【中学生区分】 ◆優秀賞 高橋 潤矢(たかはし じゅんや)

色覚異常だから見える世界
高橋 潤矢(さいたま市立日進中学校 1年 さいたま市)

ぼくは、先天性色覚異常で、色の見え方が多くの人たちとはちがっている。
 先天性色覚異常の人は決して少なくはなく、日本人では男性の約二十人に一人、女性の約五百人に一人がこの障害を持っている。色覚異常者はLEDでない信号や、お肉の焼き加減などの判別が難しく、絵の具や色鉛筆などの色の区別もつきづらい。ぼくは小さいころから、信号は色ではなく光っている位置や形を覚えて止まったり渡ったりしているし、お肉の焼き加減や絵の具などの色は、家族や友達に教えてもらうようにしている。
 また、色覚異常者は職業にも多くの制限がある。ぼくはそのために、宇宙飛行士になりたいという将来の夢をあきらめなくてはいけなくなった。小学一年生の時だった。落ち込んでいたぼくに、母が言ってくれた言葉が、今でも忘れられない。
「ゴッホって、色覚異常だったかもしれないんだって。」
ゴッホはぼくが大好きな画家だ。母は続けた。
「もしかしたらあなたは、ゴッホが本当に描きたかった色が見えているのかもしれないね。いいね。」
その言葉を聞いたとき、心がふっと軽くなった気がした。自分の見ている世界が、もしかしたら特別なものなのかもしれない。そう思うと、悲しさが少しずつ消えていき、前を向く気持ちがわいてきた。色覚異常についての本を読んだり、カラーユニバーサルデザインについて勉強したり、自分の障害を理解して受け入れていくようになった。
 二年前から、ぼくは色覚異常についての研究をするようになった。色覚異常者でも色の判別がしやすい「カラーユニバーサルデザインクレヨン」を製作したり、「焼き肉の色を判別しやすくなるライト」を研究したりして、発表の機会を得た。すると、友達や先生方はとても興味を持って聞いてくれて、中には、
「家族が色覚異常だから、どんな研究なのか 気になって見に来た。」
と言ってくれる人もいた。ぼくの研究や経験が、誰かの役に立つかもしれないと思い、とてもやりがいを感じた。
 このようにして、ぼくは最近まで、色覚異常者の色の判別能力の向上を目的として研究を続けてきた。しかし、色覚異常には様々なタイプがあり、その中には色をほとんど判別できないものもある。色覚異常者自身の工夫だけでは限界があると、次第に感じるようになってきた。やはり、多くの人に色覚異常という障害について知ってもらい、カラーユニバーサルデザインのような配慮が広がっていくことは、重要だ。その考えから、ぼくは現在、色覚異常について楽しく学べるゲームをスクラッチで制作している。完成したら公開して、多くの人に遊んでもらいたいと考えている。
 色覚異常は軽度のものも多く、社会では深刻な障害として見なされてはいない。しかし、不便や困難を感じている人はたくさんいる。ぼくは、色覚異常者が快適に安全に生活していける工夫や、カラーユニバーサルデザインのような配慮を広める努力を、これからも続けていきたい。そう思えるのは、あの日の母の言葉と、ぼくの障害を温かく支え、見守ってくれる家族、友達、先生方など周りの人たちのおかげだ。色覚異常で産まれたからこそ、ぼくは多くの経験を積むことができたし、これからの目標も尽きることはない。
 つい先日、ぼくは母にこう言った。
「お母さん、ぼくを色覚異常に産んでくれてありがとう。」
母は驚いた顔をして、それから、
「そんなことを言ってくれる子は、なかなかいないだろうね。」
と嬉しそうに言った。