障害者政策委員会(第10回)議事録 2

○ 石川委員長 このパートでは、全国失語症友の会連合会の八島三男様、DPI女性障害者ネットワークの米津知子様、日本ALS協会の川口有美子様から意見をお聞きしたいと思います。本日は、お忙しいところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、各団体からそれぞれ10分ほどで意見を述べていただき、その後30分ほどの時間でまとめて質疑応答とさせていただきたいと思います。

それでは、全国失語症友の会連合会の八島様、よろしくお願いいたします。

○ 全国失語症友の会連合会(八島氏) 失語症友の会の八島と申します。よろしくお願いします。

1として、失語症は、話す、書く、聞く、読むが困難、難しいので、役所で手続が1人ではできない。自分に関する手続ができないので差別。

2、警察あるいは裁判所など、失語症でしゃべれないことで、失語症でも泣き寝入りが多い。人権侵害。

3として、学校、社会もしゃべれないことで受け入れてもらえない。大きな差別。

4として、失語症は他の障害に比べて身障手帳の等級が低い。援助も小さい。

差別にならない理由として、資料その他で参照してください。

合理的配慮として、公的に開かれた場所に失語症者にもわかりやすい表示をしてほしい。

2として、会議や講演会等には失語症向けに資料を用意し、失語症の知識と技術を持ったコミュニケーション援助者を配慮してほしい。

3として、家族に負担をかけずに失語症の本人がわかる表示をすること。選んで自分で示せる意思伝達方法の工夫、援助者の配置を行政や事業者に用意してほしい。

合理的配慮をしなくてもよい場合、これは資料の3を参考にしてください。

障害を理由とする差別を解消する取り組み。

1番として、一番望むのは、障害の啓発、失語症を正しく知ってほしい。行政機関や事業者に差別解消担当窓口、差別相談を置いてほしい。行政機関の差別的取り扱い、差別事例は連合会に多く相談が寄せられています。資料参考。

交通事故の被害者でも警察が取り合わない。しゃべれないので訴えが起こせない。

3、裁判でも発言させてもらえない。

役所でもしゃべれないから相談の手続も門前払い。

5番として、選挙では候補者の氏名が1人で書けないと投票できない。

復職支援にかかわる職種の人が失語症を知らないので援助してもらえない。失語症の要約筆記がいないので、会合に参加してもわからない。身障手帳などの失語症者が受け入れられない福祉の制度情報を誰も提供しない。救急隊員や医者が失語症者への対応を知らないので、命にかかわる。災害時、障害者の誘導や情報提供に配慮がなく、災害、帰宅困難、失語症になったら近所の人が話しかけなくなった。失語啓発、教育不足。

差別取り扱いとなる行為の具体的例。

1、多くの介護保険施設での失語症者が適切な扱いを受けていない。

病院では、医者も失語症者に配慮した病状説明をしていない。

事故のときにも公共交通機関でのアナウンスがわからない。

説明書を読んだり署名したりするのができないので、銀行で自分の財産を動かすことができない。

5番として、失語症者は意思がきちんとあるのだから、それをくみ取る事業所の努力が必要。よい事業所は、銀行などで親切に援助してくれる人がふえた。空港などはわかりやすい絵文字などで表示がふえた。

体制の整備への期待。

1番として、意思疎通が困難な障害者のための相談機関が必要。

2番、医療、保健、介護、福祉、保健担当者へのコミュニケーションの障害の対応研修。

3番として、国は脳卒中と後遺症について広く国民に啓発を。

4番、地域ごとに失語症者団体が差別解消に向けた情報交換ができる会議を持ちたい。

5番、障害者自身、運営団体への経済的援助とボランティア職員の派遣。

差別解消協議会の期待。

1、障害者と家族のための相談機能。

問題解決機能、他の機関との交渉も含むも重視されている。

協議会構成員に障害者団体の当事者を入れてほしい。

活動状況を逐次ホームページ等などで市民に広く知らせる。

4番、意思疎通が困難な障害者でもアクセスしやすい在り方を検討する。

基本方針作成に当たって留意すべき点。

1番として、医療、保健、福祉、行政担当者への意思疎通に関する障害のある失語症者等への情報提供を行うことの重要性を強調していただきたい。

2番、法律に関する用語、文章を平易なわかりやすい表記にしていただきたい。

以上です。ありがとうございました。

○ 石川委員長 八島様、ありがとうございました。

それでは、次にDPI女性ネットワークの米津様、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) DPI女性障害者ネットワークは、基本方針に障害女性の複合差別とその解消が盛り込まれることを求めています。

対応要領と対応指針にも、それから地域協議会の取り組みにも反映されるように、独立した項目で具体的な言葉で書いてください。なぜ女性のことを特に書く必要があるのでしょうか。障害女性は、障害に加えて女性であることから性差別も重ねて受けるので、その困難が男性とは異なっていたり、より大きい場合が多いからです。そして、この実態は、まだ公の調査統計では把握されていません。そこで、私たちは2011年に障害女性の複合差別について実態調査を行い、多数の事例が寄せられました。こういう報告書も出しています。性的被害、就業の困難、施設や病院でトイレ、風呂、生理を男性に介助されて、とても嫌だったというような深刻な声がありました。

国立社会保障・人口問題研究所の2006年の障害者生活実態調査で、「仕事がある」と回答した障害女性は3割弱です。一般男性は9割、そして一般女性、障害男性と比べても3割弱はとても低いです。障害女性の年収は約半数が50万円未満で、7割が99万円未満です。年金を足しても自立した生活は難しくて、こういうことがあらゆる場面で障害女性の立場を弱くします。これが障害に加えて女性である複合差別の結果です。

障害者権利条約は独立した条項である第6条で、障害女性の複合差別を認識し、人権を享有できる措置をとると書いています。

差別解消法も7条と8条で、障害者の性別に応じた社会的障壁の除去を書きました。これが権利条約の趣旨と同じであることは国会の質疑でも繰り返し確認されています。こうしたことから私たちは、意見記入用紙1-1のどのような場合を差別的取り扱いと考えるかという設問に次の3つのことを書きました。

1番目、障害男性が享受できていることを障害女性が区別、排除、制限されて享受できない場合。

2番目に、非障害女性が享受できていることを障害女性が区別、排除、制限されて享受できない場合。

3つ目に、1と2が重なって起きている場合です。

そして、1-3のどのような合理的配慮が求められるかという設問には、1-1で挙げた障害女性が受けている区別、排除、制限を解消することが必要な配慮だということを書きました。ここで差別解消法の第7条と8条の性別という言葉の意味について一言言いたいと思います。

さきに示したように、女性であるために男性よりも深刻な差別は確かにあるので、その解消に積極的な取り組みが必要です。でも、一方で日本は、男性は外で働く、女性は家で家事をするという考え方が根強い社会です。性別に応じた合理的な配慮もそのように解釈される心配があります。実際に障害女性だけを対象に家事の訓練を行う自治体がありました。逆に障害女性の就業率や収入の低さは軽く見られがちです。男女共同参画の理念で配慮してください。

次に、行政機関及び事業者において望まれる取り組み、対応要領と対応指針に記載すべき事項というところに、私たちは共通して次のことを書きました。

まず、差別解消にかかわる人たちに研修を行うことです。障害に関する知識、障害者の人権、障害女性の複合差別について研修が必要だと思います。

次に、講師には女性、特に障害女性が多数携わることが必要だと思います。

3つ目に、差別解消にかかわる部署に女性、特に障害女性が多数参画できるようにしてください。当事者の参画は具体的な取り組みに不可欠で、特に障害女性については、認識も取り組みもおくれてきたので重点に据える必要があります。

ここで対応要領、対応指針に記載すべき事項の例として書いた4つの事例について説明します。お手元の資料の28ページ、それから31ページからのところに4つの事例を書きました。

事例1は、子供の障害が理由で夫の暴力からの緊急避難を断念したという例です。もちろん障害女性本人が障害のために避難が困難だった事例もたくさんあります。DV被害というのは命にかかわる場合もあります。行政機関が講じる差別解消措置として対応要領に明記が必要です。

次に、事例2ですが、就業と性的被害についての事例です。肢体不自由の女性が会社の上司から性的暴行を受けました。会社は対処をせず、逆に女性を退職に追い込みました。障害者であり、女性であるために就業が困難で、障害のために逃げることができない女性に上司も会社もつけ込んでいると言えます。障害女性の就業、性的被害の防止と救済について、まさに性別に応じた配慮が必要だということを示している事例です。

事例3は、視覚障害の女性が障害を理由に病院から出産を断られた例です。障害女性がこういうふうに断られるというのは少なくありません。障害のない女性が受けられる医療を障害女性が区別、排除、制限されているといえます。幸い、転院先の病院では合理的な配慮が行われました。好事例、よい事例として紹介します。

転院先の病院は、彼女の不安や不便を尋ねて支援が行われました。例えば安全な歩行のために廊下に物を置かない。それから、食事のとき、看護師が食器の位置と料理を説明するというようなことです。医療機関が通常患者に行う、そういった範囲の配慮ということだと思います。そして、知識と経験があれば多くの医療機関で実行が可能でしょう。配慮を画一的に捉えるのではなく、求める側、求められる側が対話して方法を見出すという点でもとてもよい事例だと思います。

事例4は、難病で視覚障害を持った女性が妊娠したとき、医師と母親が堕胎を勧めたという例です。女性は同意せずに出産しましたが、とても不安な状態に置かれました。医師の発言は不当な差別的取り扱いと言えます。障害者の出産にはまだまだ否定的な見方が根強いです。障害のない女性と同じ水準の性と生殖の健康・権利が保障されるよう、啓発、研修が特に必要な分野です。

最後に、4の施策に関する重要事項について書いたことを申し上げます。

4-1で情報収集については、障害者に関する調査、統計は男女別クロス集計を行うべきということを書きました。実態の把握というのは施策の基本だと思います。条約の批准に向けた国会審議でも、政府は男女別統計の必要を答弁しました。障害者白書に載せる統計など、これからの調査はもちろん、過去の調査も集計し直してください。

そして、4-2の差別解消支援地域協議会への期待としては3つのことを特に言いたいと思います。

1つ目は、地域協議会で把握した事例を性別や年齢からも整理して公表することです。

次は、女性障害者、障害当事者の参画を確保すること。

3つ目に、地域協議会、主務大臣、そして地方公共団体、また民間事業者が連携を持って、立場を超えて紛争を解決する体制をつくることです。

最後に、啓発が大事だということをもう一度言います。障害と障害者について積極的に啓発を行って社会全体の認識を底上げしてください。そうでないと、何が差別に当たるかが理解されませんし、解決もできません。分け隔てのない共生社会に向けて、特に障害女性への理解を求めます。ありがとうございました。

○ 石川委員長 米津様、ありがとうございました。

それでは、次に、日本ALS協会の川口様、よろしくお願いいたします。

○ 日本ALS協会(川口氏) 私の立場からは、多分難病及び医療を常時必要とする障害者の立場をまとめて代表してお願いするということだろうと思います。本来であれば当事者が来てお話しするべきなのですけれども、私がALS、その他の難病患者さんのかわりにきょうは参っております。

内部障害、難病といわれますけれども、目に見えない障害を持っている人の場合は、当然受けるべき配慮とか支援が受けられない、障害者には見えないということで差別的な取り扱いを受けていると考えることができます。例えば遺伝性の難病の場合などは、結婚や就職などが難しくなるということを考えて、本人がカミングアウトできない、周囲にみずから自分の病気や障害について知らせることができない、黙り込んでしまうために支援を受けることができないという状況にあります。これは差別ではないかもしれませんが、社会や周囲の理解や配慮がないために結果として差別を受けている状況にあると考えることができます。これは特殊な状況かもしれませんけれども、今回難病が内部障害として障害の仲間入りをしたということで、特にこの辺を重点的に考えていただきたいと思っております。

不当な差別的な扱いの基本的な考えとして正当な理由があるかということなのですけれども、これに関しましては、障害者を差別することに関しては、いかなる場合も正当な理由とは言えないと考えております。ただし、ここに変な事例を挙げてありますが、非常に不衛生な状況で入店したとか入浴したいと言ってきた場合は断らなければならないような状況とかいろいろな状況があるわけですけれども、そういう場合は、ただ断るのではなくて、必ず迅速に代替案を考える、対策を講じる。必ず支援とか救援を考えるということが必要だと思います。その場合は、1対1の関係ではなくて相談先をふやすとか、支援の先、輪を広げるなどの対応を必ずとるということが必要だと思っております。

行政機関において差別を解消する取り組みとしてどのようなことが必要かということがどこかにございましたけれども、これは皆さんからも御意見が挙がっていると思いますけれども、職員等一定の割合を障害者として雇用すること。専門職に積極的に当事者を採用する、養成する取り組みを行うこと。特に公立学校等、教職員、あと公共団体等の職員に一定の割合を障害者として採用することが挙げられると思います。

それからALSの立場というか、ALSに代表されるのでしょうけれども、医療を常時必要とすることを理由として、あらゆる差別を受けております。例えば地域の学校に通えない。医療が必要だということでそういうことがあります。

例えば学校に通えたとしても学校行事に参加させてもらえない。運動会は、あなたは保健室にずっといなさいとか、給食の時間も、給食の時間だけ保健室に集められて、そこで看護師さんから経管栄養を注入してもらう。自分のクラスで給食を食べたい。同じ形状の給食を口から食べるのは無理なのです。胃瘻とか鼻からの注入になりますけれども、それでも子供たちはやはりみんなと同じクラスで給食を経管栄養で食べたいと言っています。これが今かなわない状況にあります。

細かいことなのですけれども、そういう医療が必要だということで、差別というか、手当てができていないためにそういう状況に置かれているということがあります。受験の機会を失っていますし、宿泊を伴う旅行、修学旅行等に置いてきぼりになる。コンサートの会場に入場できない。入院が断られます。これはALSの場合もそうです。妊娠、出産等を控えるように指導されることは難病で遺伝性の疾患の場合は特にそういうことの指導があります。

治療をすれば重度障害を持って長く生き続けることになる。重度障害を持って生きることを理由に医療を受けさせてもらえないということがあります。これはひどいです。事前指示書というものを書いて、あらかじめ医療を断るように指導されるということがあります。これは障害を理由に医療を受けないほうがいいという指導を受けるということで、大変に問題があります。

反面、例えば精神障害の場合は、今度は逆に本人が断っている医療を強制的に受けさせられるということもあります。これは一概に医療のことに関しては、何を必要として、何を必要としないかということは言えませんから、慎重に個別に対応する必要があります。

自己決定の問題は非常に重要だと思います。自己決定は尊重しつつも、本人の自己責任としないことです。社会が十分な支援を用意していなければ、障害者はみずから医療を選択することができません。これは周りの周囲を見回して、医療を受ければ自分は長生きするだろうと。だけれども、長生きすることによって迷惑をかけてしまうのではないかと障害者が周囲に配慮してしまうのです。そうすると、生きていくために必要な医療も遠慮せざるを得ないような状況に置かれてしまっています。そういうことは非常に問題であり、この場でぜひ御議論いただき、検討していただきたいことでございます。

あと医療的ケアを行うヘルパーというのが今まで医療だということでできなかったのですけれども、去年からできるようになっております。その取り組みに対して都道府県として支援をしていないところがあります。これなども非常に地域間格差があって問題です。ですから、全てのヘルパーがシームレスに研修を受けられるようにすること。そして病院から地域に医療的なケアを必要とする障害者が戻ってくる場合は、支援者がすぐに吸引などのケアに入れるように研修機関を育てる。それから、そこに助成するという取り組みを都道府県として行わなければならない。それに対して、医療機関も支援をしなければならない。地域で医療的ケアの研修が受けられないということは医療的ケアを必要とする障害者の差別に確実につながっていくと考えております。

大体こんなところでございます。ありがとうございました。

○ 石川委員長 川口様、ありがとうございました。

それでは、今から約30分ですけれども、3団体からのお話を伺って質問あるいはその他の御意見等を受けたいと思います。御発言を希望される方は挙手をお願いします。どうもありがとうございました。9人の方が挙手されていると認識しています。もし間違っていたら、後で教えてください。

まず、土本委員、お願いします。

○ 土本委員 土本です。

全国失語症友の会に意見ということです。知的障害の人もなかなか相手に伝えることが難しいというところと、必要で適切な支援をもらえないと、こういう会議に出たときにわかりやすく説明をして意見を発言することができかかってきているのですけれども、まだまだ行政の人たちは、やっと少しずつ漢字に振り仮名を振ってはきているのですけれども、なかなかまだ振り仮名を振っていないところも結構あるというところもあるし、その文章を説明してもらえないと、何を書いてもらっているのか意味がわからないので一緒かなと思いながら聞いていました。

DPIの女性問題で、知的の障害の女性が施設内で性的暴力を受けたときに伝え切れないで、同じ障害の人たちが一緒になって支援者に聞いてもらって伝えることが必要かなと思うし、なかなか性的暴力をふるわれたということを言いづらいところがいっぱいあるので泣き寝入りがあるということもありますので、2点だけです。

以上です。

○ 石川委員長 御意見ということで受けてよろしいですね。

それでは、石野委員、お願いします。

○ 石野委員 全日本ろうあ連盟、石野です。

失語症の友の会の方に御質問したいと思います。

お話を伺いまして、コミュニケーションに関する問題は非常に同感する点が多々あるなと思いました。貴団体の主張はよくわかります。話す権利、書く権利は大切だということをよく私どもも理解しております。伺いたいことは、代弁者の在り方についてです。例えば公証人役場では、聞こえない人が行ったとき、公正証書の作成には通訳者をつけるということを以前は認められませんでしたが、運動によって認められました。失語症の皆さんは代弁者について認められているかどうか、現状をまず教えてください。

また、代弁者の在り方なのですけれども、差別事例として先ほどの話はよくつかめましたが、好事例がありましたら、それも教えていただきたいと思います。

以上です。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、八島様のほうに2点、石野委員から質問がありましたのでお願いできますでしょうか。代弁者が使えるかどうか、それともう一点、好事例ですね。お願いします。

○ 全国失語症友の会連合会(八島氏) かわりに。

○ 全国失語症友の会連合会(代弁者) 済みません、代弁してくれということなので代弁させていただきます。

代弁者は認められてはいません。特に交通事故、先ほども言いましたけれども、裁判とか、発言できないでしょうから発言を控えてくださいとか、訴えを受理しませんと言われています。その相談が連合会にたくさん舞い込んでいます。とても大きな人権侵害だと思っていますが、それを相談するところもないですね。

もう一つ御質問があったでしょうか。好事例はないですね。特に、この1年間は交通事故の被害に遭ったのだけれども、警察が被害届さえも訴えさせてくれなかったとか、裁判で裁判官も弁護士も発言を認めてくれなかったので敗訴したというような悪い事例ばかりです。

以上です。

○ 石川委員長 ありがとうございました。好事例はないということでした。

それでは、中西委員、お願いします。

○ 中西委員 中西由起子です。質問者が多いようなので1問だけに限らせていただきます。

DPI女性障害者ネットワーク、自分自身も女性障害者ということで一番理解できた内容だったのですが、事例として幾つか挙げていただいているうちの1つが好事例で、それは一応患者であれば男女問わず、それだけの合理的配慮は必要という事例にも使えるように思いました。

女性障害者であるために必要な合理的配慮という説明が弱いように思ったのですが。例えば事例2の就業、性的被害のところで、「性別に応じて、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的配慮をする」とされていますけれども、もう少しここのところを詳しく説明していただいたら、女性障害者の合理的配慮ということの説明にならないかなと思いましたので、追加での説明をお願いできますでしょうか。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

ほかにマイクが1つオンになって。切れましたか。オーケーです。

では、米津様、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) 御質問ありがとうございます。事例2の就業と性的被害について紹介しましたけれども、性的被害、就業、これは障害女性においてはすごく重なって起きています。最初に申し上げましたが、非常に就業率が低く、収入も低いということは、例えば家族から離れて自立生活ができないとか、暴力を振われたときに、もうこのパートナーから離れて自活しようとか、それができない、あるいは施設を出たり、独立した生活ができない、自分の意見を言うことができない、訴えも非常に難しい。訴えれば職を失うかもしれない、居場所を失うかもしれないという立場にあるということです。

これは障害を持っているから起こる、そして女性もやはりそういう立場に多く立っています。女性の収入は多分男性のまだ7割にいっているか、いっていないか、6割か7割ぐらいの間ですか。そういう女性としての不利を障害に重ねて受けることによって、非常に立場が弱いということから、例え被害を受けても訴えることが難しい。ですから、性的被害は女性全般の問題ですし、男性も被害を受けることがあります。でも障害を持っていて女性であることから非常に深刻になるという背景の部分まで考えていただくと理解していただけるのではないかと思います。

ですから、障害女性がはっきり物を言い、自分のことを主張し、自立した生活ができるためには、まず経済的な自活ができるようになること、そして、こういった性的被害を受け付ける窓口がありますね。自治体やNPOでやっているところもありますが、そういうところが障害を持つ人たちに対応できるようになっていないといけません。DV防止法の中で障害者にも対応するということが書かれたので、規定の中には入っていますけれども、現実的にはどこでもそれができるかというと、そうではありません。

言葉がうまく使えない、耳が聞こえない、書類を目で読むことができない、そういう障害の人にとっては、まだまだ越えなければならないハードルがあって、相談そのものができない。次に逃げ込むためのシェルターがまたバリアがあって逃げ込めないというような状況があります。そういうことを言いたいと思いました。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、勝又委員、お願いします。

○ 勝又委員 ありがとうございます。勝又です。

今回、DPI女性障害者ネットワークが2012年にお出しになった実態調査、非常に関心を持って拝見させていただきました。こういうふうにデータを集めるということを実際になさっていることはすばらしいと思います。また、これを国のレベルでも実態としてしっかり調べていくようにという御提言があったこともすばらしいと思います。

ジェンダーの問題では、男女共同参画会議のほうでも障害女性のことについては取り上げられたことがあるのですけれども、実際のデータがないということで非常に限定的な取り上げ方になっています。これは意見です。

もう一つ意見なのですけれども、今回、さまざまなところに女性障害者が委員などでその中に入っていくことが非常に重要だという御指摘と御主張があったと思いますけれども、障害者差別解消支援地域協議会、例えばこういう協議会が開かれたときに、そこに参加する障害者団体、例えば団体の代表が出ていくといった場合に、代表に女性がいないことの弊害はありませんか。つまり、協議会には、障害者の団体が入っているけれども、団体の長がでているので女性の声は届かないということが十分にあり得ると思います。これは男女共同参画の計画の中で各種審議会、さまざまな公的なところの検討会に女性を多くしようと、一定以上入れようという提案が行われておりますが、実態として進んでいなかった背景には、役職指定の弊害がありました。

以上は意見なのですけれども、それでついでと言っては申しわけないですが、きょう、今御発言になった日本ALS協会と全国失語症友の会の連絡会のほうには、女性の障害者の方はどのくらい入ってらっしゃるか。また、その役員といいますか、どのくらいの女性が代表に参加されているかについて伺いたいと思います。

以上です。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

最後に質問がありましたけれども、失語症協会とALS協会のほうで女性の当事者、女性の役員、会員、両方ですね。

○ 日本ALS協会(川口氏) ALS協会から先にいいですか。

○ 石川委員長 お願いします。

○ 日本ALS協会(川口氏) 役員は大体同じくらいなのです。ただし、呼吸器装着者になりますと8倍くらいの差があります。男性のほうが圧倒的に呼吸器をつけている。おかしいでしょう。でも、どうしてかというと、女性はケアをする性だということで、自分が障害者になると生存をあきらめてしまう。つまり、自分のケアをしてくれる人が家族の中にいないから、誰も私のケアをしてくれないということで呼吸器がつけられない。逆に男性の場合は、ケアをしてくれる人が、奥さんがいたり、お母さんがいたり、娘がいたりするわけです。そうすると、迷い方は男も女も同じです。どうしようかなと、そんなになってまで生きていたいかなと最初思うのですけれども、同じように迷ったときに、家の中に女性がたくさんいれば、男性はより呼吸器をつけて生きられる。逆に女性の場合は、お父さんに私のケアをさせるのとか、息子の人生をとかと考えてしまってみずからあきらめる方向です。私の以前に調べたところで、その割合が男性のほうが8倍呼吸器をつけて生きているという状況がありました。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

失語症協会のほうはいかがでしょうか。

○ 全国失語症友の会連合会(八島氏) 失語症者の連合会の女性の役員の数は結構多い。男性が6割、女性が4割ぐらい。失語症者になっている男女の比というのは7、3ぐらいではないかなとは思うのです。やはり男性が多い。

○ 石川委員長 ありがとうございました。たまたま2つの団体に質問ということだったのですけれども、一般的な質問であると思います。

次に、浅倉委員、お願いします。

○ 浅倉委員 ありがとうございます。浅倉です。

DPI、女性障害者ネットワークの米津さんのお話は、大変貴重な調査でありましたので興味深く伺いました。重複することは省きまして、1つだけ御質問したいと思います。米津さんたちの調査の中で、性的被害を受けたという人が女性障害者の中で3割いるという数字が非常に衝撃的でした。

しかし一方で、障害者虐待防止法がありまして、わいせつ行為などもその法律が定義する虐待の中に入っているということがあります。しかし、虐待防止法だけでは解決されない性的被害というものがあるのかもしれないという気持ちで調査を伺っていました。このことについて、何かコメントがありましたらお願いしたいと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

米津さん、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) 虐待防止法は対象になる範囲がたしか限定されていたと思います。済みません、正確にわからないのですが、でも、性的被害というのはいろんな場面で起きます。例えば家族の中でも、義理の兄弟からとか。そういうことは多分虐待防止法ではアプローチが難しい。しかも、非常にデリケートな問題でなかなか触れにくい問題でもあるので、もう隠蔽されて外にあらわすことが非常に難しいと思います。そういう人がどうやって自分の被害を、これはもう被害なのだ、訴えてもいいのだということをその人たちがわかり、どこかに駆け込めるか。その窓口をいかに広げるかということがすごく大事だと思います。

ですから、いろんな障害に対応できる、そして秘密が守られる。例えば聴覚障害の方が手話通訳や筆記通訳を必要とする場合に、通訳をしてくれる人が身近な人だと秘密がもしかして漏れてしまうのではないかという不安を抱いて、大事な説明ができないという場合もあります。ですので、とても細かい配慮が非常にたくさん必要な分野だと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、大濱委員、お願いします。

○ 大濱委員 脊損連合会の大濱です。

川口さんと米津さんにお聞きします。おそらく次の通常国会で尊厳死法案が提出されると思います。この尊厳死法案は、要するに死ぬ権利をちゃんと与えてくださいという法律だと思います。しかし、それ以前に、私たち障害者の生きる権利がまだきちんと保障されていません。そのあたりは重度障害者にとって非常に深刻で、特にDPI女性ネットワークからの問題提起では産む権利さえ奪われるというお話でしたね。そのあたりについて、日本ALS協会とDPI女性ネットワークからご意見をお聞きできればと思うのです。

○ 石川委員長 ありがとうございます。

それでは、川口さんからお願いします。

○ 日本ALS協会(川口氏) おっしゃるとおり、尊厳死法が準備されているということも皆さんお聞きになっていると思いますけれども、ALS協会は法制化には反対している団体でございます。なぜかというと、呼吸器をつけて生きていくために24時間介護者が必要だとか、家族も介護のために就労をやめたりしますので、そういった家族に対する保障もない中でどうやって生きていけばいいのかわからない。障害者一人だけの問題ではなくて、家族一家、路頭に迷うような状況になっていくという状況です。そんな中で死ぬ権利だけ先行的になってしまうと、障害者になると家族に迷惑をかける。死ななければならないというルートができてしまう。そうすると、障害者は生きているより死んだ方がましという話になっていきます。これは非常に差別的な考え方が根底にある法律ですので、かなりここは注意深く考えていかなければいけないところだと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、米津さん、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) 私も川口さんの御意見に全く同感です。障害を持っている、そして、さらに女性である場合に自己評価がとても低いということが言えると思います。自分が大切な存在で、生きていけるという自信のようなものというか、生きていていいのだという確信がとても持ちにくい。そういう中にいるときに尊厳死法、これは何も障害者に死ねと言っている法律では多分ないと思いますが、でもそのように、自分はこれ以上、家族や周りに迷惑をかけられないのではないかと思ってしまいやすいのが障害者です。そして、女性です。

そのことを考えていただいて、私も尊厳死法は見直しを求めます。そして、生まれてくるにしろ、途中で障害を持つにしろ、生きていないほうがいいほどの障害はないと私は思っています。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、佐藤委員、お願いします。

○ 佐藤委員 ありがとうございます。日本社会事業大学の佐藤久夫と申します。

八島さんにお伺いしたいのですけれども、耳の不自由な人たちの要約筆記というのはかなりよく理解されるようになりつつあるのかなと思うのですけれども、失語症の人たちの要約筆記というのは、耳の不自由な人たちの要約筆記と大分違いがあるという話を先ほどされていましたけれども、どういうふうに違うのか、なぜ違うのかということをもう少しお聞かせいただきたい。

失語症の方の場合には、頭の中で考えたことを言葉や文字にして表現することも困難な面もある。その部分を手伝う支援というのも必要なのだろうと思うのですけれども、その支援者は失語症者の頭の中にあることをどうやって理解してそれを通訳というか、代弁できるのか。100%完璧ではないにしても、どんな可能性があるのか。表現、代弁のほうです。その2つをお聞かせいただければと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

2点ありましたので、要約筆記と通訳ですね。

○ 全国失語症友の会連合会(八島氏) 難しいから、専門家がいますから、お願いします。

○ 全国失語症友の会連合会(代弁者) 済みません、言語失語症の方のリハビリテーションに係る言語聴覚士という職業もやっておりますので、その立場から話させていただきます。失語症の方は、長い文章を理解することが困難です。基本的に短い文章か単語が必要です。特に、仮名文字がだめで、漢字がいいです。そして、絵文字とかユニバーサルデザインの文字はいいです。ですから、私どもは今あちらでも要約筆記をやっていただいていますけれども、あれは文章で八島さんには理解されにくいので、こちらで単語で表記して、しかも話された文章を漢字単語レベルに直して見ていただいて会話を理解していただいております。というような配慮が必要です。さらに記号なども対応するような要約筆記をやっております。

失語症の方の意図をわかるための方法ですね。私たち言語聴覚士がやる方法、そして御家族のなど周りの人に指導する方法としては、イエスかノーで答えられる短い質問をします。何も言えなくてもこう困っているとか、痛そうな表情を見て、身振りをしながら、どこか痛いのですかとお聞きして「うん」か「ううん」で、「うん」と答えていただいたら、では、それは頭なのですか、おなかなのですかというふうに、大きな項目からイエス、ノーで答えていただきながら絞り込んでいく。あるいはいつもコミュニケーションノートと言って、その方が表現したそうなことを漢字単語と絵で描いたようなコミュニケーション補助手段を持っていただいて、それを開いて自分で指していただくというような手段がいろいろリハビリテーション、言語のリハビリテーションの中では行われて御家族の指導、本人の指導に役立たせております。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、関口委員、お願いします。

○ 関口委員 全国「精神病」者集団の関口明彦です。

まず、各団体とも地域協議会について非常に示唆に富む意見をいただきまして、ありがとうございました。私の質問は、規制というか、ガイドラインというか、それにかかわることになるのですけれども、考え方を教えていただきたいと思います。

まず、駅や空港等での掲示のユニバーサルデザインのマーク等については、精神障害者でも甚だ困っている場面が多々ありまして、できれば失語症の方と共通のマークなり何なりでもって表示していただきたい、わかりやすく表示していただきたいという要望があるのですけれども、例えば東京だったら都営地下鉄とか、都営バスとかありますけれども、ほとんど国鉄がなくなってしまって、要するに私立の交通機関ですね。そうしたときに、そういったものをどの辺まで義務づけといいますか、こういうことをやってくださいというよりも、もうやらなくてはいけないのだというところまで考えていらっしゃるのかということがまず失語症友の会の方にお伺いしたいと思います。

次に、DPI女性障害者ネットワークのことで、これは実は私の知り合いに女性の方で精神障害者の方ですけれども、不妊手術を受けさせられたという方がいらっしゃるのです。ちょっとIQの低い方だったかもしれないのですけれども、説得されて本人が納得したとしても、つまり、不妊手術を受けながら健康に重大な害があるという場合を除いては、法律的に違法であると私はすべきではないかと思っているのです。それについてどのようなお考えを持っていらっしゃるのかということ。

ALS協会のほうについては、これも精神病院のことについても言及していただいて、確かに障害と医療というところで非常に難しい問題がいろいろあると思うのですけれども、例えばALSなどについては、タイプでもってプログを打つのがだんだん打てなくなってくるわけです。ほとんど意味不明になってくる。最初の6文字、7文字を打っておしまいになってしまうといったときに、つまり代替の意思表示手段というのがあるはずだと思うのです。それはつまりITを使えば眼球のどこを見ているかということもわかるわけですし、最近では脳に電極を宛てがってある程度の脳内の電気のあれを分析してそれを文字表記するという技術もないわけではないと思うのです。そうしたときに、例えば補装具と同じような感覚でいって、つまり、どこまでを公的に保障すべきだと考えていらっしゃるのかということを具体的にお聞かせ願えたらと思います。よろしくお願いします。

○ 石川委員長 それぞれ各団体に対して、団体の立場での意見を確認したいというお話だったかと思うのですが、簡単に失語症協会のほうからお願いします。

○ 全国失語症友の会連合会(八島氏) トイレとか緊急避難路とかAEDなどは大体できているとは思うのですけれども、1~2年の間に全部つくってもらえればありがたいです。

脳内の考えを文字表示する技術、補装具と一緒に考えてほしいのかという問題なのですけれども、できれば短いほうでいいものですけれども、よろしくお願いします。

○ 石川委員長 ありがとうございます。

それでは、米津さん、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) かつて優生保護法という法律がありまして、そこでは障害のある子孫を残しそうな人に強制的に不妊手術をすることを許していました。ただ、この法律はあまりにも障害者に対して人権を否定しているので、96年に改正されまして、今は母体保護法になっています。母体保護法が認めている不妊手術を行ってよい要件の中に、障害というのは入っていません。ですから、もし、今それが行われていたら、明らかにもう法律違反です。ただ、優生保護法のころの考え方がまだとても根強く残っているので、本当にこのことは丁寧に見ていかないといけないと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

では、川口さん、お願いします。

○ 日本ALS協会(川口氏) 関口さん、どうもありがとうございました。先ほど私は言い忘れてしまったのが、意思伝達装置のことなのですけれども、やはりALSの人は障害が進むにつれて意思伝達が非常に難しくなります。

1つは、機械を使ってコンピュータのようなものにスイッチをつなげて、それで意思表示をする方法と、それからローテクで文字盤というものをかざしてヘルパーが読み取る方法とどちらかなのです。

1つは、入院しても看護師さんたちが文字盤を一切とってくれない。だから、患者さんは言いたいことがあっても何も聞いてくれないのです。そういう状況があるので、ALSの人は入院が恐怖です。ずっと入院している方もいらっしゃるのでそんなことは言ってはいけないのかもしれないですけれども、非常に不安が多いということで、ぜひ看護教育のようなところに文字盤教育を入れてほしい。これは失語症も多分共通する問題だと思うのですけれども、自分でコミュニケーションをできないというか、自分から伝えられない人は、こちらが読み取ってあげないといけないのです。その読み取ってあげるという努力を今はしないでも差別にはなっていないのです。これは必ず改善してほしいということであります。

意思伝達装置の公的に保障する範囲ですが、今、難病の施策で、意思伝達装置は給付の対象になっているのですが、お願いとしては、ただ機械をぼんとするのではなくて、その機械と本人とを接続するためにサポートが必要なのです。今はその地域のボランティアの人がほとんど無償で障害者の自宅に通っていってスイッチを手づくりでつくってあげたりとか、設置をしてあげたりとかということをしているのですけれども、それをぜひ制度化していただきたい、そこに助成金なり何らかの謝礼が出るような仕組みにしていただくと普及していくのではないかと思っています。

以上です。ありがとうございました。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、伊藤委員、お願いします。

○ 伊藤委員 難病の場合でも失語症になる方も大変多いので、きょうは大変よい話を伺わせていただきまして、ありがとうございました。

もう一つ、私どもは今新しい難病法をつくろうということで動いているわけですけれども「難病の多くは遺伝子レベルの変異によるものが少なくない」としていますが、そういうことで遺伝子というものが非常にクローズアップされてきております。遺伝子の治療もありますけれども、遺伝子による診断とか、あるいは病因の解明というようなことがターゲットになっておりますけれども、その中で遺伝子に関する技術が非常に盛んになりますと、マスコミなどにもよく出ていますように、遺伝子によっておなかの中にいる子供というか、自分の子供の将来ということがわかるようになってきております。そういうようなことも障害者の差別になる、あるいはそういう重い病気を持った人を出産しないというようなことになるのか、これはどういうように考えていいかわからないところが随分あると思うのですが、何かDPIのほうで遺伝子にかかわることで何か御意見がありましたら教えていただきたいと思います。

ALSの川口さんにお聞きしたいのですけれども、今、難病法ができる中では、たくさんある難病の中で法律の対象となる病気とそうでない病気というのがあるということでいろいろ問題になっております。今、法律ができようとしている段階ですので、できればスムーズに法律をつくりたいなと思うので、その妨げにならない範囲で、対象になる疾患とならない疾患があるということは差別なのかどうかということの御意見を伺いたい。

今、人生のお終いの医療ということがいろいろ話題になっておりますが、そこの厚労省

が行った調査の中でも、多くの医療機関は「人間の死の在り方については法律でつくる必要はない」ということが圧倒的に多くの医療機関の方々からの回答にあるわけですけれども、一方、尊厳死の問題であるように、人工呼吸器を外そうと思ったときに外せるということにしないから人工呼吸器の装着が進まないのだというような意見もあるのですけれども、この問題についてどうお考えになるのか。

難病に関しても山ほど差別の問題というのはあるのですけれども、当面ここらあたりが大きな問題かということで、御意見を伺いたいと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

まず、米津さんに遺伝子診断、遺伝子治療について、川口さんに難病法と人工呼吸器についての質問がございました。お願いします。

まず、米津さん、お願いします。

○ DPI女性障害者ネットワーク(米津氏) 御質問は、恐らく出生前検査のことをおっしゃっているのだと思います。まず障害を持った子供が生まれたときにおめでとうと言ってもらえないという現実があります。障害を持った子供を持つこと、育てることが非常に不利な社会です。こういう中で、検査だけが提供されるということになれば、多くの人はそちらの選択肢、実は選択肢と言っても同じ結果になる選択肢ではなく、産んだ場合、産まない場合、産まないほうが楽であるというような選択肢の示され方をしてしまうのと同じことです。障害児を育てにくい社会で検査の方法だけが出回っていくというのはそういうことだと思います。

その結果、障害に対してますます否定的な考え方が広まることを非常に私は危惧しています。せっかくこうやって、障害者の制度改革が進んでいくときに、もう一方で障害者に対して否定的な考え方、あるいは技術が出回っていくということを私はとても心配しています。

まず、女性に対して障害児が産まれても責任を問うようなことをやめましょう。障害を持った子供、それを育てる親に十分な支援をしましょう。その結果、産めるという人は結構出てくると私は思っています。それでいいという社会にしていきたいと思います。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

それでは、川口さん、お願いします。

○ 日本ALS協会(川口氏) 伊藤さん、ありがとうございます。大変重要な御質問をいただいたと思います。

難病法の中で法律の対象となる病気とそうでない病気が出てきてしまうということに関してなのですけれども、我々はJPAとさくら会で患者の登録サイトというのをつくっておりまして、去年、かなりの方の難病患者さんの言葉を集めたのです。その結果、疾患ではなくて、病状とか個人のニーズで支援をしていく必要があるだろうということです。今まではどうしても病気は疾患名で縦割りでいったわけです。だから、ALSだからSMAだからとか、筋ジスだからとか、そういうことではなくて、個別のニーズで横に切っていくという指標をつくっていくということが非常に重要だと思います。これはみんなで研究していけばいずれできるはずなのでぜひそれを進めていきたいということで、これは差別の問題ではなくて、ただそういう仕組みがまだできていないという、ただ、それだけなので期待しております。

終末期医療の調査をすると、法律にすべきではないという意見が圧倒的に多い。その中でも強引に尊厳死法をつくるというのは間違っているのではないかということをぜひ委員会として提言していただきたいと思っています。

これは難しい問題なのですけれども、人工呼吸器を外す権利がもしあるなら呼吸器をつけるという人が多いと言われます。実際にそうやってALSの中でも最初から呼吸器をつけないで亡くなっていく方が多いのですけれども、これは海外の状況を見ると明らかで、人工呼吸器が外せる国では人工呼吸器をつけなくなっていきます。そういう状況があります。イギリスでは呼吸器をつけても外せるのですけれども、そういうところでは呼吸器は最初からつけなくなっている。なぜかというと、そんなつけたりとったりできるような軽い命。ALSの場合ですけれども、ALS患者自体の命がすごく最初から軽いものになってしまう。

今は日本では呼吸器をつけたら外せないので、それはつけた途端に臓器移植したのと同じような状況なのです。そうすると、つけたら外せないので、何とかして生きられるようにしなければいけないとみんなが頑張るのです。これは一旦外せるようになると、私はヘルパーの事業所をやっているのですけれども、外せる人には外す方向に支援してしまうかもしれません。だって、介護が非常に難しいし家族が疲れて在宅破綻するのです。家族はギブアップしたいけれども、今は呼吸器をとり外せないわけで、そうするとギブアップできないから何とか頑張っていくうちに上昇気流に乗るということの繰り返しで20年、30年と生きていく病気です。

これは一旦外せるとなると継続はみんながあきらめてしまう。支援者は潮が引くようにさっといなくなって孤立させて呼吸器を外す方向に持っていく。海外は外せる状況なので、それでもいい、患者が死んでもいいという話になってしまっているわけです。でも、日本はそういう状況ではなくて、むしろからだの中に入れてしまうのがいいのでは。今は呼吸器は身体の外付けなのですけれども、気管の中に入れてしまってとれないようにしてしまうということが障害の考え方としては多分正しいのだろうと思います。機械ではなくて、呼吸器官としてもう二度ととれないようにする方向で考える。私はそういうふうに考えますけれども、いろんな意見があるというのは確かにそのとおりでございます。ありがとうございました。

○ 石川委員長 ありがとうございました。

これをもちまして質疑応答を閉じさせていただきます。八島様、米津様、川口様、大変参考になる御意見をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、これで10分休憩をさせていただいて、3時30分再開といたします。

(休憩)

前のページへ次のページへ