水泳を続けており、高校生になった今までも週5回以上練習をしていました。水泳は個人競技である一方、リレーや練習中の空気など、仲間との協力や支え合いも大切なスポーツです。その中である一人の子との出会いが私の考え方を変えてくれました。
その子は、小学生で聴覚に障害がある女の子でした。最初にプールサイドで見かけた時、コーチがジャスチャーで説明をしていたのが印象的でした。女の子は言葉を発することは少なかったけれど、私たちよりも一生懸命にコーチの動きを見つめていました。私にとっては初めての出会いであり、「どうやって接したらいいんだろう」と少し戸惑ってしまいました。
ある日の練習で、たまたま同じレーンに入ることになりました。スタートの合図は普段なら「よーい、ハイ」という掛け声だけど、女の子には聞こえません。コーチは代わりに旗を振って合図を出していました。最初はその違いを意識してしまい、私はうまくタイミングがつかめませんでした。しかし女の子は私ににっこりと笑いかけて、手で「一緒にスタートしよう」と言ってくれました。その笑顔に、私は不思義と緊張がほぐれ、「声で話さなくても伝わるんだ」と感じました。
練習を重ねるうちに、女の子とのコミニケーション方法も少しずつ身につきました。水の中では言葉が届かないのは当たり前なので、アイコンタクトやジェスチャーで気持ちを伝えることが大切です。私は練習中にビート板を指さして「次はこれで行こう」と示したり、タイムを見せてもらって「すごいね」と伝えたりしました。女の子も、ゴールした後に大きくガッツポーズをしてくれるなど、言葉以上に心が通じ合っていることを感じました。
印象に残っているのは、リレー練習をしたときのことです。女の子は一泳になり、私は二泳でした。私はちゃんと引き継げるか心配だったけれど、女の子はスタート前に私の方を向いて強くうなずいてくれました。その姿に背中を押され、私も全力で泳ぐことができました。ビート板を受け取った瞬間、女の子の目が「頼んだ」と語りかけているようで、私は自然と笑顔になっていました。結果は一位ではなかったけれど、ゴールしたときの一体感は、どんな勝利にも負けない大切な経験になりました。
この体験を通して、私は大切なことに気づかされました。私たちのように言葉を話せなくても心は通じ合えるということです。障害があるからといって、特別扱いする必要はないと思いました。相手のことを理解しようとする気持ちと、一緒に挑戦したり楽しもうとする姿勢があれば誰とでもつながることができるのだと学びました。たとえ環境が違ったりしても、少しの工夫と勇気があれば人と人はつながれます。その「心の輪」を、私はプールから社会へと広げていきたいです。