障害者政策委員会(第10回)議事録 1

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○ 石川委員長 定刻になりましたので、第10回「障害者政策委員会」を開催いたします。

委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。

本日の会議は17時までを予定しております。

本日は、阿部委員、嘉田委員、遠藤委員、福島オブザーバーが所用により欠席との連絡を受けております。

各委員から発言を求めるときはまず挙手をいただき、委員長からの指名を受けてから発言をお願いいたします。可能な限り、ゆっくりわかりやすく御発言ください。また、できれば最初に結論を端的に述べていただき、その後、理由や説明をしていただくと合理的配慮につながるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

また、御発言の際は、できればマイクに近寄ってお話しいただき、発言後は必ずマイクのスイッチをオフにしてくださいますようお願いいたします。

それでは、本日の議事に入りたいと思います。

本日は障害者差別解消法に基づく基本方針の検討として障害者団体からヒアリングを行います。まず、会議の流れと資料について事務局より御説明をいただきます。お願いします。

○ 東室長 担当室の東です。

本日の会議の流れと資料について御説明いたします。

本日の会議は8つの団体におこしいただきまして、ヒアリングと意見交換を行います。

資料としましては「基本方針に関する障害者団体からの意見一覧」として資料1を用意しております。

また机上には障害者差別解消法の条文、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集等、議論の参考用に資料を置いておりますので、適宜御参照ください。

このほか参考1として、障害者差別解消についての広報パンフレットのわかりやすい版を配付しております。カラー刷りのものがあるかと思います。これにつきましては、全日本手をつなぐ育成会及びピープルファースト北海道の御協力を得て作成したものであります。

また参考2として「障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会について」を配付しております。

資料としては以上でございます。

具体的な進行についてですが、大枠として、途中10分の休憩を3回挟みながら進めます。タイムスケジュールとしましては、まず内閣府より、先ほどの参考2として配付しております在り方検討会についての説明及び外務省から障害者権利条約の状況についての御報告があります。

その後13時50分まで弱視者問題研究会及び全国肢体不自由児者父母の会連合会からのヒアリング及び質疑応答を行います。

その後10分休憩を挟みまして14時~15時まで、全国失語症友の会連合会、DPI女性障害者ネットワーク、日本ALS協会からのヒアリング及び質疑応答を行います。

さらにその後10分休憩を挟みまして15時10分~16時10分まで、日本ダウン症協会、日本てんかん協会、日本脳外傷友の会からヒアリング及び意見交換を行います。

最後の10分間の休憩後、ヒアリングを踏まえた自由討議を行うといった流れを想定しているところであります。

本日の会議の流れ及び資料につきましては以上です。資料等の不足等がありましたら事務局まで御連絡ください。

事務局からは以上です。

○ 石川委員長 東室長、ありがとうございました。

なお、前回の第9回政策委員会におきまして指摘のあった精神病床転換型居住施設に関する件ですけれども、次回以降に報告いただくことについて厚生労働省と現在調整中でございます。また本日の最後のパートでは、自由討議の時間を設けさせていただいております。本日の議事進行について御協力のほど、よろしくお願いいたします。

本日は、ヒアリングに入ります前に、政府から報告事項が2件ございます。

まず、第1点としまして、障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会についての御報告がございます。参考資料2です。

2つ目としまして、障害者権利条約の批准に係る状況についての報告がございます。

まず、内閣府のほうから第1点につきまして御報告をいただきます。

○ 内閣府(加藤参事官) それでは、内閣府の加藤でございますが、参考資料2に基づきまして御説明、御報告させていただきます。

「障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会について」ということであります。これは設置要綱といいますか設置を定めた要綱でございます。既に御案内のように、障害者差別解消法の第17条に、地域公共団体の区域においてこういう協議会を設置、組織することができるという条文がございます。現実に法律施行に当たりましてこういった協議会を発足させていくにつきまして、そのためのノウハウといいますか、どういうような手順でどういうように仕掛けていったらいいのかといったようなことを地域のほうで実際に立ち上げるに当たって参考となるような、そういうマニュアルといいますか、事例集といいますか、そういったものをこの検討会でまとめていただければと考えておるところでございます。

2ページ目のほうに、今、考えられておりますメンバーを添付してございます。

本障害者政策委員会の委員であります野澤委員に会長といいますか、まとめ役をお願いしております。現在、10カ所で地域フォーラムというのを開いてございます。そういったところでいろいろな地域における実情等をお伺いしながら、また、その中で参考になる御意見あるいは委員についてもまだ拡充するという予定でおりまして、このメンバーで確定したというわけではございませんで、とりあえず、このメンバーで第1回を発足させるという趣旨でございます。

私のほうからは以上でございます。

○ 石川委員長 ありがとうございました。以上、内閣府からの報告でございます。

次に、外務省から権利条約の進捗状況について御報告いただきます。

○ 外務省(山中課長) 外務省人権人道課長の山中と申します。よろしくお願いいたします。

障害者権利条約につきましてですけれども、国会で承認をいただいた後、批准公布の手続を進めさせていただきまして、先週金曜日、17日に批准公布の閣議決定が行われました。問題なければ、本日、ニューヨーク時間、批准書を国連事務総長に寄託する予定です。

したがいまして、我が国は1月20日付で本条約の締約国となります。まだ実際の寄託は行われていませんので、あくまで事前報告ということでお受け取りいただければと思います。正式な発表は明日になる予定です。

批准書の受け渡しにつきましては、我が方の国連代表部特命全権大使から国連の条約担当部局に対して行う予定でございます。公布につきましては、22日に官報掲載を予定しております。条約の発効につきましては、批准書の寄託から30日ということですので2月19日になります。

以上でございます。

○ 石川委員長 御報告ありがとうございました。以上、内閣府と外務省から御報告をいただきました。

それでは、議事に入りたいと思います。

基本方針につきまして各障害者団体のほうから御意見をいただくということで、最初に2団体お願いしたいと思います。

最初が弱視者問題研究会、2つ目が全国肢体不自由児者父母の会連合会ということで、それぞれ10分ずつお話をいただき、その後、およそ20分間、2団体へのヒアリングをまとめまして少し委員からの質問や御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

では、まず弱視者問題研究会の並木様、よろしくお願いします。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) 弱視者問題研究会で代表をしております並木正といいます。今回のヒアリングで、当会で意見をまとめましたので報告させていただきます。

項目が大変多岐にわたりますので、ある程度絞ってお話をしていきたいと思います。

まず、1点目ですけれども、行政機関が講ずる措置に関する意見ということで述べさせていただきます。

1点目は、学校教育における教科書に関する差別の解消。

義務教育段階については、教科書バリアフリー法のおかげで視覚障害児も無償で適切な拡大教科書で学習するようになりました。しかし、高校段階となると、盲学校などの特別支援学校の高等部には拡大教科書なども無償で供与されているのですが、通常の高等学校の場合、一部の自治体を除いて高額な拡大教科書を自己負担しなければならない状況にあります。

2点目が試験における国としての合理的配慮の確立。

障害者の自立と社会参加のためには、入学試験や就職試験、各種資格試験が進路や人生を決める上で大きな意味を持ちます。しかしながら、弱視者の場合、例えば大学入試センター試験でさえ通常の試験問題をゴシック体にし、単純に1.4倍の拡大コピーした14ポイント程度の試験問題しか提供されていないため、弱視受験生は問題を読み間違えたり、読み速度が遅くなったりするというハンディを背負わされています。この大学入試センター試験が事実上ナショナルスタンダードになっておるため、その他の大学入試や高校入試などにおいても適切な特別措置はほとんどなされておりません。国として、ナショナルスタンダードとなるガイドラインを検討してもらいたいと考えております。

3点目になりますけれども、4項目になるのですが、補助具、日常生活用具支援の合理的な配慮の制度指針についてになります。

平成18年度、補助具や日常生活の支給決定権が地方自治体に委託されたため、地域間格差が大きくなっており、特に視力を補強する用具、ルーペ、単眼鏡、拡大読書器、遮光レンズについては、弱視者にとって必要不可欠なものですので、全ての自治体で同一基準で支給されるよう制度指針の策定を要望いたします。

これら福祉サービスの基礎となる障害者手帳や障害者基礎年金の決定基準も我が国は諸外国には見られない「両眼の視力の和」という数値が用いられています。これにより視覚障害者間で不合理な格差が生まれています。WHOが採用している両眼視した際、優位眼の視力を基準にし、見えにくさが正確に福祉サービスに結びつくような合理的な制度に改めていただくようにお願いいたします。

3点目の事業者が講ずべき措置に関する基本的な事項についてですが、1点目が就労現場での情報機器のバリアフリーに関する合理的な配慮の確立。今や多くの職場でパソコンが使われています。障害者がそのような職場で働くためには、パソコンが使える環境が必要となります。弱視者もパソコンにスクリーンリーダーや拡大ソフトなどをインストールすれば、さまざまな業種をこなすことができます。しかし、近年、企業などでオフィスコンピューターをネットワーク化すると、音声ソフトや拡大ソフトがインストールできない状況にあります。これは弱視者にとって仕事がかなりやりづらくなることや続けられなくなることも意味しています。このような事実上就労ができなくなるようなことが起こらないように、合理的な配慮をお願いいたします。

2点目、公共交通機関、公共施設における合理的配慮。

既に交通バリアフリー法はありますが、弱視者が駅などを利用するときに表示が見つけられずに右往左往することがあります。複数の鉄道会社が乗り入れている駅や構内に商業施設がある場合などは、表示形式がばらばらになっていることがよくあります。

また、公共性の高い金融機関や医療機関などでも弱視者が見やすい表示は決して多くない状況にあります。表示はできる限り目の高さに設置し、コントラストがはっきりした認識しやすい文字で表示していただくことをお願いします。

また、障害者は鉄道やバスを利用するときに運賃割引がありますが、この割引の基準が各鉄道事業者ごとに違うため、戸惑うこともあります。障害者用ICカードを作成するなどして改札をスムーズに通過できるように改善を求めたいと思います。

上記以外の事案についてです。

読書に関する合理的な配慮の確立についてです。

弱視者が本を読む環境は、晴眼者と比べるとまだまだ大きな格差があります。全国におよそ3,200ある公共図書館で障害者サービスを実施しているのは2割程度です。弱視者のニーズの高い音訳図書や拡大図書、バリアフリーな電子図書が身近な図書館で借りられるようになるというように整備が求められます。

著作権法第37条の3項で視覚障害者のために著作権者への許諾が得なくても音訳制作ができる図書館など、政令で定められている団体が限られております。多くのボランティアグループなどが複雑な手続により申請が却下されている状況にあります。著作権法の改正を含め制度の改善を求めたいと思っております。

続いて、2点目です。歩行による移動に関する環境整備です。

自動車を運転できない弱視者にとっては、もっぱら歩行により目的地まで行くことが多いです。しかし、例えば横断歩道を渡る際、道路の反対側にある歩行者用信号機が見えないことが多々あります。この対策として、横断歩道の手前に補助信号機LEDつき音響装置などを設置するなどして、音声信号機やエスコートゾーンの整備とあわせて見やすい信号機についての環境整備をお願いしたいと思います。また、歩道から放置自転車や看板などがなくなることも求めたいと思っております。

以上ですが、最後に、弱視者の見え方は十人十色と言われるほど、個々人によって、その見え方はさまざまです。おのずと求めるニーズが異なってきます。できるだけ弱視者個人のニーズに即した形で対応していただければ助かります。

以上です。

○ 石川委員長 並木様、ありがとうございました。

質問につきましては、先ほど申しましたように、次の団体からのお話を受けてから2団体まとめてとさせていただきたいと思います。

それでは、全国肢体不自由児者父母の会連合会の石橋様、よろしくお願いします。

○ 全国肢体不自由児者父母の会連合会(石橋氏) 全国肢体不自由児者父母の会連合会の理事を務めております石橋と申します。

会を代表しまして、基本方針に関する意見を述べさせていただきたいと思います。いただきました順に追って意見発表させていただきたいと思います。

不当な差別的取り扱いの基本的な考え方といたしまして、不当な差別的取り扱いとは、部会意見でまとめられました「障害又は障害に関連する事由を理由として、区別、排除、制限等の異なる取り扱いがなされる場合」と考えます。

これは、直接差別、間接差別、関連差別のあらゆる場面において不均等な取り扱い行為であることから明記すべきと考えます。

中でもなかなか見えにくい場面といたしまして、多分間接差別に該当するかと思うのですが、事業所または企業の中の風土とか理念、企業内資格、こういうところも1つのターゲットになるのかなと考えます。今後、典型的な間接差別や関連差別の事例について具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ対応するとされていますが、その内容を当該者に十分に公知、また公知する環境をつくることが重要です。公知しないことがある意味では差別に当たると考えております。

そして、当該者が自身の受けている対応が正しいものであるか否かの判断ができる環境が十分に整われることも必要で、この環境整備がなされないということも差別的取り扱いの1つと考えます。事例をたくさん集めても、それを知らしめなかったらいけないという意味でございます。

1-2、不当な差別的取り扱いにつきまして、部会意見にあるように、当該取り扱いを第三者が客観的に見て正当な目的のもとに行われたものであり、かつ、その目的に照らしてやむを得ない取り扱いと言える場合においては、正当な理由があるとして差別にならないと考えます。

しかし、差別は基本的人権にかかわる問題であるため、著しく当該者並びに第三者の生命または身体の保護(安全)のためやむを得ない場合が基本であり、正当な理由が客観的に立証できる場合は差別とならないが、それの立証責任は当事者ではなくて行為者側が担うべきと考えます。

なお、安全等は、個々の状況や考え方により異なりますので、過度の負担に対する線引きも非常に難しい問題です。差別意図がなく、結果的に差別的取り扱いが生じる場合もあります。そのためには、第三者による客観的判断が迅速にできることが大切であり、指針とともに身近な場所で、時間をかけることなく、迅速に紛争を解決できる仕組みが必要と考えます。

次に、合理的配慮の基本的な考え方として、どのような配慮が求められるかについては、合理的配慮とは日常生活・社会生活のあらゆる分野において、障害者が障害のない人と平等な機会を確保するための配慮と考えます。それにも少数者の視点に立った配慮が必要です。

また、合理的配慮は個別事案とされています。その場合、その場で合理的配慮を請求、提示を求める場合は問題ありません。例えばユニバーサルトイレ、地域によっては、みんなのトイレ、または多目的トイレと言われていますが、そこにはベッドを設置するという項目がありますが、簡易ベッドの設置では対応ができない難しい例が多々あります。私どもの団体では、そのような場合、床にマットを敷いて対応しているというのが実情ですので、このベッドというものの位置づけもきちんとしなければいけないのかなと思います。

その配慮を請求する場所が身近にない場合や、もしくは複数になる場合も想定できます。迅速に請求が行えるような仕組みが必要と考えます。特に合理的配慮の発動条件の本人からの申し出は、障害児や意思表示が難しい重度障害者には厳しい条件です。障害児者と日ごろより意思疎通を図っている保護者(家族)や支援者の請求も視野に入れるべきと考えます。

次に、合理的配慮の過重な負担につきましては、過重な負担はQ&Aで示されているとおり、事業等の規模やその規模から見た負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響が考えられるが、請求された内容、対象が個人もしくは公的機関などにより負担は大きく異なります。合理的配慮を当事者の努力に極端に負うことも過重な負担に含まれると考えます。そのため、過重な負担の判断は第三者機関により客観的に、かつ迅速にされるべきであり、その基準や可否を判断する仕組みが必要と考えます。

なお、正当な事由の判断の項でも述べたように、合理的配慮を求めた障害者が相手の事業規模や負担の程度といった情報を入手するのは難しいので、重ねてですが、立証責任は相手方が担うべきと考えます。

次に、相談・紛争処理体制のことでございますが、障害を理由とする差別について、相談機能を強化することが必要と考えます。国の責任において、障害者、関係団体の協力のもと、障害者に対する差別事例の収集と分析が重要です。事例に基づいた対応指針やガイドラインを用いた研修が必要と考えますが、現在、サービス管理、相談支援等研修が多種にわたっています。障害及び障害理解に関する研修に障害当事者、関係団体が関与できる構成で研修を整理、体系化する必要があると考えます。

また、差別解消に当たっては障害の専門家を育てるのではなく、この法律をお互いの権利の主張争いの場としないためにも、障害者が特別な存在ではなく社会の一員であるという認識を持てるような研修とすることは必要かと考えます。

2番目の基本的な事項につきましては、差別事例の収集などを通じて、できるだけ多くの具体例を示すことが重要と考えます。

1つの事例といたしまして、障害者手帳に下肢不自由の等級のみ記載されているが、現在上肢不自由もある方が電動車椅子への変更を求めたときに、手帳主義から即座に却下されております。明らかに上肢不自由とわかる方が目の前で困っていても、窓口では判断できずに何カ月もかかる手帳申請を再度求められたという事案もあります。

次、紛争のほうですが、この場合もできるだけ多くの具体例を示すことが重要と考えます。大手事業所や大都市では合理的配慮の提供は進んでいますが、地方では積極的に整備するにはコストも人員も不足しています。駅などでの業務効率化のための人員の減少に不安の声もあり、転落事故の防止策の徹底とともに、適切な配置をお願いします。

次、その他のほうですが、1つ。相談及び紛争の防止に関しては、初期段階での解決が望ましく、相談体制の仕組み、構築が重要です。その組織が既存の機関を活用するとなっており、気楽に立ち寄れる身近な場所でいつでも相談できる支援体制が必要です。

また、障害者のみならず、事業者等も障害者の問題について、いつでも相談できるための機関構築が必要と考えます。

障害者差別解消支援地域協議会についてですが、先進的な事例紹介、設置状況の把握となっていますが、将来的には、障害者とその家族の置かれている状況を把握し、差別の解消に取り組むことが望まれることから、構成員に障害当事者とその家族、関係団体、弁護士等を含むことを希望します。

そのために、協議会は、都道府県、政令指定のみならず、できる限り多くの自治体に設置すべきと考えます。

ただし、障害者が地域生活をする上で必要な医療、保健、福祉に関する相談を担っている障害者自立支援協議会とは別組織となるため、その他の関係団体も含めた連携の在り方などを精査する必要があるかと考えます。

上記以外につきましては、新法が絵に描いた餅にならないためにも、障害者やその家族、関係者だけでなく、広く国民への法に対する理解、浸透が必要です。

障害者のための法律ではなく、全ての人々に平等な社会生活を保障するという視点に立ち、わかりやすく、実現可能にできる具体案を提示するものになることを望んでおります。

以上でございます。

○ 石川委員長 石橋様、ありがとうございました。

それでは、残りの時間20分弱ですけれども、委員からの質問、意見等を求めます。挙手を求めます。少し挙げていてください。確認します。

それでは、まず竹下委員、お願いします。

○ 竹下委員 竹下です。

弱視者問題研究会の方に2点お伺いします。

弱視者の場合に、視覚障害者という枠組みだけでは十分なその特性が考慮されないということからのきょうの意見だったと思うわけですが、それを踏まえた場合に、各分野ごとでの弱視者に対する合理的配慮などを具体化する場合に、弱視の持つ個別的な障害の特性というものをどういう形で表示あるいはわかりやすく提示していくことがいいのかについてのアドバイスを1つお願いします。

2つ目には、私は全盲ですけれども、言葉は不適切かもしれませんが、全盲と違って弱視の場合には、障害を持っていること、視覚障害者であること自身が外部から認識されにくいと理解しています。そうであれば、なかなか合理的配慮が実施される場合、あるいは全ての場面ごとでの理解が深まるためには大きなハンディをその点で持っていると認識しています。その点で、弱視者であること、視覚障害の中でも一定の特別の配慮を要する特性を持った視覚障害であることを相手方に認識してもらうための対応として、何か考えていることがあれば教えてください。

この2点です。

○ 石川委員長 竹下委員、ありがとうございました。

済みません、1点目、私は質問の意図を理解できなかったので、もう一度教えていただけますか。

○ 竹下委員 1点目は、視覚障害というだけでは十分に理解されない分野が弱視者の問題だろうと認識しております。したがって、個別性の強い弱視という障害を合理的配慮に生かすためにはどのような留意点があるのかについて御教示願いたいということです。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、2点質問がありましたので、並木様、よろしくお願いします。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) まず1点目のどのような視覚障害者という枠組みの中ではということなのですけれども、よく国土交通省さんとかでガイドラインづくりとかに協力しておるのですけれども、そういう中で、いわゆる自然科学的な数字というものを重視した実験とか、そういうのに非常に参加させられると言ったら語弊があるのですけれども、でも、弱視者は本当に見え方が様々で明るさが違ったりしてずいぶん見え方がちがってきます。あとは代替器官を使ったり、何となく適当にやるところとか、視覚以外のものを駆使してその場を乗り切るということもありますので、単純に実証実験だけで弱視者を捉えてほしくないという認識を持っています。

個々の弱視者から意見を聴取してもらい、社会学的調査という言い方になるのでしょうか。文書とかヒアリングとかをとっていただいて判断していただきたいなと思っております。

2点目の障害を隠すとかわかりづらいという意味では、例えば内部障害の人であっても、聴覚障害の人であっても、ぱっと見はわからないところというのは同じだと思うのです。あともう一つが都合がいいと言ってしまえば都合がいいのですけれども、やはり本人が申告した段階で合理的配慮を進めていけばいいのかなという認識は持っています。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、大谷委員、お願いします。

○ 大谷委員 大谷です。ありがとうございました。とても貴重な意見、ありがたく思っています。ほとんどもう異論なしということで両者に感謝したいのですけれども、弱視者の方にせっかくですのでお聞きしたいのです。ごめんなさい、お名前を聞きそびれてしまったものですから。並木さん、失礼しました。好事例をこれから集めることになると思うのですけれども、特に学校段階における差別の解消として、実際にそちらの団体でこのような合理的配慮がされたという好事例は既に集めておられるのかどうか。特に教科書と入学試験、本当に切実だと思うのです。大学入学試験における、それから高等学校もそうだろうと思うのですけれども、配慮が具体的にされていない。当会で何度も要求してもされていないという報告になっていますけれども、せめて何か好事例、こういうことがあったというような例がありましたら、ぜひ紹介していただきたいと思います。

差別用語の問題。全国肢体不自由者の方の御意見にも共通しておりましたけれども、専門家を育てるのではなく普通の存在としてという御意見も本当に心強く思いますし、やはり特別という表現に関しても御意見をいただいて本当にありがたく思います。

そういった意味で、そういうことに関して実際に差別を受けたかどうかということ、これは両者の方にお伺いしたいのですけれども、そういうケースをお持ちなのかどうかということも含めて具体的に情報提供をしていただけたらと思いました。ありがとうございました。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、並木さんには2点、石橋様には1点ということかと思いますが、よろしくお願いします。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) 好事例というお尋ねなのですけれども、実際、文部科学省のほうで既に高校に入学している弱視者についてのデータ、今、具体的な調査を失念しておるのですけれども、そのほうから得られる部分と、あとは私どももそうなのですけれども、拡大写本ボランティアさんのほうが実際に教科書を個々の弱視児に合わせてつくっておりますので、そちらのほうにまずお尋ねいただいたほうがより具体的なものが得られるのではないかと思っております。

試験に関してなのですけれども、この件については、私どもでいろいろな会員が入試センター試験以外にも各種試験を受験しておりまして、その具体的な事例を紹介したものを会報に掲載しております。必要であれば、こちらのほうから抜粋したものを後ほど提供したいと思っております。

2点目、お話としては、差別用語で具体的な差別を受けた事案ということになるのでしょうか。そういう意味では、かなり今意識が進んでおりまして大分変わってきていると思うのですけれども、実は私の体験になるのですけれども、父親が認知症になりまして、成年後見人に私がなることになったのです。家庭裁判所に行って書記官の人に、私は視覚障害者で書類にうまく、実際裁判所自体が暗くて字も小さくて書きづらかったので、あなたは視覚に障害があるようですけれども、後見人になれますかとか言うので、読みづらい資料を見させられただけでそういうふうに言われたので、障害者差別禁止法というのができたらお前を訴えてやるぞとその場で私は言いました。

以上です。

○ 石川委員長 最後の話、印象的でした。

石橋様、お願いします。

○ 全国肢体不自由児者父母の会連合会(石橋氏) 具体的な言葉でというのはないのですが、全国から寄せられた意見の中には、やはり地方での方言的な、その土地固有の会話かもしれませんが、そういう言葉で傷つけられたということがあります。具体的に、ではどういう方言かということについては、まだ調べ上げておりません。

あとは、障害を持っているということで、獣医師の資格は取れたけれども、その職につけないとかということが意見としては出ていますけれども、では現実に、この場所とかそういうところのもとより詳細な具体的な例はありませんが、そういうようなことです。

どうしても研修というのは何かを運営するための資格研修と位置づけられているものですから、そのことに関して非常に危惧しているという意味合いと受けとめていただければと思います。

○ 石川委員長 どうもありがとうございました。

あと2人、手が挙がっておりました。時間の関係もあるので、できれば少し簡潔に御質問をお願いできればと思います。

尾上委員、お願いします。

○ 尾上委員 尾上です。どうもありがとうございました。両方の団体から本当に非常に示唆に富む発言をいただきました。ありがとうございます。

その上で、弱問研の方に質問をさせていただきたいのですけれども、何よりもいまだに高校に学ぶ視覚障害の方の教科書の現状がこんな状況だというのを聞いて本当に驚いたというか、一刻も早く解決しなければいけないと思った次第です。その上で、きょういただいた墨字でいうと4ページのところの件です。

大学の入試センターでいまだに1.4倍の14ポイントのみということになっているということでした。その後、教科書バリアフリー法ではいろんなポイントのものが出されているということなのですが、これは例えば大学入試センター試験の配慮が決められたのが大分前で、それ以降、1個も見直されていないのかどうか、なぜこんな状況になっているのか、もう少し経過や背景を教えていただきたいのが1点でございます。

そして、2つ目が8ページですが、読書に関する環境整備ということに関係して、特にえっと思いましたのは、著作権法が改正された後もなお、例えば大学の障害者学生支援室もそういった著作権の制限のままということのようです。やはり大学で学ぶ学生からすれば、一番身近な障害者学生支援室から支援を得られるというのが一番アクセスしやすいと思うのですが、なぜこんなことになっているのかという背景も含めて御説明いただければと思います。

以上2点です。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、並木様、お願いします。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) まず、試験についてですけれども、例えば現段階のことを今詳しくは語れないのですけれども、私どもが一番最大危惧して、これまでずっと1.4、14ポイントの問題もそうなのですけれども、時間延長のほうを割と取り組んでいたところがございまして、点字受験生は1.5倍の延長、弱視者の場合は1.3倍と格差があるのです。この現状については変更されていないかと思っています。点字の人が本当は熟達していれば弱視者の読み速度よりもはるかに早くて弱視のほうがよほど遅いのに、なぜここが1.5と1.3というのに合理的な理由があるのかどうかについて追及はしているのですけれども、明確な答えが得られていないというところがあります。

読書に関してですけれども、もう一度、御質問。

○ 尾上委員 墨字のほうでいうと8ページになるのですけれども、障害当事者や社会福祉協議会、大学の障害者学生支援も同じ立場におかれていると。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) 37条の第3項、実は私どもの会報でもいろんな障害者に関する記事を転載しようかと思いまして、文化庁に私どもの団体が申請しておりまして、非常に多岐にわたる書類の申請等がございまして、実際にまず申請の仕方を共有していただいて、なるほどこれはなかなか大変だなというのを実感していただいたほうがよろしいかなと思っています。

大学に関しては、まだデータのほうは整理できていない状況にあります。済みません。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

私から補足してもよろしいでしょうか。視覚障害者等情報提供施設というのが37条で許諾なしに複製することが認められていて、それが政令で規定されていますが、おおむね図書館なのです。大学の場合は大学図書館となっていますが、実際に作業をやっているのは障害学生支援室なので、そこに乖離があるという問題かと思います。

それでは、次に、清原委員、お願いいたします。

○ 清原委員 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

並木さん、石橋さん、本当に示唆に富む御意見、ありがとうございます。それぞれに1問ずつ質問させていただきます。

まず、並木さんの問題提起の中で、出版社から発売されている電子書籍についての改善の御提案がありました。すなわち電子書籍リーダーで活用できるように音声読み上げに対応するデータの発売を求める御意見でした。

中途で失明された方で点字が使えない方あるいは高齢者の方、そして視力障害のみでなく色覚に障害のある方を考えますと、音声で読み上げる機能というのは極めて重要だと思います。職場でも情報通信機器をより一層使えることで自立支援につながるという観点からの問題提起だと思うのですが、具体的に弱視者問題研究会で、出版社、とりわけ電子書籍を出版されるところに対して、このような問題提起を既にされていらっしゃるかどうか。そして、もしされているとしたら、その反応はいかがかということ。そして、今後、どのような働きかけをすることが有用と考えていらっしゃるか、もう少し教えていただければと思います。

次に、石橋さんに1つ質問をさせていただきます。

14ページで「障害者差別解消支援地域協議会」についての御提案をいただきました。構成員に障害当事者とその家族、関係団体、弁護士等を含むことを提案されていますし、都道府県や政令指定都市のみならず、できる限り多くの自治体に設置すべきという趣旨からの御提案です。三鷹市のような基礎自治体で設置すべきかどうかということは悩ましいところなのですが、その文章の後段で「障害者地域自立支援協議会とは別組織となるため、その他の関係団体も含めた連携の在り方など精査する必要があると考えます」という問題提起をしてくださいました。三鷹市では、障害者地域自立支援協議会を持っておりまして、建設的に障害当事者や支援者団体から御意見をいただいておりまして、この組織と今後の差別解消支援地域協議会の関係については大きな課題となっています。小規模の自治体が別組織にしなければならないとしたらどのような在り方があるのかということでの悩みというか、問題認識です。何かヒントになるような御示唆をいただければありがたいと思います。

以上2点です。よろしくお願いします。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、並木様、石橋様の順でお願いいたします。

○ 弱視者問題研究会(並木氏) 電子データの出版社への働きかけということなのですけれども、教科書についてですけれども、拡大写本ボランティアの方々は各弱視者の特性等をよく理解しているので、例えば最終的に拡大教科書をつくるのには、そのボランティアさんにお任せしたほうがよろしいのではないかと思っております。でも、それ以前の段階で、基本的な教科書のデータ、電子データ、テキストデータを提供していただければ、もっとスムーズに、要するに学期が始まってすぐ拡大教科書が提供できる状態になるのですけれども、出版社の方が電子データの提供がなされていないので一から打ち直しているという状況と聞いております。アメリカのほうでは紙媒体を出版したのに合わせて、XML形式で電子データを提供することを義務づけられていたかと記憶しておるのですけれども、そのような形で進めていければということで文化庁に働きかけた記憶があります。

以上です。

○ 石川委員長 石橋様、お願いします。

○ 全国肢体不自由児者父母の会連合会(石橋氏) ありがとうございます。まず、障害者地域自立支援協議会というものが何ぞやと思いますと当然違ってくるのかなと思います。自立支援協議会は、厚生労働省がガイドラインをつくったときに、中に権利擁護も含まれるということはうたわれていますけれども、現実には、そのように機能している協議会は数少ないのではないかという認識が私どもの団体にありますし、主に自立支援協議会のほうはインフォーマルなサービスをどうやってつくるかという意味合いでは、民生委員さんとか教育関係者の方々が入ってくるというのがあるべき姿と認識しております。

この障害者差別解消支援地域協議会という先ほどの構成のメンバー、これから在り方が考えられていかれるのでしょうけれども、きょうの基本方針の中にありますように、第三者機関がこれに当たるのだとしたら、やはり自立支援協議会とは違うのではないかと思います。

では、小さな自治体ではということになりますと、済みません、努力してくださいとしか私からは言いようがありません。

○ 石川委員長 どうもありがとうございました。このあたりで質疑応答を終了させていただきます。弱視者問題研究会の並木様、全国肢体不自由児者父母の会連合会の石橋様、御協力ありがとうございました。

それでは、10分間休憩ということで2時5分から再開いたします。

(休憩)

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