【高校生区分】 ◆優秀賞 齋藤 海空(さいとう のあ)

障害があってもなくても
齋藤 海空(群馬県立吾妻中央高等学校 2年 群馬県)

「今日は、日直の仕事を手伝ってくれてありがとう」と書かれた付箋をもらった。
 私の中学校の友達に、他人と話すことが難しいAちゃんがいた。Aちゃんは特別支援学級に通っていた。内気な性格で、あまり自分から思いや考えを伝えない子だったが、こちらから質問などをすると、うなずいたり、紙に書いたりして伝えてくれるため、いつもそうやってコミュニケーションを取っていた。
 そんなAちゃんは、緊張して人前に出ることに慣れないという理由で日直をしない時期があった。毎回Aちゃんの日直の番が近づくと「今回も日直はやめる?」と先生に聞かれるとうなずいていた。そのときのAちゃんの顔はいつもより暗く、ためらいながらうなずいているように見えた。それを見た私は、Aちゃんに「いっしょに日直の仕事やってみる?」と聞くと、Aちゃんは少しためらった表情を見せた。Aちゃんは迷惑にならないようにと、遠慮してしまうことがよくあるそうで、今回の日直についても、Aちゃんは先生やみんなに迷惑がかかるのではないかと考え、ためらっているのだと思った。その様子を見た私はAちゃんに、仕事を分担していっしょに日直をすることを提案した。するとAちゃんは表情を変え、笑顔でうなずいた。その後、Aちゃんといっしょに特別支援学級の先生に「Aちゃんの日直のとき、朝の会や授業前の号令は私がやりますから、Aちゃんにも日直の仕事してもらうのはどうでしょう。」と提案すると、その先生も賛成してくださった。
 日直をする日の朝、二人で前に立つと、教室が少しざわついた。みんな、いつも日直をしないAちゃんが日直をしていることに驚いたようだった。Aちゃんは緊張したのか、おどおどして落ち着かない様子だった。
 朝の会が終わって、教室を移動するときに他のクラスメイトから「なんでAちゃんが日直しているの?」とか「なんでのあがいっしょに日直しているの?」とか「のあの負担にしかならないよ」とかいろいろ言われた。毎回のようにAちゃんのことをあれこれ言われて、正直うんざりしていた。毎回思うのは「別にAちゃんだってできないことだけじゃないのに」ということだ。みんな「Aちゃん=できない」という考え方になっていたのだと思う。でも、Aちゃんだって、絵は上手いし、勉強も問題なくできるし、マラソンだって私より全然速い。班活動に参加し始めたり、苦手なスポーツも先生といっしょに練習したりするなど、苦手なことに少しずつ挑戦しようとしていた。また、日直の仕事も、号令は難しいけど、日誌や花の水やりなど、できることを積極的にやっていた。そんなAちゃんの姿は生き生きしていた。思っていることやAちゃんの姿をみんなに言えなかったのが悔しかった。
 帰りの会が始まる前、特別支援学級の先生が私に「Aちゃんと日直をしてくれてありがとう。いつもありがとうね。」とおっしゃった。私は特別なことをしたわけではない。Aちゃんができることをして、苦手なことをお互いに支え合った。小さい頃から教わっている「みんなで助け合う」をしただけだ。それは障害があるからではない。私はAちゃんと日直ができたことがすごく嬉しかった。それに、Aちゃんには自分に役割があるということを知ってほしかったから、良い機会になったと思う。
 みんなできないことや苦手なことも必ずあるし、逆に自分にしかできないことだって生活していればいくらだってある。それは障害があってもなくても同じだと思う。障害があるからといって、できることとできないことを見て差をつけるのではなく、障害があってもなくても、できるところを尊重し、できないことや苦手なことをみんなで支え合う。そうやって障害がある人たちとない人たちが共に暮らせること、暮らしやすい世の中になることが大切だと思う。
 放課後、「日直の仕事を手伝ってくれてありがとう」と書かれた付箋をAちゃんが私に差し出した。私は「またいっしょに日直やろうね」と言うと、Aちゃんは優しい笑顔でうなずいた。Aちゃんは私に助け合いの心を改めて教えてくれた。それを私はこれからも大切にしていきたい。