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平成22年度障害のある児童生徒の就学形態に関する国際比較調査報告書 翻訳資料集

第2章 イタリア

資料1(1)

第2巻(2)2008年

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中間報告
Revista Soeciologica de pensamiento critieo
(主要な社会問題に関する雑誌)
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ISSN 1887~3898

障害者の差別に関するイタリア法No. 67/2006

概要2



アンジェロ・マーラ(Angelo D. Marra)

レッジョカラブリア地中海大学(Università Mediterranea di Reggio Calabria)



1.はじめに

 2006年3月1日、イタリア議会は法律第67号「差別の犠牲者である障害者の法的保護に関する規定」(2006年3月6日付イタリア官報第54号で公表)を承認した。同法律は2006年3月21日に施行された。

 まず、障害者問題に関するイタリア法体系全体の概要を簡単に述べることが適切だと思われる。そうすることによって、イタリアを背景にすると、障害者問題についてどのような取組がなされ、また、この新規定がどのような意味をもつのかより理解することが可能となる。

 イタリア共和国では、差別に対する規定は極めて基本的な懸案事項である。当該種類の規定は、同一の権利を享受することができる全ての国民に対して、平等の扱いを付与することを目的としている。イタリア憲法第3条の下では、(1)全ての国民は、性別、人種、言語、宗教、政治的意見、個人的又は社会的状況(いわゆる「形式的平等の原則」と呼ばれる)に関係なく、同等の社会的身分を有し、法の下に平等である。(2)実際、国民の自由および平等を制限する一方、人間の完全な発展、及び国の政治、経済、社会組織に全ての労働者が参加すること(いわゆる「実質的平等の原則」)を妨げている、経済的及び社会的障害を撤廃することは、共和国の義務であると、規定されている。

 イタリア法 No. 67/2006 (以下、法No. 67/2006)は、障害者に対する法的保護規定をイタリアの法体系に導入するものである。同法は、アムステルダム条約3第13条で定められたEU法の原則を実行するために、イタリア議会が定めた法の一つである。第13条は、性別、人種、種族的出身、宗教、個人的信念、障害、年齢、性的好みによる差別に対する闘いの原則について定めている。

 法 No. 67/2006 の目的は、障害者に対して、非障害者が現に享受する権利と同一の権利を付与することである。法案を精査すれば、障害者を、単に特別な状態にある人として見るのではなく、そのまま全体として共生社会を達成しようとしながら、障害者に対する保護をさらに認める政治的目的が示されている。

 注目すべきことは、法No. 67/2006では、障害者差別に対する一般的救済措置が規定され、さらに当該救済措置は、法の適用を制限するのではなく、別の保護様式を含んだ別規定が加えられていることである。とりわけ、法No. 67/2006 は、第1条第2項において雇用における差別に関する法律4を適用することを妨げないと述べている。

2.法を支える原則

 法案が添付された報告書は、ローマ条約第13条について言及している。また、同報告書は、イタリア法は、障害を決して一つのまとまった法律目的として扱っておらず、障害の各側面をばらばらに扱った断面のようであると指摘している。また、同報告書によると、このような意見で強調されているのは、障害者に一般保護を与えるための新たな法の起草が如何に急務であり、また、特定の部門では依然としてこれまでの法が有効である、ということである。

 第1条は、各機関は、障害者を支援するとしながらも、イタリア憲法に従って現に均等待遇原則が満たされ、また、現に平等の機会が優先されることを認めると誓うと述べている。

3.法No. 67/2006 の対象となる個人

 法 No. 67/2006 第1条は、新法の目的及び適用性について定めている。特に、法No. 67/2006は、障害者が、それぞれの市民権、政治経済的権利及び社会的権利を完全に享受するために、イタリア憲法第3条に従って、1992年の法律第104号第3条で定める、障害者に対する均等待遇原則および機会均等を十分求めることを優先する。

 法67/2006ではイタリア憲法に言及しているが、これは単に形式的な理由からではない。それどころか、この言及は、例えば、一般法と比べると対象を憲法レベルでより関連づけている。こうした法的選択により、それに関する規定が無視されず、また、免れることもできなくなっている。

 さらに、法67/2006で選択された言葉から、新法の中心は当事者自身であることが理解できよう。つまり、法 67/2006 が中心としているのは、「障害者(persons with disabilities)」なのである。

 障害に関する枠組み法である法 No. 104/1992 の第3条第1項は、「障害者(handicapped person)とは、結果的に社会的不利又は周辺化を引き起こす、学習障害、他者との関係づくり又は職場への参加に関して困難を伴った安定型又は進行型の身体的、精神的又は感覚損傷(impairment)のある者」と定めている。こうした「主体を中心とする subjective 」定義では、何が障害者としてレッテルを貼られるかを特定し、障害のある人々と障害のない人々をはっきりと区別している。したがって、法No. 67/200は、新法の適用分野を明確な方法で制限するために枠組み法について触れているのである。

4.法 67/2006 の用語「差別」の意味

 法 67/2006 は、他のヨーロッパ諸国5の経験から利益を受け、既にヨーロッパ法6で作成されている定義を再現している。

 第2.1条は、「均等待遇原則とは、障害者に対していかなる差別も認めないことである」と定めている。かかる見解は、障害者が非障害者と同じ扱いを受けるということではない。むしろ、障害のある個人が不利益を被ることになる差別を禁じている。

 第2条の以下の項目は、あらゆる差別について定めており、また、イタリア法では初めて、障害のある人々に関する2つの新たな概念、つまり、直接的差別及び間接的差別について定義している。

 特に、第2.2条において最初の定義がなされている。「類似の状況において、ある者が障害と関連した理由で、非障害者に比べると不利な取り扱いを受けた時、直接差別が発生する。」この点に関して、以下の意見がある。

 直接差別の主な特徴は、当該個人の障害により、少なくともある程度、不利な取り扱いが引き起こされるという事実にある。

 当該定義からまず生じる問題は、不利な取り扱いとは何か、例えば、法 67/2006 で定める差別が生じるには、「不利」となる要素は何かである。一方、注目すべきは、実際の差別は仮説に基づく評価で判断しなければならないということである。この点に関して、非障害者も同じ状況でどう扱われているか評価することが求められるため、法 67/2006 は、確かに漠然すぎる草案であると思う7

 第2条は、差別的行為の特性について述べ、また、直接及び間接差別の定義を定めている一方で、最近のEU法を意識してそれを引き継いでいると、添付レポートは指摘している。

 添付レポートで言及される欧州法は、人種、種族的出身とは関係なく、人々の平等の扱いに関する 2000/43/CE 指令、また、雇用及び職場環境に関する平等の扱いに関する 2000/78/CE 指令である。

 公然とした差別的行動は別として、障害者が完全に仮説的状況と比較して、不利な取り扱いを受けているかどうか評価することは困難に思えるため、第2条を適用することは容易とは思われない8

 公然と差別される場合には、非障害者は当該の取り扱いを受けていないと判断することは可能であるが、その一方、受けた取扱いが差別的であるか否かが全く明確でない不確実な状況は数多く存在する。当該の不確実な事例が、定義の「曖昧な領域」を構成していると確信する。また、当該の全ての事例が、意見の中で示した法による影響で取り扱われる可能性は少ないと思う。

 判例法は、この点について関連の提案をするだろうし、また、当該の定義を実際の意味で完全に満たし、さらに事例に適用することを明確にすることにも役立つだろう。しかし、法 67/2006 がまだ争われていないなら、この点に関してどの判例法も使用できない。したがって、判例で法67を如何に解釈するかについて検討することはまだ可能ではない。

 法 67/2006 の第2.3条もまた、イタリア法では初めて、「間接差別」の定義を定めている。間接差別とは、「見たところでは中立と思われる規定、基準、実践、法令、契約又は行動によって、障害のある者が、他者と比較して不利な立場に置かれる」ことである。

 当該の規定は、差別は実生活において様々の方法で現れることを考慮し、できるだけ多くの差別事例に対して制裁措置をとることが目的である。当該の定義の主な特徴は次の通りである。直接差別は、障害の状態と関連付けることが求められるが、一方、間接差別の定義は、一見して中立と思われる事例を含むことを意図している。

 また、恐らく損傷とは関連がない理由で、障害のある個人に不利な状況がもたらされる場合がある。単なる外見的障害は、当該の定義には影響しないと強調することは極めて重要である。さらに、いかなる規定、基準、法令、契約または行動も、もしそれが不利な立場を引き起こした原因であれば、障害者はここで述べた訴訟を起こす権利が与えられるように定義を解釈することは正しくない。

 それどころか、障害は定義の一部である。直接差別では、障害は差別の原因を考慮し、一方、間接差別では、例えば、不利な状況となる実際の結果等を考慮するなど、障害は後で関わってくる。

 損傷のある個人の不利な状況を引き起こした原因の全てが、必ずしも差別条項と関わるわけではない。それどころか、関与する特定の者に限って、かかる行動が差別的であると評価できる。

 外国人に対する差別に限定すると、直接差別及び間接差別の矛盾は、必ずしも容易に理解することはできず、また、一方で、矛盾の一部は、著しい怠慢又は故意の怠慢に基づいた差別的行動、又は、全く望まれない行動を区別することとも非対称的であると、法学者9たちは言及している。

 怠慢な間接差別として定義すること、また、故意の直接差別として定義することは正しくない。直接性に基づいた区別は、現に差別的影響がどのように発生するかに関する直接的又は間接的方法を扱っている。一方、ここで述べる区別の二つ目は、差別的行動によって行為する者の精神的能力を扱っている。

 ある者が、禁じられた結果を求めようとする唯一の目的で間接差別をしながら、同時に、故意の怠慢な行動および間接的差別をすることも理論的には可能である。

 第2.4条は、また、まるで実際の差別のように見なされる行動もあると付け加えている。当該の行動は、障害と関連した理由で嫌がらせまたは好ましくない行動で、このような行動は、障害者の威厳または自由を侵害し、又は、これにより脅威、侮辱、敵意を生じる。

 したがって、「嫌がらせ」でさえも差別と見なされ、その結果、禁じられている。にも関わらず、当該の迷惑な行為は、障害の状況に関連付けられなければならない。かかる規定において、組織的迫害行為(mobbing)に対する明確な言及がなされているようである。組織的迫害行為の概念は、労働法から引用されており、作業環境ではなく一般的な問題としての障害に関して、法 67/2006 で再現されている。

 また、イタリア議会は、労働法で定められた多くの規定の適用分野を拡大していることを十分認識していた。また、同議会は、労働法の中にある差別に対する態度を、新法にも規定することを望んでいたと確信する。このような解釈は、添付レポートを読めば確信できる。同レポートは、「雇用以外の状況でさえ、差別に直面している時はいつでも、障害者に対する機会均等及び平等の扱いに効力を与える法的手続き及び法的手段について規定することが必要である。」と述べている10。実際、添付レポートは、本法律の目的は、法律上の保護−職場差別の犠牲者である障害者に対して既に付与されている−を職場と無関係の全ての状況にまで拡大し、また、障害のある人々に対する差別を社会生活の各部門で撤廃した、完全で一般的な体系に対する必要を満足させることが目的であると明言している。

 法 67/2006 に含まれる定義の幅と漠然とした定義づけは、当該の定義が他国の差別に関する法律から借用されたとする事実に起因している。こうした定義が実は主要な考え方(例えば、1995年英国で採用された障害者差別禁止法(DDA)に関する考え方)は時間をかけて発展してきているような固有の背景を持った各国の定義に由来しているからである11

5.障害者の権限保護に関する民事訴訟面

 目的及び定義は既に確定されていたとすれば、法67で導入された実際に全く特有の裁判手続き面に対して焦点を当てることが適切である。

 立法者は、この法律の及ぶ課題により、法 67/2006 の及ぶ行為で用いられる手続をより効力あるものにするため、それを調整することを選択した。その結果、当該の事例において、以下のような特性が発生した12

 法67には、手順に関する多くの規定が含まれている。以下の節では、そのような手順をグループ別に分け、主な特性を指摘する。

5.1.特別手続き

 政府によって選択されている立法技術により、差別に対する規則を強化する体系は、既存の手続き手段に基づいている。例えば、法67第3.1条は、移民及び外国人に関する1998年移民法13で規定される反差別の特別手続きは、障害者に対する差別に関する請求で用いると定めている。この手続きは、通常の手続きより迅速でかつ効果的であるために選択されている14

 法67の第3.1条は、「現行法の第2条の下での行為や行動に関する法的保護は、移民に関する規定を含む法第44条第1‐6項及び第8項の規定、及び1998年7月25日法令 No.286 で対象となる外国人の状況に関する規則に沿って規定される」と定めている。

 当該の法律は、障害者に対して迅速で効果的な法的保護を付与することを公然と目指している。最近の差別的行動に対する禁止は、強力な−少なくとも見たところでは−法的制裁で支えられ、法学者は特定の主な課題を再検討するよう迫られている。その中でも、極めて重大な特性は、公的機関による行為に付与された法的保護への注目である。例えば、イタリアで、「行政機関」として定義されているものである。次に、アクセシビリティがこれに関連する課題である。障害に関するその他の法律と比較すると、法67の有効性もまた比較できる。

 法学者は、障害者の事例にも同じく適用されている、移民に関する包括法の第44条で規定される特定手続きについて意見を述べている。ある著者15によると、差別された者は、迅速かつ有効な法的手段によって保護されており、第1項の下で、当該の当事者は、この手段により差別を終結するのみならず、「実際の状況により、受けた差別による影響を除外する目的に対して適切なその他の行為」を起こすことがある。かかる様々な行為の良い例は、いわゆる公的行為の「適用除外」である。つまり、適用されていない「行政機関」の活動を中止することである。学者による報告によると、別の事例は、損なわれた利益を再建または認知するための「行政機関」に対する強制命令である。
 訴訟は、地方裁判所に申請することである。管轄裁判所は、申請者の住居がある裁判所である16。また、当該の特定の手続きも、法的手続きに関する調査局面においてより迅速である。裁判所は、非公式に調査権を行使し、その後一般的な手順をとる。さらに、上告受理されると、裁判官は、最も適切と思われる緊急命令を発行し、その後当該の命令が直ちに実施される、つまり、緊急命令は迅速に適用されなければならないと指摘することは価値あることである17

 さらに、裁判官が発行した命令を実施しない者が、罰金及び監禁を含むイタリア刑法第388条の下で、刑法による帰結を被るとすれば、裁判所が公表した当該の司法行為は、刑事制裁によって支持される。

 法67/2006第3条は、統合移民法の第44条の一部を想起する。特に、第44.1条を検討すると、差別に対する訴訟は、民間の事業体のみならず、「行政機関」に対しても同様に申し立てられると定めている18。「行政機関」の法的措置に関する事例に対してさえ、裁判地(the judicial venue)が民事裁判に帰するため、これは、イタリアの裁判に対する大いなる権威失墜である。

 第44.5条も同様に想起され、暫定措置は、調査なしでも、裁判官が裁判所判決の様式で発行されると規定されている。規定の当該部分は、同様に法67でも想起される。当事者は、当該「暫定措置」に従って、公判前の尋問に出席するまで15日間認められている19

 添付レポートでは、申し立てが認可された場合、障害のある人々に対する保護は、裁判所に付与された特別の権限のためにさらに強力であると強調されている。もし、申し立てが受理されれば、裁判所は、非経済的損害の回復を決定し、差別による影響を除外する命令を下すことができる。

5.2.立証責任

 立証責任に関して、法 67/2004 の法的手続きはもう一つの側面が強調されなければならない。第3.2条は、原告は、自らに対する差別的行動の存在を証明するために、関連のある正確で、一致した事実に基づく要素について言及し、裁判官は、イタリア民法第2729条第1項で定める定義条件の範囲内で、当該要素を評価することと定めている。

 したがって、認められている立証は、法により、差別的行動そのものの存在を扱わなければならないと定められている。この点に関して、当該の第3条で触れられているイタリア民法の第2797条は、法で定められていない推定は、関連した正確で、一致するものを除いた推定を認めない裁判官の自由な確知に委ねると定められている。

 提案された解釈に従うと、第1729条への言及は不必要だと思われる。特に、法 67/2006第3条の下で言及される「事実に基づく要素」は、定義されていない20。法67は、単に原告は差別的行動を構成する事実を証明しなければならないと定めている。しかし、第2729条は、「通常の立証手段」と呼ばれ、一般的に適用されているため、原告はまた、第2729条の定める方法によって差別を証明する権限が与えられていることも明らかである。

 差別のみを立証する現実に基づく要素を制限するような規定に含まれる言葉遣いにも関わらず、例えば、事実に基づく要素が被った損害を証明するために使用されることを認める規定など、規定には損害が含まれると解釈することが適切であると確信する21

 原告は、差別及び損害の双方を同様に立証するための責任を負う。にも関わらず、損害は、単なる状況証拠によって十分立証される。

 さらに、法67は、裁判官は、第2729条で定める定義条件の範囲内で、事実に基づく要素を評価すると述べている。しかし、かかる言葉遣いからは、当該の定義条件は何であるかという疑問が生じる。第2729条の最終節は、法律により証人によって立証されることを禁じられている場合、推定は認められないと規定している。

 したがって、疑問は、当該の規定は、どのレベルの制約条件で法67/2006で用いられているかである。私の意見では、現に、裁判所が採用する処置を決定するための広範な権限を有しているなら、かかる制限は簡単に除外することが可能である。

 添付レポ−トによると、第3条第2項は、障害のある人々に対してさらに保護を与え、「推定証拠」の特別な手段により、欧州指令に従って、救済措置をより効力あるものにしている。草案の言葉遣いの曖昧さは、政治的には受け入れられる可能性はあるが、法規定に含まれるとすればそれは適切ではない。

 法67は、上記を基にすると、イタリア法の範囲内で立証責任に関する原則について現実的に革新的ではない。この場合、いわゆる推定責任に関して公表されないと仮定するなら、責任の移転も、また、特別な利点もないと確信する。一方、法67は、差別の犠牲となる可能性のある人々に対して有利な計らいを示していることは明白である。

 また、「裁判官は、法的要素、事実に基づく要素、判例法を考慮し、当該の状況証拠を完全証明と見なす際は注意しなければならない。」と述べている法学者もいる22

5.3.規定された保護を求める資格を有する者

 保護を求める資格(entitlement)、それに関連する原告適格は、さらに検証することが必要である。法 67/2006 の最終規定では、関係する障害のある個人に加えて、特定の事業体も、また、差別の犠牲者の名において、またそれに代わって、法67の下の保護の執行に関して行動する資格を有すると述べられている。

 当該の団体とは、次の2点に基づいて、雇用省と共に平等な機会に関する省の法令により定められた協会および事業体である。この2点とは、([i])関連団体の付属定款で定められた目的、([ii])当該事業体が認証された委任状を付与されたことによる安定性。添付レポートでは、第4条に関連規定が含まれていることが強調されており、この規定では、差別に対して保護を求める資格が、障害のある人々の保護の目的で組織された協会及び事業体にまで拡大されている。
 訴訟を起こす資格の幅は、(a)障害者によって付与された代理人の権限、又は(b)当該事業体が、障害者から申し立てられた損害に対する裁判に参加する利益、又は(c)当該団体が、違法な公共の行為に対する賠償を請求するための自律判断による。

 著者は、資格のある団体が、雇用省と共に、関連の協会の付属定款及びそれに関する安定性で定められた目的に基づいて、機会均等省による命令によって指定されることが有益であると考える。

 当該の法を起草した議会は、関与する事業体の構造的妥当性の手段として当該の要素を記載している。法67は、訴訟権限の乱用の可能性を避けようと試み、さらに、現に障害のある人々の利益を代表するよう注意深く事業体を選択した。

 マイノリティーの市民権運動で常に考慮されているように、団体の利益の保護は、差別禁止政策に極めて重要であると認めている著者23もいる24

 要請された法定代理人の権限については、何らかの記載が必要である。また、第2条で規定されている訴訟に関しては、法定代理人の当該資格が必要である。法廷代理人による当該の資格がない場合には、第2条の下で法的主体によってもたらされる訴訟は無効である。

 私の考えでは、ある者が法定代理人の資格を与えず、その一方で、同じ者が、ある種の恐怖から、独自に行動しない可能性はなさそうである。このため、法定代理人の資格の範囲は、法的保護をうまく実施するためには不利である。

 特に、事業体の自主的活動は、グループの利益の名において組織的迫害行為を想起する「迷惑な行為」の場合には許されない。犠牲者が差別を被った者に対する敵対的環境のために、自らでもなく、また協会を通じてでもなく、いかなる訴訟も起こさないとするなら、迷惑な行為と成功裏に闘うためには集団訴訟が適切であると思う。

5.4.イタリア法の下のいわゆる行政裁判所に対する申し立て

 法 67/2004 第4.2条は、次の事例を挙げている。「第1項で定める協会及び事業体は、訴訟中の事例に参加する資格を有する。また、協会及び事業体は、障害のある人々が受けた損害に対する審理に加わる資格を有し、また、当該の人々の利益に対して不利益となる訴訟を無効にする行政裁判所に対する申し立てをすることができる。」

 行政裁判所に関する言及は、様々に解釈される。それに関して以下にまとめ、どれが法67の目的に最も適しているかを分析する。

 一見すると、当該の規定では、障害者事例に関して、裁判地に関する議会の位置が変更されているように思われる。上記の法67では、統合移民法の第44条第1項が想起され、また、訴訟が、「行政機関」(上記のように、裁判地での一般規定に対する権威失墜を構成する。)によって招来された行為又はなされた行為に対するものであったとしても、差別事例における民事裁判所の管轄権について規定されている。とはいえ、当該の見解を受け入れることは正しくない。

 二つ目の意見は、事前に差別的であるとしては分類することはできないが、行政的本質を依然として有する行為に対して言及がなされていると見なすことである。この意見は、イタリア法の保護体系の基盤である原則からかけ離れているので、賛成しない。

 三つ目の意見は、当該の規定には、損害に対する適用除外でも払い戻しでもない、行政の行為の取り消しに対する申し立てが含まれていることである。当該の意見25を提案している法学者もいる。また、イタリアでは裁判地の通常の基準に沿っているため、この考えに賛成する。

 一方、イタリア法の下のいわゆる「民事」裁判において、使用される適切な用語は「介入」であると言わなければならない。このことから、審理が既に個人によって開始され、また同時に、行政行為の取り消しの目的で訴訟がなされていても、当該協会そのものも訴訟を起こす資格を有していると考えられる。「申し立て」という用語でも、また、必ずしも既に開始されている審理とならないことが示唆されている。つまり、訴訟は、自らの決定により協会自体によって開始されることさえ可能であるということになる。

 第4.3条は、「第1項で定められた協会及び事業体もまた、第2条第2項及び第3項で言及される差別行為に対して、当該行動が人々のグループである場合、訴訟を起こす資格が付与されるものとする。」と定めている。当該の規定では、ある特徴が指摘されている。

 まず、省によって定められた共同協会(class associations)は、申し立ての差別が人々のグループについて考慮する場合に限り、またその範囲内において、例えば、個別に法定代理人の権限なしで、また審理中の裁判に加わることなく、単独で法的手順を開始することができる。つまり、共同協会は、差別が個人でなく、多くの人々に対する時に限って認可されている。次に、規定で用いられている言葉遣いは、当該の事業体は、差別に関してのみ訴える権限を有することを示唆している。これに対して、共同訴訟(class action)には迷惑な行為、つまり、障害に関して、障害者の威厳と自由を侵害する、又は、当該者に対して脅迫、侮辱、敵意の感情を生み出す好ましくない行動は含まれない。

6.判決の効力

 ここで、判決の効力に関して、訴訟の成功の潜在的効力について検証する。法 67/2006第3条は以下のように述べている。

 「裁判官は、上訴を認めることによって、金銭的損失が含まれない時でさえ、要請されれば損害賠償を認め、また、もし存在するなら、行動、行為、又は、差別的行為の終結を命じ、状況によって措置自体に設けられた制限時間の期限の終了前に、特定した差別の撤廃に関する計画を採用することなど、適切な対策を採用する。」

 上記の言葉遣いから、裁判官は差別を撤廃するための大きな権限が付与されてきたことが理解できる。裁判官は、民事裁判において責任ある者に対して発行された司法命令を下し、また当該命令の内容は裁判官が独立して決定することが可能である。

 強制命令を行う当該の権限は、民間人又は行政機関による訴訟のいずれの場合においても提供される。この見解については、イタリアで行政法を統治する一般原則とは反対に、必ず二重チェックを行わなければならない。本原則は、イタリア法の下では、司法命令が何かを実施するために、行政機関に指示することはできないと述べているからである。

 上記の規定は、差別的行動、行為又は行いに関して述べたものである。こうした広範囲な意味を持つ言語は、制定された方法により、できるだけ多くの可能な差別的状況に対して制裁することが目的である。

 法67の下では、裁判官は、ある者が実際に自分自身の義務を果たすために、保護法の主人公として、当該の手段を用いて積極的に執行することが可能である。この目的は、また、裁判所の判決内容が、評価される実際の事例に関する決定を行う裁判官の裁量に完全に委ねられている理由である。

 現在、私たちは、意見を述べた規定に注目している。当該の規定は、差別的状況を終結することに加えて、裁判官が、差別を引き起こしている不正な扱いを撤廃するため、適切だと思われるその他の手段を採用することも可能である。

 このことは、添付レポートでも記載されているように、保護に関する優勢な種類である。その理由は、申し立てが認可された場合、判決は、損害、また非経済的損害に対する補償に対してのみ決定されるのでなく、同じく、差別の撤廃に対する適切な法的措置を命令するからである。
 差別が起こりうる方法には様々あるが、良例として、障害のある人々が飛行機で移動することに関する航空会社の方針が挙げられる。

 法67で規定される救済策には、障害者が受ける損害が含まれる。この点に関して、法律では、非経済的損害に対しても補償を求めることが可能であると述べられている。

 障害のある人々に対する差別に関して、非経済的損害の概念は、障害者が差別によって受ける慰謝料の概念に制限されない。つまり、実存の損害の形式としての対象に関する損害を分類することがより適切である。イタリア法では、存在する損害を非常に特異な種類の損害として規定されている。

 実存する損害のカテゴリーは、法学者によって明確に説明されてきたが、保護される可能性のある新たな種類の状況が発生することに関連しては、法廷において最初に特定された。この新たな概念は、「健康損害」という虐待カテゴリーでは適切に適用できない事例が対象となっている。

 実存する損害を含む最近の判例では、最近、カラブリア州(イタリア)において障害のある人々の権限に関する決定がなされた26

 実存する損害の意味をさらに良く理解するには、法学者や判例法において、精神的損害を構成するものと、実存的損害を構成するものが区別されていると指摘することが有益である。精神的損害は、個人の内的感情に対して損害を与えることを意図している。したがって、精神的損害は感情に与える損害である。これに反して、実存的損害は、外的なものに向けられている。例えば、実存的損害は、関わり(他人又は一人の人間の外の環境との関係)を持っている事実と異なった行為又は不作為により解決され、いずれの場合にも、報酬または資産に関係しない活動が含まれる。これに対して、経済的損害は、財貨や資産(例えば、破壊され、劣化し、元に戻らないもの)に基づいている。

 実存する損害の概念によって、社会的感情で極めて不公平として軽視されたり、感じられたりするとしても、従来のイタリア法の概念では分類できない特定の日常的状況で保護される可能性を特定することが可能となった。上で述べた判決は、次のように捉えている。

 「法体系が人間の相関性に価値を置いていることに注目すると、社会学的及び心理学的観点だけでなく、これからの法律のあり方からしても重要となる部門、すなわち、「質の高い生活」という考え方に込められている「通常の生活(normality of life)」を脅かす広範な損害領域には、実際上伝統的なカテゴリーは及ばない。つまり、「生活の質」に対する前向きな考えの中で正常性が意図されている「生活の正常性」に対して、襲いかかる広範な損害の領域。

 同判決は我々の分析にとって非常に重要である。裁判所が障害者保護の原則をいかに適用する方法、つまり、法律と個人の権利についての正しい解釈と適用に責任を有している事業体がこの原則を理解する方法を示しているからである。この原則は、広範で、柔軟な概念であり、絶対的に、良好な生活の質を求める最終目的に釣り合っている。

7.裁判所の権限:重要な特徴

 さらに幾つかの局面について、障害者に対する差別に関して裁判所に付与された特別な権限を指摘することが必要である。まず、問題は、新たな差別禁止に対する違反の責任を負う者に対しては、裁判がどの範囲まで特定の行動を命令するかである。この点は、特に民間団体に関しては問題が生じないが、公的機関に関して疑問が起きる。

7.1.民間部門

 裁判所の命令が、民間団体、又は、財及びサービスの提供者に対して、どの程度まで適切に執行されるかについて理解することは興味深い。イタリア法の下では、民間団体及び個人は、無条件で裁判所の命令に従わなければならない。法 67/2006 の新たな点は、 裁判所に対してかなり幅広い権限が与えられていることである。例えば、裁判所は、法が定める保護を目的とする場合には適切だと思われるいかなる行為も採用することが可能である。

 法 67/2006 では、実際、司法権及び民間(private subjects)の義務について既存の法的枠組みには大きな変化は導入されていない。但し、有罪となった者が採るべき具体的行動を決定する特別権限を、裁判所が有するとする新たな規定を除く。

 さらに、懲罰的損害賠償は、差別事例において認められていない。一方、特定の事業体が、訴訟を起こす資格を有し、また、多くの個人の名において、また、それらの個人に代わって行為するなら、被った損害の実際の測定は、かなりの規模に上る可能性がある。そのため、また回復の規模に比較しても、差別に対する責任を負う者に対するかなりの苦難を引き起こすことも考えられる。

 また、この事業体は、公共の利益が示される範囲まで、(法律で定める事例において)独自で訴訟を起こす資格を有している。裁判所は、損害補償の目的で、これについて検討しなければならない。

 こうした規定は、全ての差別的行動または障害者に対する慣行に対して−経済的観点に限ってみたとしても−抑止効果を持つことも目的としていると思われる。

 ここで、司法措置の公布に関して述べなければならない。第3.4条は、「裁判官は、第3項により、配布圏内で非常に多くの発行部数も持つ、国内の優れた日刊紙又は主要日刊紙の一つの紙面において、被告人の費用負担によって、ただ1回、方策を公表することができる」と定めている。

 司法措置を公布する権限は、その目的が、差別された個人の損なわれた評判を立て直すことをはるかに超えるものなら、非常に特有である。法学者たち27は、外国人の差別に関する権限についても意見を述べている。ボローニャ(イタリア)の裁判所が、ある不動産業者を有罪にし、差別による損害賠償金を払うように求めた。それは、この不動産業者が、人々に対して、ウェブサイトに登録する際に外国人であることを宣言するよう強制したからである。この裁判所は、ウェブサイトで判決を公表することを決定した。

 政令286の第44条は、罰則でも、制止目的でもなく、差別による影響を無くすことだけを目的とする普通ではない手段を命じる権限を裁判所に付与しているとして、同決定は批判された。さらに、当該の規定では、命じられた手段を公表する権限については規定していない。この場合、公表することが差別に対して有益であるかについて、その理由を理解することは困難であった。

 その理由は、不動産業者が、外国人以外に用意された特別住居の販売を公表したからである。このような状況では、差別に対する闘いは重要である。

 それどころか、法 67/2006には、第4項(既述した)で定めるように、この点に関してより詳細な規定が含まれている。法では、差別的行動を公にすることが重要だと考えられている。したがって、法67/2006第3条第4項が、何を意図しているかに関して問うことが適切である。別の観点からすると、命じられた手段の公表を命じるための司法権限にはどのような本質があるか、また、かかる権限はどの範囲まで制定されるかが確認されるべきである。

 この権限は、おそらく、障害のある人々に対する差別の問題についての社会意識に影響を与えようとするものである。差別は、たとえ個人に対するものであったとしても、結局、状況に関連し、また個人的関係に関連した公共の問題であると議会は理解している。このため、法律では、例えば、こうした社会的状況において、差別が発生する場所での制裁が選択されている。

 差別的違法行為を避けることによる障害者の利益は、障害の社会モデルの理論に基づき「社会の抑圧された少数集団」に対する利益と見なされる28

 第4項の司法権は、既に第3項で規定されていると考える者がいるかもしれない。しかし、そうではない。この規定が意味するのは、本法は差別はそれが起きる背景において争われなければならないことを意識して制定されたことと、私は確信する。

7.2 公的部門

 イタリアの公的機関は、どのような外部の権威からも独立しているため、イタリア法では、裁判所にさえ、公的機関に対して何かを命令することはできないとする原則があると言わなければならない。

 この点に関して、実質的平等の原則を適用するなら、おそらく、法規定の正しい解釈に対処することができる。EU法の原則の下では、イタリア政府は、実施的平等の原則を順守する義務を負っている。

 この点に関する主な懸案事項は、公的機関が違反を犯した場合、イタリア人学者が、裁判所が公的機関に対する直接義務を課すことを禁止していることを基にして、結果として障害のある人々に対する適切な保護を否定することになるように考えることである。

 これに関して、イタリア法廷は、確かに、EU法と対立する国内規定の適用の中止(いわゆる「適用除外」)の義務を負っている。

 こうした適用除外は純粋に特別なことを実施するために公的機関に対して義務を課すことと一致するため、ヨーロッパ法と対立する国内法の規定適用除外の概念を想起することが重要である。

 この場合、国内規定(公的機関の行動の基盤)とヨーロッパ法の不一致により国内の対照的な規定を適用しないため、又は、言い換えるなら、異なる役割を果たすために、当該公的機関には法的義務が生じる。
 こうした事例で示されることは、非差別規定違反裁判所による確知によって、ある特定の方法で行動するために、関与する公的機関に対する命令が出されるなら、裁判所は、公的機関非差別規定を順守するための、また、規定順守を認定するための適切な措置をとる権限を実際に有することである。裁判所は、差別の撤廃に対する計画を採用するよう命じることができる。当該の規定では、差別は様々の要因から発生すること、また、適切な計画によりこれらの要因を直視して全体として理解し、そして除外しなければならないことが考慮されている。

 差別除去計画は、誰も公的機関に義務を課すことができないという上述のイタリア法原則ともおそらく一致可能である。撤廃計画の採用命令は、特定行動の採用命令ではなく、一般的法67順守命令と見なされる。

 裁判所は、現に、法67で定める定義条件を順守するための義務を公的機関に課している。この義務は計画を採用することのみを考慮し、当該の計画は、公的機関によって、十分独立して、また慎重に採用されるため、公的機関は障害を撤廃する内容および方法を自由に決定する。このように、障害の撤廃計画を採用するよう公的機関に命令することは、イタリアの行政機関の独立の原則を侵害しないと思われる。

 さらに、法によって差別の禁止が定められる場合、実質的な公正の基準の下では、公的機関の非合法的行為が受け入れられていると見なされるとは理解しがたい。このことは、実際、人権に関するあらゆる条約で規定され、法文化の基礎的な原則となっている権利の侵害となる。

 さらに、差別判決で裁判所から出された法令に関しては特別の刑事制裁が用意されていることを忘れることはできない。

8.職務怠慢による差別:法律第67号は、アクセスに関する(既存)義務を執行するために役立つのか?

 これまで検証した規定について、さらに問題が生じる。この問題は既に述べた問題の補助となるものであるが、法 67/2006 によって付与される保護の期間と期限を適切に理解する目的には欠くことが出来ないと思われる。とりわけ、それぞれの解釈に関して、法 67/2006 のイタリア法体系への導入について最も複雑な問題の枠組みを与えるために、依然として議論の的となっている問題の概要をここで述べる。

 イタリアの法体系では、特定の行動に関して多くの義務が含まれている。規定の適用が一般的な領域に適用される場合もあれば(例えば、誰かと契約を結ぶ義務は一般の小売店が求める。)、規定が、障害のある人々が都合の悪い状況にあることを避けることを意図したものもある(例えば、建築的障壁がなく建築される義務。しかし、民間サービス提供者又は市民に対する調整の観点からの積極的な行動に関する明確な義務はない29。)。
 実際、規定の順守に関する担当者の職務怠慢が法 67/2006 の下の差別につながる積極的行動と等しい実際的状況を引き起こすことは疑いもない。職務怠慢は、法 67/2006 の規定の範囲に含まれることが可能であるのか。この質問は、法67/2006 で規定される法的手段によって、この問題に挑戦することが可能か、ということでもある30
 より深く分析すると、契約を結ぶ義務及び対象を規制する法律には、既に存在している建築的障壁を撤廃する義務が示されていることが分かる。既存の規制と比較して、法 67/2006 は全く新たな点を導入しているか否かを検証するのは興味深い。

 イタリア法の下で公的機関の関係について規制する公法の規定は、障害ある人々のニーズを扱うには、おおむね不十分であることが証明されている。ただし、イタリア法では、公的建築物の再建は、アクセシビリティ要件に沿ったものでなければならないことは既に規定されている。

 しかし、もし順守が不十分であるとしても、法律は、公的機関(又は民間団体)に法を順守した建物を建築または再建築するよう強制する適切な救済策は障害のある市民に対して規定していない。

 法67/2006以前は、イタリア法体系で規定される唯一の救済策(行政機関が適用する公的制裁)は、国民に対して非合法の建築物を閉鎖するというものであった。すると次の疑問がわく。障害者の実際のアクセスニーズが満たされないなら、また、国民が当該の建物の使用を妨げられるなら、障害者は普通ではない救済策(さらに言うと、実際、無駄な)に訴えるべきなのか。

 法 67/2006 は、単に撤廃したり禁じたりするだけの古い救済策とは異なり、さらに大きな実務的影響を与えることが可能な手段についてその概要を述べている。法 67/2006以前は、公的建築物に対して規定された義務が、現に障害者の特定の権限を生じるかどうかは明らかではなかった。
 法 67/2006 は、障害のある人々の差別されない権利を確認し、規定している。

 最近、身体的損害又は精神的損害のいずれでもない、損害の新たなカテゴリーが作成されたことも無視できない。この新たなカテゴリーは、実存的損害であり、生活をより困難にする状況において発生する。現在、障害のある人々の固有の権利が認識されている。そのため、以前、イタリアの法体系内で公法/行政法の下で単純な義務と見なされていた義務は、現在は、民法的見解からしても損害事象を引き起こす過程意識を評価するための実際の基準となった。

 差別の原因となった事実と障害者が被る差別の関連には多くの理由がある。人が忌避する義務のある問題を忌避しないことは職務怠慢であるという原則を掲げるイタリア刑法では、法67に関連する因果関係もまた職務怠慢に由来する。

 差別されない権利を認識することは、修復義務の伝統的要素の全て、すわなち、非合法的行動、因果関係、さらに職務怠慢により生じた損害などがこの種類の義務のなかで解明できることを意味している。

 職務怠慢によって引き起こされた差別では、正に、その他の法的手段が極めて重要である。この場合、法廷は、差別による影響を除外するため、適切と思われるその他の手段を採用する。

 差別による影響は単に法67/2006で規定される行動を採用することによって撤廃することが可能である。例えば、非合法に無視された義務を順守することによって可能となる。したがって、これは、法の順守を確立し、障害のある人々の個人の権限の尊重を取得する現実的な方法である。また、この目的は、以前の非建設的な法によっては達成されないことは明らかである。
 ここで、「受動的差別」の概念を想起したい。間接差別は、ある特定の者による、積極的な行為ではなく、受動的行為、又は、不作為を伴った差別を意味すると既に述べた。この概念は、本論文の目的に関しては簡単な例で分類することができる31

 行政法及び公的機関について考慮してみよう。この分野では、差別的な積極的行動又は事実が実施される可能性は全くない。ある民法法学者は、公務員が差別的な行動は起こさないことは簡単に想定できると述べている。公的機関が公的ではないが実際上の差別になる政策を遂行することはあり得る。

 Morozzo Della Roccaのこうした見解については、間接差別の概念の下では、実際の差別につながる「中立と見なされる」これらの行動は、法 67/2006 の第2条第3項の主題であることを追加できる。

 差別的な行政活動の違法性を認識することに関して、最近、裁判地について出された判決に対する意見を想起することはさらに興味深いことである。多くの法学者は、通常の民事裁判(イタリア法の下でのいわゆる行政裁判所と異なる)は、公的機関の活動を非難することはできないと確信している。それにも関わらず、この意見は、全ての人によって共有されていない。私もこの意見に同意しない。

 伝統的な見解は、伝統的には通常の管轄権に該当する個人の権利(diritti soggettivi)といわゆる行政管轄権に該当する正当な利益(interessi legittimi)との間に位置する法的に主観的な立場の区別に基づいている。

 イタリア法に特有である当該の区別は、EU法から導出した新たな法的分類に直ちに置き換えるべきである。通常の管轄権及び行政管轄権の配分の概要についてさらにまとめることが適切であると考える。つまり、個人の権利の保護者として役割に基づいて、公的機関がとった行動をより良く評価するよう裁判所に対して強く求める。また、これによって、正当な利益という曖昧な分類を捨て去ることになるかもしれない。

 主題に関しては言えば、法律はある特定の行動が差別的であるか否かに対する評価権限を通常の裁判所に当てることを明らかに求めた。また、法律が、個人の権利(diritti soggettivi)または正当な利益(interessi legittimi)として個人の権利の性質に基づいて何らかの区別を設ける意向がなかったこともまた、明白である。

 したがって、裁判所が公的機関による行動又は行動の各段階を確認するなら、裁判所は法律を順守すべきのみであると確信する。

9.最後に:公的機関の態度と新たな望み

 法67は障害者問題を規制する際の異なる態度について示している。また本法は障害に対する差別を民法上の損害として初めて規定した32

 そのため、平等原則の違反で公的機関が行った行動の不当性と非合法性の違いを理解することが重要である。
 移民に関する包括法について意見を述べている法学者もいる。法67が障害に関する移民問題について規定した救済策を導入しているなら、ここでその意見を想起することが有効である。政令286/1998が適用された過去数年の間、公的機関による行動に対しては、伝統的なイタリア法の原則33のために簡単に挑戦できなかった。にも関わらず、移民法は、民間団体によるものであったとしても、それぞれの差別事例について判定する権限を裁判所に与えているため、移民に関する包括法は公的機関に対しても決定をイタリアの裁判所が下すための好機となり得た。

 実際問題としては、移民包括法の適用の結果は有効ではなかった。イタリアの裁判所が、移民に関する公的機関の差別的行動に対して、これまで出した有罪宣言判決はない。

 したがって、法 67/2006 の下では、また、障害のある人々に関する差別事例では、当該の有効性の欠如が発生すると確信している。イタリア法廷は正に勇敢であるとはいえない。

 こうした観点は、法67で付与された保護の有効性に関して関連する役割を果たしている。個人の理論上の権利は現在は有効に設定されているが、差別に対する実務的対策が執行されるのは時間が必要である。この問題の解決はイタリア法体系次第である。適用の局面は優先的に検討すべきであり、これは法廷の義務でもある。また,法律はこの点を明確にし、裁判所が障害のある人々の個人の権利を認識するようにすべきであると私は強く確信している。

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付録1

法律No.67  2006年3月1日34
差別の犠牲者である障害者の法的保護に対する規定
(イタリア官報No. 54 2006年3月6日)35


イタリア共和国下院及び上院通過
イタリア共和国大統領
以下の法を支持する


第1条

(目的と適用範囲)

1.本法は、憲法第3条の条件により、障害者に対する市民的、政治的、経済的、社会的権限を完全に享受するために、1992年2月5日の法No.104の第3条で取り扱われる均等待遇原則及び障害者に対する平等の取り扱いの完全な実施を促進する。

2.仕事へのアクセス及び職場環境における、障害者への差別の場合において、2003年7月9日の法令No.216に含まれる規定では、雇用及び職場環境での平等の扱い2000/78/CE指令が実施され、維持されている。


第2条

(差別の背景)

1.均等待遇原則は、障害者に対しては適用できない。

2.直接差別は、障害のために、非障害者に対する方法より不利に取り扱われている者が、類似の状況において取り扱われてきた、または、取り扱われるであろう時に発生する。

3.間接差別は、その他の者に関して、見たところ中立的規定、基準、実践、行動、契約、又は、行動によって、障害のある者が不利な状況になる時に発生する。

4.差別もまた、次の様な嫌がらせとして考えられる。例えば、好ましくない行動や行為は、障害のある者の威厳と自由を侵す、障害と関連しており、当該者に対する脅迫、侮辱、敵意の感情を生み出している。


第3条

(法的保護)

1.現行法の第2条の下での行為や行動に関する法的保護は、移民に関する規定を含む法第44条第1−6項および第8項の規定及び1998年7月25日法令No.286の対象となる外国人の状況に関する規則に沿って規定される。

2.原告は、偏見に対する差別的行動の存在を示すため、重大、正確で一貫性のあることが求められる事実問題を法廷に持ち出し、民法第2729条の最初の項の下で、裁判官によって評価される。

3.裁判官は、上訴を認めることによって、金銭的損失が含まれない時でさえ、要請されれば損害賠償について規定し、また、もし存在するなら、行動、行為、又は差別的行為の終結を命じ、状況によって措置自体に設けられた制限時間の期限の終了前に、特定した差別の撤廃に関する計画を採用することなど、適切な対策を採用する。

4.裁判官は、第3項により、配布圏内で非常に多くの発行部数も持つ、国内の優れた日刊紙又は主要日刊紙のひとつの紙面において、被告人の費用負担によって、ただ1回、方策を公表することができる。


第4条

(行為に対する準正)

1.組織及び団体は、法令の任務及び安定を基にして、省の法令で機会均等に対して特定されている、差別を受けた者自身の名前及び利益において行動することが十分認められている。これらの組織が、公証人の前で委託されるなら、または、民間の公認の署名書類によって委託されるなら、当該能力は、第3条で規制されている。さもなくば無効となる。

2.組織及び団体は、第1条の下で、障害のある者による持続的な損害に対して裁判に参加することができる。また、これらの者に悪影響を与える行為の無効を請求する行政訴訟を起こすことができる。

3.組織及び団体は、第1条の下で、また、第2条第2、3項目で記載されている差別的行動が、人の全カテゴリーに対して公表される時、差別的行いに対して行動することが認められている。


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本法には、国印が押されており、イタリア共和国の規範行為の公式コレクションの一部となる。誰でも、これを順守し、また、国の法律として順守する義務を負う。


参考文献

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