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(関連資料)障害のあるアメリカ人法の影響

:ADAの目標達成進捗状況の評価(抄)

II 完全な参加

連邦議会は、ADAの制定にあたり、障害のある者は地域の活動から排除または隔離されているため従来から政治的、社会的に無力な立場に追いやられていることを見出した。この調査での完全な参加とは、統治および公民権を含め、障害のある者を地域活動に積極的に内包し、統合することをいう。

A. 州および地方政府のサービス

1. ADAの要件

 ADA第II編は公的機関の「サービス、プログラム、活動」に適用される。第II編は障害による差別を禁止し、(a)方針、慣習、手続について合理的な改正を行うこと、(b)適格な障害のある者のニーズに適合した最も統合された状況で提供されるサービス、プログラム、活動を実施すること、(c)制度の目的に合わせて施設を改修すること、(d)障害のある者とのコミュニケーションが障害のない者と同程度に有効にできるようにすること、(e)交通機関における配慮、を義務付けている。有効なコミュニケーションは、視覚、言語、聴覚に障害のある者に補助的支援およびサービスを提供することで達成される。

 既存の建物に関する政府プログラムは「プログラムのアクセシビリティ」を達成しなければならない。プログラムのアクセシビリティとは、プログラム全体としてみた場合に、障害のある者のアクセシビリティを備えていなければならないということである。プログラムのアクセシビリティを達成するには、施設の物理的変更または他の手段の組み合わせ(要請による移動、他の手段によるサービス提供など)が必要となる。プログラムへのアクセスを可能にするために、被雇用者が50名以上の州および地方自治体はその施設の自己評価とプログラムをアクセス可能にするための移行計画を実施するよう求められた。移行計画により必要な構造変更は1995年1月26日までに完了しなければならない。新規の建設および改修はADAアクセシビリティガイドラインに一致するよう十分にアクセス可能となるようにしなければならない。

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2. 関連データ

1995年、コンドレー・アンド・ブラッドニー社は人口5万人以上の米国都市の公務員人事担当者の調査を実施した。調査対象は334都市で回答率は63%であった。回答した都市の90%以上がADAに関する説明文書の入手、ADAセミナーへの参加を行っておりADA調整担当者を指名していた。回答した都市の80%以上がADA規則を学習し、顧問弁護士と協議し、自己評価を実施し、職務記述書の評価を行っていた。42.5%が労務専門弁護士と協議しており、35.9%がADAコンサルタントと協議していた。21.6%が職業支援ネットワークと協議して支援を要請していた。施設の80%超に障害のある者がアクセスできるようになり、地方自治体の70%超がADAワークショップを開催していた。

ファイファー・アンド・フィン社は1995年、州、準州、地方自治体別のADA遵守状況を調査した。この調査は州および準州とは別個に地方自治体を調査し、小規模自治体も大規模自治体も対象としている。地方自治体調査では、840を超える地域が回答したが、ADAおよび/または第504条調整担当者を配置していると回答したのは65%超にすぎず、次のように結論づけている。「今回の調査の最も重要な所見は、地方政府でのADA調整担当者の存在意義が相当大きいということである。必要な活動を監督し、(多様な形で)不満を処理する担当者が地方レベルでの履行活動を向上させている。」

ファイファー・アンド・フィン社によれば、州はADAの遵守度が高い。「州および準州の4分の3以上が[ADA遵守の]自己評価を完了しており、およそ85%がその機関による移行計画を策定している。ADAの要件への対応も進んでいる。州と準州の領土の97.8%は、要請に応じて手話通訳者を派遣する用意があると回答した。90%以上が求職票の質問事項を変更し、代替様式を準備し、面接場所を変更した。州および準州の87%が合理的配慮を提供している。州および準州ではADAが相当程度に実施されている。

地方レベルでの第II編遵守促進のためDOJは「市民アクセス・プロジェクト」という名称で、郡、都市、町、村が障害のある者の地域生活への完全な参加の障壁となっている物理的およびコミュニケーションの障壁を除去してADAを遵守することを目的とする広範な活動を行っている。DOJは50の州、プエルトリコ、コロンビア特別区の審査を実施し、さらに他の地域がADAを遵守するよう合意締結を行っている。DOJによれば、DOJは138の地方自治体と145件の市民アクセス・プロジェクトについて合意し、建物、プログラム、サービスに確実にアクセスできるようにしている。DOJの市民アクセス・プロジェクトに向けた合意には下記がある。

 * アクセス可能な公園

 * 施設への出入りのためのアクセス可能な経路

 * アクセス可能な手洗所、水飲み場、電話

 * アクセス可能なサービス・カウンター、飲食スタンド、またはアクセス可能な代替場所でのサービス提供

 * 公共プールのアクセス可能な水浴施設

特に懸念がある分野は司法制度である。アメリカ人の基本的権利として、裁判手続を行えることは最優先事項である。しかし州および地方自治体の裁判所は物理的アクセスの改善や補助的支援の提供には消極的である。1994年から2004年にかけて、DOJは裁判所が関係する58件の和解を行った。DOJは57の裁判所と非公式な合意に至った。これらの事例は主として物理的アクセス、手話通訳者その他の聴覚に障害のある者に向けた補助的支援の配置に関する事項である。DOJは先ごろ、訴訟および非公式合意、およびその他の本報告書が進捗状況を、その報告書「すべての人が利用できること5年間の進捗、障害のあるアメリカ人法の実施に関するDOJからの報告」にまとめた。

主要な訴訟により明らかになったところによれば、州および地方自治体の裁判所はADA制定後15年経過してもなお完全にはアクセス可能となっていない。裁判所に対する訴訟も何件か提起されており、例えばテネシー対レーン事件、マイルス対ロサンゼルス事件、その他の事件があるカリフォルニアでは同州の裁判所庁舎の75%は身体に障害のある者がアクセスできないと裁判長が認めている。オレゴンやアリゾナなどの他の州は2003~2004年にアクセシビリティに関する調査を開始している。

米国アクセス委員会は、裁判所へのアクセシビリティの必要性を認識して、裁判所庁舎へのアクセシビリティガイドラインを発行し、裁判所庁舎のアクセシビリティに関する技術支援を行う諮問委員会を創設した。しかし、アクセス委員会によるガイドライン発行とDOJによる執行可能な基準としてのかかる指針の採用の間には時間的ずれがあるため、古いガイドラインに基づいて無駄な努力をしたくないとの考えから裁判所による遵守に遅れが生じている。

遵守の遅れの原因として他に考えられることとして、州および地方自治体はその施設をアクセス可能にしなくても、金銭的損害賠償の対象になることはないということがある。アラバマ大学対ギャレット事件の最高裁判決は、国家免責の原理に基づき、州政府はADAの雇用に関する条項に違反があった場合でも金銭賠償責任は負わないと判示した。州の側でも、州および地方政府のプログラムおよび施設へのアクセシビリティを対象とするADAの第II編が関係する訴訟には国家免責の原理を援用して防御を行っている。テネシー対レーン事件の最高裁判決では、少なくとも裁判所の建物については、州に対する金銭賠償請求が認められている。他の分野についての違反に金銭的損害賠償請求を行えるかは不明であり、それも遅延の原因になっていると考えられる。

州ではなく地方自治体は国家免責による保護を受けないが、裁判所はADAに基づく損害賠償請求に制限を設けている。裁判所は、金銭的損害賠償請求を行うためには故意の差別であることの立証が必要としているのである。違反した場合の金銭賠償という圧力がないため、かかる圧力がある場合に比較して地方自治体の進捗が遅いという可能性がある。

B. 投票

1. ADAの要件

ADAより前に制定された2つの法律は障害のある者が投票する際のアクセスの問題について規定していた。1965年投票権法(VRA)は「視覚障害、読み書き障害または読み書きができないため支援を必要とする障害のある者には当該投票者が選択した者が支援を行うことができる…」。もう1つの1984年高齢者および障害のある者の投票に関するアクセシビリティ法(Voting Accessibility for the Elderly and Handicapped Act of 1984: VAEHA)は、選挙実施に責任を負う下級行政機関に対し、連邦選挙のすべての投票所に高齢者と障害のある者が利用できるよう措置をとることを義務付けている。

ADA第II編およびその実施規則は、投票権を含め、基本的公的プログラムを障害のある者がアクセスできるようにすることを義務付けている。しかし、投票所にアクセスできるようにすることについては厳格に要求していない。そのかわり、すべての州および地方政府のプログラムと同様、投票に関するプログラム全体としてアクセスできるようにする必要がある。かかるプログラムのアクセシビリティは、利用できる投票所として、運動機能に障害のある者への路上投票、視覚に障害のある者の投票補助を含めた各種の方法により達成することができる。

2004年選挙時に、DOJは障害のある投票者の権利保護のための新しい政策を実施した。これには39ページの「アクセス可能な投票所のためのADAチェックリスト」や、投票所のアクセシビリティについての訓練を受けた選挙監視員の初の配置が含まれる。

2002年米国投票支援法 (Help America Vote Act of 2002: HAVA)は、連邦政府が資金を提供して投票手続の近代化を目指したものであり、アクセシビリティのある投票装置の導入の購入資金を提供し、障害のある者が投票という憲法上の権利を行使することの妨げとなっている制度上、物理上の障壁を除去するものである。2006年1月1日までに、各投票所には少なくとも1台、視覚に障害のある者が十分アクセスできる電子投票装置を設置することが義務付けられている。

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2. 関連データ

すべての州には(法律、規則または方針の形式で)、障害のある者の投票に関する規定が存在する。これらの規定は、投票のアクセシビリティ確保の方法が郡によって異なるように、州により大きく異なる。例えば、一部の郡ではアクセシビリティを投票所選択の具体的基準の1つとしているが、そうでない郡もある。すべての州は、指定された投票所を利用できない障害のある者の投票支援のための代替投票方法または配慮を定めている。例として、すべての州は公証人による証明または診断書を提出する必要なく障害のある者の不在者投票を認めているが、投票締切日および投票方法(郵送か直接手提出かなど)は州により異なる。また、全部ではないが多くの州が、投票日の前に他の配慮および代替方法を提供することを法律または通達により定めている。これにはアクセシビリティがある投票所への再指定、路上投票、期限前投票などがある。

2001年にGAOが実施した米国投票所の駐車場から投票室までの調査によれば、米国本土のすべての投票所の16%には阻害要因がなく、56%には阻害要因が1つまたは複数あったが路上投票制度を実施しており、28%には1つまたは複数の阻害要因があるほか路上投票制度を実施していなかった。かかる阻害要因は主として運動機能に障害のある者が影響を受けるものであり、その多くは駐車場から建物への経路、または投票所の入り口にあり、阻害要因がある全投票所の半数以上は阻害要因がこれらの場所に存在した。投票所内については、投票装置の種類および配置が移動機能に障害のある者や、機能に障害のある者、手や腕の機能に障害のある者に困難をもたらしていた。投票室内での投票を容易にするため、投票所では投票者支援、拡大装置、あるいは投票の説明やサンプル投票用紙を大きな活字で印刷するなどが行われるのが一般であった。ただし、GAOが訪問した投票所のどこにも特別投票用紙あるいは視覚に障害のある者用の投票装置は用意されていなかった。

2004年のマサチューセッツ市の調査では、その投票所の60%がHAVA要件に適合していなかった。ミズーリ州の調査では、都市部の投票所の70~80%がアクセス可能であったが、地方部では10%にすぎなかった。2003年のフロリダ州の調査では、投票所の54%がアクセス可能であった。2004年の調査で、ユタ州の投票所の6%が利用できなかった。インディアナ州の投票所については94%が利用できなかった。ロサンゼルス郡の投票所はADA制定後大幅に改善され、1986年の70%から2001年は98%がアクセス可能となった。

視覚に障害のある者が単独で投票することへの大きな障壁は依然として残っている。紙による投票のためには視覚に障害のある者が第三者の支援を受けなければならず、独立性および秘密性が損なわれている。HAVAはこれに対応するため、2006年1月までに連邦選挙のすべての投票所に電子投票装置を備えることを義務付けた。米国障害者協会によれば、2004年には投票所の約80%がHAVA基準によるアクセシビリティの要件を完全には満たしていなかった。電子投票装置の設置が着実に進んでいる州もあるが、電子投票装置のセキュリティに関する議論があることから電子投票装置使用の承認、購入、配備が遅れている州もある。

2004年より前に比較して、2004年に投票した障害のあるアメリカ人の割合は飛躍的に増加した。N.O.D./ハリス世論調査によれば、障害のあるアメリカ人の投票率は過去3回の大統領選挙で着実に増えており、障害のある者と障害のない者の投票率の差は縮まっている(図E参照)。1996年、障害のある成人の31%が大統領選挙に投票したが全成人の投票率は49%であった。2000年選挙の障害のあるアメリカ人成人の投票率は41%、全成人が51%であった。ハリスでは2004年の選挙では障害のある者投票率が52%であったと推定しており、国勢調査では障害のない者の投票率は64%であった。

図E:障害のあるアメリカ人の投票行動

表 C: 障害のある者の2000年の選挙の州別投票率

障害のある者の投票率 障害のある者の投票率
アラバマ
40%
モンタナ
49.2%
アラスカ
53.1%
ネブラスカ
45.2%
アリゾナ
33.8%
ネバダ
35%
アーカンソー
38.2%
ニューハンプシャー
50%
カリフォルニア
35.3%
ニュージャージー
40.8%
コロラド
45.5%
ニューメキシコ
37.9%
コネチカット
46.7%
ニューヨーク
40.3%
デラウェア
46.7%
ノースキャロライナ
40.2%
DC
39.3%
ノースダコタ
48.3%
フロリダ
40.5%
オハイオ
44.6%
ジョージア
30.5%
オクラホマ
39%
ハワイ
32.4%
オレゴン
48.5%
アイダホ
43.6%
ペンシルバニア
43%
イリノイ
42.2%
ロードアイランド
43.4%
インディアナ
43.6%
サウスキャロライナ
37.3%
アイオワ
48.6%
サウスダコタ
46.6%
カンサス
43.3%
テネシー
39.4%
ケンタッキー
41.3%
テキサス
34.5%
ルイジアナ
43.4%
ユタ
42.1%
メーン
53.8%
バーモント
51.2%
メリーランド
41.3%
バージニア
42.4%
マサチューセッツ
46.1%
ワシントン
45.5%
ミシガン
46%
ウェストバージニア
36.6%
ミネソタ
55%
ウィスコンシン
52.9%
ミシシッピ
38.9%
ワイオミング
47.8%
ミズーリ
46%
   

障害のある者の投票率の上昇を見てであろうと考えられるが、選挙責任者による障害のある者の問題点への対応が明らかに改善されている。例えば、2004年、両大統領候補は障害に関する自身の立場を公式に表明した。ジョージ・W・ブッシュ大統領の「新自由イニシアティブ」とジョン・ケリー上院議員の「障害政策プラットフォーム」である。州選挙候補者も障害に対する立場を公表している。

C. その他の形式の市民参加

当方による環境調査では、その他の形式の市民活動への障害のある者の参加率に関するデータは見つけられなかった。例えば公務員になること、政府の諮問委員となること、地域サービスを実施することなどである。

ほとんどの州に障害に関する政策を提言する障害委員会が設置されており、障害のある者が委員となっている。


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