【中学生区分】 ◆佳作 大山 凌太朗(おおやま りょうたろう)

音のない世界
大山 凌太朗 (鹿児島市立紫原中学校 1年 鹿児島県)

音のない世界はどんなのだろう。私は年に一度山口に住む祖父母に会いに行く。そして会う度に思う。祖父母の音のない世界はどんなのだろう。
 私は当たり前のように音のある世界で生きていて、両親や友達との会話を楽しんだり、声の高い低いで相手の喜怒哀楽を判断する。大好きな音楽を聞いて歌ったり踊ったりする。しかしそれは祖父母にはできない。音のない世界の楽しみとは何だろう。
 母に音のない世界は自分でつくることができるのか聞いてみた。すると母が驚き、
 「私も小さい時同じことを思ったことがあるよ。じーじとばーばの世界でしょ。不思議に思うところが親子で一緒だなんて面白いね。」
と言った。そして教えてくれた。母は幼い頃お風呂に入る時にお湯の中に潜り、音のない世界を体感したらしい。さっそく私も試してみたが、両耳の圧迫感があり最初は恐怖を感じた。でも何度か繰り返すと、静かな音のない時間が流れる。だがもちろん息を止めているため長くは続かないが音のない世界を体感出来た。そしてやっぱり少し怖いと感じ、楽しくないと思った。でも、祖父母を見ているといつも笑っている。テレビを見て涙を流しながら笑うこともある。手話で母や友達とたくさん話し、とても楽しそうに過ごしている。それを見てみると表情がとても豊かで、手話のスピードに強弱をつけたりしているように感じた。手話ができない私にも、祖母はたくさん話しかけてくれる。正直、何を言っているのか母に聞かないとわからないが、祖母は何度も私に話しかけ楽しそうに過ごしている。私もそんな祖母との時間がとても楽しく感じた。祖父母と数日一緒に過ごす中で音のない世界の楽しみは、人とのコミュニケーションなのかもしれないと思った。祖父母のように聴覚に障害がある人にとって人とのコミュニケーションの手段は手話である。手話とは、音声ではなく手指や体の動き、表情などで自分の感情を表現する、手で話し、目で聞く言語と言われているとある。表情も一緒になることで感情を表現する、祖母を見ているとまさにそうだと思った。祖父母は毎晩NHKの手話ニュースを見る。そこでニュースを伝える人も表情豊かだ。母も祖父母と会話をする時はわざわざ着けているマスクを外して話す。それだけ表情が大切なのだ。
 今回の帰省で母からたくさんの手話を教えてもらい祖母とゆっくり会話をした。会話中に手話を間違えると、こうだよと正しい手話を教えてくれる。間違っても大丈夫と笑顔で言ってくれる。何故間違いがわかるのか母に聞いてもらうと表情で言いたいことがわかると言っていた。そして母は私がたくさん祖父母に話しかけることは祖父母にとってとてもうれしいことだと教えてくれた。手話がわからなくても表情で思いが伝わると感じた。
 音のない世界は静かで怖いという体感だったが、その世界の中で祖父母は生きている。やっぱりまだ生活をするには大変そうだと思ってしまうが、祖父母を見ていると楽しそうに生活している。もし人とのコミュニケーションが楽しみとなるのであれば、いつかおもいっきり祖父母との会話を楽しみたい。今年も私が帰ってくるから何を話そうかなと楽しみに待っていてもらいたい。
 小学生の頃から思っていた疑問を今回作文にすることで私なりの答えが出たように思う。音のない世界での楽しみ、それは、人とのコミュニケーション。私はいつか祖父母と一緒に声を出して笑える日が来るようにこれから手話を学んでいきたい。