重点施策実施5か年計画
平成14年12月24日
障害者施策推進本部決定
障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)に沿って、同基本計画の前期5年間において重点的に実施する施策及びその達成目標並びに計画の推進方策を以下のとおり定める。
I 重点的に実施する施策及びその達成目標
1.活動し参加する力の向上のための施策
(1)障害の原因となる疾病の予防及び治療・医学的リハビリテーション
- 難治性疾患に関し、病因・病態の解明、治療法の開発及び生活の質につながる研究開発を推進する。
- 周産期医療ネットワークを全都道府県に整備する。
- 生活習慣の改善により循環器病等の減少を図る。
- 糖尿病について、検診を受ける者の増加、有病者数の減少及び有病者の治療継続率の向上を図る。
- 医療刑務所等に機能回復訓練に必要なリハビリテーション機器を更新整備する。
8施設
(2)福祉用具等の研究開発とユニバーサルデザイン化の促進
- 基準やガイドライン等の作成における高齢者・障害者のニーズへの配慮指針である国際規格ISO/IECガイド71(規格作成における高齢者・障害者のニーズへの配慮ガイドライン)を平成15年度までにJIS規格化する。
- 障害の特性に配慮したセキュリティシステム、防犯・防災設備の研究開発、普及を行う。
- 個人適合型の生活環境・就業環境創出のためのデータベース整備・研究開発を行う。
- ユニバーサルデザインに配慮した設計に必要な人間の寸法・形態に関する知的基盤を整備するため、平成16年度までに人体寸法を、約10分間(従来約90分間)で測定する技術開発を行うとともに、少なくとも 100人程度の人体寸法・形態を測定する。
(3)情報バリアフリー化の推進
- a. デジタル・ディバイドの解消
- 高齢者・障害者の利用するIT機器の設計ガイドラインを平成15年度までに作成し、以降IT機器別のJIS規格を順次整備する。
- 障害者のIT利用を支援する技術者の養成・育成研修等の開催を推進し、平成19年度までに10,000人以上が受講することを目指す。
- 障害者のIT活用を総合的に支援する拠点を整備する。
- ホームページ等のバリアフリー化の推進のための普及・啓発を推進する。
- b. 情報提供の充実
- 字幕番組、解説番組及び手話番組の制作費に対する必要な助成を行う。
- 効率的な番組制作技術の研究開発等の推進により障害者向け放送番組の拡充を図る。
- 障害者の自立した食生活の実現のための関連情報の提供を推進する。
- c. 研究開発
- 障害者が使いやすい情報通信機器、システム等の開発・普及支援を行う。
- 障害者ナビゲーションシステムを開発する。
- ユビキタスネットワークとロボットを結ぶネットワーク技術等の研究開発を行う。
- 視覚障害者に音声情報を提供し、歩行、移動等を支援する案内システムを設計するための指針に関するJIS規格を、平成15年度までに整備する。
(4)欠格条項見直しに伴う環境整備
障害者施策推進本部申合せ(平成13年6月12日)に沿って、障害者に係る欠格事由の見直しに伴う教育、就業環境等の整備に努める。
2.地域基盤の整備
(1)生活支援
- a. 利用者本位の相談支援体制の充実
- 市町村を中心とした相談・支援体制の充実を図り、これを拠点としてケアマネジメント体制を整備する。
- b. 在宅サービス
- ホームヘルパーを約60,000人確保する。
- ショートステイを約5,600人分整備する。
- デイサービスを約1,600か所整備する。
- 障害児通園(児童デイサービス)事業を約11,000人分整備する。
- 重症心身障害児(者)通園事業を約280か所整備する。
- グループホームを約 30,400人分整備する。
- 福祉ホームを約 5,200人分整備する。
- 市町村における社会参加促進事業を着実に推進する。
- c. 施設サービス
- 通所授産施設を約73,700人分整備する。
- 施設サービスについては、通所施設の整備に努めるとともに、入所施設は真に必要なものに限定し、地域資源として有効に活用する。
(2)生活環境
- a. ユニバーサルデザインによるまちづくり
地方公共団体が行うユニバーサルデザインによるまちづくりを支援する。 - b. 住宅、建築物のバリアフリー化の推進
- 新設されるすべての公共賃貸住宅について、バリアフリー化を実施する。
- 手すりの設置、広い廊下幅の確保、段差の解消等がなされた住宅ストックの形成を推進する。
平成27年度までに全住宅ストックの2割 - ハートビル法の利用円滑化基準に適合する特別特定建築物(新・増改築工事に係る部分の床面積が 2,000平方メートル以上のもの)の建築を推進する。
100% - ハートビル法に基づいて、新営する国土交通省所管の官庁施設を、利用円滑化誘導基準に適合した施設として整備する。
100% - 窓口業務を行う官署が入居する国土交通省所管の既存官庁施設について、手すり、スロープ、視覚障害者誘導用ブロック、身体障害者用便所、自動ドア、エレベーター(延床面積1,000平方メートル以上のもの)等の改修を実施する。
平成22年度までに100% - 地方公共団体が行う公共施設等のバリアフリー化を支援する。
- c. 公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進
- 一日当たりの平均利用者数が 5,000人以上である鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルに関し、原則すべてについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者用便所の設置を推進する。
平成22年までに 100%、
そのうち、段差の解消につき、
平成17年までに、
鉄軌道駅については約60%、
バスターミナルについては約80%、
旅客船ターミナルについては約70%、
航空旅客ターミナルについては約70% - バリアフリー化された鉄軌道車両の導入を推進する。
平成17年までに約20%、
平成22年までに約30%
- 低床化されたバス車両の導入を推進する。
平成17年までに約30%、
平成27年までに 100% - ノンステップバスの導入を推進する。
平成17年までに約10%、
平成22年までに20~25% - バリアフリー化された旅客船の導入を推進する。
平成17年までに約25%
平成22年までに約50%
- バリアフリー化された航空機の導入を推進する。
平成17年までに約35%
平成22年までに約40%
- 福祉タクシーの導入を推進する。
平成17年度までに 2,600台
- 主要な鉄道駅等周辺における主な道路のバリアフリー化を実施する。
平成19年度までに53%
- 今後整備する高速道路等のサービスエリア及びパーキングエリア並びに主要な幹線道路の道の駅については、身体障害者用便所、身体障害者用駐車スペースの整備を推進する。
- 直轄河川において新設される水辺プラザ等の河川利用の拠点において、手すり・緩傾斜スロープ等の設置、堤防・護岸の緩傾斜化等を実施する。
- 人の利用に供するすべての新設港湾緑地において、手すり、スロープ、休憩施設、身体障害者用便所、身体障害者用駐車スペース等を整備する。
- バリアフリーに配慮した森林総合利用施設の整備を推進する。
- 移動支援バリアフリーマップを提供する。
- 一日当たりの平均利用者数が 5,000人以上である鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルに関し、原則すべてについて、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合には身体障害者用便所の設置を推進する。
- d. 交通安全の確保
- バリアフリー対応型信号機の整備を推進し、交通バリアフリー法の特定経路を構成する道路上の信号機の約8割をバリアフリー対応型信号機とすることを目指す。
- 「あんしん歩行エリア」の形成を進め、エリア内の死傷事故の約2割を抑止、うち歩行者・自転車事故については約3割を抑止することを目指す。
- e. 運転免許取得希望者等に対する利便の向上
- 指定自動車教習所に対する持ち込み車両等を使用した教習の実施等の指導を行う。
- 持ち込み車両等による技能試験の実施等を推進する。
- 免許申請時等における障害者等のプライバシー保護への配慮及び運転適性相談等に係る態勢の充実を図る。
- f. 生活の安全の確保
- Eメール、ファックス等による安全ネットワークを推進する。
- 「手話交番」を推進する。
- 地域における防犯ネットワークを確立する。
- 自主防災組織による支援体制を整備する。
- 行政機関と福祉関係者等による防火指導等を一層推進する。
- 緊急通報システムによる消防への緊急通報体制の一層の充実など障害者に係る火災予防体制を強化する。
- 砂防、地すべり対策及び急傾斜地崩壊対策事業の実施により、土砂災害のおそれのある自力避難の困難な障害者等の災害弱者が24時間入院・入居している施設を保全する。
平成19年度までに 240施設 - 障害者等災害弱者関連施設に係るきめ細かな治山対策を実施する。
- 防災情報を住民等に一斉に伝達するための送信装置のモデルシステムを平成15年度に開発する。
3.精神障害者施策の充実
条件が整えば退院可能とされる約72,000人の入院患者について、10年のうちに退院・社会復帰を目指す。このため、今後、更に総合的な推進方策を検討する。
(1)保健・医療
- 精神科救急医療システムを全都道府県に整備する。
- うつ病対策、心的外傷体験へのケア対策及び睡眠障害への対策について、それぞれ平成15年度までに地域保健医療福祉関係者向けマニュアルを作成し、普及させる。
- 「思春期精神保健ケースマネジメントモデル事業」事例集を平成15年度までに作成し、普及させる。
- 若齢層の「社会的ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドラインを平成15年度までに作成し、普及させる。
- 心的外傷体験へのケア対策及び思春期の心の健康対策に従事する専門家を養成する。
(2)福祉
- a. 在宅サービス
- 精神障害者地域生活支援センターを約 470か所整備する。
- 精神障害者ホームヘルパーを約 3,300人確保する。
- 精神障害者グループホームを約12,000人分整備する。
- 精神障害者福祉ホームを約 4,000人分整備する。
- b. 施設サービス
- 精神障害者生活訓練施設(援護寮)を約 6,700人分整備する。
- 精神障害者通所授産施設を約 7,200人分整備する。
4.アジア太平洋地域における域内協力の強化
(1)政府開発援助における障害者に対する配慮
- JICA等を通じた研修員の受入れ等を実施する。
- 草の根無償資金協力を通じた支援を実施する。
- 日本NGO支援無償資金協力及びNGO事業補助金を通じた支援を実施する。
(2) 国際機関を通じた協力の推進
- 平成16年開所に向けてアジア・太平洋障害者センターに対する支援を推進する。
- 日本・エスキャップ協力基金への拠出を実施する。
- 国連障害者基金への拠出を実施する。
5.啓発・広報
(1)共生社会に関する国民理解の向上
「共生社会」の用語、考え方の周知度を障害者基本計画の計画期間中に成人国民の50%以上とする。
(2)関係機関・団体との連携による公共サービス事業者に対する障害者理解を促進する。
6.教育・育成
(1)一貫した相談支援体制の整備
- 地域において一貫して効果的な相談支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する。
- 小・中学校における学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する。
- 盲・聾・養護学校において個別の支援計画を平成17年度までに策定する。
(2)専門機関の機能の充実と多様化
- 盲・聾・養護学校に関して地域における教育のセンター的役割を果たす学校についての制度的検討を行い、平成15年度中に結論を得るとともに、その検討状況も踏まえて特殊教育に係る免許制度についても改善を図る。
- 大学と国立特殊教育総合研究所の連携協力の下に自閉症の教育研究を行う学校を平成16年度までに設置する。
(3)指導力の向上と研究の推進
- 盲・聾・養護学校に関して地域における教育のセンター的役割を果たす学校についての制度的検討を行い、平成15年度中に結論を得るとともに、その検討状況も踏まえて特殊教育に係る免許制度についても改善を図る。
- 国立特殊教育総合研究所において、教育現場のニーズに対応した障害のある児童生徒の教育の総合的な教育情報提供体制を平成16年度までに整備する。
(4)施設のバリアフリー化の推進
小・中学校等の施設のバリアフリー化の参考となる指針を平成15年度中に取りまとめるとともに、計画・設計手法等に関する事例集を平成16年度中に作成する。
7.雇用・就業の確保
トライアル雇用、職場適応援助者(ジョブコーチ)、各種助成金等の活用、職業訓練の実施などにより平成19年度までにハローワークの年間障害者就職件数を30,000人に、平成20年度の障害者雇用実態調査において雇用障害者数を600,000人にすることを目指す。
II 計画の推進方策
- 本計画の推進に当たっては、個々の障害に係るニーズや社会・経済の状況等に適切に対応するとともに、必要に応じ計画の見直しを行う。
- 本計画の着実かつ効果的な推進を図るため、障害者施策推進本部において、障害者関係団体等との意見交換を毎年実施するとともに計画の進ちょく状況を毎年度調査し公表する。
- 障害を理由とした不当な差別的取扱い等に対する救済措置を整備する。
- 本計画の推進に当たり、地方公共団体と緊密な連携協力を図るため、全国都道府県会議を毎年開催するとともに、障害者計画未策定市町村に対する技術的協力を積極的に行い、全市区町村における障害者計画の策定を目指す。
- 障害者に関する総合的データベースを平成16年度までに構築する。