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(関連資料)障害のあるアメリカ人法の影響

:ADAの目標達成進捗状況の評価(抄)

III. 自立生活

障害のある者は、どこで誰と暮らすかを含め、その生活の最も中心となる決定事項が政府、医師、家族に管理されてきた。この調査が対象とする自立生活とは、住居および医療について満足のいく選択が可能なことや生活に関して他から不当な管理を受けないことを含め、障害のある者が自己の生活を自分で管理することをいう。自立生活の重要な面は、統合され、地域に根ざした環境においてサービスがアクセス可能になることである。

A. 地域への統合

1. ADAの要件

1999年7月、最高裁のオルムステッド対L.C.事件の判決が出された。最高裁のこの判決は、施設サービスではなく地域に根ざしたサービスを障害のある者に提供することを州政府に義務付けたものである。オルムステッド判決は第II編およびその実施規則の解釈に基づき、「適格な障害がある者に対して、そのニーズに適合した最も統合された状況で」州のサービス、プログラム、活動が提供されなければならないとした。最高裁は、正当な理由がない施設収容はADA第II編が禁止する差別にあたると判示している。また最高裁は、施設ではなく地域に根ざしたサービスの提供に要する費用を理由に義務を免れることはないとし、かかる義務が免除されるのは州がアクセス可能な資源の配分において、特定の個人への直接の救済が、同州が介助する他の者との間で不公平になる場合だけであるとした。最高裁のオルムステッド判決以降、この判決を解釈適用する下級審は医療サービスへの介入に消極的であった。地域に根ざした医療、精神医療、住宅サービスはオルムステッド判決を受けて次第に拡大しつつある。裁判所は地域に根ざした介助に対する州の緩慢な展開を適法であるとして許容したのである。

2001年7月、ジョージ・W・ブッシュ大統領は大統領命令を出してオルムステッド判決実施のための指針を提示し、2001~2002年には障害のある者の地域への統合を促進するための助成金1億2,000万ドル超を配分した。

2. 関連データ

a. 連邦政府のオルムステッド計画

2002年3月25日、HHSは大統領に「約束の実行(Delivering on the Promise)」という標題の報告書を提出した。この報告書はオルムステッド判決の目標である地域への統合を支援する機関の活動をとりまとめ、オルムステッド判決の全面的実施の妨げとなっている政府のプログラムの障壁を特定し、これらの障壁除去を目指すための400を超える提案が記載されていた。大統領による「新自由イニシアティブ」に関する2004年経過報告書は、下記の連邦による活動は、脱施設収容を促進するために、特に関連があると指摘している。

i. 保健社会福祉省 (HHS)

2002年10月、HHSは障害局を設置してHHSの全機関で障害のある者に関する方針と制度を調整することとした。HHSの、メディケア介助およびメディケイド・サービス・センター(CMS)は2001年から「地域生活のための真の選択制度改革基金」を通じて2億ドル近い助成を行った。その目的は障害のある者が自分の地域で生活し地域生活により参加できるようにすることである。2003年以降、CMSは直接サービス提供に従事する労働力改善を実証する基金として1200万ドルを拠出しており、州および地域に根ざしている事業者が新しい戦略を吟味するために、サービスに直接従事する者の採用、訓練、雇用継続のための資金にすることが可能である。

2001年以後、HHSの高齢者局は「全米家族介助者支援プログラム」を通じて家族介助者の支援を行っており、4億ドル超の補助金が州および先住民族政府に拠出されて家族、友人、近隣者による介助提供の努力を促進するための多面的な支援に活用されている。

ii. 司法省 (DOJ)

 DOJは、サービスを障害のある者のニーズに適合した最も統合された状況で住民に提供しなければならないというADAの規定に照らし、施設入所者公民権法 (Civil Rights of Institutionalized Persons Act: CRIPA)に基づく医療施設のそれぞれの調査において、居住地の評価を実施した。DOJはその結果報告書を発行し、発達障害のある者に向けた施設4ヶ所、介護ホーム6ヶ所、および精神病院の子ども棟がオルムステッド判決に違反していると指摘した。DOJはいくつかの州の担当者と協力し、現在は公営施設に居住している者に州その他の管轄当局が地域に根ざしたサービスを提供する支援を行っている。

iii. 労働省 (DOL)

2003年9月、DOLの障害雇用政策局および「信頼に基づく地域計画センター」は障害のある者、特に求職者の地域への統合促進の手段として8人に住宅改修費用として50万ドルを給付した。

2005年、大統領は下記のように地域への統合促進のための連邦政府予算配分を提案した。

自宅および地域に根ざしたサービスから免除されるサービスに費やされる連邦政府のメディケイド費用は指数的に増大しており、1992年の37%から2001年は66%であった。1992年、長期医療費合計の15%が自宅および地域社会に根ざしたサービスから免除される治療に向けられたが、2002年は30%となった。

連邦政府によるこれらの計画の実施は障害のある者に歓迎されたが、(1)障害のある者の地域への統合に関する国の全体的政策の枠組がない、(2)障害のある者の不必要な施設収容を除去するために、長時間介助制度において不適切な変化を誘引している、という2つの理由による批判もある。

b. 州のオルムステッド計画

最高裁判所は、地域への統合のための正式計画を策定することで州はオルムステッド判決の遵守を立証できることを示唆した。オルムステッド判決は州に対し、制度と活動の「合理的な修正」を行うことを求めている。サービス、制度、または活動の状態を「根本的に変わってしまう」修正は不要とされている。その結果、連邦政府は州に対し、医療のみならず障害のある者の地域での生活に役立つように、交通、住宅、教育その他の社会的支援を奨励している。

長期治療の助成の中心はメディケイドであり、多数の障害のある者が対象となるため、多くの州がオルムステッド判決がどのようにメディケイドの財源に影響するのかを最初の作業としている。メディケイド支出の35%超が長期治療に向けられている。その多くが施設で、2001年は71%を占めた。この配分の偏りを「施設偏重」と指摘する者も多い。メディケイドの免責は自宅および地域社会でのサービスを受けるために必要である。すべての州は、地域に根ざしたサービスを提供することについて複数の免責があるが、予算の半分以上は引き続き養護施設その他の施設に向けられている。また、すべての州で、少なくとも限られた状況でのみ、自宅療養介護が認められない。その一方で、20州は個人への介助サービスが対象外であった。

2004年現在、29の州がオルムステッド判決関連の計画または報告書を発表している。これら計画の多くは障害のある者が自身の地域において生活し、働くことを可能にする地域プログラムを典型にさせるために、他のプログラムからの財源と組み合わせることによって、メディケイドの地域サービスを選択するようになっている。

オルムステッド計画の定義は明確でなく、州によりオルムステッド計画への取り組みが異なる。一部の州では多年にわたり実施するための特別戦略を策定している。重要事項を優先して直ちに対応を開始した州もある。さらに、広範な政策勧告を定めた州もある。計画の多くについて頻繁な改正が行われることが期待される。

一部の州はこの分野について具体的戦略をほとんど立てていない。ある調査報告はオルムステッド判決の遵守のための州の3つの戦略を記載している。すなわち、訴訟(制度に資金を回すための政策上、予算上のメカニズム)、市場ベースのアプローチ(自宅および地域に根ざしたサービス(Home and Community-Based Services: HCBS)の選択と需要喚起を可能にする消費者情報)、そして財務と制度の連携(サービス間の調整およびHCBS受け入れ能力の増大など)である。

州の計画の重点は下記の通りであった。

NCDの2003年オルムステッド報告で、その一部として、州の計画について下記の指摘をしている。

メディケイドによる介護施設サービスの保障は法定義務である。しかし、地域に根ざしたサービスの大半は、任意であるとされている。この施設偏重に対応するため、テキサス州などは施設入居者向けの助成金を地域に移行しても給付することにしている。特に、アリゾナ、アーカンソー、コネチカット、デラウェア、フロリダ、ジョージア、アイダホ、イリノイ、インディアナ、カンサス、ルイジアナ、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ミシシッピ、ノースダコタ、オハイオ、ペンシルバニア、ロードアイランド、サウスキャロライナ、テキサス、ユタ、ワシントン、ウィスコンシンの25州は、退所手続において、介護施設および「知的障害者中間施設(intermediate care facilities for the mentally retarded: ICF/MR)から地域への移行を進めており、すなわち、不必要な施設入居を廃止しようとしている。

これらの州の多くは引越しおよび家賃への助成を行い、介助マネージャーを通じた支援を提供することで人々の移行を支援している。フロリダ州は2003~2004会計年度のうちに1,200人を移行させることを目標とする3つの養護施設からの移行試行プログラムを実施中であり、移行後もメディケイドからの財源は配分されるとしている。ペンシルバニア州の3つの郡はメディケイド免責適格性を簡略化して介護施設からの移行を促進する試験プロジェクトを実施している。ウィスコンシン州は制度変更助成金を受けて発達障害のある者約200名を施設から移行した。

米国州法評議会(National Conference of State Legislatures)の報告によれば、2001年以降、州の予算の制限によりオルムステッド計画の進展が遅れている。地域に根ざしたサービスは長期的には施設サービスより低コストであると推定されるが、施設から地域に根ざしたプログラムへの移行時においては、サービスの拡大が必要となる。従って、十分な追加予算がなく、全体的予算不足の状況では、州はオルムステッド計画を実施することができない。その結果、オルムステッド判決による義務の履行を求めて多数の訴訟が提起されている。

ただし、その一方で進展も確かにみられる。2005年4月の米国の介護施設数は16,094であり2002年12月の16,516から減少している。HHSの報告によれば、2006年第1四半期の介護施設入居者は約139万9,000人であり、そのうち29万7,000人(21%)が地元地域社会での生活を希望している。この人数は2002年の介護施設入居者数143万人より減少している。

州に対して地域への統合促進を義務付けたオルムステッド判決からまだ6年しか経っていない。2002年現在、GAOは少なくとも180万人の障害のある者が施設に入居していると推定しており、そのうち160万人が介護施設、10万6,000人が発達障害のある者施設、5万7,000人が州または地方自治体の、精神病のある者に向けた施設の入居者である。オルムステッド判決以来、州と連邦政府の機関は地域への統合促進のためその制度を変更している。この変更の成果はまだ施設を退去する障害のある者が相当増加するという成果には結びついておらず、裁判所も州に迅速な措置を求めることには消極的である。しかしオルムステッド判決は障害のある者、特に地元地域への更なる統合を望む精神病のある者、知的障害のある者にはより明確な希望を確証している。

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IV. 経済的自足

障害のある者は従来、政府の給付金および慈善団体の義援金により生活するのが通常であり、連邦議会はADAの制定時に、障害のある者は集団として米国社会で低い社会的地位を占めており、社会的、職業的、経済的、教育的に不利益を受けていることを認識した。今回調査の対象事項である経済的自足は、教育、雇用、資産蓄積によって成し遂げられる障害のある者の財産保障と定義される。適切な医療および保険も経済的自足の補足的側面である。

障害のあるアメリカ人の経済的自足が進んでいることを示唆する直接の証拠はない。教育、仕事の合理的配慮、公共交通機関へのアクセスの改善は長期的には経済的自足に貢献すると期待されるが、これは楽観的見方である可能性もあるため、さらに調査が必要である。障害のある者と障害のない者の教育格差は縮まっており大学以上の高等教育機関で学ぶ障害のある者は史上最多となっているが、その卒業率は障害のない者よりはるかに低い。障害のある学生に対する教育支援およびサービスは全国の3,000の大学以上の高等教育機関のほとんどが現在では提供している。障害のある者の職場での差別は減っているというデータは存在するが、雇用は増加していない。ADAに基づく差別訴訟で障害のある者が勝訴することは稀である。障害のある者の貧困率はADA制定後も低下していないが、その大きな原因は、基本的医療支援およびサービスを受けるためには貧困層であるほうが有利であるという社会保障制度にある。

A. 金融資産と保険

1. 金融資産

NCDは障害のある者の金融資産に関する信頼できる情報源を見つけることができなかった。しかし、バートン・ブラット研究所 (Burton Blatt Institute: BBI(http: //bbi.syr.edu))その他の調査によれば、金融資産を限定的にしか利用できないことが障害のあるアメリカ人の多くが抱える問題の1つである。また、障害のある者と障害のない者には金融資源に大きな差が存在する。

2006年の国勢調査局データによれば、障害のあるアメリカ人の約5人に1人(19%)は貧困者であり、障害のない者の貧困者の3倍である。重度障害のあるアメリカ人の26%は貧困者である。2000年の障害のあるアメリカ人に関するN.O.D./ハリス世論調査では、重度障害のある者の28%が貧困者であり、障害のない者は8.3%が貧困者であった。ADA施行前の1990年、障害のある者の19%が貧困者であったがこの割合は2006年とまったく同じである。

NCDは現在、財務インセンティブ調査を実施中である。これは障害のある者が貯蓄、投資、融資などの金融資産を利用できる程度、 障害のある者と障害のない者の金融資産の差、障害のある者による医療保険加入の可能性と保険料、給付金額などを含む。NCDは、この財務インセンティブ調査により障害のある者の経済的自足改善のための戦略策定に必要な情報が得られるものと確信している。

銀行と金融機関は障害のある者がアクセス可能なサービスを提供せよという圧力に対応している。多数の訴訟および賠償金年金決済交渉が発生した結果、シティバンク、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ、フリート銀行、ソブリン銀行、シチズンズ銀行、チェース/バンクワン、ファースト・ユニオン銀行(現ワコビア)、カリフォルニア・ユニオン銀行、ワシントン・ミューチュアル、ラサール銀行が音声案内型ATMを設置し、アクセス可能な形式による用紙を提供し、ウェブサイトの画面が視覚障害のある者にも分かるように読み上げ機能を備えている。アメリカン・エクスプレスもクレジット・カード利用者向けの点字その他の形式の用紙や文書を用意している。現在、全米に約5万台の音声案内型ATMが設置されていると推定される。

2. 医療保険

誰が医療サービスを受けられるのか、その料金はいくらになるかは、その人が加入している医療保険または健康保険によるが、障害のある者は就労していなければかかる保険に加入できない。医療保険の適用を受けるためには同じ雇用主の正社員として一定期間勤務するか、または完全に就労不能であるとして公的医療保険(EBHI)の有資格者となるかである。障害のある者はこのどちらかの中間にあることが多いため医療保険の加入が困難であり、医療を利用することが難しく、健康状態が悪化するリスクがあるほか、労働能力も制限されている。労働年齢の障害のある者のほぼ5人に1人が医療保険に加入していない。就労している障害のある者であっても障害のない者より保険加入率が低い。例えば、フルタイムの被雇用者の非雇用者医療保険加入率は65%であるが、障害のない者は74%である。

障害のある者も障害のない者も何らかの医療保険に加入している率はほぼ同じである(88%と91%)。しかし、障害のある者の多くは(56%)メディケイドまたはメディケアに加入しているのに対し障害のない者は民間保険に加入している(78%)。この加入先の違いは大きく、障害のある者が必要な治療を受けずに済ますことが障害のない者より多い(18%と7%)ことの原因にもなっていると考えられる。

B. 高等教育

1. ADAの要件

大学以上の高等教育機関は、課外活動およびコミュニケーション手段を含め、提供するプログラムについて障害のある学生が利用できるようにしなければならない。州立の単科大学および総合大学は、第II編が規定する「プログラムへのアクセス」を確保しなければならないが、私立大学は第III編が規定する容易に実現可能な障壁除去を行わなければならない。ADAのこれら2つの編では政策、実施方法、手順に対する「合理的改正」の提供、および「補助的支援およびサービス」の提供により、アクセス可能にすることとされている。

高等教育機関の調整には教室の改修、試験時間の延長などの試験対応、代替形式による資料の提供、教室と実験室の物理的アクセシビリティの提供などがある。補助的支援とサービスには聾者向けの手話通訳者を配置し、視覚に障害のある者向けにリーダーを配置するなどの、感覚機能に障害のある者への情報アクセスの提供が含まれる。

2. 関連データ

障害のある者と障害のない者の教育格差は小さくなっている。大学以上の高等教育機関で学ぶ障害のある者は史上最多である。障害のある者の高校中退率は障害のない者の2倍であるが(21%と10%)、大学以上の高等教育機関で学ぶ障害のある者数はADA制定以来劇的に増加している。単科大学および総合大学の全日制学部生である障害のある者は1978年から1994年の間に3倍になり、2.6%から9.2%になった。1998年には、障害がある学生全体(すなわち定時制および大学院生を含む)は大学以上の高等教育機関の全学生の10.5%に上昇した。

2000年のNCDの報告書は、米国の高等教育の学生の17%が障害のある学生であるとしている。大学の学生で最も多い障害のある者は学習障害のある者であった。また、大学以上の高等教育機関の障害がある全学生の過半数が卒業している。大学以上の高等教育を受け始めてから5年以内に、障害のある学生の41%が学位または何かの資格を取得し、12%がさらに上級学校に進んでいる。

2004年のN.O.D./ハリス世論調査では、ADA制定前より高等教育を受ける障害のある者が増加したことが確認された(図F参照)。2004年には障害のある者の40%が大学に入学しまたは学位を修得している(障害のない者は52%)。1986年には大学に入学しようとする障害のある者は障害のある者のうちの29%にすぎなかった(障害のない者は48%)。このように、障害のある者と障害のない者の大学入学者の差は19ポイントから12ポイントに狭まっている。ただし、障害のある者の学位取得率は1986年と変わらず14%であった。

ADA制定以後、高等教育を受ける障害のある者は増加したが、大学への入学者の割合は若干減少している(何らかの大学へ入学した者は1998年の49%から2004年には40%になった)。障害のない者でも大学への入学者は同様に減少している。

図F: 障害のある者と障害のない者の大学入学率

主要な高等教育試験実施機関は障害のある者の受験時の配慮に関して訴えられており、その結果、配慮の提供を改善している。2001年、訴訟に対応して、GRE、SAT、GMATその他の試験を実施するエデュケーショナル・テスティング・サービス(Educational Testing Service)は配慮を受けて受験する者の「識別」を廃止した。2002年、DOJは「ロースクール入試委員会」と和解し、LSAT試験では身体障害およびコミュニケーション障害がある受験者に配慮が提供されることとなった。これらの高等教育への「ゲートキーパー」の変化により、障害のある者が学士やさらに上級の学位を取得しやすくなった。

質と量にバラツキはあるものの、現在では全米3,000の大学以上の高等教育機関で障害のある者である学生向けの教育支援が行われている。先ごろの第9巡回控訴裁判所での判決により、学習障害のある者が高等教育で支援を受けることがさらに困難になった可能性がある。ウォン対カリフォルニア大学評議員会事件で、裁判所は、医学部での支援を要請した学習機能に障害がある学生に関し、学習の主要生活活動に「実質的なな制約」があったものではなく、従って、ADAの保護の対象とはならないと判示した。裁判所によれば、かかる学生が子どものときに学習障害があったことは通知されていたが、下級学校では(支援があった場合となかった場合の両方で)問題がなく、その日常生活活動において一般人の大半と比較して実質的な制約があるとはいえないとした。裁判所は、当該基準は学生の学習能力を学校の他の学生と比較するものではなく、ほかの大半の者が行う日常活動と比較するものであると判示した。この事例では学生は日常生活活動に必要な読み取りおよび学習が他のほとんどの者と同様に行うことができ、医学生が必要とする程度には至らなかったにせよ、ADAによる保護の対象外とされた。

かかるADAの解釈は学習障害がある学生が高等教育で配慮を受けることを困難にした。下級学校で問題がなかったことは証明されるであろうし、高等教育の成功に必要な能力は実質的な制約の判断にあたって比較基準とはされないからである。

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C. 雇用

ADAが雇用に与えた影響を雇用と職場内配慮の2段階で評価した。ADAがこれら2つの事項に与えた効果は大きく異なる。

1. 雇用

a. ADAの要件

ADAの第I編は、雇用および求職での障害のある者差別を禁止している。雇用主は適格性のある者を障害あるいは合理的配慮の必要性を理由に拒否してはならず、障害のある者を不合理に排除する適格性基準を採用してはならない。

b. 関連データ

2004年N.O.D./ハリス世論調査によれば、18~64歳の障害のある者のうち就労者は3分の1強(35%)であるが、障害のない者は4分の3強であった。これらの数値は1986年の調査から変わっていない。事実、就労障害のある者の割合は1994年から2000年の間に減少し、わずか29%になった。また、2004年調査によれば、世帯所得が1万5,000ドル以下である障害のある者の割合は障害のない者の3倍に達する(26%と9%)。1986年に障害のある者の50 %の世帯所得が1万5,000ドル以下であった(障害のない者は25%)。

一部の研究者はADAの制定が障害のある者の雇用が低下する原因であると示唆しているが、この結論は実証研究の裏付けがない。当方による環境調査では障害のある者の雇用率はADA制定後上下に変動している。当方の主張は下記の通りである。

雇用の指標を詳しく見てみると、全体の雇用割合は就業機会の最適の指標にはならない。雇用主の態度や職場のアクセシビリティの改善にかかわらず就業を望まない多数の者を含んでいるからである。労働年齢の成人で障害のある者の大多数は、自分には労働はできないと考えているかまたは他の活動に従事していることを理由に、就労を望んでいない。こういう人の割合は増加しており、精査が必要である。これらの人々を統計から「除外」すると、障害がありかつ就労可能な者のみを対象とすることになり、障害のある者である労働者および求職者に関する雇用主の対応の変化をより真実に即して反映したデータが得られるであろう。そしてこの作業を行うと、状況はかなり明るいものとなる。障害のある者の雇用は、ADAの制定後において、少なくとも一部の障害のある者にとっては、大幅に改善されている。

2006年9月13日に下院司法委員会憲法小委員会で実施されたADAに関する公聴会で、ADA研究の第一人者であるロバート・バーグドーフ・ジュニア教授は、最高裁判決によりADA第I編の適用が大幅に制限されたため、ADAが実施されたとしても、障害のある者の雇用改善に効果があるかどうかまったく分からないと述べた。

ADAは公民権法の1つである。ADAが実施されたとしてもその雇用に関する規定は障害のある者が抱える深い構造的な障壁を除去する能力は有していない。

ADAの差別禁止要件は、雇用主が適格性を有する求職者についてその障害を理由に雇用を拒否することを防止できるものであり、ADAの配慮要件は、雇用主に対して、障害のある者が特定の職務を実行できるように施設や職務を変更することを義務付けるものである。しかしこれらの義務付けは障害のある者が働けるように雇用主が事業所内で個人支援サービスや交通手段を提供することを義務付けるものではなく、メディケイドと同等の適切性を有する保険の提供を雇用主に義務付けるものでもない。これらの問題を解決するには雇用主に差別を禁止し配慮を義務付ける以上のことが必要である。公的助成金あるいは給付の提供など、政府による直接的で持続的な介入が求められる。

残念ながら、障害のある者の雇用に関する多くの疑問を解明するためのデータが不足している。NCDは調査に基づく証拠および障害のある者が経験している雇用に関する実務の真空部分に取り組むよう発議するための準備をしている。NCDは現在、「雇用調査」を行っており、これには障害のある者の雇用不足および失業の原因の理解並びに障害のある者の雇用の改善を目的とする官民双方の方針と計画に対する確固とした体系的な検討が含まれる。

障害のある者雇用のインセンティブについてはさらに調査が必要である。例えば、労働機会税額控除は障害のある者その他の弱者を雇用する雇用主に認められる税控除である。1999年においては約790に1つおよび取引関係を有する個人3,450人に1人が納税申告で労働機会税額控除を申請し、その額は合計2億5400万ドルであった。DOJは2002年から2003年に700万超の事業所に税優遇措置に関する案内書を送付している。それにもかかわらず、人的資源管理協会の2003年の調査では調査した事業所のうち労働機会税額控除制度を利用したのはわずか16%であった。

501の雇用主を対象とした2003年のある調査では、雇用主の4分の1(26%)が、自分の会社は精神に障害のある者または身体に障害のある者を少なくとも1名雇用していると回答した。

企業文化と障害に関する調査報告書は、「研究者、政策担当者、ビジネス・リーダー、障害者団体は障害のある者の権利に関する法律および方針一般の検証、および1990年障害のあるアメリカ人法(ADA)が障害のある者とその家族、特に雇用主に与える影響についての有意義な対話を行わなければならない」と指摘している。これらの者は第I編の対象者が誰であるかを理解し、最高裁判決による対象の変化を認識していなければならない。

2003年に実施された501の雇用主の調査では、雇用主の49%が採用募集および面接の場所を利用しやすい場所としていたが、利用しやすいように求職書類の形式を変更しあるいは雇用、促進に使用する試験または評価を変更した雇用主は12%にすぎなかった。すべての場合において、障害のある者の採用および支援のため事業実施方法を変更した企業は大規模企業のほうが小規模企業より多い。

2004年N.O.D./ハリス世論調査では、障害のある者の就労困難が続いていることを確認している。仕事に関する他の種類の差別は1994年から2004年の間に減少しているが、就職面接拒否の割合は横ばいである。1994年の調査では回答者の約29%が障害または健康状態を理由に面接を拒否されるという差別を経験している。2004年には27%が面接を拒否された。

障害のある者は高等教育を受けることを求めているが、雇用機会の増大という点では高等教育による利益は受けていないようである。2004年のN.O.D./ハリス世論調査によれば、障害のある者の高等教育は障害のない者ほどには雇用と関連しない。従って、大学卒の障害のない者の82%がフルタイムまたはパートタイムの社員になっているのに対し、大学卒の障害のある者の就職率は54%どまりである。ただしこのことは、調査に回答した障害のある者の年齢が高かったことと無関係ではないと考えられる。回答者の17%は定年退職者であった。回答した障害のない者のうち定年退職者は3%にすぎない。障害のある者の教育は高所得とも関連性がうすい。大学卒の障害のある者の50%は年収5万ドル以下である。5万ドルから7万5,000ドルの範囲であれば大卒の障害のある者と障害のない者の間で割合に差はない(23%と24%)。高収入(7万5000ドル超)を得る院卒の障害のある者の割合は障害のない者よりかなり低い(16%と38%)。

2. 合理的配慮と昇進

a. ADAの要件

ADA第I編は雇用主に対して、身体障害または精神障害がある被雇用者に合理的配慮を提供することを義務付けている。合理的配慮には、障害のある非雇用者が障害のある者がアクセスできる施設を用意すること、職務の見直し、募集中の職への再配置、利用できる機器への改良または取得、訓練資料の調整、通訳者やリーダーの配置、その他の支援が含まれる。

b. 関連データ

ADA制定前に比較して、障害のある者がいったん雇用された後において雇用差別を経験する率は低く、合理的配慮が受けられる率は高い。ADAは雇用中に障害のある者となった場合にも同様に適用される。

1995年の雇用主に関するハリス世論調査によれば、大企業の幹部の80%が、障害のある者への配慮にかかった費用はほとんど増加していないか変化なし程度である。大幅増と回答したのはわずか7%であった。幹部の66%は訴訟費用の増加はないと回答し、14%が「ごくわずか」増加したと回答した。実際に支援を提供した企業数は増加した。1986年の雇用主調査で、ハリスの調査対象企業の51%が支援を行っていた。1995年には81%に上昇していた。

2003年に実施した501の雇用主に関するハリス世論調査は小規模事業所も対象としていたが、被雇用者である障害のある者に何らかの種類の訓練または配慮を提供していたのは、40%のみであった。また、従業員5~24名の企業では被雇用者に前記の訓練を実施していたのは34%にすぎなかった。従業員25名超の大企業では52%が従業員の訓練を実施していた。

配慮の提供に関する雇用主の決定を理解するための実証証拠はほとんどない。ある調査では支援決定に対する従業員と雇用主の関連性を検証した。この分析は職場における配慮に関して職業配慮ネットワーク(Job Accommodation Network: JAN)に接触してきた雇用主との面談により得られた全米のデータに基づいている。このデータは被雇用者への配慮に関して2004年と2005年にJANに相談した雇用主との1,000を超える面談により作成されたものである。面談の過半数は現在の被雇用者への配慮に関するものであった。これらの協議の4分3強(82.4%)が被雇用者の保持を中心としており、1.8%が現在の被雇用者の昇進に関するものであった。求職者への配慮に関する問い合わせは対象のうちごくわずか(4.6%)であり、新規従業員の雇用についても少なかった(1.6%)。全社的問題への問い合わせは数件であった。JANとの協議の後、半数以上が職場における配慮を行っている。フィードバックを提出した540の雇用主のうち、協議を受けて55.2%が配慮を行った(または検討中である)。配慮を行わない理由で最も多かったのは、ADAまたは他の法律で義務付けられている事項ではないという決定を会社が行ったことであった(58.5%)。

配慮が最もよく行われるのは、主要生活活動への大きな制約があると考えられる被雇用者に対してであった。実質的な制約がある被雇用者に関する402件の協議の後、61.2%が配慮を行っている。雇用主が実質的な制約はないと判断した被雇用者については42.6%が配慮を行っている。配慮を行うかどうかは、被雇用者が配慮を受けて労働する能力に関する雇用主の評価に大きく関連していた。

研究者は、配慮の提供に関連する雇用主の費用と利益に関する報告の分析も行った。費用と利益のデータは雇用主が配慮を提供すると決定した状況においてのみ存在する。配慮を行った回答者のうち、226の雇用主が配慮の実際のまたは推定の直接費を拠出していた。

配慮の49%は費用がゼロであった。ほぼすべての雇用主が、配慮を行ったことにより被雇用者を保持することができ(91.6%)および/または適格な被雇用者を昇進させることができた(11.3%)という利益があったと報告した。報告がされた他の直接利益には新規従業員の訓練費用の節約(59.5%)、労働者災害補償または保険の費用の節約(43.0%)、支援した労働者の生産性向上(76.7%)、支援した労働者の出勤率向上(53.3%)、会社の多様性の増加(41.4%)があった。

この調査の主な所見は、(1)主要生活活動に実質的な制約がある現在の被雇用者のほうが、実質的な制約がない被雇用者より配慮を受ける率が高い、(2)雇用主は、配慮することで労働に関連する制約が緩和される被雇用者を支援する傾向がある、(3)実質的な制約がない被雇用者の配慮にかかる費用は実質的な制約がある被雇用者より少ない、(4)全体として、配慮にかかる費用は少なく、配慮から得られる利益は比較的大きい、となっている。

2004年のN.O.D./ハリス世論調査によれば、職場内雇用差別を経験した障害のある者は減少した(図G参照)。ADAの主要目的の1つは雇用における障害のある者への差別の除去である。2004年には、フルタイムまたはパートタイムで勤務している障害のある者の回答で、雇用差別は1986年より増えたと回答した者は減り、雇用差別が1998年より大きかったと報告した者はさらに少なかった。例えば1986年にはハリス世論調査の対象となった障害がある被雇用者の28.2%が障害または健康状態に起因する仕事上の差別があったと回答している。1998年には回答者の3分の1(32.8%)が仕事上の差別を経験していたが2004年には22.1%に減少した。

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図G: ハリス世論調査の回答者 フルタイムまたはパートタイムで勤務していて雇用差別を経験した障害のある者

障害がある被雇用者の昇進に関して、ハリス世論調査によれば2004年の回答者はそれより前の年の回答者に比較して昇進を拒否される例が少なかった。1994年の回答では回答者の4名に1名超(24.6%)が障害を理由に昇進を拒否されるという仕事上の差別を経験していた。2004年には5名に1名弱(16.7%)に減少した(表D参照)。

表D: 障害による雇用差別の種類
雇用差別の種類
被雇用者の割合
1994
1998
2004
面接拒否
28.8%
23.7%
26.9%
採用拒否
61.4%
59.3%
30.8%
昇進拒否
24.6%
29.3%
16.7%
同僚より責任が軽い
37.3%
39.0%
14.1%
同僚より給料が少ない
18.6%
32.8%
12.8%
医療保険の拒否
23.3%
31.7%
3.8%
他の労働関連給付の拒否
22.4%
23.3%
6.4%

1994年の調査対象者に比較して、2004年調査に回答した被雇用者は、障害を理由とする採用拒否、同僚より責任が少ない、医療保険加入拒否、その他の労働関連給付の拒否が少なかった。1994年には仕事上の差別があったと回答した者の61.4 %が障害を理由とする採用拒否を経験していた。2004年については、採用拒否を経験したのは30.8%にすぎなかった。1994年には仕事上の差別を経験した回答者の3名に2名超(37.3%)が同僚より責任が少なかった。2004年にはこれが大きく減少して14.1%であった。1994年、仕事上の差別を経験した者の23.3%が医療保険を拒否され、22.4%が他の労働関係の給付を拒否された。2004年には医療保険を拒否されたのは3.8%のみであり、労働関係の給付を拒否されたのは6.4%であった。

3. 訴訟

ADA第I編に基づく民事訴訟で障害のある者が勝訴することは稀である。ADA第I編に関する判決については多数の文献がある。当方による環境調査の結果、文献の圧倒的多数、すなわち79%がADA第I編が障害のある者の雇用に与える効果について悲観的または否定的であった。研究者が指摘するADAの失敗の3大原因は、最高裁および多数の下級審で適用を否定する判決が出されたこと、障害のある者が抱える広範な問題を差別禁止法で変えることへの限界、そして、「義務的配慮」の限界である。

多数の研究者は、最高裁がADAの適用を制限したことにより障害のある者自身が障害を有することの立証が難しくなり、差別したとの主張を受けた者の防御がしやすくなり、申立が認められた者による損害賠償および法的費用の回収が制約されることになったと指摘する。NCDが2003年に発行した報告書には最高裁の否定的判決が下級審に与えた悪影響が記述されている。2004年12月、NCDは報告書「ADAの正義」を発行し、最高裁のADA判決により障害のある申立人および被雇用者が受けられるADAに基づく保護に深刻な制約が生じたことを分析している。本報告書には雇用差別を受けた障害のある者のADAによる保護を回復するための法律案が含まれている。

米国弁護士協会はADA第I編の判例に関して多数の調査を実施しており、最近(2003年)では第I編関連事件で雇用主の勝訴率が97.3%であることが明らかとなった。第I編の取締を行うEEOCの報告によれば、2004会計年度には障害のある者に対する差別の申立が15,376件あり、16,949件を解決し、4,770万ドルを損害賠償金として取得し、当事者その他の損害を受けた者に配分した(訴訟により取得した金銭給付受給権は含まない)。ここ数年、これらの数字は低下している。例えば1998会計年度ではEEOCは23,324件の申立を解決し、5,370万ドルの賠償金を取得している。近年の低下の原因は障害のある者に対する雇用主の差別の減少、第I編事件では雇用主が勝訴するのが通常であるため提訴意欲が下がったこと、裁判所によるADAの適用制限またはこれら3つの組み合わせにあると考えられる。

一部の研究者は、障害雇用に関する訴訟の勝訴(または敗訴)の数字はADAの実際の影響を反映しているものではないと指摘している。申立の大半は訴訟になる前に解決されており、ADA制定前に比較して障害のある者に対する合理的配慮および公正な取扱いが増加したとみられるからである。

附属書B:方法

環境調査

包括的な環境調査を実施してADAが障害のある者の生活およびさらに広く社会に及ぼしたプラスおよびマイナスの影響に関する文書を収集した。このプロジェクトの研究者たちは各種の情報源から約500の文書を集めた。収集した文書には社会科学および法律の雑誌記事、DOJのウェブサイトに掲載された和解契約、判例概要、NCDの「コメント要請」による電子メール、国内5ヶ所で開催された公開討論会の議事録、連邦政府、関連非営利組織の幹部のインタビューなどがある。収集データは定期的に更新し、コード化してデータ源の性質と内容に従って分類した。

プロジェクトチームは公表されあるいは連邦政府機関および関連非営利組織のウェブサイトに掲示された報告書、雑誌記事、書籍その他の文書、NCDの「コメント要請」からの「証言関連文書」、公開討論会、ブランク・アンド・アソシエーツ(Blanck & Associates)によるコメント要請、対象を絞ったインタビューの目録を作成した。

証言関連文書については、電子メールのような短いものは全文をデータベースに入力した。「コメント提出要請」から受け取ったものは長いため、概要をデータベースに入力した。

収集する文書の選択にあたっては、「この文書は単に法律の内容を繰り返すだけではなく、ADAの影響の説明または検討を読者にわかりやすい形式で行っているか」を基準にした。

環境調査の手順

1.研究者はADAに関連する文書をウェブで広範に検索した。特に、業界関係者の代表組織およびその出版物に注目した。

2.また、研究者はADA実施の関連者および学者を含め、連邦政府機関および障害者組織追加リストを作成し、これらのウェブサイトを訪問し、前記と同じ調査(手順1参照)を実施した。

3.収集したデータの補足として、研究者は前記1と2では対象としていなかったADAに関する2つの現在実施中のプロジェクトの関連文書を収集した。かかる2つのプロジェクトとは下記の通りである。

a. 1990年~2005年の間に法律および社会科学雑誌に掲載されたADAに関するすべての実証研究論文の検索

b. 2003年12月以降に公表されたADAに関するすべての法律レビューおよび社会科学レビューの検索(当初はブランク、ヒル、シーゲル&ウォーターストーン(Blanck, Hill, Siegel, & Waterstone)の障害者法判例ブック(2004年)の更新として収集)

4.研究者は標題に「障害のあるアメリカ人法」という文言が含まれている論文その他の学者の著作物を調査した。検索にはシラキューズ大学のSUMMITTオンライン・カタログおよびレキシス・アンド・ウェストロー出版社のウェブサイトを使用した。

5.また、研究者は下記のウェブサイトを訪問して前記1から3にはない文書を収集した。

○BBIウェブサイト(BBIスタッフが開設)

○関連するBBI米国パートナーのウェブサイト

○障害者事業技術支援センター(DBTAC)から入手した文書が集められているADAポータル

○ソーシャルサイエンスリサーチネットワーク(Social Science Research Network)ウェブサイト(2003年12月以降の記事)

6.その他: 障害者団体のウェブサイトを訪問した。ADAのすべての編名を手がかりに最高裁判例の概要を概要集から収集し、抄録としてウェブサイト「Findlaw」で入手した概要を利用した。

7.関連トピックの一部については、ADAの影響を他の法律の影響と区別することが困難であった。特に、住宅分野での区別が難しかった。例えばオルムステッド判決による地域への統合の義務付けは改正公正住宅法に基づく問題と重なる。

担当グループ

プロジェクト・スタッフは9の担当グループを作って作業を行った。7グループが障害のある者が対象、2グループが雇用主対象である。各グループは10人未満とした。障害のある者の担当グループは下記の障害のある者の集団を対象とした。すなわち、発達障害、学習障害、精神障害、運動機能の障害、聴覚障害、視覚障害である。聾者担当グループはワシントンDCで作業を行った。他の担当グループは電話により作業を行い、全国の居住者を対象とした。

障害のある者の担当グループの中心トピックはADAが掲げる下記の目標に基づくものである。

雇用主担当グループの中心トピックは下記の通りである。

公開討論会

5日間の公開討論会をアイオワ州アイオワ市、カリフォルニア州ロサンゼルス、テキサス州ヒューストン、ジョージア州サバンナ、ワシントンDCで実施した。参加者は障害のある者、その家族、障害のある者に関連した活動家、雇用主および地方自治体、州、連邦政府機関の代表者とした。参加者には電気通信、交通、教育、雇用機会、州および地方自治体が提供する物品とサービスへのアクセス、民間企業による支援へのアクセスに関連してADAが生活にどのような影響を及ぼしたかを質問した。
討論会の広報活動により、討論会に参加できなかった障害のある者から112通の電子メールによるコメントが寄せられた。これらのコメントもデータベースに入力して分析対象とし所見に反映させた。

インタビュー

ADAの実施または取締を行う連邦政府、州および地方自治体、障害のある者にサービスを提供する民間機関並びに公的機関、事業者団体、業界団体、担当者グループに代表者がいない障害者団体、の合計24名の代表者と1対1のインタビューを行った。ADAの4大目標について参加者に質問したが、インタビューの重点はそれぞれの機関や組織独自の見方であった。

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附属書C: 全米障害者評議会の使命

概要と目的

全米障害者評議会(NCD)は連邦の独立機関であり、15名の構成員は合衆国大統領が指名して上院の承認を受ける。NCDの目的は、すべての障害のある者について、障害の性質や程度にかかわらず機会均等を提供するための政策、制度、実施方法を推進し、障害のある者が経済的自足、自立生活を確保し、社会のあらゆる面への統合がなされるよう支援することにある。

具体的職務

現行法が定めるNCDの職務は下記の通りである。

「米国障害者政策:進捗状況報告書」という標題の年次報告書を作成して大統領および連邦議会に提出すること。

国際

1995年、NCDは国務省から障害の問題に関するアメリカ政府の担当連絡窓口に指定された。NCDは、特に、国連障害者社会開発委員会の障害者問題特別審査機関との連絡窓口になっている。

対象となる消費者および現在の活動

障害のある者に影響する問題や制度は多数の政府機関が取り扱っているが、年齢、障害の種類、雇用の可能性、経済的必要性、具体的機能能力、退役軍人の地位、その他の個人的事情とかかわりなく障害のある者に影響する公共政策の対応、分析、勧告を行う連邦機関はNCDのみである。NCDは、障害のある者が懸念する事項についての情報に基づく調整済みアプローチを確保することにより障害のある者の自立生活、地域への統合、雇用機会を促進し、地域社会や家族生活への積極的参加の障壁を除去するという独自の機能を有している。

NCDはアメリカの障害者政策立案の中心に位置している。事実、NCDの提案が基礎となってADAが生まれた。NCDが現在重点を置いている事項は、個人支援サービス、医療改革の促進などであり、これには障害のある学生の地域での高品質な教育、均等雇用および地域での居住の促進、ADA実施の監視、支援技術の改良、多様な文化の構成員である障害のある者の社会への完全な参加の確保が含まれる。

法制度上の沿革

NCDは1978年、教育省の諮問委員会として設置された(P.L. 95-602)。1984年改正リハビリテーション法(P.L. 98-221)によりNCDは独立機関となった。


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