平成22年度障害のある児童生徒の就学形態に関する国際比較調査報告書 翻訳資料集
第1章 イギリス
資料1
イギリスの学校に通う特別な教育的ニーズのある子どもたちで判定書(STATEMENT)を所持しない場合(2010年)
すべての学校 | |
特別な教育的ニーズのある子どもの定数 スクール・アクション(1) | 915,850 |
特別な教育的ニーズのある子どもの定数 スクール・アクションプラス (1) | 496,410 |
特別な教育的ニーズのある子どもで「判定書」を所持しない子ども (2) | 1,470,900 |
子どもの総数 | 8,064,300 |
発生率(%) (3) | 18.2 |
公立学校 | |
公立保育所 | |
特別な教育的ニーズのある子どもの定数 スクール・アクション | 1,890 |
特別な教育的ニーズのある子どもの定数 スクール・アクションプラス | 2,210 |
特別な教育的ニーズのある子どもで「判定書」を所持しない子ども | 4,100 |
子どもの総数 | 37,510 |
発生率 (%) (3) | 10.9 |
措置率 (%) (4) | 0.3 |
公立初等学校 (5) | |
特別な教育的ニーズのある児童の定数 スクール・アクション | 486,700 |
特別な教育的ニーズのある児童の定数 スクール・アクションプラス | 272,440 |
特別な教育的ニーズのある児童で「判定書」を所持しない児童 | 759,140 |
児童の総数 | 4,093,710 |
発生率 (%) (3) | 18.5 |
措置率 (%) (4) | 51.6 |
国庫負担中等学校(5 )(6) | |
特別な教育的ニーズのある生徒の定数 スクール・アクション | 426,060 |
特別な教育的ニーズのある生徒の定数 スクール・アクションプラス | 213,150 |
特別な教育的ニーズのある生徒で「判定書」を所持しない生徒 | 639,200 |
生徒の総数 | 3,252,140 |
発生率 (%) (3) | 19.7 |
措置率 (%) (4) | 43.5 |
地方教育局運営公立中等学校 (7) | |
特別な教育的ニーズのある生徒の定数 スクール・アクション | 393,370 |
特別な教育的ニーズのある生徒の定数 スクール・アクションプラス | 194,020 |
特別な教育的ニーズのある生徒で「判定書」を所持しない生徒 | 587,390 |
生徒の総数 | 3,055,420 |
発生率 (%) (3) | 19.2 |
措置率 (%) (4) | 39.9 |
公立特別教育学校 (7) | |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 スクール・アクション | 150 |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 スクール・アクションプラス | 1,510 |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒で「判定書」を所持しない児童・生徒 | 1,730 |
生徒の総数 | 86,260 |
発生率 (%) (3) | 2.0 |
措置率 (%) (4) | 0.1 |
特別学級(UNIT)に所属する児童・生徒(5) | |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 スクール・アクション | 1,060 |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 スクール・アクションプラス | 7,070 |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒で「判定書」を所持しない児童・生徒 | 8,130 |
生徒の総数 | 13,240 |
発生率 (%) (3) | 61.4 |
措置率 (%) (4) | 0.6 |
その他 | |
私立学校 | |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒で「判定書」を所持しない児童・生徒 | 58,570 |
生徒の総数 | 576,940 |
発生率 (%) (3) | 10.2 |
措置率 (%) (4) | 4.0 |
私立特別教育学校 | |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 スクール・アクション | x |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒の定数 ?スクール・アクションプラス | 30 |
特別な教育的ニーズのある児童・生徒で「判定書」を所持しない児童・生徒 | 30 |
生徒の総数 | 4,500 |
発生率 (%) (3) | 0.6 |
配置率 (%) (4) | 0.0 |
出典:イギリス教育省データに基づき筆者が作成
http://www.education.gov.uk/rsgateway/DB/STA/t000965/index.shtml
(1) 私立学校と病院内学校における特別な教育的ニーズに関するデーターは収集していないためこれらは除くものとする。
(2) あらゆる学校において、「判定書(Statement)」がない特別な教育的ニーズのある子どもを含むものとする総計は、四捨五入されている場合があるため正確な総数とは多少誤差があるものとする。
(3) 生徒の発生率 - 判定書を持たない児童・生徒の総数を児童・生徒の総数の割合として示す。
(4) 生徒の措置率 - 判定書を持つ児童・生徒の総数を学校全体で判定書をもつ児童・生徒の総数の割合として示す。
(5) 一般的な中等部を示すものとする。
(6) シティ・テクノロジーやアカデミィも含まれるものとする。
(7) 2009年の「判定書(Statement)」を持たない病院内学校からの児童・生徒に関するデーター・情報が得られず、2009年からは、一般的な病院内学校の情報を含むものとする。
総計は、四捨五入されている場合があるため正確な総数とは多少誤差があるものとする。
資料2
障害のある子どもと保護者の権利を守る仕組みとして、イギリスの障害のある子どもとその保護者を支援する、公的機関や、様々な民間の障害者サポート団体や当事者団体
Family Support service
http://www.family-action.org.uk/home.aspx?id=11578
Family Support Serviceは、2000年より、各地方教育局に設置されることが義務付けられている機関で、特別な教育的ニーズに関する様々な支援アドバイスを行う。
Centre for Studies on Inclusive Education (CSIE)
New Redland Building, Coldharbour
Lane, Frenchay, Bristol BS16 1QU;
Phone: 0117 328 4007
http://www.csie.org.uk
両親、保護者、専門家のために、無料あるいは低価格で、多くの出版物、インクルーシブ教育に関する報告書、パンフレット等を刊行する。会議などを開催する。保護者グループ、児童・生徒、学校、地方教育局の支援を行っている。
Advisory Centre for Education (ACE)
Unit 1C Aberdeen Studios, 22 Highbury
Grove, London N5 2DQ
Phone: 0808800 5793
http://www.ace-ed.org.uk
親、保護者などのために、公教育に関する無料のアドバイスを提供する。特に、ACE 特別教育のハンドブック、隔月でACE Bulletinを出版し、教育に関する法律、学校教育に関するあらゆる事柄に関する相談を提供する。
Council for Disabled Children
8 Wakley Street, London EC1V 7QE;
Phone:020 7843 1900
email cdc@ncb.org.uk
http://www.ncb.org.uk/about-us/our-specialist-networks/council-disabled-children
障害あるいは学習障害に関わる団体・組織のリストを発行し、無料の情報提供を行う。
Children’s Legal Centre
University of Essex, Wivenhoe Park,
Colchester, Essex CO4 3SQ
Phone:01206 877910
Email clc@essex.ac.uk
https://www.childrenslegalcentre.com
英国における、特別な教育的ニーズに関する問題を含む、子どもたちと若者たちに関わるすべての事柄についての法律に関する無料のサービスを提供している。また、Child Rightという月刊雑誌を刊行している。
Network 81
1-7 Woodfield Terrace,
Stansted, Essex, CM24 8AJ
Phone: 0845 077 4055
Email info@network81.org
http://www.network81.org
国内のネットワークで、障害のある子どもたち、学習に関する困難を経験した子どもたちを持つ保護者のために、会議・学会やトレーニングの開催や出版物を刊行し、あるいは、個人、団体などと連携し、電話などで、様々な情報の提供やアドバイスなどを通じて、支援する保護者のグループである。
Mencap
123 Golden Lane
London EC1Y 0RT
Phone: 020 7454 0454
Fax: 020 7608 3254
https://www.mencap.org.uk
学習障害を持つ児童、生徒、学生と関係者、保護者の民間団体。教育政策提言なども行い、その他、様々な教育支援・サポートサービスを提供する。
Independent Panel for Special Education Advice (IPSEA)
6 Carlow Mews, Woodbridge, Suffolk
IP12 1EA; phone 0800 018 4016
https://www.ipsea.org.uk
子どもたちと若者たちの特別な教育的支援に関しての地方教育局の役割や、その支援に関しての第三者の専門家からの意見を聞き、保護者へのアドバイスを行う。
The Alliance for Inclusive Education
336 Brixton Road, London SW9 7AA;
Phone: 020 7737 6030
Email info@allfie.org.uk
https://www.allfie.org.uk
教育法の改正のキャンペーンを行う組織で、18歳以下の障害があるなしに関わらず参加できる団体。特にインクルージョンを実現するために保護者たちと緊密に働く。
Parents for Inclusion
336 Brixton Road, London SW9 7AA
Phone: 0800 652 3145
Email info@parentsforinclusion.org
https://www.parentsinclusionnetwork.org.uk/
両親、保護者のために、特別な教育的支援とインクルージョンに関する無料のアドバイスや支援を提供する保護者のグループ
The Association of Blind and Partially Sighted Teachers and Students (ABAPSTAS)
ABAPSTAS Secretary at BM Box 6727, London
WC1N 3XX
http://www.abapstas.org.uk/
視覚障害のある教員、児童、生徒、学生のための組織。また、その関係者のための組織。
Education Otherwise
Education Otherwise, 125 Queen Street, Sheffield,
South Yorkshire, S1 2DU
Phone: 0845 478 6345
http://www.education-otherwise.org/SEN.htm
学校外で教育を受けている子どもを持つ保護者や支援者のネットワーク団体で、特別な教育的ニーズのある児童・生徒のためのホーム・スクーリング(エデュケーション)の支援アドバイスを行う。
The British Council of Disabled People ( BCODP)
http://www.disability-online.com/Detailed/457.html
障害者やその家族の支援を行うとともに、障害者のニーズを代弁し、政府に対して提言を行う。
Barnardo’s
Barnardo’s Head Office
Tanners Lane, Barkingside, Ilford, Essex IG6 1QG
Phone: 0208 550 8822
Fax: 0208 551 6870
https://www.barnardos.org.uk/
英国全土(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)に支社を持ち、子どもの権利を守るための様々な事業を展開しているチャリティーである。障害を持つ子どもたちが学校でより学びやすい環境を整えるために学校への提言、ガイドなども発行している。
資料3
イギリス国内の障害のある教員のために、様々な支援や情報を提供している民間、あるいは、チャリティー団体・組織である。
The Disability Rights Commission
DRC Helpline
Freepost MID 02164Stratford-upon-Avon CV37 9BR
Phone:08457 622 633
Website address: http://www.drc-gb.org
専門家団体や組織の案内を必要な場所に掲示し、障害差別禁止法の全ての条項についてアドバイス・情報提供を行っている。また、障害を持つ人の雇用、就業が問題なく行われるようなアドバイスなども行っている。
Teacher Union Congress (TUC) Publications
Congress House
Great Russell Street
London WC1B 3LS
Phone:0207 636 4030
Website address: https://www.tuc.org.uk/
TUCは、障害を持つ教員たちのために、必要な書類、情報などを大きな活字、オーディオテープ、点字などで提供する。
RNID (Royal National Institute for Deaf People)
19-23 Featherstone Street
London
EC1Y 8SL
Phone:0207 296 8000
Text: 0207 296 8001
Fax: 0207 296 8199
Website address: https://www.actiononhearingloss.org.uk/
RNID は、会議などに、手話通訳の派遣や、補聴器を使用する人々のために、会議室に特別なスピーカーを設置するための必要なアドバイスを行う。
The Teachers Benevolent Fund (TBF)
Hamilton House, Mabledon Place
London WC1H 9BD
Phone: 0207 554 5200
Fax: 0207 554 5239
Website address: http://www.teachersupport.org.uk
TBFは、障害のある教員たちのために、電動車いす、車に取り付ける回転イス、階段横の昇降機などを購入する手助けを行う。
Sign Language Information Centre (SLIC)
31 High Street
Carluke
ML8 4AL
Phone: 01555 770297
SLIC は、国内の教職員組合と長年連係し、毎年開催される全国教職員組合の学会に手話通訳派遣を行い、あるいは、手話通訳に関するアドバイスを行う。
Disability Resource Team (DRT)
2nd Floor
6 Park Road
Teddington
Middlesex TW11 0AA
Tel: 0208 943 0022
DRTは、点字翻訳を行う機関である。
In Touch Publishing
37 Charles Street
Cardiff
CF1 4EB
Tel: 01222 222403
英国放送協会の In Touchは、視覚障害のある人々への様々な情報・サービスを提供する。
National Organisation for Sight Impaired Transcription Enterprises (NOSITE)
Wallsend People’s Centre
10 Frank Street
Wallsend NE28 6RN
Phone: 0191 263 0005
NOSITEは、点字、カセットテープ、大きい活字、Moonと呼ばれるアルファベットを拡大するなどの翻訳を行う機関である。
British Association of Teachers of the Deaf (BATOD)
41 The Orchard Leven,
Beverley, East Yorkshire,
ENGLAND HU17 5QA
http://www.batod.org.uk/
BATODは、聴覚障害のある教員、専門家などをメンバーに、聴覚障害者の採用情報や、雑誌・ウェブサイトの管理、特別教育、一般学校の両方を支援する。
British Dyslexia Association (BDA)
Phone: 0845 251 9002
http://www.bdadyslexia.org.uk/
BDAは、ディスレクシア(読み書き障害)のある人々が、社会で活躍できる場を広げ、また、社会がディスレクシアを広く認知し、受け入れるように活動するチャリティー団体である。
Action on Access
Edge Hill University
St Helen's Road Ormskirk
Lancashire
L39 4QP
Phone: 01695 650 850
http://actiononaccess.org/
インクルーシブや多様性を奨励し、障害のある生徒ができるだけ高等教育へアクセスできるように促す。また政策に影響を与えるような、新たな政策を打ち出し、それを政策実現のために、政策立案者と実施者の間に立つ役目(仲介する)を担う。また、様々な領域、幅広いパートナーと戦略的に提携し、参加を促すような助けを行う。
Scope
Phone: 0808 800 3333
Email:response@scope.org.uk
https://www.scope.org.uk/
Scopeは障害のある人々のためのチャリティー団体である。政府の政策に影響を与え、社会の人々の偏見を無くし、障害のある人が社会に存在することを認識させ、共存することの大切さを伝える。障害のある人々の家族を支援する情報を提供する。特に、幾つもの複雑な障害をもつ人々のために、彼らに必要に応じたサービスを提供している。
資料4
障害のある児童・生徒の就学に関する要点
項目 | イギリス |
就学先の種類 | 一般初等・中等学校、特殊教育学校、 ホーム・スクーリング/エデュケーション |
就学事務の所管 | 地方教育局 |
根拠法及び関係法令 | 特別な教育的ニーズ・障害法(Special Educational Needs and Disability Act 2001(SENDA)) 障害差別法(Disability Discrimination Act(1995/2005)) 2010年平等法(Equality Act 2010) |
検討体制 | 特別な教育的ニーズの特定、評価、その対応など従うべき教育実施規則(Code of Practice)がある。障害が明確な場合には、判定書(Statement)を作成する。その際には、保護者(本人)、教育関係者、医学、心理学、社会福祉などの専門家の意見を聞いて対応。学校決定の要素が含まれる。 |
検討の際の判断基準 | 基準となる障害の程度の記述はない。基本的には、初等・中等学校で教育を提供する義務が地方教育局及び学校にある。 |
本人又は保護者の希望 | 判定書の案と学校のリストが保護者に郵送され、保護者が希望する学校を表明することとしている。 |
就学の決定プロセス | 地方行政局の教育担当部局が保護者の意見聴取を行い、最終的には地方教育当局が決定することとしており、<1>保護者が特殊教育学校を希望するか、<2>その児童生徒とともに学ぶ他の児童生徒にとって適切な教育環境とならない場合のみ、初等・中等学校への就学をしないことを決定できるようになっている。 |
検討期間 | 通常は、入学の10ヶ月前に希望を出し、手続きが始まる。判定書がある場合は、学校の変更は1年前に希望を述べる必要がある(学齢に達する前に教育サービスを受けている場合がある。)。 |
不服申し立て | 就学手続きや決定内容についての不服申し立て等について、特別な教育的ニーズ調停機関(The Special Educational Needs and Disability Tribunal)がある。 地方教育局が決定を行った後、2ヶ月以内に調停機関に申し立てを行わなければならない。 |
就学の状況 | 特殊教育学校に通っている子どもは、2010年で、全ての子どものうち1.1%。判定書のある子どもは2010年で、全ての子どものうち2.7%。判定書のある子どものうち60%は一般学校に通っている。2010年で、特別な教育的ニーズを有している子どものうち18.2%の子どもが判定書を保持してはいないが、特別な教育的サービスの対象となっている。 一般学校内にUNITとよばれる特殊教育学級あり。 |
障害のあるこどもの就学手続きに関する国際比較−国連障害者の権利条約の検討の動向に関連して−
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-241/d-241_04_04.pdf 抜粋、一部修正加筆
資料5
特別な教育的ニーズと障害に関する緑書 ―エグゼクティブ・サマリー−1
支援と大望:特別な教育的ニーズと障害への新たなアプローチ(Support and Aspiration: A new approach to Special Educational Needs and Disability
変更実例
- 全ての子どもは、彼らの人生が最高なものとなるように、公正な人生のスタートが約束され、最善の機会を提供されるべきである。現在、イギリスで、約2万人の子どもたちと若者たちが、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有するという理由だけで、彼らの人生の機会は、非常に不平等なものになっている。
- 現在、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちは、学校、あるいは、その他の関係機関において、彼らのニーズに適応した支援が受けられていないことにより失望している。さらに複雑な支援が必要な子どもたちにとっては、このような状況が、彼らの生活の質にも影響を与えることになっている。何百、何千もの家族が、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもを持ち、彼らは、現在のシステムが官僚的で、複雑で、当事者である子どもたちのニーズや家族の生活を十分に反映したものではないと感じている。
- それぞれの子どもたち、若者たち、彼らの保護者の状況は大きく異なり、学校の中でほんの少しの調整が必要な子どもたちから、障害により長期的に限られた生活をしている子どもたちまで、それぞれの家族にとっては、心配しなければならないことや、考慮されなければならないことが多く存在する。現在、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちや若者たちの支援制度は、家族の意向に反することが多い。子どもの支援やニーズは遅くなりがちで、家族は、学校に対する期待感が低く、その状況を我慢せざるを得ない状態が続いている。保護者は、子どもたちのために、期待するサービスは与えられず、十分な情報も与えられず、また、適切な学校を選択することも許されていない。さらに、家族は、あちらこちらに分散したサービスやサポートを、自分たちで一つずつ調べて探し出すことを余儀なくされている。
- 緑書で提案された改革は、子どもたちと若者たち、彼らの家族、あるいは、彼らと関わりのある専門家たちが、現在の抱える問題や不満を解消するためのものである。若者たちにより良い生活を支援するため、我々は、現在とは根本的に全く異なった制度を導入したいと考える。保護者の信頼を得るために、保護者に更なる権利を与え、支援をする専門家や地方教育局に対しても、更なる権限を与える。
- 出生から成人まで、若者たちのより良い生活を支援するために、彼らに関わる専門家たちを支援する。子どもたちのニーズに関して、早期に認識し、早い段階でのヘルスサービスの介入などを行う。チャイルドケアと幼児期の教育は、全ての子どもたちが利用できるようにする。子どもたちの可能性を広げるためのサポートを提供するために、保護者と良いパートナーシップを構築する。「教育、保健、ソーシャルケア」を一つにし、子どものニーズに反映した支援パッケージサービスを家族に提供する。私たちが提案するものとして:
- 新しいアプローチとして、特別な教育的ニーズを早い段階で認識し、特別な教育的ニーズを有する子どもたちが、学校に対する期待を無くすというような状態を解消するために、学校で効果的な支援を与えられるようにする。全ての子どもたちの能力を最大限にするために、現在の早期教育段階を基本にしたものと、学校教育を基本にしたものを統合させ、さらに学校責任を強化し、抜本的な改革を教育現場にもたらす。
- 現在の法的な特別な教育的ニーズの評価と判定書に関しては、2014年までに、子どもたちとその家族のために、教育、保健、ソーシャルケアの支援を確実にするために、現在の教育、保健、保健医療プランなど、複雑な評価システムを、単一の評価システムに統一する。サービスは、幼少期から成人まで、規定に対応しながら、子どもの変化、成長、発達に伴い、子どもたちと家族の希望を反映させる。また、支援や評価は、定期的に見直され、明確で、直接的なプランとして家族の意向に沿うものとする。新しい「教育、保健、ケアプラン」は、特別な教育的ニーズの判定書として、保護者に現在と同様な法的保護を提供し、関係各所の責務を求め、かつ、地方当局の評価と計画、計画されたプランが最も遂行しやすい方法を探し出し、多様なサービスが提供されるようにする。
- 保護者からの信頼を得るために、保護者に更なる権利と必要な支援を提供し、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちに関するサービスに関して、透明性の確保を約束する。保護者には、彼らの子どもの教育や、家族が必要な支援を、直接にコントロールする機会と本当の意味での選択を与える。私たちの提案は:
- 地方当局とその他のサービス機関は、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズの有する子どもたちとその家族を可能な限り支援するサービスを、家族が居住する地域で提供できるようにする。家族のための情報は、簡単でシンプルに理解できるようにし、特に、子どもたちのケアに関しては、比較的ニーズの少ない子どもたちの支援に関しても、補足的な支援が必要な家族のオプションに関しても、通常、学校において可能になるようにする。
- 2014年度までに、複雑な、補足的な支援が必要な子どもたち、あるいは、特別な教育的ニーズの判定書をもつ子どもたちとその家族のために、新しい「教育・保健・ケアプラン」を導入し、それぞれの子どものために個人的な資金を提供する。また、新しい「教育・保健・ケアプラン」の主となる担い手は、家族にアドバイスを行うための訓練が施されるため、保健、教育、ソーシャルケアを横断した支援が可能になる。
- 地域が、保護者に、必要なサービスを提供できるように、また、専門家が適切な評価ができるように、最前線の専門家や地域コミュニティに権限を与え、不必要な官僚的な制度を排除し、多様な支援機関、専門家やボランティア、地方当局がともに協力し、働けるような明確なシステムを確立する。我々の提案は:
- 保護者に、一般学校か特別教育学校か、本当の意味での学校選択の機会を与える。インクルージョンを実現するために、あらゆる偏見を取り除き、地方当局による法的なガイダンスの変更や、様々なオプションの可能性を確立する。また、システムを向上させ、幅広く多様な学校から、保護者が学校を選択できるようにする。特別な教育的ニーズを有する子どもを持つ保護者は、全ての公立学校に関して(特別教育学校、アカデミー、フリースクールなど)、自由に学校選択の意志を表明することができる。学校が、子どものニーズに見合わない、他の子どもの教育に効果的でない、あるいは、十分な教育的配慮がなされない以外は、できるだけ保護者の意向に沿うようにする。このように、権限が保護者やコミュニティーグループに与えられることによって、不必要に特別教育学校の閉鎖を防ぐことができると考える。
- 「教育・保健・ケアプラン」と単一の評価プロセスへ移行するという提案の一部として、子どもたちのニーズの評価、教育、保健、ソーシャルケアを横断した評価と、どのようにボランティアや地域がその評価を調整したかを、明確にする独自の評価方法を導入する。
- 社会において恵まれない子どもたちと若者たちに、可能な限りより良い人生を提供しなければならない。この緑書において提案した改革の多くは、障害により長期的に限られた生活を強いられている子どもを含め、最も複雑な支援を必要とする子どもたちと家族をサポートすることに焦点をあてたものである。これらの子どもたちの多くは、生まれてすぐに障害が認識された子どもたちなどである。特に、政府の意向は、保護者の援助として、彼らの子どもの将来や、子どもの自立を心配する家族のために、包括した支援を提供し、保護者の毎日のケアの責務など、継続的な問題を軽減させるために、一時的にでも、保護者に休息を提供できるような支援を構築する。
- 政府としては、抜本的な改革を行わない限り、提案されたこれらの事柄は達成できないと考えている。緑書によって示されたビジョンは、国、あるいは、さまざまな地方地域における障害、特別な教育的ニーズを有する子どもたち、若者たちに関わる支援に関する見解、さらに、家族の意見などをもとに示されたものである。また、提案の多くは、地域において実現可能であると確信し、広範にわたる協議の結果、示されたものである。2011年の9月より、地域の専門家は、改革を実現するために、最良の方法を探し出すことになる。この緑書は、特別な教育的ニーズを有する子どもたち、あるいは、障害のある子どもとその家族を支援するための、政府の具体的な政策を展開するための重要な出発点となる。
- 緑書において中心になる協議として、「早期発見と支援」、「保護者への更なる権利の保障」、「学習と達成」、「大人への準備」、「家族とともにある支援とサービス」という5つの表題を設けた。なお、緑書の最後のセクションでは、次の段階における協議と対応が、具体的にどのように実施されるのかを説明されている。今後、様々な意見を収集し、それをもとに協議し、今年度末には、具体的な計画を発表し、現在進行中の地域での調査とあわせ、公共サービス改革とともに、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちのための改革を、政府の重要な政治課題の一部として取り行うものとする。
- 子どもの支援ニーズの発見は、保護者や専門家ができるだけ早い段階で、適切なアプローチを取ることが重要となる。障害に関する研究分野において第一人者であるグラハム・アレン(Graham Allen)の早期段階の介入に関する研究の概説によると、早期の介入の重要性は、子どもたちだけでなく、家族や社会にとっても重要であると論じている。
- 子どもたちと彼らの家族が必要とする特別な支援は、常に遅れがちである。通常、障害の多くは、出生時、あるいは、その後すぐに判明されるが、子どもの成長とともに現れる場合もある。保護者にとって、なぜ子どもの発達が、他の子どもと異なるのかということが分からないことが多く、彼らにとって非常にストレスになる。障害が判明し、どのようなニーズが必要なのかということが認識された後も、保護者は、教育機関、保健サービス、ソーシャルケアサービスなどから、本当に必要で、適切な支援を与えられず、苦労することが多い。たとえ支援が提供されたとしても、その支援は、希望した支援とは異なり、また、サービス機関により、取り扱い方法が異なるなど複雑であるために、支援が遅れがちである。
- すべての子どもたちと全ての家族のために機能する、理解できやすい制度をつくる必要がある。この緑書における提案では、特に、2歳から2歳半の子ども達の健康状態や発達状態について、最も複雑なニーズを有する子どもたちのために、早い段階で障害を発見し、効果的で、高品質で、統合的な支援を行うことを目標としている。私たちの目標として:
- 保護者が、追加的な支援や、異なるアプローチが必要かどうかを正確に把握するために、全ての子どもたちの発達の評価などを行い、幼児期の教育の向上とチャイルドケアが利用できるように、早い段階から、保健訪問などの、保健事業からの専門家と、保護者が協力できる制度を作る。
- 2014年までに、出生から25歳までの支援として、現在ある特別な教育的ニーズの判定書を持つ、あるいは、学習困難と判断された子どもたちと若者のために、「教育、保健、ケアプラン」というような、統一された単一の評価の制度を作る。新しい計画は、特別な教育的ニーズの判定書と同等の法的保護を保護者に提供する。「教育、保健、ケアプラン」は、子どもたちとその家族へのサービスの支援として、家族の同意の下、家族のニーズや子どもの将来の教育、保健、雇用、自立などの意向を反映しながら作成される。また、この計画は、全ての支援サービスや、その責任者を明確に示し、教育、保健、ソーシャルケアなどの全ての機関の責務を明確にするものである。
- これを実践するために:
- 法定の特別な教育的ニーズの評価と判定を抜本的に改革するにあたり、どのように改革が行われればよいかを調査する。各地域の関係者は、調査を行うにあたり、ボランティアや地域の活動分野で、調整的な機能が提供できるか、あるいは、独立した機関を設立することができるかなど、最も適切は方法が何かを見つけ出す必要がある。
- 特別な教育的ニーズの判定書に関して、「教育、保健、ケアプラン」と単一的評価を導入する前に、プロセスにかかる時間を短縮するために、現在の法定評価のプロセスに係る時間を調査し、法定評価に関する機関のアドバイス提供の遅れに対処するための方法を見つけ出す必要がある。
- 家族が支援を受けている全てのサービス機関による早期介入は不可欠である。しかし、たとえ早期に介入できたとしても、それが、各家族の特殊な状況を把握しない支援であるならば、支援の効果は損なわれることになる。保護者は、子どもの最高の理解者である。保護者が、子どもたちに愛情と保護を与えているように、保健サービス、保育所、学校、その他提供されているサービスに関わる人々は、自身の子どもを世話しているように子どもたちを援助し、あるいは、子どもたちが持ち合わせている能力が、最高のものになるように、幸せな幼児期が送れることができるように支援する必要がある。障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちは、これら保健や教育的機関において、周りの子どもたちとは異なるアプローチが必要とされる場合もあり、ソーシャルケアや特別な支援などの補足的なサポートが必要になる場合もある。そのため、保護者がこれらのサービスや、彼らの子どもに関するすべての決定権を与えられることは、極めて重要である。残念ながら、現在、多くの家族がこのような支援や決定権を与えられてはいないと感じている。
- 子どもたち、若者たち、その保護者は、それぞれ異なる状況の中、彼らの多くが、制度は、彼らの希望を受け付けることはなく、官僚的で、非効率であり、彼らの意向を十分に反映した必要な支援は供給されていないと感じている。保護者は、子どもたちの基本的なニーズに全く適応しないオプションしか与えられず、彼らの選択権も、ほとんど存在しないと感じている。特に、彼らの生活の質を向上させられるような物理的な支援、例えば、通信サービスなどのサポート、失禁パット、特別なコンピューターソフト、車椅子などの、特別な支援装置を使用している子どもたちの場合に多く見受けられる。これらの問題は、複雑な条件からなり、特に、貧困家庭で、子どもたちのための様々な支援が、生活の最初に考えなければならないような、困難な状況にある家族の場合によくみられる。
- 我々の目標は、家族と彼らの子どもたちのために、家族が求める支援を提供することである。これは、システムの抱える複雑な問題を解決し、家族のいらだちや不安を取り除き、現在、家族が直面する問題を解決し、つまり、これは、彼らの苦難な生活を終わりにすることを意味する。この緑書の提案は、保護者の影響力を拡大し、保護者が信頼できるシステムを構築し、現在のシステムの問題を最小限にするということである。つまり:
- 地方当局とその他の地域サービスは、地域において、どのようなサービスが、どこで可能であるかをはっきりと家族に示す必要がある。
- 保護者は、2014年までに、子どもたちに必要な支援に関する権利が移譲され、彼らを援助する様々なサービスと、訓練された支援ワーカーが提供され、個々に必要な資金援助や選択が与えられる。
- 保護者は、彼らの子どものニーズの支援の資金援助に関して、明確で透明性のある情報開示を与えられる。
- 障害のある子どもを持つ保護者は、育児、養育から一時的に休みが取れるように、子どもたちが周りの子どもたちとの活動を楽しむ間などに、支援が得られる。
- 保護者は、透明性のある学校選択権が与えられる。
- 万一、地方当局と保護者の間で、同意が得られない場合、保護者は、裁判を起こすよりも、簡単な和解調停で問題が解決できるようなシステムを作る。
- この目的を達成するための第一歩として:
- 地方当局とヘルスサービスは、どのように個人化した財政援助が可能か、また、拡大できるかを調査する。
- 保護者に、アカデミーやフリースクールを含む、あらゆる公立学校を選択できる権利を与える。
- 保護者の信頼を得るためには、どうせ希望は聞き入れられないと感じるシステムを作らないことが最も重要である。全ての子どもたちと若者たちを成功に導くために、このパズルの中心にあるべきものは、教育制度の受容力と責務である。全ての子どもは、選択した学校が、一般学校であっても、特別教育学校であっても、彼らの能力が確実に、また、最大限に生かせるような世界的水準の教育を提供することである。そのためには、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズのある子どもたちと一緒に協力し、彼らの学習を援助できるスキルを持ち合わせた、また、それが期待できるような人材が必要であると考える。
- しかし、システムというものは常に、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもや若者たちのために、本来あるべきものとして機能しない。その過程において、非常に多くの障害が立ちはだかり、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもや若者たちにとって、学校においても、高等教育機関においても、彼らの友人たちが、与えられている支援よりも、はるかに少ない支援しか与えられていないのが現状である。また、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもや若者たちは、周りの友人から、いじめを受けやすい傾向があり、あるいは、排除されるケースが多く見受けられる。そのため、彼らは、周りの友人によって不安や懸念を抱かされることなく、障害がきちんと理解された上で教育を受けたいと願っている。
- すべての子どもたちと若者たちに最善の機会を提供するために、現在の教育制度に関して、制度が抱える問題が何かを調査する必要がある。子どもたちのニーズは出来るだけ早い段階で認識され、正当な援助が供給される必要があるが、教員たちは子どもたちのニーズが何かを理解できるようなトレーニングを受けていないと主張している。校長たちもまた、状況を把握し、問題を自由に対処する権限が与えられるというようよりはむしろ、政府や地方教育局からの指示により押しつぶされているのが現状である。
- 現在の学業成績の評価は、特別な教育的ニーズを有する子どもたちを識別するインセンティブが作られているが、特別な教育的ニーズという評価は、低い期待感しか持てず、必要な場所で、必要な援助は得られないという事実がある。
- 政府の白書、「教えることの重要性(The Importance of Teaching)」の中で、世界で最高の教育を供給するとして、政府のビジョンを設定した。これに加え、この緑書では、それの意味するものとして:
- 全ての学校やカレッジで働く教員並びに教職員は、学習に関係する、様々な障害を見極め、対処し、取り除き、いじめをなくし、問題が生じたときに早い段階で介入できるように、よく訓練され、自信に満ちあふれているようにする必要がある。
- 学校は、全ての子どもたちのニーズを満たすために、柔軟性を持ち、子どもを第一に考え、不利な子どもたちのための支援として、必要な資金を調達する必要がある。
- 教員は、子どもたちの学習支援のために、単に学習に困難を持っているだけの子どもではなく、特別な教育的ニーズのある子どもたちのために、子どもたちがどのような支援を必要としているかを理解し、全ての子どもの発達を支援する計画を立て、特に、学習に関して、学校内で、できるだけ支援できるような態勢を整える。
- 保護者はどのように学校が彼らの子どもたちを支援しているのかという情報が得られるようにする。
- 学校は保護者、学校の役員、教育水準監査院(Ofsted)に対して常に正確な情報を提供する必要がある。
- 保護者の一つの選択肢として、特別教育学校を検討する場合のために、特別教育学校は、教育支援の一環として、一般学校や、他の特別教育学校の子どもたちの教育、発達、学習状況などを支援する専門知識やサービスを共有することを求められる。
- この目標に向かうために:
- 現在、学校において、通常可能な支援以上のニーズが必要な子どもたちのためにある、スクール・アクションとスクール・アクション・プラスによる特別な教育的ニーズのある子どもたちの評価プランを、それらにとって代わる、新しい単一な統合された学校をベースにした評価システムを導入し、現在、学校が抱える問題に取り組む意向である。また、専門家にとって、評価プランをさらにわかりやすくするために、特別な教育的ニーズの確認に関して施行規則を改正する。さらに、学校での実践を共有するために特別教育学校の領域で、模範学校を設定し、支援する。これらの取組は、一人一人の子どもたちの成長や発達に合わせた正当な支援を供給するためにも、また、学習に伴うあらゆる困難や障害を正確に取り除くためにも、できるだけ早い段階で迅速に子どもたちの問題を突き止めるためにも、教員の手助けになると考える。
- 学習遅滞児の学習状況に関して、正確な情報を保護者に提供できるように、学習成果や今後の学習計画を示すようなシステムを導入する。
- より良い評価が可能になるため、まずOfstedによる評価から始め、全ての特別教育学校は、徐々にアカデミー校になる機会が与えられる。さらに
- 保護者やコミュニティは新しい特別教育学校を、フリースクールとして設立することも可能にする。
- 2015年までに、全ての若者は、18歳まで、教育機関あるいは職業上の技術訓練を継続することになる。学校やカレッジは、成人への移行期がうまく行えるように、若者たちを支援する重要な機関となる。若者たちにとって、雇用、健康な生活、自立が確実にされた成人期が迎えられるように、それぞれの人生が充実したものになるように、多くの機会や支援が必要とされる。しかし、実際は、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する若者の多くは、青年期に多くの困難に立ち向かわなければならない。障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する若者たちは、一般の若者と比較して、多くの事柄に関して、与えられる機会も少なく、支援も限られており、成人への自立した生活へと移行していくことが難しいというのが現状である。
- 障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたち、若者たちとその家族は、地方教育局、学校、カレッジ、保健局、福祉サービスによる一貫性がない、不明確で曖昧な評価プロセスが、彼らに必要な援助の供給を妨げていると感じている。特に、子どもたち、若者たちを支援する専門家たちは、若者たちの成人期への移行期において、どのような支援が準備されれば、子どもたちと若者たちにとって、最善であるかということに焦点が置かれていないケースが多いと述べている。このような質の低い支援計画が、彼らに十分な機会や選択を与えず、現状をさらに悪くしているといっている。例えば、大学などの高等教育への入学に関しては、彼らが入学できるコース選択が限定され、希望していた将来の生活や職業の準備が出来ないことなどがあげられる。さらに、支援が少ないために雇用機会が少なく、仕事を見つけることも難しく、職業上の経験も不足し、長期間就業できない状況を余儀なくさせられる。さらに、児童期から成人期への移行時のヘルスサービスも調整されていないために、若者たちの健康を悪化させることも多くなっている。
- 障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する若者たちについての私たちの目標は、彼らが、教育やキャリアで成功し、自立した健やかな生活を送り、さらに地域社会の一員として積極的に参加できるような、最善の機会と支援を与えることにある。実際には、彼らの家族の多くは、彼らの自立した生活を心配するよりも、継続的なケアや養育を心配している。そのため、我々は、彼らの保護者や養育者たちを支援し、彼らがもつ才能が十分に生かせる、最善の人生を保障するような支援を行うことが重要であると考える。
- 政府の目標は、極めて高いと理解してはいるが、2015年までに、障害を持つ、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちに関して、提案した目標を実現するために、今年度末までに、地方当局と政府が協力しながら、具体案を示し、その具体案を実行へと移していくつもりである。
- 出生から25歳まで、教育、保健、ソーシャルケア、さらに雇用と、これらの支援を全て網羅した「教育・保健・ケアプラン」という単一のアセスメントを導入し、早期の段階で統一された支援を行う。
- 義務教育修了後の16歳の時点で若者たちに、質の高い職業訓練、もしくは、就業した職に関係したトレーニングなどのオプションを可能にする。
- 雇用機会を広げ、就業後は、出来るだけ長く就業が続けられるための支援を行う。
- 16歳以上の障害のある全ての若者について、児童期から成人期への移行時のヘルスサービスを充実させ、家庭医による定期健診を実現させる。
- 家族が現在利用している、あるいは、受けているすべての支援サービスに関して、今後、一層、家族が信頼できる、また、家族自らが管理できるようなサービスが提供されることを目指すものである。すなわち、この緑書は、それらの目標を達成するための改革に向けての第一歩である。実に多くの保護者が、また専門家でさえ、過剰なまでの官僚的なプロセスと、複雑な予算配分制度に、失望させられているのが現状である。そのために、現在、子どもたち、家族が必要としているニーズは供給されていないという現状を理解し、一人一人に適応した包括的な支援パッケージを提供することが重要であると考える。
- 子どもたち、若者たちと家族のより良い支援を供給するために、政府から直接的に改革や施策を指示するというよりは、むしろ、専門家やサービス機関が協力して作り出すような、革新的で協力的な方法を促進しながら、実行可能な改革を目指すものである。この提案とは:
- 障害のある、又は、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちのために、高品質で、必要なサポートを供給するために、地方当局と地域のヘルスサービスは、各家族に適切な選択とはどのようなものかという情報を与えることを保障し、確かで安定した、地域を中心とした戦略計画を作成する上で、更なる権限を与えられることになり、今後、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちのために、重要な役目を担うようになる。
- その中心となる専門家たちは、子どもたち、若者たちとその家族のためにより良い支援が展開されるために、子どもたち、若者たち、そして、家族とともに、協力して働けるような自由が与えられるようにする。
- 障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちに関するサービスは、地域の専門家による包括的で協力的なアプローチで供給され、さらに、保護者にとって、もっと透明性のある、費用に見合う価値のあるサービスが保証され、そのための資金を提供する。
- 実践に向けての提案として:
- 共同委託戦略(Joint Strategic Needs Assessment)と新しく設置される健康・福利局(Health and Wellbeing Boards)、また、国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence)とヘルスサービスによる評価や各所のガイドラインや基準などを考慮しながら、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもと若者のニーズが、どのように達成できるかを検討し、これら保健に関する機関と新たに設立する健康・福利局が協力できるような枠組みを作る。
- 障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちとその家族のヘルスケアサービスの委託による支援を供給するための最善の方法を見出すために、地域の家庭医によって構成する組合(Consortia)と協力する。
- 出生から25歳までの障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちに関わるすべての専門家のために、法定ガイダンスを簡素化し、改善することにより、官僚的な仕組みを減らすことに努める。すなわち、有効的な支援が供給されない現在の仕組みを撤廃し、専門家による明確で、有用なサービスを提供することに努める。
- 教育心理学の専門家と地方当局は協力し、教育心理学者のために、継続的で、必要な職能トレーニングを確認し、それを手配するための仕組みを作る。
- 地域サービスの枠組みを超えて、地域の専門家と支援サービス機関の間に、更なる協力関係を促進する。
- 地域で使える予算を増やし、予算に関して自由と柔軟性を拡大する。
- 過去に、地域のボランティア組織で、質の高いサービスを提供してきていると評価のあるグループ、あるいは、国内の特別な教育的ニーズに関しての十分な研究成果があるグループ、さらに、今後、将来的に資金を提供するに値すると思われる障害に関する重要な領域において、地域組織の事業紹介などを行う地域のボランティア組織などにそれぞれの目標が達成されるまでの予算を供給する。
- 障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちに関しての予算に関して、保護者に対する予算配分を、各地域で柔軟性を持たせながら、継続的に行いながら、予算の透明性を向上させるような、国家的に集約された枠組み作りが必要であると考える。また、それがどのようにすれば可能になるのかを、地方当局のグループの協力のもとに調査する。
- 出生から25歳までの子どもたちと若者たちを支援するために、義務教育修了の16歳前後の特別教育について、どのようにすれば異なる予算配分が可能か、また、一貫したアプローチを提供するためにもっとも効果的に機関を連携させる仕組みが可能かを調査する。
- この緑書の中で、改革への野心的なビジョンは、障害のある、あるいは、特別な教育的ニーズを有する子どもたちと若者たちの支援の向上を目指し、家族が抱える現在の制度の問題を最小限にし、予算の価値を最大限にし、それに見合った支援を行うという提案である。
- この緑書について、最初の4カ月間(4、5、6、7月)で協議、検討していき、2011年9月から各地方及び地域において、緑書の提案に関して、実現可能であるか、また実現するとすれば、どのように実行をするかを詳しく調査する。つまり、緑書は政策実施へ向けての開始宣言である。政府、地方当局、国内における様々な機関と協力し、今年度末までに、詳しい具体案を示す予定である。2012年5月には、必要に応じて法律を改正し、新しい教育法を制定し実行に移すものである。
※ イギリスは2007年3月に「障害者権利条約」に署名し、その後の2009年6月に批准しているが、その際に、以下の宣言を行っている。
※ 批准の際には、以下の宣言が出されている。
Declaration:
“Education - Convention Article 24 Clause 2 (a) and (b)
The United Kingdom Government is committed to continuing to develop an inclusive system where parents of disabled children have increasing access to mainstream schools and staff, which have the capacity to meet the needs of disabled children.
The General Education System in the United Kingdom includes mainstream, and special schools, which the UK Government understands is allowed under the Convention.”
(仮訳)解釈宣言
教育―条約第24条 第2項(a)と(b)
連合王国政府は、障害のある子どもの親が、障害のある子どものニーズに応ずることのできるメインストリームの学校や職員へのアクセスがより多くできるようなインクルーシブなシステムの開発を継続するものとする。
連合王国政府は、連合王国における教育制度一般には、メインストリーム学校と特別学校を含むものと理解しており、このことは本条約において許容される。
【参照文献】
UN Enable:Convention and Optional Protocol Signatures and Ratifications Declarations and Reservations(URL http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=475