障害者政策委員会(第9回)議事録 1
○ 石川委員長 定刻になりましたので、これより第9回「障害者政策委員会」を開催させていただきます。
委員の皆様、お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日の会議は、17時までを予定しております。
本日は、伊藤委員、門川委員、中原委員、野澤委員が御欠席との連絡を受けております。
また、嘉田委員の代理として、滋賀県副知事の西嶋栄治氏、また、花井委員の代理といたしまして、連合生活福祉局部長の竹内敬和氏にそれぞれ御出席をいただいております。
なお、清原委員は、15時ごろに到着との連絡がございまして、それまでの間、代理といたしまして、三鷹市健康福祉部調整担当部長の伊藤幸寛氏に御出席をいただいております。
最初に、議事に入ります前にお願いがございます。
発言はゆっくりとわかりやすくお願いします。最初に結論を述べ、理由、説明等をその後に述べるという言い方がわかりやすいかと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事に入りたいと思いますが、本日の会議においては、まず、政府からの報告事項があります。障害者権利条約の締結に向けた手続の進捗状況について御報告をいただきます。
その後、障害者差別解消法に基づく基本方針の検討について議論を行ってまいります。
まず、会議の流れと資料につきまして、事務局より御説明をいただきます。
○ 東室長 どうもこんにちは。担当室の東です。
本日の会議の流れと資料について御説明申し上げます。
本日の会議は、先日、事務局よりお送りしました本委員会でのヒアリングを行うための質問項目に対する考え方につきまして、まずは本委員会の委員の間で御意見を交換していただきたいと思っております。
資料といたしましては、基本方針に関する意見一覧ということで、資料1-1と資料1-2に2つ分けて御用意しております。また、机上配付になっておりますけれども、3種類の資料があります。障害者差別解消法の条文等、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集、加えまして、差別禁止部会の意見を議論の御参考用に置いております。適宜御参照ください。
なお、部会意見の資料につきましては、残りの部数がないものでありまして後で回収いたします。今後も使いますので、名前を書かれたり、メモなど記入されないようにお願いしたいと思っております。
具体的な進行につきましては、途中、10分の休憩を3回挟みながら、質問項目順に進めていきたいと思っております。タイムスケジュールとしては、最初に資料1-1の質問項目のうちで不当な差別的取り扱い、これは項目の1-1と1-2にあたりますが、この後、第1パートということで13時20分~14時10分までの50分をめどに意見交換を行い、その後、10分休憩を挟みます。
合理的配慮、これは質問項目1-3と1-4ですが、これにつきましては第2パート、14時20分~15時10分までの50分間をめどに意見交換をいたします。
さらに、その後、10分休憩した後、差別解消のための取り組み等、これは質問項目の1-5です。さらに、資料1-2に移ってもらいまして、質問項目の2と3の対応要領と対応指針の部分ですが、これについては15時20分~16時10分まで、第3パートで行います。時間は40分ほどをめどにしております。
最後に10分間の休憩を挟んだ後に、残りの4と5、体制整備、その他につきまして、またさらにこれまでの議論の積み残しなどの部分も含めて、16時10分~16時55分まで、第4パートとして45分間をめどに意見交換を行いたいと思っております。
本日の会議の流れと資料については以上でございます。資料の不足等があれば、事務局まで御連絡ください。
事務局からは以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、最初に、外務省から障害者権利条約の締結に向けた取り組み状況について報告をいただきます。
外務省、お願いいたします。
○ 外務省(図師首席事務官) 外務省人権人道課首席事務官をしております図師と申します。よろしくお願いいたします。本来、人権人道課長の山中が参る予定でしたが、急遽別の予定が入りまして、代理で御容赦いただければと思います。
障害者権利条約の締結に向けた今後の手続につきまして、ごく簡潔に御報告させていただきます。
皆様御存じのように、障害者権利条約につきましては、先月11月19日に衆議院本会議で全会一致で締結について承認されました。そして、今月12月4日には参議院の本会議で、これもまた全会一致で締結が承認されました。こうした国会手続においては、超党派の国会議員の先生方の御尽力があり、条約の早期締結に向けた障害者の方々からの御期待に沿う形となったことを非常にうれしく思っております。
今後の条約についての手続ですが、まず、批准・公布について閣議決定が行われまして、それを受けた形で今度は批准書というものが作成されます。この批准書には、総理大臣、外務大臣の署名がなされ、さらに天皇陛下の認証がなされます。そして、この批准書を国連事務総長へ寄託することで、条約の批准手続が完了することになります。
批准・公布の閣議決定から日を置かずして、条約の内容、条約文が官報に掲載されます。これをもって条約文が国内に公布されたということになります。そして、この条約が実際に発効するのは、批准書を国連事務総長に寄託してから30日目の日ということになります。この発効をもちまして日本国として条約上の義務を負うことになります。
なお、閣議決定の日程につきましては、現在調整中で、その日程について今、申し上げることは困難ですけれども、政府としては可能な限り速やかに批准の手続を進めてまいりたいと思っております。
簡単ですが、以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
何か御発言がございますでしょうか。
では、中西委員、お願いします。
○ 中西委員 中西です。御説明ありがとうございました。
これまでのプロセス、とてもよく説明していただいて、私どももよくわかったのですが、最後の部分の寄託に関しましては、よその国の例を見てみますと、例えば事務総長に日本の大使が、もしくは外務大臣が文書を渡す等のセレモニアスな部分というのがあるのですが、今回は、それはどういうふうに。文書だけでなさるのでしょうか。
○ 石川委員長 中西委員、セレモニアスはちょっと。
○ 中西委員 済みません。儀式的な、人目を引くような行事としての性格を備えたものを考えた国があったようなのですが、日本ではいかがになるのでしょうか。
以上です。
○ 石川委員長 外務省、お願いします。
○ 外務省(図師首席事務官) 寄託についてのそういった儀式といったものですが、現時点では、特に式典といいますか、儀式を想定しているということは特に考えておりませんけれども、ほかの国の例とか、あるいは日本がほかの条約についてどういった形で寄託しているのかといったことも踏まえながら検討してみたいと思っております。
○ 石川委員長 よろしくお願いいたします。
ほかに何か御発言はございますでしょうか。
では、藤井委員長代理、どうぞ。
○ 藤井委員長代理 せっかくのこういう大きなチャンスでありますので、外務省、また政府として国民への周知徹底、今回寄託をして発効しますよという、その辺のところのPR、広報はどう考えてらっしゃいますか。
○ 石川委員長 外務省、お願いします。
○ 外務省(図師首席事務官) おっしゃるとおり、条約の完全な実施のためには、条約の趣旨をできるだけ幅広く国民の皆様に周知していく必要があると考えております。そういった意味で、今後は条約の概要、あるいは意義について、障害当事者の方々を含む国民全体に対して、わかりやすく利用しやすい形式で広報していきたいと思っております。その過程で関係省庁の方々とも緊密に連携してまいりたいと思っております。
具体的には、これは外務省の持っている手段になりますけれども、外務省の、ホームページに条約に関する情報を掲載したり、あるいは外務省が行っているTwitterであるとか、Facebookといった手段を用いて情報発信を積極的に行っていきたいと思っております。
これに加えまして、政府広報オンラインを通じた広報、関係省庁のホームページ、あるいは障害者施策の説明資料における条約への言及といった形で条約の趣旨ないし内容について周知してまいりたいと思っております。
また、その周知を効果的に図っていく上では、社会全体の意識向上というものも重要と考えておりますので、そういった意味で例えばテレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアの協力も得て、さらに国民の理解を促進するという広報活動も必要かと考えております。また、市町村レベルでの周知徹底についても、前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
以上です。
○ 石川委員長 どうぞよろしくお願いいたします。
なお、参議院の外交防衛委員会では、本政策委員会の委員でもある藤井参考人と尾上参考人が参考意見を述べていただきました。また、同委員会では、国内の監視機能についての質問と答弁がなされたと承知しておりますが、その点についても簡単で結構ですので、御紹介いただけますでしょうか。
○ 外務省(図師首席事務官) 国会でのやりとりそのものについては、今、手元にございませんけれども、国内で実施を行っていくということを監視するメカニズム。まず、条約に定められております手続として、数年に1回、障害者権利条約をきちんと実施しているかどうかということを政府報告という形で障害者権利委員会に提出することが求められております。政府報告をつくる過程において、この障害者政策委員会を通じて障害者基本計画の実施状況について御意見をいただいて、それを政府報告に反映させて障害者権利委員会のほうに報告するという手続を踏むことを考えております。
○ 石川委員長 2点確認させていただきます。
権利条約の33条2項にある国内監視機能を担う、重要な役割を担う機関として政策委員会があると外務大臣は答弁されたと理解しているのですが、その理解で正しいでしょうかというのが1点。
今おっしゃった障害者政策の報告義務を果たす上で、政策委員会等の意見も含めて報告書に反映する、あるいはこの機関の活動もまた権利条約に基づく国内監視機能ということからしますと、それもまた日本としての報告の内容にも入ってくるかと思いますが、この2点の理解はよろしいでしょうか。
○ 外務省(図師首席事務官) まず、第1点目ですけれども、国会でそのようなやりとりがございまして、我々としましても、まさに障害者政策委員会が条約の履行に関して監視機能を担われると理解しております。そして、条約の趣旨というのは、障害者基本計画の中に反映され、それの実施状況を監視し、政府に勧告するということが障害者政策委員会の役割であると理解しておりますので、そういった基本計画の実施状況について政府報告に盛り込まれると我々としても理解しております。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
関連ですか。では、佐藤委員、どうぞ。
○ 佐藤委員 今の説明ですと、この政策委員会が進捗状況を評価する対象は、障害者基本計画についてであって、障害者権利条約の実施状況の評価については仕事ではないかのように、先ほどそういう説明のように聞こえたのですけれども、この政策委員会が障害者基本計画と障害者権利条約の2つについて実施状況を評価・検討して、それに基づいて政府が国連に対する報告をつくるという解釈でよろしいのでしょうか。
○ 石川委員長 外務省、よろしくお願いします。
○ 外務省(図師首席事務官) 私たちの理解としましては、外務省は、関係省庁を通じて障害者施策の障害者権利条約の実施状況について、いかなる措置がとられたかということについて取りまとめて、それを政府報告として提出するという役割を担っておりますけれども、その中で、障害者基本法の規定の範囲内で障害者基本計画の実施状況を監視し、政府に勧告するということが障害者政策委員会の担われる役割と考えておりますので、外務省としましては、障害者基本計画を通じてその条約の実施に資する意見をこの政策委員会から聴取して、それを政府報告に最大限反映させていくという考えでおります。
○ 石川委員長 済みません、委員長です。
権利条約が求めている国内監視機能を果たすのは政策委員会でしょうか。基本計画についてのモニタリングは、障害者基本法において規定されておりますので、既にそれは責任として認識しておりますけれども、それが部分集合であって、権利条約が求めている監視機能全体と基本計画が求めている監視機能との間に違いがあるとすると空白が生じますけれども、それについてはいかがでしょうか。同じであるという御理解であればつじつまが合うと思いますし、もし違うのだとすると、空白が生じるように思いますけれども、いかがでしょうか。
○ 外務省(図師首席事務官) 通常、こういった国際条約につきましては、国内で実施されるに当たりまして、国内の法令であるとか、あるいはその計画、実施措置に反映されるという形で条約の履行というのが行われると理解しておりますので、そういった基本計画の実施、進捗状況を通じて条約の趣旨というものが国内的に実施されていくと理解しております。こういった基本計画を通じて条約の実施に資する御意見というのを政策委員会のほうから伺って、それを政府報告に最大限反映させていきたいと考えております。
○ 石川委員長 竹下委員、どうぞ。
○ 竹下委員 竹下です。
今の説明では、私は日本語としては、申しわけありませんが、理解できません。
1点は、条約33条2項に定められている監視機能は、この障害者政策委員会が担うという結論は大臣答弁で聞きました。その大臣答弁を前提とした場合に、障害者基本計画がどう関連してくるのか、日本語として聞いていてよくわかりません。少なくとも権利条約の実施を求めている内容が基本計画に含まれている場合は、今の説明は理解できると思うのです。含まれていない場合はどうするのですか。理解できません。これが1点目。
2点目は、その関係では、現に権利条約が国会で承認されたのは12月4日です。それに対して、この第三次基本計画ができたのは9月27日か29日です。であれば、批准ないし承認された権利条約の内容が障害者基本計画に網羅されているということはあり得ないことだと思うのです。したがって、今の答弁は理解できません。
3点目は、当然に2年後と思われますけれども、国からの国連の障害者権利委員会への報告がなされる際には、この障害者政策委員会の論議を経るということについては理解できますが、そのことと33条2項の機能とは一致するものではないと思いますので、分けて答弁していただいたほうがいいのではないかと思います。
以上です。
○ 石川委員長 外務省のほう、いかがでしょうか。
どうぞ。
○ 外務省(図師首席事務官) 基本計画が条約の全てをカバーしていないのではないかという御意見だったと思いますけれども、あくまで我々としましても条約の監視機関としては。
○ 石川委員長 外務省、済みません。多分、一番竹下委員あるいは我々が確認したいのは、外務大臣の答弁を素直にお聞きすると、33条2項の監視機能というのは政策委員会が担っていくのだと明確におっしゃって、すがすがしくおっしゃった記憶があるのですけれども、きょうのお話の中で、そこのところがやや曖昧だというので念を押したかっただけなのです。だから、外務大臣の答弁があるので間違いないとは思っているのですけれども、事務方から同じような力強いというか、政策委員会としては仕事が多くなって大変なので悩ましいところもあるのですけれども、そのような点を確認したかったという、そういうことだと思うのです。
○ 外務省(図師首席事務官) 我々としましても、外務大臣の答弁とそごがあることを申し上げるつもりはもちろんございません。条約の実施を監視するための枠組みとして、政府は障害者政策委員会を設置したと理解しております。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
では、きょうはいきなりという感じもあったかと思いますので、それできょうは御報告いただいたということにさせてください。よろしいですか。
では、時間も押しておりますので、パート1に入りたいと思います。
入る前に、実は土本委員から議論の進め方について御意見がございました。これについて土本委員のほうから。私が言えばよろしいですか。
土本委員、どうぞ。
○ 土本委員 土本です。
今、話したとおりですけれども、まず、資料をこの間から見ていたのですけれども、片仮名がすごく多くて、特に「アクセシビリティ」という片仮名がすごく多く出てきて、それは必要だと思うのですけれども、やはり自分が読み切れない部分があるとか、非常にいっぱい書かれて、いろんな片仮名があったりして、パソコンというところで調べて片仮名の意味、日本語で直してもらっているのですけれども、その中で入ってこない部分はあるし、これは必要だという片仮名もあると思います。そのときに、自分たちがわかりやすくどうやって使っているのかどうかということを説明しながら進めていただければいいかなと思います。
以上です。
○ 石川委員長 アクセシビリティを始めとして難しい言葉がたくさんある、委員からの意見にもあるということで、できるだけわかりやすく書いてほしいということです。アクセシビリティは、インクルーシブ教育もそうですけれども、ぜひ日本に定着させたいと思って意識的に使ってらっしゃる委員がたくさんいらっしゃると思います。
ノーマライゼーションもかつてそうでしたし、バリアフリーもそうでしたけれども、土本委員は決して全ての片仮名語の理解を自分はできないとおっしゃっているわけではないですよね。なので、意味がわかれば、そしてそれが大事な概念で必要な言葉だということがわかれば、自分も理解しようとするとおっしゃっていると思いますので、まずアクセシビリティについて、わかりやすくどなたか。アクセシビリティという言葉をたくさん使ったなという自覚のある方、多分後藤委員ですか。
では、私が。情報だけではないのですけれども、それは建物でもあったり、サービスであったり、いろいろ、あらゆる社会にあるさまざまな資源とかサービスとか情報とかを利用できる状態を実現すること、みんなが利用できるようにすることをアクセシビリティと言う。土本委員、いかがでしょうか。
○ 土本委員 よく読み込んで、これから進めていきたいなと思っています。
以上です。
○ 石川委員長 後藤委員、どうぞ。
○ 後藤委員 日本福祉大学の後藤でございます。
アクセシビリティに御指摘を受けての反省ですが、使い方が曖昧になることがあったかもしれません。例えば階段に段差があるのをなくすような意味と、ソフトも合わせて使いやすくするという大きい意味もあります。権利条約で言うアクセシビリティは、大きいほうの意味が中心です。混ざって用いたところもあったかもしれません。発言の際には、こういう意味だと申し添える必要があるかと指摘を受けて思いました。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
それでは、東室長からパート1にかかわる部分について、まず説明をお願いします。
○ 東室長 東です。
まず、パート1では、不当な差別的取り扱いの部分について御議論していただくわけですけれども、その前に、そもそも基本方針といったものの位置づけについて少し説明させていただきたいと思っております。
基本方針は、政府において施策の基本的な方向や対応要領、対応指針の基本となる考え方を示すといったことにより、差別解消のための施策の各行政機関とか分野間におけるばらつきを防ぎたいといったことでつくられるものであります。基本指針は内閣府において閣議決定をして決めるというものでありまして、政令とか府省令といった法令ではありません。法令の範囲内で政府の取り組みの方向性を示すものであるわけです。ですので、法令を超えたところでの議論をここに盛り込むというのには限界があると理解していただければと思っております。
また、国会の審議等における政府の答弁等において示されている法律の解釈と矛盾するような新たな定義をここに書くといった性格のものではありません。こういう性格を踏まえて、政府として何をするのか、何をすべきなのかという点を中心に差別解消の枠組みの中で御議論していただきたいと思っているところです。
個別分野との関係ですけれども、基本方針は、各省庁が今後策定する予定の対応要領とか対応指針、これらはガイドラインですけれども、これらに共通して盛り込むべき必要がある基本的な要素を書いていただくということが基本的な命題です。分野別の問題について議論して書くということまではどうなのかと考えております。もちろん、例としてわかりやすいという意味で書くということはあり得るというところです。
今回の委員の御意見にも、一般的、包括的に意見を述べられている部分と、個別分野における個別事例といったものを書かれておりますけれども、それを全部書くといったことにはならないだろうと思っております。
あと、雇用促進法との関係について一言申し上げます。
差別解消法と雇用促進法の枠組みからして、雇用分野における差別禁止や合理的配慮の内容、相談、紛争解決の体制、こういった部分は、雇用促進法に基づく指針として、厚生労働省において検討されているという状況にあります。
一方で、分野横断的に示すことが必要な差別解消についての基本的な考え方とか方向性については、雇用分野だけをあえて除外して議論するということではなくて、そこも含めて議論していただくということを考えております。
以上が解消法の基本指針の大枠的な話でございます。
続きまして、第1パートでの意見の御紹介に移りたいと思います。
まず、ここでは質問事項として「不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか」といった質問でありました。
この質問に対して、大きく言うと一般的、包括的な御意見と個別の事例を挙げられている御意見に分けることができます。その上で、まず一般的・包括的な御意見については、幾つかのグループに分けることができると思います。
最初の大きなグループとしては、不当な差別的取り扱いの中身として、基本的には直接差別というものを前提にした意見でございます。表現の違いはありますけれども、障害を理由とするところの異なる取り扱い、あるいは異なる取り扱いの例示として権利条約にも掲げてありますけれども、区別、排除、制限といった行為、これは今言いましたように、類型的に言うと直接差別に当たると思いますけれども、これらが不当な差別的取り扱いの基本的な内容であるとする意見が多ございました。ただ、これらの意見の中でも、直接差別以外の例えば間接差別とか関連差別に言及しない意見も若干ありましたが、多くは直接差別に加えて間接または関連差別も加えるべきであるとする意見がございました。さらに、間接差別、関連差別については事例の集積を重ねて今後検討する必要があるといった意見もございました。
国会の質疑で確認されたところでは、「不当な差別的取り扱い」というのは直接差別を念頭に置いたものとされており、間接差別や関連差別はこれからの検討課題といった位置づけであったと思います。
そこで、そういった解釈を前提にしますと、直接差別とは何なのかといったあたりをわかりやすくどう説明するかといったことが課題となりますので、この点を議論していただきたい。
ちなみに、差別禁止部会では直接差別は障害を理由とする区別、解除、制限、その他の異なる取り扱いといった内容で議論がなされてきました。ですので、そういった内容でいいのかどうかの御議論をしていただきたい。
ただ、政府答弁においても直接差別にぎりぎり限るのだといった趣旨ではなかろうと思うのです。間接差別とか関連差別という形のそのものはまだまだ議論が足りずに入れられない状況にはあるにしても、明らかに誰が見ても障害を理由とする差別と見られるようなもの、こういうものは入れ込むということが必要となる、そういった事例もあるのかなと思っています。
ちなみに、厚生労働省の障対課の改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止、合理的配慮の提供の指針のあり方に関する研究会の議論におきましては、禁止される差別は、障害を理由とする差別ということで、直接差別ということが書かれておりますけれども、例えば車椅子、補助犬、その他の支援器具等の利用、介助者の付添等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不利益取り扱いも含まれるといった議論がなされています。要は、これらは直接的には障害を理由としていないのですけれども、明らかに障害と関連するような事柄なのです。そういった部分については、直接差別の中に含めて考えるといったような議論もなされているところなのです。ですから、そこら辺も含めて、御議論いただければと思っているところです。
次のグループですが、不当な差別的取り扱いの基本的な内容として、不平等な扱いとか、平等な機会を与えないといった御意見もございました。ただ、ここではわかりやすくするという意味で何が平等なのか、不平等なのか、そういった議論が必要になってくるのかなと思っております。
さらに、別のグループとしては、結果の不利益を問題とする御意見がございました。例えば著しく不利益である場合とか、その他の結果の不利益を不当な差別的取り扱いの1つの要件とすべきといった御意見がございました。ただ、条文を読んで見ますと、第7条の1項とか8条の1項は、「障害を理由として」「障害者でないものと不当な差別的取り扱いをすることにより」、「障害者の権利、利益を侵害してはならない」という、大体3つの要素で成り立っているわけです。
まず、理由が何かというと、それは障害を理由とする場合だといったことが書いてあります。次に、原因行為は何かというと、不当な差別的取り扱いといった行為を挙げており、さらに、3つ目の要件として、その原因行為の結果として障害者の権利、利益が侵害されてはならないとされております。
こういうような条文上の構成になっているわけです。ですから、結果の不利益は原因行為とは別の権利利益が侵害されたかどうかというところで議論されるべき要件であって、不当な差別的取り扱いの内容として議論すべきものかどうかという問題があるわけですね。ですから、ここでは、原因行為自体が何なのかという議論をしていただければと思っているところであります。
また、次のグループとして多かったのは、合理的配慮をしないことを不当な差別的取り扱いの内容に入れ込んで議論されている御意見が多ございました。しかし、差別解消法は障害を理由とする差別としては2つのパターンを考えているわけです。1つが不当な差別的取り扱い、あと1つが合理的配慮をしないことということになっております。不当な差別的取り扱いの中に合理的な配慮をしないことがあるわけではありません。そういう枠組みではないということですね。ですから、若干誤解があるのかなと思っているところです。
さらに、その他の意見として、対象者の範囲とかを議論されている御意見もありました。例えば障害児と保護者も対象とすべきといった御意見が出ていますが、障害児は当然障害者には入ります。この法律では、18歳以上を障害者と言っているわけではありませんので、障害児は当然入るわけですけれども、ただ、保護者に関しましては、先ほど言いましたように、条文としては、「障害者の権利利益を侵害してはならない」と書いてあるのです。この障害者の中に保護者が入るかというと、条文上は読み込めないわけです。だから、禁止されているものとしては障害者に対する差別というのが差別解消法の枠組みだろうと思っております。
次に、個別の事例を挙げられている御意見が結構ございました。しかし、これについては、先ほど言いましたように、個別の事例そのものを書くというのは難しいだろうと思います。ただ、例えば新谷委員のほうから、基本方針の実効性を確保する観点から、均等待遇を構成する直接差別、間接差別、関連差別について、その典型例を例示すべきであるといった御意見もありました。間接差別、関連差別については、先ほど言ったとおりでありますけれども、例示との関係で、それは基本方針の実効性を確保する、明確性を確保するといった観点から書くべきかどうか、そこら辺の御議論も必要になるかなと思っています。
最後になりますけれども、制度的な差別についての問題点を書かれている方もおられます。しかしながら、制度的な問題は、その制度に基づく個別の運用は別として、制度自体の問題を差別解消法だけで何かが解決できるものではないと思います。制度自体は制度自体の改革として議論すべきであるといったことが差別禁止部会でも議論されておりましたので、そういったことを踏まえて議論が必要であればしていただきたいといったところです。
以上であります。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
ちょっと待ってください。私はまだ発言を求めていません。フライングはやめてください。
まず、事務局のほうから説明がありました。設問1として「不当な差別的取扱いの基本的な考え方として、どのような場合を差別的取扱いと考えるのか」ということで、これについての意見は4つのグループに大別できて、グループ1の意見は妥当だが、2、3、4は妥当でないというのが東室長の御説明と理解してよろしいのでしょうか。
○ 東室長 妥当かどうかというよりも誤解があるのではないかと思います。
○ 石川委員長 わかりました。グループ2~4については少し誤解が入っているのではないかということですね。わかりました。
それを踏まえて、いやいや、そんなことはないということがあるかもしれませんし、あるいはグループ1での直接的差別を基本とするというところをもう少し深めていくという方向が東室長からは示唆されたように思いますが、御意見、御発言を求めます。
まず、土本さん、お願いします。
○ 土本委員 土本です。
不当な差別というか、まだ知的の障害のことが理解されていない部分等あるのですけれども、新聞の記者から取材をするということで電話をもらいました。電話でやりとりすると自分の思ったことが伝わらないので、文書でください、文書で見たら、その質問に答えますといって文書はもらいました。けれども、振り仮名を振らなかった。自分が振り仮名を振っていないということを伝えました。だけれども、あなたは振り仮名を振らなくても大丈夫でしょうと言われました。知的障害のことが、どんな障害を持っているのですか、聞きたいと言いました。けれども、わかりませんでした。振り仮名を振らなくてもあなたがわかるでしょうと言っているところがすごく気になってしまって、質問も難しい質問で、きょうの取材をして、次に載せますから、すぐその短い時間で質問とか答えられないので少し待ったのですけれども、周りに支援者がいましたのですぐ答えたことがあったのですけれども、全く1人だったら答え切れない。電話だったら相手側の質問が聞き取れなくて自分の思ったことが伝わらないときもあります。
電話だけではなくてファクスとか郵便物で文書くださいと言って、そのときに漢字に振り仮名を振るということを言いました。それは、今回はごめんなさいと言いましたけれども、これから気をつけたいと思っていますと言いました。まだまだそういう振り仮名が振っていないとか、わかるでしょうということがあるというものがあります。これからは自分たちからも言っていかなければならないのではないかなと思います。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。
土本委員のお話は、合理的配慮にかかわる話であるとも思いますので、また改めてというか、もう一度というか、合理的配慮のところでまた御発言していただきたいと思います。それでもよろしいですか。
それでは、竹下委員、どうぞ。
○ 竹下委員 竹下です。
東室長の説明はよく理解できましたし、基本的にはその考え方に賛成です。その上で、2点申し上げます。
1点目、障害者差別解消法が直接差別を念頭に置いてその禁止をしているということについて、まず申し上げたいと思います。それと同趣旨と思われる障害者雇用促進法の場面で、禁止される差別の範囲について議論をしたときに問題になったのが、先ほど東室長が紹介してくれた、典型的には盲導犬の事例なのです。すなわち、これまでの類型として間接差別に当たるとされていたもの、例えば犬を連れた人はこのレストランに入れませんという禁止の仕方はどうかという議論の中で、それも直接差別の1つだというのが労政審、労働政策審議会の障害者雇用分科会で議論されて、それが直接差別の内容として確定したことが、その東室長の説明した内容につながっているわけです。
したがって、私たちは障害者差別解消法の7条、8条のそれぞれの1項で禁止する差別の範囲というものを、これまでの定義づけとして直接差別か間接差別かという類型分けをしたものにこだわるのではなくて、その差別の根源が、あるいはその差別の動機が障害を内容としているという場合には、障害を理由とする差別になるのだということの押さえが大事だろうと思っています。これが1点目。
2点目の類型のところで、東室長が機会の平等という関係の主張があったという中で、何が平等かが問題になるのだという指摘をされたことに対するいわば反論です。例えば私は平等の機会を与えないことという表現をしました。この場合の平等の機会というのは、日本語としては「平等の」は「平等な」でもいいし「平等に」でもいいわけです。すなわち、機会を与えないことにおいて、それは不平等を生ずるということの理解が大事であって、その与えられた機会の内容において平等か不平等かは合理的配慮の問題に転嫁されていくのではないかと理解しています。
以上です。
○ 石川委員長 竹下委員、ありがとうございました。
主として2点おっしゃったと思うのですけれども、1点目ですね。視覚障害者は必ずしも盲導犬を連れている人ではないが、盲導犬を連れている人は必ず視覚障害者である。間接差別あるいは関連差別に位置づけたことがそもそも適切でなく、それは直接的差別と解すべきであろうという主張と理解してよろしいですか。
2点目ですけれども、平等な機会を与えないことの中には、合理的配慮の不提供は含まれていないのでしょうか。合理的配慮が提供されなければそもそも平等な機会が与えられないのではありませんか。
○ 竹下委員 今、委員長のまとめたことに若干私の発言が誤解されていると思うので補足させてください。よろしいでしょうか。
そうではありません。要するに私がごく単純に言えば、機会を与えないことが不平等だ。それに対して、与えた機会がどのようなものであるかの吟味は合理的配慮の問題として考えれば足りると分けて申し上げたわけです。
以上です。
○ 石川委員長 ありがとうございました。そうであれば、不当な差別的取り扱いの議論と直接差別を中心として、それは規定されているということに対して竹下委員は反対ではないというか、何とかそれを拡張しようとされているわけではないという理解でよろしいでしょうか。よろしいですね。わかりました。
遠藤委員、どうぞ。
○ 遠藤委員 経団連の遠藤と申します。
先ほど竹下委員がお話ししたことに関連してです。
○ 石川委員長 確認です。新谷委員、私の声は入るけれども、ほかの委員の声はほとんど聞こえないということですか。
済みません、技術的なトラブルなので、ここで休憩をとらせていただきます。
(休憩)