障害者政策委員会(第11回)議事録 1
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○ 石川委員長 定刻になりましたので、第11回「障害者政策委員会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。
本日の会議は17時までを予定しております。
本日は、石野委員、遠藤委員、門川委員、清原委員、中原委員、野澤委員、そして福島オブザーバーが所用により欠席との連絡を受けております。(※北野委員からも欠席の連絡有り。)また、嘉田委員の代理としまして、滋賀県健康福祉部次長の中井清氏に御出席いただいております。
議事に入る前のお願いですが、委員長が挙手を求めます。挙手をしていただき、指名を受けた後、御発言をいただきたいと思います。ゆっくりとわかりやすく発言してください。まず最初に結論を述べ、その後に理由や説明を述べていただければと思います。
発言の際は、できるだけマイクに近づいて御発言ください。また、発言が終わりましたらマイクは切ってください。あと本日はカメラが入っておりますので、御了承いただきたいと思います。
それでは、本日の議事に入ります。
本日は、冒頭30分間を自由討議の時間といたします。その中で前々回の第9回の政策委員会におきまして御意見のあった精神病床転換型居住施設の件について、厚生労働省から報告をいただきます。その後、前回に引き続きまして基本方針の検討の一環としまして、障害者団体及び関係団体からヒアリングを行います。
まず、会議の流れと資料につきまして、事務局より御説明をいただきます。
○ 東室長 こんにちは。担当室の東です。
本日の会議の流れと資料について御説明いたします。
本日の会議は、まず社会保障審議会障害者部会において議論のありました精神病床転換に関して、その後の状況につきまして、厚生労働省から報告していただきます。
その後、前回に引き続き8つの団体にお越しいただき、ヒアリングと意見交換を行います。
資料としましては「基本方針に関する障害者団体からの意見一覧」として資料1を用意しております。また、机上には、障害者差別解消法の条文、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集等、議論の参考用に資料を置いておりますので、適宜御参照ください。
また、参考資料1としまして「厚生労働省提出資料」、「『精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会』における精神病床の転換に関する議論の経緯について」をお配りしております。
具体的な進行についてですが、途中10分の休憩を3回挟みながら進めます。
タイムスケジュールとしては、この後13時40分ごろまで厚生労働省からの報告とその他の意見交換を行います。
その後10分休憩を挟みまして、13時50分~14時50分まで、社団法人全国腎臓病協議会、一般社団法人全国心臓病の子供を守る会、一般社団法人全国手話通訳問題研究会からヒアリング及び質疑応答を行います。
その後10分休憩を挟みまして、15時~16時までNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会、NPO法人全国言友会連絡協議会、NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会からヒアリング及び質疑応答を行います。
最後の10分間の休憩後、16時10分~16時50分まで、日本肝臓病患者団体協議会及びNPO法人全国要約筆記問題研究会からヒアリング及び意見交換を行うといった流れを想定しております。
なお、15時~16時のヒアリング団体であるNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会が発言の様子を撮影なさることになっております。政策委員及び同じ時間帯のヒアリング団体からは事前に了解をいただいておりますが、傍聴の方を含め御都合の悪い方がおられましたら事務局までお申し出ください。
本日の会議の流れ及び資料については以上です。資料等の不足がありましたら、事務局まで御連絡ください。
事務局からは以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。議事進行につきまして御協力をいただきたいと思います。
それでは、最初に厚生労働省より報告をお願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) 厚生労働省精神・障害保健課長の北島でございます。
前々回の会議におきまして御指摘のありました精神病床等に関する事項について御説明を申し上げます。
資料につきましては、参考資料1と、その後ろに(参考)という1枚ペーパーがついている2枚組の資料を配付いただいております。
まず、参考資料1をごらんください。
「『精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会』における精神病床の転換に関する議論の経緯について」でございます。この指針につきましては、昨年6月の精神保健福祉法の改正によりまして、法律第41条に新たに規定されたもので、厚生労働大臣が指針を定めることとされたものであり、この指針を策定するため、昨年7~12月にかけて検討会を7回開催し、12月18日に取りまとめられ発表いたしました。
この検討会で取りまとめられました医療の指針案につきましては、その後12月26日の社会保障審議会障害者部会で了承されまして、現在、パブリック・コメントの手続きをとっているところでございます。この経緯の中で参考資料1の2つ目の○にございますように、第6回、第7回の検討会で精神病床の居住系施設への転換についての議論が行われ、賛否両論ありながらも、検討を行うことについては、各構成員の意見が一致しました。
この議論のきっかけにつきましては、参考資料1の括弧で囲んであるとおりでございまして、検討会の構成員から、第6回の検討会の際に、重度かつ慢性以外の入院期間が1年を超える長期在院者への支援といたしまして、毎年2万人の患者さんが病院で亡くなっているという状況を踏まえ、長期在院者への地域生活の移行支援に力を注ぎ、また、入院している人たちの意向を踏まえた上で、病棟転換型居住系施設、例えば介護精神型施設、宿泊型自立訓練、グループホーム、アパート等への転換について、時限的であることも含めて早急に議論していくことが必要。最善とは言えないまでも、病院で死ぬということと、病院内の敷地にある自分の部屋で死ぬということには大きな違いがあるとの御意見があったところです。
これを受けて第7回の検討会におきまして、この指針に盛り込む内容を検討し、参考資料1の一番下に記載したとおり、機能分化は段階的に行い、人材・財源を効率的に配分するとともに、地域移行をさらに進める。結果として、精神病床は減少する。また、こうした方向性をさらに進めるため、地域の受け皿づくりのあり方や病床を転換することの可否を含む具体的な方策のあり方について精神障害者の意向を踏まえつつ、さまざまな関係者で検討するという文言を追加することとされました。
これにつきましては、その後ろの資料で「(参考)」と書かれた資料に指針の概要をつけておりますが、この指針の概要の中の「1.精神病床の機能分化に関する事項」の中に追加することとされたところです。
また、当該記載に基づく検討課題につきましては、この検討会のもとに議論を行うための場を設け、今年のなるべく早いうちから検討することを予定しております。ただ、現時点におきましては、まだ具体的なスケジュール等は出ていないところでございます。
御説明は以上でございます。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、委員からの御発言、御質問等を受けたいと思います。挙手をお願いします。
最初に土本委員、お願いします。
○ 土本委員 土本秋夫と申します。
精神の人たちもそうですけれども、知的の入所施設の人たちも敷地内でのグループホーム、住居があるということを含めて、どこで住むか、誰と住むかということも自分たちで選んで決めるということ等を含めてです。
長期の入院は、私たちは生き生き伸び伸び悠々とした生活ではないということと、入所施設は全てが差別だということも含めてこれからの話を進めていきたいなと思っていますけれども、そういうことをもっと伝えていきたいなと思っています。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。御意見、後でまとめて北島課長のほうにお答えいただこうと思いますので。
それでは、関口委員、お願いします。
○ 関口委員 ありがとうございます。全国「精神病」者集団の関口明彦です。
まず最初に、この検討会の位置づけというのがよくわからないのです。実は内閣府のほうでも障害者差別解消地域委員会のほうの検討会というのは立ち上がっておりますけれども、これも設置根拠がよくわからないというか、大臣の私的諮問機関なのか、どこまで決める権限があるのかということと政策委員会との関係を明らかにしていただきたいということが1つです。
政策委員会は基本法に今回あるわけですけれども、次に、新しい精神保健福祉法が施行されるわけですけれども、これが大臣告示という形で指針が出てくると思うのですが、これはいつ出るのか。そのときに最終決定権はどこになるのか。つまり、検討会が何を言っても大臣が告示するわけですから、大臣が決めればいいのだということなのかどうかということについて確認をしたいということです。
もう一つ「Nothing about us without us」で精神障害者の意見を聞くということが書いてありますけれども、これに関しては厚生労働省の社保審で広田和子さんが、この問題についておっしゃいましたけれども、明確に当事者の立場として反対であるということを述べているのです。なぜここに岩上さんの意見だけが載っているのかということについて御説明願いたい。あくまでも可否について検討するということは否もあるわけですから、当然、否を言った人の、しかも当事者の意見を書いていないということは片手落ちだと思います。
もう一つ、重度かつ慢性以外ということでありますけれども、重度かつ慢性というのも定義を含めて検討するということになっているわけで、その定義も明らかでないうちに重度かつ慢性以外のということはいかがなものかと思うのです。これについても説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○ 石川委員長 たくさん御質問があったので1回ここで答えていただいたほうがいいと思いますので、土本委員と関口委員の御質問や御意見についてお願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) 土本委員からの御意見、障害者はどこに住むかは自分で選んで自分で決めるということはもっともでございまして、私どもも精神病院に長期入院していらっしゃる方が約20万人いらっしゃるということは大変重要な課題であると考えておりまして、できるだけ一人でも多くの方に早期に地域生活への移行を図っていきたいということは、この指針の中にも記載しておりますし、そもそも平成16年に定めた改革ビジョンというところでも地域生活の移行をうたっているところでございます。
そういうことで、できるだけ多くの方について、入院中心の医療ではなく、地域生活への移行という流れを進めてまいりたいと考えておりますので、御意見を踏まえまして、そのように対応させていただきたいと考えております。
関口委員の御意見でございますが、この検討会の位置づけでございますけれども、部長の諮問機関という形で設置しております。ただ、この検討会で出された指針につきましては、審議会にお諮りをいたしまして、そこで了承いただき、そして、現在パブリック・コメントをいただいておりますので、パブリック・コメントをいただいた上で大臣告示という形をとらせていただければと思っております。
それから、大臣告示の位置づけ、方法でございますけれども、検討会の御意見を踏まえつつ、法制的な整理も行った上で、最終的には厚生労働大臣告示としてお示しするものでございますので、その過程で広く一般の国民の方の御意見を頂戴するということでパブリック・コメントの手続きをとらせていただいているところでございます。
検討会の構成員の広田さんは反対だったという御意見でございます。検討会の中には賛成の方、反対の方、賛成反対はおっしゃらない方もいらっしゃいましたが、その中で、反対だけれども、検討することについては賛成という方もいらっしゃいまして、広田さんにおきましても、この病床を転換することについては反対するけれども、議論はいいのではないかという意見を頂戴しておりまして、今のような運びになった次第でございます。賛成、反対につきましては大変たくさんいる構成員一人一人の御意見をここに記載しておりませんが、議論のきっかけが何だったのかということで、岩上構成員の意見を記載しているというものでございます。
重度かつ慢性の定義でございますけれども、これにつきましては、現在、研究班を立ち上げまして整理をさせていただいているところでございます。この重度かつ慢性の定義が出てまいりますと、また一層病床の機能分化への議論につなげなければならないと考えておりますが、その重度かつ慢性以外でも現時点におきまして、居住施設がないということを理由に入院している方が多くいらっしゃるということを踏まえまして、できるところからこの議論を始めたい、地域の受け皿づくりの議論を早期に着手したいという考え方で進めているところでございます。
私からは以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、上野委員、お願いします。
○ 上野委員 精神科の医師の上野と申します。
最初、結論から申し上げさせていただきます。私自身は今回の病床転換型居住系施設の検討を行うこと自体に反対です。まず、日本では精神科病床が非常に多くて、かつ民間病床が約9割を占めているという実態があります。しかし、「病床を転換する」という発想自体が余りにも民間精神科病院の経営に配慮し過ぎた考え方なのです。私たちが目指すべき障害当事者の立場に立った施策とは到底思えないということが、病床転換型居住系施設に関して議論すること自体に反対の理由です。
引用されている岩上さんの抜粋された文章の中に、「病院で死ぬということと病院内の敷地にある自分の部屋で死ぬということには大きな違いがある」と書いてあります。しかし、私は20年以上精神科医療、特に病棟医療をずっと経験しておりますけれども、これは明らかに間違いなのではないか。私が今までの経験、そして私の知っている病院施設などを考えると、「病院で死ぬ」ということと「病院の敷地内にある自分の部屋で死ぬ」ということには、多分ほとんど同じことなのであろうと思うのです。
例えば当院は典型的な精神科病院だと思います。町中からかなり離れたところにあります。また、地域との交流もほとんどありません。そもそも周囲に余り人が住んでいないということがあります。例えば当院で病床転換型の居住系施設ができたらば、そこに退院して入所した人たちはどうなるかというと、買い物も病院内の売店で済ませて、多分病院の敷地内で全ての生活は完結してしまうと思うのです。だから、退院して病床転換型居住系施設に入所することで、地域での生活に移行したなどということは到底言えないのです。
私もいろいろな話を聞いたことがあるのですけれども、病院の目の前のグループホームに退院した方の話です。その方は病院のグループホームに退院したのですけれども、病院の訪問看護を受けて、往診を受けて、病院のデイケアに行って、病院からの配食サービスを受けて、なんと病院のスリッパを履いて、ジャージ姿で毎日を過ごしている。そして、その方が遊びに来た人に聞くらしいのです。「私はいつ退院できるのでしょうか」と。そういうのが多分実態になるのではないかと思うのです。
だから、病床転換型居住系施設をつくるという考え方自体をやめるべきなのです。現在の長期入院の現状を考えてみると、ハードウェアを少し変えただけでは生活の実態は何も変わらないのです。
私が数年前、都立松沢病院に勤務しているときに1,100床から750床にベッド数を減らすという検討が行われていました。そのときに私自身は「せっかくある病床をなぜ減らすのか。減らす必要はない」と考え、さらに社会的な入院に関しても、「入院の必要があるから入院しているのであって、社会的入院患者などは存在しない」と考えていたのです。
例えば当院は非常に在院日数が長いです。昔600日だった在院日数が最近2,000日になりました。でも、病棟担当医は胸を張って威張っているのです。なぜ長期化したかというと、以前は身体疾患にかかって救急病院に搬送されて転院するので入院日数が短かったのです。現在は病棟で身体疾患が診られるようになったので長くなったということで、今でも胸を張っているのです。このような実態があります。
私も今でこそ「長期入院はまずい」ということを言っていますけれども、数年前までは長期入院を肯定していました。そして、精神科病院は医者を頂点とした完全なピラミッド型の施設なのです。そうすると、そういった「長期入院は問題ない」、「精神疾患の方がひどい環境の中で生活していても問題がない」と考えているトップがいる中で、スタッフも大体同じような考え方を持っています。精神科長期入院は、そのハードウェアの問題だけではないのです。なので、病床を転換するという考え方自体をまず捨てるべきなのではないかと思います。
私自身は病床を転換するのではなくて、病床削減を議論する検討会を設けるべきであると考えます。もしくは精神科病床の入院期間を短縮すること、そして、新たに入院する人の数を減らすことを政策として打ち出すべきではないかと思います。
私が聞いた話なのですけれども、一般病院のベッド数を減らすために、厚生労働省はベッド数の削減を掲げずに入院期間の短縮を促す政策をとったのだそうです。そうしたらば一般科病院は必死にその道を進んで、力のない病院は潰れて、結果として病床はみるみる減ったというような実績があるらしいのです。
ということで、私自身は病床転換型居住系施設の検討を行うこと自体に反対です。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
御意見という形ではありましたけれども、御質問ということでもあろうかと思いますので、北島課長、お願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) まず、民間精神科病院の経営に配慮し過ぎという御意見でございましたが、この議論の過程について民間病院の経営に配慮するというような議論はございませんでした。ただ、一方、参考資料1にございますように、上から3分の1ぐらいのところに※印をつけてございますけれども、ここにありますように従前から「精神病床の転換は病院による患者の囲い込みを招き、地域生活への移行を阻害するとの意見もある。」ということは、私どもも十分承知しております。
そういったことで、厚生労働省といたしましては、病院の中の病床以外の施設に長期入院者は移っていただくということが議論の目標ではなく、地域移行を進めるための地域の受け皿づくりを進めていくことが必要であるということで議論を進めたいと考えており、検討会におきましても、まず地域の受け皿づくりについて総合的な議論をする中で、具体的な方策の一つとしてこういった病床転換の可否なども議論されることを予定しているところでございます。
○ 石川委員長 後半に医師を頂点とする精神病院文化そのものに対しての御指摘もあったのですが、それについてはいかがでしょうか。
○ 厚生労働省(北島課長) こういった精神科の領域の中で、いろいろな医療施設もありますし、病院管理者もいらっしゃると思います。私どもがいつも御助言いただいたり、お知恵をお借りしている先生方の中にも本当に一生懸命この問題を考えていただいている方や医療機関もございますので、何ともそこについては、御意見として頂戴したいと思います。
○ 石川委員長 ありがとうございます。
それでは、尾上委員、お願いします。
○ 尾上委員 ありがとうございます。DPI日本会議の尾上です。
まず、結論から言いますと、この障害者政策委員会は障害者権利条約のモニタリングの役割も果たすということがこの間国会審議等を含めて確認されてきております。その立場からしますと、権利条約の第19条には特定の生活様式を義務づけられないと書かれていますが、その第19条との関係で、病棟転換というのは非常に大きな問題があり、認められないということであります。その上で、きょういただいた資料に関して意見と質問をさせていただきます。
まず、きょういただいた資料の真ん中ぐらいに引用されている文ですけれども、私自身、子供のときに障害児の入所施設にいた時の感覚を思い出しながら見ておったのですけれども、最後に病院で死ぬということと病院内の敷地内にある自分の部屋で死ぬことには大きな違いがあると書かれていますが、どんな違いがあるのでしょうか。大きな違いがあるとは全く思えません。
これはいわば精神障害のある人は病院や施設に入っているのが当たり前だという考え方があるから、この2つには大きな違いがあると思っているのではないのではないでしょうか。もっと言えば、障害のある人は2級市民という見方が無意識のうちにこの文章の中にはにじみ出ているのではないかという感想を持たざるをえません。それが1つであります。
そして、その上で、質問ですが、これから検討されると言われている病棟転換施設というのは、障害のない人もそこには入居されるのでしょうか。そうではなくて、もし精神障害のある人だけを対象にするなら、権利条約の政府公定訳では特定の生活施設と言われていますが、いわば病床から特定の生活施設に移るだけということになって、まさに障害者権利条約第19条との関係で非常に大きな問題が出てくるのではないかと思います。そういう意味で、この病棟転換をした後の施設にはどういう方が入居されるのか。もし今事務局としてお考えがあるならば教えてください。
2つ目ですけれども、先ほどの御説明の中では、精神障害者の意向を踏まえつつ、さまざまな関係者で検討するとありました。この報告書を出された検討会に精神障害の当事者は全委員何名で、そのうち何名が精神障害の当事者でしょうか。
私自身は、こういった議論自身がいわば19条違反になりかねないことを議論していくことになるので、すべきではないという立場ではありますが、この検討をされる今後の委員会では、これまで以上に精神障害のある当事者がより参加するということを考えておられるのかどうか、その2点をお聞きしたいと思います。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、北島課長、お願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) 1点目の病床転換施設は障害のない人も入るのかという御質問ですけれども、まだ転換施設が是か非かと、可否も含めて検討するということしか決めておりませんし、これからそういったものが必要かどうかということ、もし必要だったらどんな条件の施設になるのかということを議論するということでございますので、誰が入るか、どういったものかということはこれからということでございます。
検討会の人数と障害当事者の人数ですが、検討会の構成員が25名で、そのうち2名が障害当事者でございます。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
まだどういう方が住むか決まっていないということです。健常者が住みたいとは思うとは到底思えないのですけれども、佐藤委員、お願いします。
○ 佐藤委員 日本社会事業大学の佐藤久夫です。ありがとうございます。
結論から言いますと、相当大きな問題が含まれているという指摘がたくさんある中で、そこを強行していくというのはやめるべきではないか。むしろ、もっとやらなければいけないことがたくさんあるのではないかと思います。
先ほど土本委員が、どこで誰と住むかについての選択の機会の確保ということを言われて、尾上委員もそのことに言及されたわけですけれども、それに対する課長さんの答えは、地域移行をこれまでも進めてきたし、これからも進めるというような引き取り方だったと思うのですけれども、どこで誰と住むかについての選択の機会の確保ということをその文字どおりに尊重するのであれば、1年以上入院している人たち全てに対して、どこで誰と暮らしたいのかを聞くということがまず一番大事なことなのではないかと思います。
それを市町村の責務として、国と市町村が計画相談の中でやっていく。厚労省は来年度いっぱいには総合支援法の利用者の全てについて計画相談を保障する体制を整備しようということで今努力していると思いますけれども、それは大変いいことだと思うのですが、私はそうした計画相談をする一番強いニーズを持っているのは、まず精神科病院の中に長期に入院している人ではないか。ですから、その人たちを優先して計画相談を来年度いっぱいにやっていく。そのことを国と地方自治体が義務としてやる。病院管理者は、それに対して協力をしなければいけないということを義務づけて、その過程でもし希望するのであれば、ピアカウンセリングだとか、ほかの権利擁護の仕組みも当事者が使えるようにするというふうにして、すぐに地域移行ができるとは思われませんけれども、半年かけても、1年かけても、その必要な資源を地域につくっていくケアマネジメントの過程を始めていく。それが一番大事なことではないのかと思います。
○ 石川委員長 ありがとうございます。
では、藤井委員長代理、どうぞ。
○ 藤井委員長代理 JDFの藤井です。
2つの2割という数字があるんですね。1つは、世界中の精神病床の2割が日本に集中している。世界中には170万ベッドです。日本の一般病床のうち2割が精神科病床。ですから、これは北島課長も含めて、やはりまずいと。
問題は、きょう私が質問したかったのは、この議論の前提として、今から10年前に改革ビジョン、当時、坂口厚労大臣も本部長になって、10年間で7万人を退院させましょうと。結果的にこれが10年たってほぼ横ばいであって変わっていない。したがって、この原因を北島課長さんを始め、現厚労省はなぜみんなで万歳、こういう方向が出てよかったといったにもかかわらずほとんど実現していない。この原因、主因は一体何であるか。まず、これを簡単にお答えいただけませんか。
この原因、主因は一体何であるか。まず、これを簡単にお答えいただけませんか。
○ 石川委員長 ありがとうございます。
課長、佐藤委員の御質問、御意見も含めてお願いできますか。
○ 厚生労働省(北島課長) まず、大きな問題が指摘されている中で議論を強行すべきではないのではないかという御意見でございます。確かに病床の転換ということにつきましては、いろいろな関係の方から御意見を頂戴しておりますので、そういった御意見を十分に考慮しながらと考えておりますけれども、私どもがまずやらなければいけないのは、地域の受け皿づくり全体の議論だと考えておりますので、この地域の受け皿づくりの議論はやはり1日も早く始めていく必要があると考えております。
また、長期入院者に対して、長期入院者がどこで誰と住みたいのかという意向を尊重するために意見を聞く必要があるのではないかということで、病院の管理者に協力を義務づけるということでございますが、今回の昨年6月に行われました精神保健福祉法の改正におきましては、管理者に3つの義務づけを行っております。まだ医療保護入院の患者さんに関する管理者への義務づけということで限定的ではございますけれども、医療保護入院をされた方につきましては、病院の管理者に対しまして7日以内に退院後生活環境相談員を設置する義務づけをしておりまして、この人たちが入院早期から地域移行、退院に向けての相談に乗っていくという義務づけが1つ目でございます。
2つ目の義務づけは、地域の相談事業者等を医療保護入院の患者またはその御家族の求めに応じて紹介をしていくこと。今まさに御指摘のありました計画相談などの事業者さんを紹介するということが2つ目でございます。
3つ目といたしましては、医療保護入院の入院者については、入院したときに予定される入院期間を設定することになりまして、その入院期間を越えそうな場合には、院内の委員会を開いて、継続して入院する必要性があるのかどうか、退院支援をどうしたらいいのかということを相談していただくための委員会の開催をしていただくこと、この3つを義務づけました。そういったことで入院患者さん、まだ一部ではございますけれども、そういった方々の地域生活への移行について管理者への義務づけをさせていただいたところでございます。
それから、藤井委員の御指摘でございますけれども、確かに改革ビジョン以来、地域移行ということを進めてまいりましたが、なかなか目的は達成できていないというころは事実でございますが、病床は徐々に減少してきているということで、私どもといたしましても、今回、第4期の障害福祉計画の基本指針をつくる中で、これを促進していくような計画づくりを盛り込んでいきたいと考えているところでございます。
御説明は以上でございます。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
藤井委員長代理、どうぞ。
○ 藤井委員長代理 答えが得られていない。つまり、なぜ病床がほぼ減っていない、原因、主因が何かと今質問したのです。もしわかればお答えいただけませんか。
○ 厚生労働省(北島課長) さまざまな原因があると思います。
1つは、やはり病床の機能分化が進んでいないということもありますし、地域の受け皿がないということを理由に長期入院になっている方というのが相当程度いらっしゃるだろうと認識しております。
○ 石川委員長 藤井委員長代理、よろしいですか。
それでは、後藤委員、尾上委員、手が挙がっておりますので、まず後藤委員、お願いします。
○ 後藤委員 日本福祉大学の後藤でございます。いろいろ議論が出ておりますので2点ほど確認です。
1つは、この政策委員会で、権利条約がちゃんと実施されていくことを促していく、監視とかの用語がありますが、それを進めていく。この点は政府も同じ認識と思います。
結果において担保すること。2年後、4年後、いろんな報告を国際的に提出することになりますが、今、議論されている点についても、国際的に通用する結果を厚生省さんとして出していくということの確認をいただきたいというのが1点目です。
2個目は、先ほど来出ています権利条約の第19条の地域社会でとか、特定の居住施設で生活しないという点について、地域社会というのに今回の移行する施設は当たるのか、当たらないのか。当たらないので暫定的な措置ということかと思っていましたが、先ほどの御説明では、地域社会の受け皿づくりを検討する中で本件も検討とおっしゃいましたので、ひょっとすると、これも地域社会に含まれるという理解なのかということ。一方、地域社会に入らないのであれば、平等な選ぶ機会を与えるよう、当事者団体などから既に懸念も出ていますので、どのように機会を見つけて結果を担保するのか。
これから御検討の点もあると思いますので、後半は決意表明で結構。ただ、前半の地域社会に含まれるのかは解釈の問題ですので、2点確認をお願いしたく思います。
○ 石川委員長 2点ですか。
○ 後藤委員 結果において確保する。国際的に日本が権利条約を担保していないと言われることがないような結果をつくるということであれば、いろんな議論はあっても国際的に大丈夫なことをすると今責任持っておっしゃっていただければと思います。これが1点目です。
○ 石川委員長 わかりました。2点ということでお願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) 国際的に大丈夫かということでございますけれども、政策委員会の委員の皆様はもちろんでございますけれども、厚生労働省の中での検討メンバーも含めまして、障害者の地域生活での自立、それから社会参加という目的は同じだと思っておりますので、私どもといたしましては、国際的に評価されるような施策にしてまいりたいということでございます。
この施設が地域社会に入るのかということでございますが、病院も含めまして、私個人的な意見ですけれども、全てが地域社会ではあると思っております。ただ、地域で自立して生活するということというのは、どういう施設かによるところがございますので、この検討の中では、病床が単に看板のかけかえになって、そこを地域と呼ぶことがないようにしていく必要があると思っております。
ですから、例えば病院内施設の中で転換の可否が議論されたとしても、そこがゴールであるということではないと私どもも考えておりまして、地域生活にどうやって移行するかということの中でどういう方策がとれるのかという議論ではないかと認識しております。
私からの説明は以上でございます。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、尾上委員、お願いします。
○ 尾上委員 ありがとうございます。1つは、先ほど質問しました今後の検討体制について、現在では25名中わずか2名しか精神の当事者はおられないということが確認できましたので、これをさらに大幅にふやしていく考えがあるのかどうかというのをお聞きしたいが1点です。
2点目が、今政策委員会で発言された方、誰一人として賛成の意見を述べられた方はいないと思います。反対あるいはもう明らかに疑義があるという状態だと思うのです。だとすれば、厚労省は議論したい、事務方としては議論そのものにはみんな賛成しているのだという御説明でしたので、だとすればコンクリートした状態ではなくて、ぜひこの議論の中間段階で改めて政策委員会に御報告あるいはむしろ意見交換の場を持っていただきたい。
私たちとしては、やはり権利条約第19条だけではないですが、権利条約批准、この元年の中にいわば国際社会に胸を張っていけるような制度改革をさらに進めていきたいという中で、国際社会に恥ずかしいようなことは何としても避けたいという思いがあるので、そういった意見交換の場をお願いしたいと思います。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
2点ございましたので、お願いします。
○ 厚生労働省(北島課長) 今後の検討体制についてでございますが、まだ具体的にどのように検討していくかということを事務的に整理してきておりません。ただ、第7回の指針の検討会の中で構成員からの御意見としても承っておりますのは、この指針の検討会のもとで議論をしていきましょうということで、お互いに了解されているという段階でございます。
もう一つ、政策委員会との意見交換でございますけれども、私ども、政策委員会はもとよりでございますが、こういった大きな受け皿づくりの議論をしてまいりますので、途中、どういった議論が行われているかということにつきましては、広く公表しながら進めてまいりたいと考えております。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
では、最後に三浦委員長代理、お願いします。
○ 三浦委員長代理 1点だけお尋ねをさせてください。これまでの議論で、精神病床の分化する機能として確認されたものはどのようなものがございますか。想像できるのは精神医療と住まいと生活支援などが機能として認められたのかなと思いますけれども、議論の中でどのように整理されたのか教えていただければと思います。
○ 厚生労働省(北島課長) 今回の指針の検討会の中で、精神病床の機能分化を進めるということが取りまとめられております。これにつきましては、本日お配りいたしました参考資料の後ろについております「(参考)」というペーパーの「1.精神病床の機能分化に関する事項」というところの○の3つ目~5つ目のところにございます。
急性期の患者に手厚い医療を提供するため、一般病床と同等の医師、看護師配置にすること。在院期間が1年を超えないうちに退院できるような多職種による質の高いチーム医療を提供すること。1年以上の長期在院者の地域移行を推進するため、多職種による支援を行うこととなっておりまして、具体的には急性期と1年以内、それから、それ以上の長期入院者、それぞれについて必要な医療を提供するという方向性が示されております。そういうことで精神病床につきましては、医療が必要な人に入っていただく場ということでこういった機能分化を進めてまいりたい。そして、こういった医療が必要のない方については、地域移行を進めたいという考え方でございます。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
時間の関係もありまして、まだまだ御意見等あるかと思いますけれども、ここまでとさせていただきたいと思います。
最後に北島課長もおっしゃっていたように、また尾上委員からの発言にもありましたように、政策委員会としましては、権利条約に基づく、あるいは基本計画に基づく監視を進めていく立場から、本件につきましては重大な関心を持っており、そして、議論の結論をただ単に見守るというだけではなくて、やはり中間段階での意見交換等させていただきたいとまとめさせていただきたいと思います。もし委員から反対等ございませんようでしたら、そのようにさせていただきたいと思います。
関口委員、どうぞ。
○ 関口委員 どうしても言っておきたいことがあるのですけれども、精神保健福祉法が改正されるときに、精神保健福祉法の第1条に、総合支援法と相まってと書いてあるのです。にもかかわらず、入院当初から地域移行の一般相談を受ける事業所がつくることができないのかと言ったら、法律が違うからできないという国の答弁でした。これは改めていただきたいと思うことが1つ。
もう一つは、1万6,000人以上が毎年毎年死亡退院されているわけです。我々は棺箱(ガンバコ)退院と言っています。この棺箱(ガンバコ)退院されている人がそれだけいるのに病床が減らないということは、その分新しい人を入れているからなのです。入れるのに一番手っとり早いのは無理やり入れてしまうので、現に調べてみると、日本の強制入院率は42%、OECD平均が10%です。4倍以上強制入院をしている。こういう安易な強制入院というのはやめるべきではないかと思うのです。
今おっしゃっていましたように、保護入院の方にのみ退院促進のことをやるというのは、それはそうなのかもしれませんけれども、確かに強制入院されてない方は退院したいと言えば退院させると精神保健福祉法には書いてありますけれども、やはり任意入院で入って来られてもなかなか退院しにくくなってしまう方がいらっしゃると思うのです。そういう方に対して助けの手を差し伸べなくてはいけないのではないかということがあります。
この点については、良質な医療、精神保健福祉法ですから医療と福祉ということになると思いますけれども、そのあり方として、入口のところでの4倍という強制入院の法律が強制入院のあり方を見直していただきたいということをどうしても言っておきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○ 石川委員長 関口委員、ありがとうございます。
先ほど上野委員からも、後半については同様の御指摘があったと思います。先ほど私申しましたが、もう一度繰り返しますが、政策委員会としましても注意深く見守るのみならず意見交換をぜひさせていただきたいということを、きょうの段階で一応意見とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、少し時間を超過いたしましたけれども、自由討議はここまでとさせていただき、2時から再開させていただきます。
(休憩)